がん

ここでは、 がん に関する情報を紹介しています。
日焼けの原因は紫外線の照射にあることはご存じと思います。一口に紫外線といってもその皮膚(ひふ)に与える強さはいろいろあります。波長が短いほど皮膚に障害を与えます。紫外線の波長が短いものをUVBといい、その波長の長さは281〜320nm(ナノメートル。1ナノメートルは10億分の1メートル)でサンバーンといわれ、皮膚に紅斑や水泡を発生させます。UVAといわれるものは波長が長く、321〜400nmのもので、サンターンと呼ばれて皮膚の色素沈着を起こします。
 さて、このうち皮膚がんを発生させる波長は280〜320nm、つまりUVBが危険ということになります。
 白色人種では紫外線による皮膚がんの発生が多く、増加の一途をたどっています。アメリカでは年間約40万人の皮膚がんが発生し、大多数は紫外線によるものといわれます。レーガン元アメリカ大統領の鼻にできた皮膚がんはよくご存じと思います。オーストラリアはさらに紫外線の影響が強く、最近のキャンペーンでは、もし長生きすれば、国民のすべてが皮膚がんにかかる恐れがあると警告しています。もともと白色人種は紫外線に弱く、皮膚がんの発生が高かったのですが、最近のオゾン層の破壊が拍車をかけたわけです。
 オゾン層は地上10〜50kmに存在し、紫外線の短い波長、例えば290nm以下のものを吸収していたのですが、その破壊により短いものが地球上に到達する結果となりました。
 では日本ではどうでしょうか。日本でも毎年、紫外線による皮膚がんが増加しています。紫外線に当たってすぐ皮膚がんが発生するものではなく、10年あるいは20年以上経過して発生します。従って、将来、日本でも飛躍的に増加するかもしれません。紫外線に当たると日光斑というシミができます。このシミの1部が有棘(ゆうきょく)細胞がんや基底細胞がん、あるいは悪性黒色腫(メラノーマ)などに変化することがあります。
 有棘細胞がんの前駆病変として日光角化症があり、これが最近、増加しています。基底細胞がんはもともと露出部位に多い皮膚がんです。悪性黒色腫に変わる割合は少ないのですが、悪性度は大変高く、命取りになります。
 紫外線を予防するには、過度の日光浴を避けること(紫外線の量の多い11時から13時ころは避ける)、山や海に行く時は日焼け止めを使用すること(化粧を濃いめにすることもよい)。また、プールや海水浴で5分くらい水につかると紫外線の感受性が高まってきます。塩水は日焼けを促します。また、油っこい食べ物、アルコール、甘いものの取り過ぎは皮膚を弱くします。日光に当たったら、その後の手入れもお忘れなく。
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日本肝臓学会がこのほど、肝がん撲滅を目指して初の「肝がん白書」を発行した。肝がんはそのほとんどが、肝炎ウイルス感染が原因で起きる。ということは、肝炎ウイルスを持っている人に的を絞れば肝がんの撲滅は可能ということだ。肝がん白書作成の中心メンバーで、日本肝臓学会幹事の清澤研道信州大学教授に、日本の肝がんの特徴や予防などについて聞いた。


Q.肝がん白書発行のねらいは?

A.近年、わが国では肝がんの増加が著しい。特に働き盛りの年代に多く、社会的な問題です。日本で肝がんが増えている背景には日本特有の社会事情があるのではないか、ということで肝がん撲滅のキャンペーンを張ることになりました。社会全体で対策をとれば、肝がんはわが国において予防可能だと思うからです。今回発行した白書は、官庁や医師会をはじめ各種医療関係者、報道機関等に配布したり、5月末の「肝臓週間」での啓発活動の一環として、各地で行う肝臓病相談会で利用します。


Q.肝がんとは?

