体の知識

ここでは、 体の知識 に関する情報を紹介しています。
欧米人はほとんどの人が二重瞼ですが、東洋人は人によって一重瞼だったり、二重瞼だったりします。この違いの一番大きな要因は、眼瞼挙筋(がんけんきょきん)(図参照)の皮膚へのつき方の違いにあります。眼瞼挙筋とは、瞼を上に挙げる作用をする筋肉で、主に上瞼の端にある瞼板(けんばん)にくっついていますが、この部分から多数の細い繊維を出して皮膚にもくっつきます。これらの繊維が皮膚にきっちりついていると、瞼を挙げるとき、眼瞼挙筋が縮み、皮膚を上方に引っ張るので二重瞼になり、ついていないと瞼を挙げても眼瞼挙筋に作用しないので一重瞼になるというわけです。
 このほかに、瞼の脂肪(眼窩脂肪織(がんかしぼうしき))や、皮膚の厚みなども関係してきます。東洋人は欧米人に比べて、一般に眼窩脂肪が多いので、腫れぼったい目になり、皮膚も多少厚く硬いので、折り返りにくく、一重になりがちなのです。
 以上のように一重と二重は、解剖学的には眼瞼挙筋のつき方によるもので、生まれつきのものですが、高齢になったり大病をしたりして眼窩脂肪織がなくなると、奥二重になったり、落ちくぼんだ二重瞼になったりすることもあります。
 すっきりした二重瞼にしたいという人は、特に若い女性には少なくないようです。これは、よりよい生活を望む、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)ということからも、決して悪いことではありません。ただ、従来「美容整形」というアングラ的な手術が多く行われ、間違いもあったり、受ける側にも後ろめたさがつきまとう傾向にあったのは残念なことです。二重瞼の手術は、現在、形成外科の一分野である美容外科で扱います。大学病院でも、大病院でも形成外科で相談に応じてくれますので、信頼できる専門医と、事前の話し合いを十分することが大切です。宣伝などにつられて、安易な病院選びは決してしないことです。
 手術の方法は数多くありますが、代表的なものは、切開法と埋没法です。切開法は皮膚が厚く、皮下脂肪、眼窩脂肪が多い人に向く方法とされ、瞼を切開して、これらを除き、眼瞼挙筋を皮膚につけます。
 埋没法は皮膚の上から針を刺して皮膚を挙筋につける方法です。切開法のように傷もつかず、仕上がりも自然で、はれも4〜5日でひくため、現在では約80%がこの方法をとっていますが、欠点は糸がはずれて元に戻ってしまうことがまれにあることです。埋没法は俗にクイック法とも呼ばれているようですが、腫れがないわけではないので、術後は安静にし、瞼の化粧もしばらくは避けるなどの注意が必要です。切開法では、さらにこうした注意をしっかり守らなければいけません。
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私たちは、爪を切るときやマニキュアをするときなどに、毎日なにげなく爪を観察しています。ですから、爪の色や形がおかしくなったり、硬さが変わったりすればすぐに気がつくはずです。
 爪にあらわれるいろいろな変化には、皮膚のしわのような老化現象のこともあります。また、爪自体の病気だけでなく、内臓の病気が爪の異常としてあらわれてくることもあるのです。爪は、ある意味では、その人の生活の年輪、生活史を表現しているもので、現在の健康状態をみる一つのめやすにもなるといってよいでしょう。
 それでは、爪のどのような変化は心配のないものか、どのような爪の異常が病気と関係あるのかを考えてみましょう。

爪の成長

 爪は、皮膚の表面の角質層が変化したもので、ケラチンという硬いたんぱく質からできています(生きた細胞は存在しません)。いわば皮膚の付属物です。
 人間は、動物のように爪を武器として使う必要はなくなっていますが、爪は敏感な指先を保護し、細かい手仕事をするうえで重要な役割をしています。

1 爪の構造と発育

 爪(正式には「爪甲(そうこう)」といいます)は爪母と爪床の表皮からつくられます。爪母とは爪の根元にある部分のこと、爪床とは爪の本体がのっている部分のことです。爪床の表皮は、爪の本体が指先に向かって伸びるとともに平行して移動していきます。このように爪は下の組織と密着しているので、簡単にはがれたり抜けることはありません。

・爪半月は未完成の部分
 爪の根元の三日月形をした乳白色の部分は、爪半月と呼ばれています。この部分は、爪がまだ完全にできあがっていない場所で、他の部分よりいくぶんやわらかく、爪床とも十分密着していません。このできたての爪をおおっているのが爪上皮(俗に“あま皮”という)です。

