▼ 疲労と健康(1)
明け方まで仕事をして「若いころは一晩の徹夜なんて何てことなかったのになあ」などと、職場でぼやいている中高年が多い。「久しぶりに野球をしたら、翌日からだが痛くて痛くて」などと顔をしかめている中高年も。しかし、疲労はからだの警戒警報。疲労とうまく付き合っていくことが、健康の維持・増進の秘けつでもある。疲労の問題に詳しい日本体力医学会理事で日本体育協会理事の吉岡利忠・聖マリアンナ医科大学教授に、疲労について聞いた(3月号では、疲労と病気の関係や疲労回復などについて取り上げます)。
疲労とは何ですか?
研究者たちはこれまで、疲労に関係する「疲労物質」があるのではないかと一生懸命に探してきましたが、これがなかなか見つからない。疲労は一言でいうと、生体の機能低下です。ミクロなレベルでいうと、からだの細胞は酸素や栄養をとって、炭酸ガスや老廃物を排出しています。しかし、細胞が疲労すると、うまく老廃物を排出できなくなったり、酸素をうまく取り入れられなくなったりするのです。そして、その細胞の疲労が蓄積すると、細胞の集まりである組織が、さらにその組織の集まりである器官が疲労することになるのです。
疲労すると、細胞の細胞膜が壊れてその中身が血液中に出ます。例えば、筋肉は縮むのが仕事ですが、エネルギーを使って収縮する時に酸素が少ないと、乳酸ができて血液中に溜まります。これが疲労の一つの原因となり、そうなると筋肉の収縮力が減退します。酸素が十分に供給されれば、乳酸は溜まらないわけです。このような物質としては、乳酸のほかに、CK(クレアチンキナーゼ)やLDH(乳酸脱水素酵素)、肝臓の検査でよく知られているGPT、GOTなどがあります。
疲労といってもさまざまですね?
からだ全体が感じる全身疲労のほかに、筋肉の疲れとか眼の眼精疲労、暴飲暴食をした時の胃腸の疲労など、局所的疲労があります。昔は全身を使う仕事が多くて全身疲労が問題となりましたが、最近はデスクワークが増えて、局所疲労の方が増えています。
ここで注意していただきたいのは、疲労は病気ではないということです。休めば必ず元通りに戻ります。疲労は、これ以上頑張ったらからだが壊れるというからだの防御機構のひとつで、からだの機能を維持するためには、なくてはならないものなのです。十分に栄養をとって休めば、20歳、30歳代ならば一晩で治ります。これが急性疲労です。それが年をとると疲労が残るようになる。さらに、度を越すと酸素や栄養を十分に与えても戻らない慢性疲労となり、ついには過労となる。だから、いかに速やかに疲労を回復するかが大切なのです。
人によっても違いますね?
ええ、疲労には個人差があり、例えば楽しいことをしている時は疲れないものです。だから、それぞれ自分に合った回復方法を工夫しなくてはなりません。
人は体型からおよそ3つのタイプに分かれるといわれています。からだが細い人は、胃かいよう体質とも言われ、ストレスや疲労からの回復が遅い。こういう人の疲労回復は、一杯飲んで早く寝るというのではなく、ぬるめのお湯に長めに入浴したり、軽い運動など積極的な疲労回復を図ることが必要です。それから、筋骨隆々のタイプの人は、疲労を疲労とも思わない人が多い。どちらかというと精神的疲労より肉体的疲労の方が多く、しかも一晩で回復してしまうタイプです。また、ずんぐりむっくりの体型の人もあまり疲労を感じないタイプの人です。
疲労を感じるか感じないかの限界、すなわち閾値というものがあります。細かい話になりますが、細胞の回りのイオンの環境が変わると、その閾値が変わります。そして、細胞の外のイオン環境をかく乱する物質が乳酸やCK、LDH、GOT、GPTなどなのです。そのイオンの環境は血液循環と密接にかかわっており、だから疲労には血液の循環が密接に関係しているのです。
精神的疲労は肉体的な疲労より複雑そうですね?