A.肝臓には人体の化学工場と言われるくらいにいろいろな機能があります。また、肝臓は再生力が強い臓器です。再生することは一般的にはよいことなのですが、その一方でがん化につながるのです。肝がんには、肝内胆管上皮から発生する肝内胆管がんもありますが、90%が肝細胞ががん化する肝細胞がんで、ここでいう肝がんはこの肝細胞がんと思ってください。
 がん化のきっかけは肝炎ウイルスの感染が最も多い。日本では90%以上が肝炎ウイルスによるもので、その他に、カビのアフラトキシン、肝臓に鉄が沈着してできるケースもあります。ウイルスのタイプとしては、B型、C型肝炎ウイルスが多く、日本では特にC型が多い。B型は、母から子へと感染して、その子が成人する過程で慢性肝炎、肝硬変、肝がんとなります。だから家族集積性が強い。だいたい40歳後半から50歳にがん発症のピークがある。一方、C型は母子感染が2%くらいと少なく、一般的には成人して輸血などで感染し、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変という経路をたどり、50歳後半から70歳ぐらいで、肝がんになります。B型肝炎は成人で感染すると急性肝炎を起こしますが、たいていは治癒します。


Q.今、なぜ肝がんなのですか?

A.厚生省の統計によると、日本人の死因の一番はがん。なかでも肝がんは昭和50年ごろから急激に増え、年間3万2千人が死亡。年齢は圧倒的に50歳から65歳の働き盛りが多いです。わたしが大学を卒業した1967年ころには、肝がん患者は信州大学の病院では年間に数人の珍しい病気でしたが、今では50人から60人。B型肝炎から肝がんになる患者数は昔も今も変わりはなく、C型が増えています。
 世界的には、人口10万人あたりの訂正死亡率で比べると、日本、韓国、中国での肝がんによる死亡率が高い。欧米ではたいへん少なく、先進国のなかでは日本は非常に高い。香港や台湾、中国ではB型肝炎による肝がんが圧倒的に多いのに対して、日本ではC型が肝がん全体の80%と多いのが特徴。これは、ヨーロッパではイタリアが日本に似ています。しかし、最近ではアメリカでも肝がんが増えているというリポートが出ており、C型肝炎が原因といわれています。だから「エイズの次はC型肝炎」と言われ莫大な研究費が投入されようとしています。
 1989年以前は、C型肝炎は非A非B型肝炎といわれていました。当時の輸血後肝炎のほとんどがこの非A非B型でした。わたしは当時、非A非B型輸血後肝炎は、感染後10年で慢性肝炎、20年で肝硬変となり、30年で肝がんになると報告していました。これが今では世界の常識になっています。


Q.日本の肝がんの特徴は?

A.日本では、肝炎ウイルスを持っている人が西にいくほど多く、西高東低となっています。日本人のC型肝炎ウイルスの陽性率は1〜1.5%。それが五十歳以上になると倍になり、60歳くらいでは4〜5%になります。肝がんの数は昭和50年ごろから増えており、今後20年くらいはさらに増え続けていくと考えられています。
 なかでも昭和ヒトケタ生まれの男性に多く、輸血経験者に多い。その理由として挙げられているのは、昭和16年から29年にかけてヒロポンが全盛で、同じ注射針で仲間うちで回し打ちをしたこと、そして昭和26年から43年まで売血制度があったこと、25年から35年にかけて結核の手術が全盛で輸血を受けた人が多いこと、などです。輸血が手術前の栄養剤代わりに使われた時代もありました。ライシャワー大使が暴漢に刺された後に輸血で肝炎になった事件をきっかけに、売血制度から献血制度になりました。
 俳優の渥美清さんも肝がんで亡くなったとある報道で知りました。そこで私が調べてみたところ、渥美さんは昭和ヒトケタ生まれ。26歳で結核の大手術をしています。このときに輸血がされたのでしょう。亡くなったのが68歳だから、輸血からがんになるまでに30数年かかっています。がんになりながら映画「男はつらいよ」の撮影をこなしていた、ということです。ライシャワー大使は肝がんになるまでに26年かかっています。日本においては渥美さんのように昭和ヒトケタ生まれの多くの人が社会の犠牲になったといえるでしょう。
 治癒するとニ度とかからないというのが、多くのウイルス感染症の特徴ですが、C型肝炎ウイルスは、表面の膜たんぱくの遺伝子が次々と変異して免疫からの攻撃を逃れてしまうのです。このためC型肝炎ウイルスには有効なワクチンがまだ開発されていません。


Q.肝がんの予防、治療の現状は?