・爪ののびる速さ
 爪は、1日0.1mmから0.15mmのびるといわれています。爪ののびる速さはかなり個人差がみられ、また、その人の栄養状態などによっても異なってきます。手指のうちでは、親指の爪がもっとも成長が早く、小指の方に向かっていくにしたがって遅くなります。そのため、爪半月も、親指では大きく目立ち小指ではきわめて小さいのがふつうです。
 爪ののびる速度は、年代によっても違ってきます。幼児期から20歳ごろまでは爪の発育がよく、からだ全体の成長と関連しています。それ以降は、爪ののびかたは遅くなっていきます。

2 爪の色・形と健康状態のめやす

・健康な爪の色・形・硬さ
 爪の色(この場合は爪床までを含めた色調)は、爪の本体(爪甲)の透明度、爪甲と爪床の密着ぐあい、爪床表皮の厚さとか血液の流れの状態などによって左右されます。健常な場合は、光沢のあるピンク色に見えます。
 爪半月では、爪のできたての部分で、爪床との結合がゆるいので、透明度が高くなっています。そのため、爪床の色調の変化が敏感に反映されます。
 爪の硬さは、含まれる水分の量や、ケラチンの組成によって変わってきます。水分の保有量は先端にいくほど少なくなり、割れやすくなります。一般に、乳幼児では爪はやわらかく、弾力に富み、老人では硬く、もろくなります。

・爪半月と健康状態は関係あるか
 爪の半月が大きくはっきり出ていれば健康で、これが見えなくなると病気であるという説は、昔からよくいわれています。爪の半月がよく出ているかどうかは、だいたい生まれつきのものです。内臓病のある人でも爪半月が大きく出ている人もありますし、爪の半月が隠れて全く見えなくても健康な人はたくさんいます。爪の半月の大小は、病気のバロメーターとはならないので、神経質になる必要はありません。

・爪の変化や異常はどのようなときにあらわれるか
 爪の形や色の変化(異常)は次のようなときにおこります。

1 外部からの刺激をうけたとき
 圧迫あるいは外傷などです。

2 ほかに皮膚病があるとき
 その皮膚と同じものが爪の下におこって、爪が変形することがあります。

3 全身的な病気があるとき
 慢性の内臓の病気などがあると、爪に影響がでてきます。この場合の変化はすべての爪にあらわれてきます。
 それでは、以下に、爪の色、形の変化について、それがからだの健康状態とどのように関係するかをみることにします。

爪の色の変化

1 爪が白くなる

・爪甲の白い点は心配ない
 若い女性や子供で、いつのまにか爪にポツンと小さな白い点が出ていることがあります。爪がのびると、しだいに先端の方に移動していき、また、いつのまにか消えてなくなります。男性では比較的少なく、老人にもあまりみられません。
 これは爪甲自体におこる変化で、点状爪甲白斑といいます。爪が爪母でつくられるときに空気が入ったもので、病気とは関係ありません。ドイツの女性は、これを“幸運の白い星”といって、洋服が1枚ふえるとか恋人があらわれるといって、むしろ期待に胸をふくらませます。

・1〜2本の爪の先端が白く濁るのは水虫
 それまで異常のなかった爪が、白く濁ってくることがあります。指の爪の1本か2本に、白い線が先端から根元の方へ向かって進行してくるときは、まず爪の水虫です。

・爪全部に動かない白い帯かできるときは全身性の病気
 血液の異常をおこす全身的な病気があるときは、影響が指先にも及びます。この場合は全部の爪に同じ変化がみられます。貧血(ヘモグロビンが少ない状態)では、爪を透して爪の下(爪床)が白っぽく見えます。また、ネフローゼといって、血液中のたんぱく質が大量に尿中へ出てしまう病気では、爪半月に平行して2〜3mm幅の白い帯があらわれてきます。爪がのびても、白い帯は同じ位置にとどまっているので、爪甲ではなく爪の下の変化であることがわかります。

2 爪が黒くなる

・爪の黒い線はメラニン色素
 爪の根元に外傷をうけたりすると、しばらくしてから爪に黒いまっすぐな縦の線があらわれることがあります。これは外傷の刺激で、爪母の表面にある色素産生細胞のはたらきが一時的に高まり、つくられた黒い色素(メラニン)が爪甲の中に入りこんだのです。爪がのびるとともに先端から消えていきます。
 また、爪の根元とか爪の下にできたほくろ(メラニン色素のかたまりです)の中のメラニンが爪甲に取り込まれ、くっきりした黒い線ができることがあります。