精神的疲労ではまず、集中力の低下が見られます。精神的疲労のメカニズムはこみいっています。脳は神経細胞のかたまりですが、疲労すると、この神経細胞の伝導速度が遅くなります。神経細胞内では電気信号が伝わっているのですが、神経細胞同士のつなぎめのシナプスという部分では、電気ではなくてアセチルコリンなどの化学的な伝達物質で信号が伝達されます。疲労するとこの物質の量が減り、情報をやりとりする速度が遅くなります。現代社会ではストレスが多いので、肉体的疲労よりどちらかというと精神的な疲労の方が大きな問題になっています。
http://www.nt-dream.jp
疲労とは何ですか?
研究者たちはこれまで、疲労に関係する「疲労物質」があるのではないかと一生懸命に探してきましたが、これがなかなか見つからない。疲労は一言でいうと、生体の機能低下です。ミクロなレベルでいうと、からだの細胞は酸素や栄養をとって、炭酸ガスや老廃物を排出しています。しかし、細胞が疲労すると、うまく老廃物を排出できなくなったり、酸素をうまく取り入れられなくなったりするのです。そして、その細胞の疲労が蓄積すると、細胞の集まりである組織が、さらにその組織の集まりである器官が疲労することになるのです。
疲労すると、細胞の細胞膜が壊れてその中身が血液中に出ます。例えば、筋肉は縮むのが仕事ですが、エネルギーを使って収縮する時に酸素が少ないと、乳酸ができて血液中に溜まります。これが疲労の一つの原因となり、そうなると筋肉の収縮力が減退します。酸素が十分に供給されれば、乳酸は溜まらないわけです。このような物質としては、乳酸のほかに、CK(クレアチンキナーゼ)やLDH(乳酸脱水素酵素)、肝臓の検査でよく知られているGPT、GOTなどがあります。
疲労といってもさまざまですね?
からだ全体が感じる全身疲労のほかに、筋肉の疲れとか眼の眼精疲労、暴飲暴食をした時の胃腸の疲労など、局所的疲労があります。昔は全身を使う仕事が多くて全身疲労が問題となりましたが、最近はデスクワークが増えて、局所疲労の方が増えています。
ここで注意していただきたいのは、疲労は病気ではないということです。休めば必ず元通りに戻ります。疲労は、これ以上頑張ったらからだが壊れるというからだの防御機構のひとつで、からだの機能を維持するためには、なくてはならないものなのです。十分に栄養をとって休めば、20歳、30歳代ならば一晩で治ります。これが急性疲労です。それが年をとると疲労が残るようになる。さらに、度を越すと酸素や栄養を十分に与えても戻らない慢性疲労となり、ついには過労となる。だから、いかに速やかに疲労を回復するかが大切なのです。
人によっても違いますね?
ええ、疲労には個人差があり、例えば楽しいことをしている時は疲れないものです。だから、それぞれ自分に合った回復方法を工夫しなくてはなりません。
人は体型からおよそ3つのタイプに分かれるといわれています。からだが細い人は、胃かいよう体質とも言われ、ストレスや疲労からの回復が遅い。こういう人の疲労回復は、一杯飲んで早く寝るというのではなく、ぬるめのお湯に長めに入浴したり、軽い運動など積極的な疲労回復を図ることが必要です。それから、筋骨隆々のタイプの人は、疲労を疲労とも思わない人が多い。どちらかというと精神的疲労より肉体的疲労の方が多く、しかも一晩で回復してしまうタイプです。また、ずんぐりむっくりの体型の人もあまり疲労を感じないタイプの人です。
疲労を感じるか感じないかの限界、すなわち閾値というものがあります。細かい話になりますが、細胞の回りのイオンの環境が変わると、その閾値が変わります。そして、細胞の外のイオン環境をかく乱する物質が乳酸やCK、LDH、GOT、GPTなどなのです。そのイオンの環境は血液循環と密接にかかわっており、だから疲労には血液の循環が密接に関係しているのです。
精神的疲労は肉体的な疲労より複雑そうですね?
精神的疲労ではまず、集中力の低下が見られます。精神的疲労のメカニズムはこみいっています。脳は神経細胞のかたまりですが、疲労すると、この神経細胞の伝導速度が遅くなります。神経細胞内では電気信号が伝わっているのですが、神経細胞同士のつなぎめのシナプスという部分では、電気ではなくてアセチルコリンなどの化学的な伝達物質で信号が伝達されます。疲労するとこの物質の量が減り、情報をやりとりする速度が遅くなります。現代社会ではストレスが多いので、肉体的疲労よりどちらかというと精神的な疲労の方が大きな問題になっています。
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