A.かつては輸血が感染の一番の原因でしたが、売血制度が献血制度に代わったり、肝炎ウイルスのスクリーニングがされるようになったため、輸血で感染する人は今ではほとんどありません。医療機関でもディスポーザブルの注射針を使うようになっています。最近、覚醒剤が蔓延しているので、この点についての啓発も大切です。
 C型肝炎に対しては、インターフェロン療法があります。この治療でウイルスが消える人と消えない人がいます。C型肝炎ウイルスには10数種類の型がありますが、インターフェロンが効く人は、その中の2型の人で、ウイルスの量が少ない人も効きます。そういう患者にはインターフェロン治療を受けることを積極的に勧めています。しかし、効かなくても発がん率が下がる傾向があり、若い人でC型肝炎の人は一度は治療を受けてみたらよいと思います。日本では35〜40%の人が著効となり、ウイルスがなくなって肝炎が治る。しかし、効かない人も60〜65%もいることを考えなくてはいけません。
 最近、岐阜大学の研究チームが、がん細胞を正常細胞に変える作用のある非環式レチノイドというビタミンの誘導体を、肝硬変の患者に使えないかという研究を進めています。私たちは、がんの再発を減らす薬剤として使えないかと期待しています。肝がんの早期発見には定期的に腫瘍マーカーを測る、腹部エコーやCTなどをすることも大切で、手術やエタノール局所注入などの治療により5年生存率も上がっています。アルコールと肝がんとの関係については、アルコールを飲んでいると、ウイルスの数が増える印象があり、結果として肝がんになる期間が短くなります。アルコールが発がんに影響を与えているかもしれない、と思っています。このことからC型肝炎の患者さんにはお酒を飲まないよう指導しています。
              (健康ネットより)
昭和56年以来、がんによる死亡が脳卒中を抜いて第一位となり、今後も増え続ける傾向にあります。

 この恐しい病気であるがんは、からだのいろいろな部分に発生します。

 今、胃がんや子宮がんは診断や治療の技術の進歩によって、死亡率はかなり減ってきています。しかし、肺がんは逆に増えています。

 肺がんは、自覚症状が少ないこともあって、手遅れとなるケースも多いのです。

 肺がんが増えている原因は一通りではなく、たばこや大気汚染など複雑な理由がからみ合っているものと考えられます。

 肺がん全部ではありませんが、その半数位は、たばこと関連があると考えられています。たばこを1日50本以上吸う人は、吸わない人に比べて、肺がんによる死亡の危険性が8.6倍も高くなり、15本から24本の人でも5倍になるという報告があります。

 たばこを吸いはじめた年齢との関係では20歳前から吸っている人は、30〜34 歳の間に吸いはじめた人に比べて肺がんによる死亡の危険性は3倍以上になり、吸わない人に比べて5.5倍にもなっています。その他の原因としては次のようなものが考えられています。

 都会では、車の排気ガスや工場の煤煙などによる空気の汚染、また、クロムやニッケルなどの鉱山て働く人たちにも肺がんが多いといわれています。では、肺がんによる死亡を減らすためにはどうしたらよいでしょうか。

 肺がんの予防には、まず一次予防といって、肺がんの原因を取り除き、肺がんにかからないようにするという方法があります。先程もいいましたように、肺がんの半数以上はたばこが原因とされていますから、一次予防の観点から、禁煙が特に重要であることがおわかりいただけるでしょう。

 次に、二次予防は、肺がんを早期に発見してこれを治療するという方法です。肺がんがまだ大きくない早期がんの状態で発見する最も良い方法は、定期的に検診を受けることです。

 一部の地域では、すでに肺がんの検診を行っており、早期発見に効果をあげています。

 具体的に数字を示しますと、ある地域では、検診を受けた人10万人につき、50 人に肺がんがみつかり、そのうち半数は早期がんの状態でした。この人達は治療を受け、よくなってるということです。

 はじめに、肺の構造とその働きについて簡単に説明しましょう。

 肺は、大きく分けて、気管、気管支、肺胞の三つからできています。気管から太い気管支に分かれる部分を肺門といい、その先の細い気管支から肺胞に至る部分を肺野末梢部といいます。