3 爪が黄色くなる

 爪の発育がわるくなると、爪甲は厚くかたくなって、色も濁ってみえるようになり、爪の先端は爪床からはがれやすくなります。そして、爪床から離れた部分の爪は、黄白色に濁ってくるのがふつうです。

・爪のはがれた部分の変色
 なにか病気などの原因で、爪が特にはがれやすくなっている場合、爪甲剥離症と呼ばれます。爪の先端がはがれやすくなり、その部分の爪は、黄白色に濁って変色してきます。これがしだいに根元の方にひろがり、中ほどまで達するととまります。爪は根元でしっかり固定されているので、抜け落ちたり切れてなくなることはありません。原因として、甲状腺の病気(バセドウ病)や、カンジダ菌の感染症などがあります。
 また、爪のはがれやすい傾向は、多汗症の若い女性や水仕事をよくする職業の人にみられることがあります。

爪の形の変化

1 爪がスプーン状になる

 爪が、ちょうどスプーンのような形にそりかえっている状態です。生後1〜2年までの乳幼児では、ふつうにみられる生理的な現象で、病的なものではありません。小児期になると、普通の爪の形になっていきます。(ごくまれですが、これが成人期まで続くことがあります。この場合は、家族に同じような爪の人が多いものです。)

・成人では鉄欠乏性貧血に特徴的な爪の変化
 成人の場合には、このスプーン状の爪は、鉄欠乏性貧血の特徴的な爪の変化として、古くから知られています。先端の部分だけへこむ程度のものから、豆をのせられるほどのものまでさまざまです。爪母への血液の供給がうまくいかないためで、爪も灰白色に濁ったり厚くなったりし、ささくれだった爪になります。鉄欠乏性貧血の人すべてにみられるわけではありませんが、中年の女性におこりやすいようです。
 鉄欠乏性貧血は、自覚症状のとぼしい病気なので、この爪の変化は、貧血状態におちいるときの、ひとつの目安として重要なものといえます。

2 爪に横の溝ができる

 爪(爪甲)に、横の線や溝ができるのは、けっしてめずらしいことではありません。溝の形や程度はまちまちで、ときにはくっきりした細い線だけのこともあり、やや深い溝になることもあります。
 爪がのびるとともに先端へと移動していき、やがて消失します。

・爪母に強い刺激が加わり、一時的な栄養障害がおこったもの
 爪の横溝は、なにか爪の発育を押えるような刺激が爪母に加わったときに生じます。つまり、爪の一時的な栄養障害のあらわれなのです。加わる刺激が強いほど、また、加わる時間が長いほど、溝は広く深くなります。刺激をうけたあと、数週間たってから溝ができてきます。
 もっともよくみられるのは、高熱をだす急性の病気のあとです。慢性的な全身の病気(糖尿病など代謝障害の病気に多い)が悪化したあとに生じることもあります。
 手の湿疹など皮膚の病気が爪母のあたりまでひろがったときにも、横溝がみられます。
 また、女性では、あま皮をけずるなど爪の手入れの失敗で、爪母を傷つけたりすると、浅い横溝ができてきます。

3 爪に点状のへこみができる

・爪母の小さな範囲になにかさしさわりが生じたとき
 爪に、針でポツンと穴をあけたような小さなへこみができることがあります。これは、爪甲が爪母でつくられるときに、ごく小さな範囲でさしさわりがあったためと考えられます。
 健康な人にもよくみられます。爪の成長とともに前方へ移動、消えてしまいます。

・ほかの皮膚の病気と関連あるへこみ
 円形脱毛症のとき、よく爪に点状のへこみがみられますが、この場合は、横一列に規則正しく並んでいるのが特徴です。横溝としてあらわれることもあります。円形脱毛症の原因はまだよくわかっていませんが、髪の毛も爪も皮膚の角質層の変化したものですから、栄養障害による変化が同時におこったとも考えられます。
 爪の点状のへこみは、多くは無害なものですが、もしいちどにたくさん生じたり、くり返しできる場合は、皮膚科の専門医に相談してください。

4 爪に縦線ができる

・老化現象のひとつのあらわれ
 爪甲をよく観察すると、爪全体に縦に走る細い線が見えます。もし、これがはっきり認められたら、残念ながら、老化現象と考えなければなりません。爪の縦の線は、加齢とともに数も、太さも増していきます。これは、内臓の病気とか、栄養状態とは関係ありません。