 肺の働きは、全身から戻ってきた血液から二酸化炭素などの不用な物質を取り除き、酸素を与えてきれいにし、再び心臓を経て全身に戻すということです。つまり、汚れた血液をきれいにするのが肺の役目です。

 次に肺がんについて説明しましょう。肺がんは一般にはその空気の通り道である気管支に多く発生しますが、肺胞にできる場合もあります。

 肺がんはそのできる場所によって、大きく2種類に分けることができます。一つは、肺門部肺がんです。これは太い気管支の入口にできるため、心臓や骨と重なってしまい、胸のX線写真では発見されにくく、喀痰の細胞診や気管支ファイバースコープで発見されます。二つ目は、肺野末梢部肺がんで、気管支の末梢や肺の奥にできるため、胸のX線写真で比較的よく発見されます。

 肺門部肺がんは、がん細胞のタイプでいうと扁平上皮がんと呼ばれるタイプが多く、たばこによる影響が大きいといわれています。このがんの場合、半数位の人で早期に血痰、咳などの自覚症状がみられます。その他の自覚症状として、1 ヵ月以上続く胸の痛み、発熱、肩こり、倦怠感などがみられることもありますが、最も重要な徴候はやはり血痰です。したがって、血痰がある時は肺門部の肺がんを疑い、検査をしてもらわなければなりません。また、肺門部肺がんの早期発見のためには、検診などで喀痰細胞診を受けることが必要です。

 一方、肺野末梢部肺がんは、肺の奥の方にできるがんですから、たばこの影響は少ないといわれています。このがんはやっかいなことに多くは肺の血管の中に入って転移しやすいという特徴があります。一般に自覚症状は少なく、胸のX 線写真によって発見されます。

 これまで説明しましたように、肺がんは自覚症状が少ないなどの理由により、発見が難しく、死亡率が高いがんてすが、早期に発見できれば80%から90%までも治ることが分かってきました。特に、肺門部の早期肺がんであれば、90%以上治るとされています。

 この点、わが国の肺がんの診断技術は世界的にみても高いレベルにあります。かつて、肺結核が多かったせいもあって、胸のX線写真の撮影や読み取りの技術が進んでいますし、喀痰検査や、気管支ファイバースコープによる検査など、精度の高い技術も進歩しています。

 それでは、ここで今回老人保健事業に導入された、肺がん検診について説明しましょう。

 肺がん検診の対象は、満40歳以上の地域の住民の方です。

 検査の項目は、胸のX線写真の検査と喀痰細胞診ですが、老人保健事業では胸のX線写真は、結核検診などで撮影されたものを利用することになっています。したがって、結核検診とは別に肺がん検診としてX線写真を撮るということは通常ありません。

 胸のX線写真は肺がんの発見に向けて、読み落としのないよう、2人以上の医師によって別々に注意深く読まれます。それでも肺がんかどうかがはっきりしない写真については、以前の検診で撮影された写真と見比べます。このように写真一枚一枚を丹念にチェックすることによって、ちょっとした変化からもがんをみつけることができるのです。

 また、喀痰細胞診は、肺がん検診の受診者全員に行われる検査ではなく、50 歳以上でたばこをよく吸う人とか、40歳以上で最近6ヵ月以内に血痰のあった人など、その対象を絞って行われることになっています。