・爪の油分や水分の補給にも注意
 若いころはつるつるして発育もよく、柔軟だった爪も、老人になるとともにのびがわるく、厚くなっていきます。そして、爪甲と爪床の間に角質物質がたまって、爪がもちあがるようになります。ときに、爪が縦に裂けたりすることがありますので、油分や水分の補給にも注意しましょう。

爪の衛生・美容と爪の健康

1 爪の衛生

・足の親指の圧迫による「さし爪」
 幅の狭い靴や、かかとの高いハイヒールで足の親指を圧迫しつづけていると、爪の両端が皮膚にくいこんできます。これを「さし爪」といいます。長時間の立ち仕事とか、下肢の肥満も誘因になります。
 爪がくい込んだ部分から細菌の感染をうけやすくなるので、足の清潔に気をつけましょう。なによりも「さし爪」をおこさない注意が大切です。

・爪の清潔と手入れ
 一般的には、爪は皮膚と同じ手入れを心がければよいでしょう。清潔を心がけ、また、水仕事のあとにはハンドクリームを爪にも塗り、油分を補給します。
 爪は長くのびると汚れたり割れたりしやすくなります。深爪しないよう気をつけ、短めに切りましょう。深爪は、その人の“くせ”のこともあります。
 よく爪のまわりに“ささくれ”ができます。これは皮膚の水分の保有能力が欠けているためです。むりにむくと、よい皮膚が一緒に取れてしまい、細菌やかびが入りやすくなります。はがれた部分をていねいに、ハサミで切るようにしたほうがよいでしょう。

2 マニキュアと爪の健康

 マニキュアをすることは、その人の趣味の問題ですから、善悪は問いません。しかし、ときにその結果として、爪にいろいろな影響のあることを忘れないようにしてください。

・ネイルラッカーでかぶれることも
 現在市販されているネイルラッカーは、爪甲に被害をあたえることはないようです。ただし、人によっては、くり返し塗っているうちに、爪の周囲の皮膚にかぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)をおこすことがあります。

・除光液により爪が層状に割れる
 除光液をひんぱんに使っていると、爪甲の先端の部分が、ちょうど雲母をはがすように、層状に割れてくることがあります。爪を長くのばしている人におこりやすいようです。これは、除光液(アセトン)で爪甲に乾燥と湿潤を急速にくり返していると、爪の先端部が水分不足になるためです。対策としては、爪を短く切ること、ネイルラッカーを落としたあとは、油性の強いハンドローションかグリセリンを塗るとよいでしょう。

・爪の手入れの失敗で爪が変形することがある
 爪を長くみせようとして、よく根元のあま皮を押しつけたり、けずり取ったりしています。しかし、このときに爪母の部分をくり返し傷つけると、のびてきた爪には横溝ができたり、爪がでこぼこになったりします。変形した爪にいくら美しい色を塗っても、見映えはしません。
 健康な爪は、きれいなピンク色をしています。この美しさを生かしたいものです。

おわりに

 からだのどこかに異常があると、それが爪に反映する場合があることを述べました。
 爪の形や色に一喜一憂するのは考えものですが、爪の観察が、からだ全体の健康に気を配るきっかけとなれば幸いです。

現在、わが国で抜け毛、薄毛、脱毛に悩みをもつ人は700万とも800万ともいわれます。昔から「髪は女の命」といわれてきましたが、近年は男性にも髪の毛を必要以上に気にする人が増えています。そのため、毛髪に関するさまざまな情報があふれ、なかには明らかに誤った内容と思われるものもあります。美容のための処理が、逆に、髪の寿命を縮めている場合もあります。
 また、毛髪の問題というと、ややもすると首から上だけの話と考えがちですが、髪もからだの一部です。からだ全体の健康と無関係ではありえません。
 そこでここでは、誤った知識や処置のために髪をいためつけ、悩みが一層深くなったりすることのないように、髪の健康対策を考えることにします。

毛の一生 どのように成長し、生えかわるか

1 毛は皮膚組織の変形したもの

 毛は、外に出ている毛幹部と、皮膚の中に隠れている毛根部に分けられます。毛幹の外側は、鱗状に重なった薄い丈夫な膜(毛小皮:キューティクル)でおおわれ、有害物の侵入を阻止しています。
 毛根を包んでいるのが毛包(毛嚢)で、その内部では、血管から栄養補給をうけて毛母細胞が活発に分裂をくり返して毛の成育を行っています。

・毛幹部は生活力を失った組織
 毛母細胞は分裂して細胞の数を増やし、古い細胞は次つぎと上へ押し上げられ、角質(細胞が死んでできた硬いたんぱく質)となって毛幹が形づくられていきます。つまり、毛幹は、生活力を失った組織なのです。ですから、いちど傷つくと、自分自身ではそれを修復することができません。

・毛の主成分は硬たんぱく質:ケラチン
 毛は、爪と同じく、皮膚組織の変形したもので、主成分はケラチンと呼ばれるたんぱく質です。ケラチンとは、角質化した硬いたんぱく質のことを呼びます。毛のたんぱく質は約20種類のアミノ酸が結合してできています。アミノ酸のうち一部のものは体内でもつくられますが、何種類かのものは、外から食事として補給してやることが必要なのです。ですから、たんぱく質が極度に不足した食事をつづけていると、毛の成育にも影響します。必要なアミノ酸(たとえばシスチン)が不足すると、毛の強度が低下してきます。

2 毛の成長と休止、そして新生

・毛には一定の寿命がある
 毛は、ある期間(2年から時には7年以上も)成長をつづけたあと、その成長を止め、一定期間(ほぼ3か月)たって抜け落ちていきます。これを「毛周期」と呼びます。
 抜け落ちると、同じ毛包から新しい毛の芽が生まれ、再び成長していきます。人間の毛包の数は誕生時に決定されていて、出生後にその数を増すことはありません。日本人の頭毛は、約10万本といわれています。

・毛の成長期間・速度には差がある
 毛が成長をつづける期間は、個人差もありますが、性別、年齢、体調、栄養状態などさまざまな要因が関係してきます。成長速度は、1日0.35〜0.44mmとされています。

3 自然の抜け毛

 このように頭髪には、成長を止めて、生えかわる時期を待っている毛が、常に存在しているのです。毎日、抜け毛があるのは、むしろ正常な証拠といえましょう。寿命(毛周期)にしたがって抜け落ちる自然な抜け毛は、一般には1日60−80本程度なら正常範囲と考えられています。
 それよりも極端に多い抜け毛がつづいた場合が、脱毛症ということになります。

よくみられる脱毛としらが

 なんらかの病気が原因でおこった脱毛を、勝手に素人判断して処置していると、治るものも治らないで、とり返しのつかなくなることがあります。抜け毛が異常に多いと思ったら、早めに専門家(皮膚科医など)に診せて、原因を調べてもらいましょう。ここでは、一般によくみられる脱毛症の注意すべき点などについて述べておきます。

1 遺伝的体質による脱毛症:男性型脱毛症

 いわゆる若はげで、最近は女性にもみられています。額の生え際、あるいは頭頂部の毛がしだいに細くやわらかい毛にかわって薄手の状態になったり、短い抜け毛が多くなって脱毛したりします。薄手の状態のときにはまだ毛包は存在していますが、年齢とともに毛の数が減少していきます。
 原因は、遺伝的要因と、男性ホルモンの作用などが考えられていますが、脱毛のメカニズムは十分解明されていません。なお、このような脱毛症を美容上の目的で治療する場合は、健康保険の対象とはなりません。
 いったん脱毛すると元に戻ることはないので、現状維持に努めることが大切です。若はげの人は皮脂の分泌が活発なので、頭皮の清潔を保ち、毛根への栄養補給の目的でマッサージあるいは育毛剤などで血行の促進をはかります。

2 なんらかの原因による毛の栄養障害:円形脱毛症

 成長期にある毛が、なんらかの原因で栄養障害となり、毛根が萎縮して抜けてきます。突然、円形に1〜2か所の毛が大量に抜け落ちます。
 原因として、従来、一般にはストレス説が広く信じられてきましたが、専門家の間では定説とはなっていません。現在は自己免疫説(一種のアレルギー現象)など種々の原因が指摘されており、原因は不明というのが実情です。
 成人で、1か所のみの脱毛なら、放っておいても半年くらいで治ることが多いようです。専門家に相談してマッサージなど適切な処置をすれば、その期間が短縮されることもあります。

3 栄養不足による脱毛

 最近は栄養不足による脱毛もみられたりしています。拒食症や、肥満症に用いる断食・節食療法などで、極端な定エネルギー食品(低たんぱく質)となった場合には、毛は細くなり、ついには脱毛にいたります。
 また、美容のためのダイエットの影響で、毛はつやを失い、弾力性もなくなって、脱毛につながることもあります。からだの栄養状態は毛にも影響するからです。