 喀痰の採り方は、朝、歯をみがく前に口をすすぎ、深呼吸を数回、から咳を数回して気管支を刺激し、咳払いといっしょに肺の奥から痰を出します。

 どうしても出にくいときは、冷たい空気を思いきり吸い込むとか、洗面器に熱湯を張り、その蒸気を吸い込んで大きく咳込んでみるとよいでしょう。

 胸のX線検査、喀痰細胞診などの結果を総合的に判断して異常が認められた人は、医療機関で精密検査を受けることになります。

 肺がんはその初期には自覚症状が無いことが多く、自覚症状が現れたときには、すでに進行して手遅れというケースが多いようです。

 したがって、自覚症状の有無にかかわらず積極的に肺がん検診を受けましょう。

 すすんで肺がん検診を受け、たばこを吸っている人は禁煙を実行することによって、がんの不安をなくし、明るく、豊かに暮していきたいものてす。


女性のがんである乳がんと子宮がんは、他のがんに比較して、若い年代から始まる傾向がありますので、40才以上の全国民が対象である健康診査のがん検診でも、これらのがんは30才以上が対象となっています。欧米では、乳がんは患者発生数および死亡者数の両面で最多であり、しかも50才代からの発見率が高いため、米国では50才からのマンモグラフィーの受診が、健康診断として臨床予防医学の面から推奨されています。
 健康診断の乳がん検査としては、先ず問診と乳房触診と視診が行われます。これに超音波乳房検査や低管電圧による軟X線をもちいる乳房撮影(マンモグラフィー)検査が、二次精密検査として行われます。しかし、主要な検査である乳房触診は、感度および特異度が低く、正確な診断が難しいため、最近では超音波乳房検査やマンモグラフィーが、一次検査に加えられて実施されることが多くなっています。
 図は、厚生省の人口動態統計で、乳がんによる死亡者数と死亡率の年次推移ですが、年々増加していることが分かります。
 以上のような検査で、乳がんの疑いがもたれるしこりが認められ、良性か悪性かの鑑別が難しい場合は、しこりに針を刺して細胞をとって、顕微鏡的に調べる吸引穿刺針細胞診が行われることがあります。また、場合によっては局所麻酔を行い、しこりを摘出してがんか否かを調べることもあります。
 乳がんの危険因子としては、年齢が40才以上の女性、未婚なら30才以上、初産年齢が30才以上、閉経年齢が55才以上、肥満度が20%以上、良性乳腺疾患の既往者、乳がんの既往者、乳がんの家族歴を有する者などが挙げられています。乳がんは、自己触診と視診による発見が可能であり、早期発見が比較的容易であり、早期発見ができれば治療成績がかなり良いことが特徴であるがんです。しかも最近では、乳房を残して手術する乳房温存療法が行われることが多くなり、乳がん即乳房喪失という危険が大変少なくなってきています。しかし、発見が手遅れになりますと乳房温存療法が行えなくなりますので、毎月1回の自己検診法による乳房のチェックを習慣付けることが望まれます。
 自己検診は、生理直前の数日は避け、毎月1日を決めて入浴時に行うのがよいでしょう。異常を感じたら、すぐに乳腺専門の外科を受診して、心配ないか否かを診てもらうことが必要です。
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大腸がんは日本人のがん死亡者の12%を占め、今後その増加が心配されている。従来は病変に気が付いたときには手遅れの場合が多かったが、最近の医学の進歩により潜血反応やエックス線撮影などで初期に見つかり、手術で治療し、生存率も高くなった。しかし、治療よりも予防が大切であることはいうまでもない。
 大腸がんは食生活や運動との関連が強いことが判明し、予防可能な生活習慣病とみなすこともできる。とくに脂肪と食物繊維の長期摂取に留意することが必要である。

▼大腸の働き

 大腸は約1.5メートルであるが盲腸、結腸、直腸とに分けられる。大腸には小腸で吸収されなかった食物の残渣、すなわち食物繊維、ミネラル、水分などが到達する。ミネラルや水分はそのままの形で吸収されるが、食物繊維は100種類100兆個に及ぶ腸内細菌によってその一部が発酵され、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸や乳酸、コハク酸などの有機酸が生じる。短鎖脂肪酸のほとんどは吸収されて、宿主であるヒトの栄養源として利用される。結腸や直腸では便が形成されるが、その大部分は菌体である。

 しかし、あまり好ましくない腸内菌によってたんぱく質が腐敗したアンモニア、ニトロソアミン、インドール、スカトール、硫化水素などが作られる。また、肝臓で抱合された有害物が腸に排出され、やはり便に入って排せつされる。これら有害物が排出される前に一時的にしろ貯留されるので、大腸はどちらかというと有害成分によってがん化を受けやすい臓器といえる。