4 しらが

 ふつうにみられるしらがは、毛根にある色素細胞の機能が低下したり消失したことが原因です。しらがの発生は男性で30歳前後、女性では35歳前後からとされていますが、個人差が大きいようです。抜いても同じ毛包から再びしらがが生えてきます。
 近年は、若くしてしらがになることが多くなったといわれ、その理由として生活様式とくに食生活の変化を指摘する人もいますが、その相関については定かではありません。このような機能低下によるしらがを根本的に治すことは不可能です。
 まれにですが、尋常性白斑(白なまず)が頭皮にできると、その部分の毛は白くなります。こちらは適切な治療で治る可能性があります。

美容と髪の健康

・美容のつもりが髪を傷めている
 美容のためにした処置で、また、まちがった手入れで、髪を傷めている人も多いようです。髪を傷める恐れのあるのは、パーマ、ヘアダイ、アイロン、ドライヤーなどです。

1 パーマ、ヘアダイと髪の健康

・薬液の浸透による毛への影響は避けられない
 強い薬液を毛の内部に浸透させて化学変化をおこし、直毛に思いどおりのウェーブをあたえたり、毛を染めたりするのですから、毛に影響を及ぼすことは避けられません。パーマやヘアダイ(染毛剤)を不注意に繰り返していると、裂け毛や枝毛、あるいは断毛をおこしてきます。

・注意したいこと
 ひとつの目安として、パーマは2か月に1回を限度とすること、ヘアダイは少なくとも1か月以上の間隔をおくことが望ましいといわれています。その際も、あとの手入れをきちんとすることが大切です。
 また、パーマとヘアダイとを短期間に続けて行うことは、毛の損傷を倍加させます。先にパーマをかけ、1週間以上の間隔をあけてから毛を染めるようにしないといけません。

2 アイロン、ドライヤーと髪の健康

 アイロンあるいはドライヤーでも、使い方を誤ると毛を傷めます。

・髪の毛は熱や乾燥に弱い
 アイロンでは、180度の高温で用いる場合、または低温でも毛をはさんでいる時間が長い場合(たとえば150度で20秒間)には、加わる熱によって毛の痛みが激しくなります(毛の成分のたんぱく質が変性する)。
 ドライヤーで極端な乾燥をくり返していると、毛小皮が傷んではがれやすく、枝毛の原因となります。
 もともと髪の毛は、熱や乾燥には弱いのです。

・効果的な使い方
 アイロンの効果も得られ、毛を傷めないためには、170度で3秒間程度はさむのがよいという報告があります。
 ドライヤーを使うときは、風量を多く、勢はひかえめに、髪との距離は少なくとも20cm以上離し、毛が乾燥しすぎないように心がけます。

3 ブラッシングと髪の健康

 従来、女性の髪を美しく健やかに保つには、毎日、毛や頭皮を何十回でもブラッシングし、摩擦するのが最もよいとされてきました。そして、洗髪回数を多くすると抜け毛が増えるので、むしろひかえたほうがよい、というようなこともいわれてきました。

・過度の摩擦による毛の損傷
 しかし、ブラシで強い摩擦をくり返していると、毛小皮がはがれ毛を傷めるおそれがあります。特にパーマやヘアダイなどで既に傷んでいる毛の場合は、裂け毛、枝毛を生じるのでブラッシングは禁物です。ブラッシングは、整髪程度にとどめ、ヘアクリームなどを塗って、できるだけ摩擦を軽くするように努めます。

髪の清潔

1 洗髪

 頭皮は、汗、皮脂、フケ、あるいは整髪料などにより、常に汚れやすいものです。不潔にしておくと微生物が増殖して、頭皮だけでなく、髪の健康をそこなうことになります。洗髪をおろそかにはできません。

・自分の髪質に合ったシャンプーを選ぶ
 現在使われているシャンプーは、中性の合成洗浄剤が主流です。これらの製品は、洗浄力が強く、水によく溶け、使用感もよくなっています。ただ、その強い洗浄力(脱脂力)のために、必要以上に皮脂をとりすぎる点が問題といえます。そこで最近では、シャンプー自体に油分を配合したものが多く出回っています。しかし、油分の除去を目的としたシャンプーに油分を添加しても、その効果にはおのずから限界があります。
 シャンプーは、自分の髪質に合ったものを選ぶことも大切です。油性か、乾燥性か、あるいはパーマで傷んだ髪など、それなりの目的に適したシャンプーが市販されています。