▼大腸がんとは

 日本人のがんは部位別にみると、圧倒的に胃がんが多かったが、近年では肺がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんなどが増えている。特に大腸がんが急速に増えており、胃がんが減少してきているのと対照的な消長となっている。大腸がんは女性よりも男性のほうがかかりやすく、加齢と共に罹患者が増える。

 大腸がんは隆起型と陥没型とがあり、前者はゆっくりと進行するが、後者は腸壁内層に食い込んでいくタイプで進行が極めて早い。

 最新の遺伝生化学の発展は目覚ましく、ヒトは誰でも大腸がんの発現遺伝子(k-ras)を持っていることが判明している。その遺伝子が発現しても進行を抑える抑制遺伝子というのがいくつも関与しており、そのすべてが異常をきたさないとがん死亡にはいたらない。しかし、遺伝的に大腸がんになる家系ではその抑制遺伝子のあるものが生まれつき異常であり、発がん遺伝子の変異とともにがんが多発することが知られている。

 このように誰でも大腸がん遺伝子は持っているが、その発現はすべての人に起こるわけではないので、個人の生活習慣の重要性が注目されることとなる。食事はとくに関連の強い因子として注目されている。   

▼食事因子と大腸がん

 食事や生活様式の工夫によって、完全とはいえないが、大腸がんの予防は可能でないかと考えられるようになってきている。基本的には有害なものを摂取しないことと、予防効果を有する食物因子を積極的にとることの2大原則である。

 有害因子としては、種々の発がん物質がある。普通の細胞をがん化させるものは遺伝子であるDNAに変異を起こすものであるので変異原物質と呼ばれる。昔から知られているものとしてソテツのサイカシンがある。これは摂取して、大腸に到達し、大腸内の酵素によって発がん物質に変り、大腸がんをつくるとされている。もっともソテツは飢饉でもないと食べないが、魚や肉の焼け焦げのなかにはニトロソアミンなど10種類くらいの発がん物質ができる。特にグルタミン酸が焦げてできるグルP1は大腸がんをつくる。実際には毎日大量の焼魚を食べないとがんはできないのでそれほど心配する必要はないし、ビタミンCを多量に含む大根おろしを一緒に食べるとニトロソアミンの生成を防ぐことも知られている。腐敗しているものにも発がん成分は多いようであるし、塩蔵食品も要注意である。

 脂肪は大腸がん発生と関連している確率が一番高いとされている。その理由として、脂肪を食べると消化吸収を促進する胆汁酸が肝臓で大量にでき、それが腸内微生物によって発がん物質に変化するとされている。あるいは不飽和脂肪酸が酸化されてできるフリーラジカルが遺伝子を傷つけるともいわれている。

 筆者らは日本人の過去50年間の脂肪摂取量と大腸がん死亡率との関係を調べたところ、脂肪摂取量は16年の時間差で死亡率との間に非常に強い正相関があった。他の疫学調査においても同様の成績は多数提出されており、油脂のとり過ぎは問題である。ほどほどの摂取量にする必要がある。

 一方、前記の調査において食物繊維摂取量との関連を調べると、25年もの時間差で大腸がん死亡率との間に最も高い負の相関を示した。これはがん年齢の45歳になった時点で20歳頃の食物繊維摂取量の抑制効果がもっとも強く現れることを意味している。食物繊維は水に溶けるタイプと溶けないタイプのものがあるが、後者の影響のほうが強いとされている。つまり、セルロースの多いフスマでできた朝食用のシリアルや、黒パン、全粒パン、玄米などが抑制作用が強いことになる。厚生省では食物繊維は一日に20〜25グラムとることを勧めている。

 アメリカを中心に最近では野菜や果物に多いポリフェノールなどの抗酸化物質が脂肪の酸化や遺伝子の変異を防ぐことを報告しており、今後の研究の進展が待たれている。   

▼運動と大腸がん

 運動を日常行っているヒトに大腸がんが少ないことが多数の疫学調査から明らかになっている。その理由はまだほとんど解明されていないが、運動による排便促進が影響したり、ホルモンとの関連も示唆されている。

 いずれにしろ、栄養や運動のような生活習慣と大腸がんとの関連があることは事実であり、がんを防ぐ一次予防の可能性があることを強く物語っているといえよう。

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