2 シャンプー後の処置

・十分なすすぎと油分の補給
 洗髪後はシャンプーが残らないよう十分にすすぎをすることが大切です。
 失われた油分を補給する目的で、リンス剤およびトリートメント剤が使われます。パーマやヘアダイをしない人、適度な油性の髪質の人ではリンス仕上げで十分です。
 トリートメント剤として最もよいのはヘアクリームです。市販のトリートメント剤には、毛の成分(ケラチン)に比較的強く結合する物質を配合したものがあります。特に損傷の激しい毛髪の場合は、こうしたものを塗ったあとスチーマーで加熱するなどの処置も効果があります。

3 “モーニングシャンプー”について

 近ごろ、若者のあいだに“モーニングシャンプー”(“朝シャン”)が流行しています。その是非については、さまざまな角度からの議論があり、賛否いずれともいいがたいものがあります。
 シャンプーの回数など髪の健康面に関しても、その考え方は一定していませんが、一般論としては次のように考えられます。
 毎日シャンプーすることは特に悪いことではないが、それを朝にするために時間が不足して、朝食がとれなくなるようでは問題です。また、すすぎが不十分となりやすいため、えりくびなどにシャンプーが残って湿疹の原因になるおそれがあります。
 シャンプーの回数は頭皮の状態によって大きな差があります。脂っぽい場合には毎日シャンプーしてもよいが、乾燥しやすい人の場合は一日おきに洗髪するようにします。湿疹やかぶれなどのあるときは医師の指示に従います。

おわりに

 髪にいきわたる栄養が不足していれば、髪だけをどんなにていねいに手入れしても髪の健康は保てません。動物性・植物性さまざまの食品をバランスよく組み合わせ、多くの種類のたんぱく質をまんべんなくとり、内からの栄養補給をはかることが大切です。
 そのうえで、正しい手入れをして、外から髪を保護してやります。洗髪で抜け落ちるのは、自然の抜け毛です。
一本の毛を惜しんで洗髪を怠ると、髪の健康はかえってそこなわれます。
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脳は思考、記憶など高次の精神機能を司るほか、各種の運動、動作の調和、自律機能の調節など生体内で極めて重要な役割を果している。
 また、近年人口の高齢化が進む中で老人性痴呆が社会的に注目されており、そういった状況の中で脳に関する関心が高まってきている。
 そこで、このコーナーでは、脳について簡単に話してみたい。
 脳の重量は、一般的には成人では約1,300グラムである。脳の重量を測定することで脳の萎縮(体積の減少)の程度を知ることができる。脳の萎縮は、生理的な加齢現象として認められるが、病的なものとしては痴呆の際にも認められる。
 ある調査によれば、60歳を過ぎると脳の重量が50〜150グラム(壮年者の約5〜10%)減少するとの結果が得られている。
 脳の表面を見ると、脳回と脳溝とが見られる。脳が萎縮すると、脳回がせまくなり脳溝が拡大する。
 脳を顕微鏡で見ると、神経細胞、グリア細胞、血管などが見られる。神経細胞の数は、140億個といわれており、生後数が増加することはなく、20歳以降は1日10万個ずつ減少していくという報告もある。この神経細胞は、胞体、軸索、樹状突起よりなっている。それぞれほかの神経細胞と短い間隔を隔ててシナプスと呼ばれる連絡をつくり、情報伝達を行う。グリア細胞にはいくつかの種類があり、脳の修復や清掃の働きをしているアストログリア、髄鞘形成はオリゴデンドログリア、清掃や免疫系の働きは、ミクログリアが担うなど役割分担がある。

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急速に進む情報化や国際化の中で、職場や家庭でさまざまな健康上の問題が浮かび上がってきました。報道機関や金融機関などの、かつては考えられなかったような深夜交代勤務、官公庁などの深夜残業、明かりの消えることのない都会の繁華街、24時間営業のコンビニエンスストア、家庭の明かりは徹夜の受験勉強、それとも衛生放送テレビ視聴、これらは最近ではあまり珍しくなくなってきました。また、海外旅行者1200万人といわれる時代、皆が競ってジェット旅客機に乗って世界各国に出かけます。かつて、日が昇ると働き、暗くなれば家に帰って休むという生活をしていた私たちの祖先が、どこかで驚異の目で眺めているかもしれません。でも私たちはそのために体調を崩し、ときには働き過ぎが過労死や自殺につながって、心身の健康上大きな問題として取り上げられるようになりました。
 このような問題は、昼間活動して夜間に休息をとるという、ごく当たり前の生活リズム、生体リズムを崩したことが原因です。

生体リズムとは?

 生体リズムとは何でしょうか。
 健康な生活をしているときには、昼間部屋を暗くして布団に入ってもなかなか眠れないことはよく経験することです。これはからだの時計が昼と夜をはっきり区別して、夜に眠って昼間には活動するようにプログラミングされているからです。
 このようにからだには睡眠と覚醒(かくせい)だけでなく、体温や血圧といった自律神経系も昼間は活発に活動し、夜は活動状態が穏やかになるという1日のリズムがあります。また、内分泌ホルモンにもリズムがあります。昼間活動しているときのさまざまなストレスに耐えるための副腎皮質ホルモンや、夜眠っているときに成長や細胞の新生を助ける役目をしている成長ホルモンなどの分泌にもリズムがあり、1日のどの時間帯に分泌されるかが決められています。従って夜に寝て、昼間に活動するということは、健康な生活を送る上で最も基本的なことなのです。
 そのため、急に昼夜を逆転させた場合には、体温や内分泌ホルモンは相変わらず昼夜逆転以前のリズムを刻んでいるので、私たちのからだには奇妙な現象が起こります。夜起きて働いていても頭がぼんやりしたり、仕事上のミスが多くなったり、深夜運転では死亡事故が多発します。これは夜にからだを起こして動いていても、機能が眠っているからです。
 このような働きは、人や動物の場合、脳にある生体時計によってコントロールされています。人は大昔から夜には眠って昼間活動するのに都合のよい時計を持っており、夜間の活動には向いていないのです。
 それでは夜行性の動物がいるのはどうしてでしょうか。それは、夜行性の動物は厳しい生存競争の中で昼間活動して夜寝ているとえじきにされるので、夜活動する生活リズムを獲得したためなのです。
 このように、人を含めて多くの動物は定められた1日のリズムに従って活動します。ところが人は電気が発明されたことによって、夜にも活動できるようになりました。しかし、人のからだのリズムは、数百万年という人類の歴史の中で長い年月をかけて備わったもので、急には変えられないということを思い返す必要があります。

からだの時計は25時間

 さて、からだの時計はどこにあるのでしょうか。動物についての最近の研究から、それは脳の視床下部にあるらしいということが分かってきました。視床下部には満腹感や空腹感などによって食行動を調節したり、性行動の調節、血圧や体温の調節に関係する自律神経中枢など、生きていくために必須の働きを支配する中枢があります。この中枢によるリズム調節機能を「生体時計」といい、時計の針がある一定の時間帯に来ると、自律神経系の活動を高めたり、副腎皮質ホルモンに指令を送り、インシュリンを多く分泌させて、糖分摂取の準備をしたりするのです。
 それでは、このような生体時計は24時間をどのように決めているのでしょうか。読者の中には朝寝坊は得意だけれど、夜早く床に入ってもなかなか寝つけないという方も多いことでしょう。これは生体時計がもともと24時間ではなく25時間分の目盛りを持っているためと考えられています。それは次のような洞くつ実験から分かりました。
 私たちが時計やテレビ、ラジオなど時間を知る手掛かりを持たずに何日も生活すると、1日の単位がどう変化するかという実験です。1人で生活をする大変な実験ですが、今までに100人以上の人によって確かめられ、睡眠や体温のリズムが全くなくなってしまうことはなく、大体25時間前後になって安定するようです。つまり、私たちはもともとからだに備わった25時間のリズムを地球の自転の24時間、すなわち昼夜のリズムに調整しているのです。そしてからだの25時間のリズムを24時間に合わせる手掛かりとして最も重要なものが、目から入る光です。
時刻を知る手掛かりとなるさまざまな同調因子は感覚器を通して脳の生体時計に入ります。生体時計の振り子やクオーツはもともと25時間周期ですから、これを外から伝えられた24時間の信号に合わせ、その信号文字盤に当たる効果器と呼ばれる部分、からだが外界に接する筋肉や皮膚、内分泌腺などに伝え、24時間のリズムとして表現されるのです。このような時刻合わせは毎日行われます。毎朝、光を浴びること、朝食を取ること、起床や通勤、通学などの行動、日中の活動などがからだのリズムを整えるためには重要なことなのです。
 このようなからだのリズムが故障したときにはさまざまな病気が見られます。代表的なものとして睡眠・覚醒リズム障害があります。また、深夜勤務による過労やジェット時差症候群などがあります。

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