食べ物の味がわからない

ここでは、 食べ物の味がわからない に関する情報を紹介しています。
「味がよくわからない」、「口の中が苦い」など味覚の異常を訴える人が増えています。こうした状態を放置すると甘いものや塩分のとり過ぎにつながり、糖尿病や高血圧などを引き起こす恐れがありますから注意が必要です。

味覚障害とは?

 味覚障害の患者さんの数は年々増加しており、現在では全国で毎年14万人と推計されています。日本大学医学部附属板橋病院では昭和51年から味覚障害の専門外来を設けていますが、年間200人以上の患者さんが訪れます。年代的には20〜80代と幅が広く、ピークは60代です。
 人間の味覚は、基本味とされる甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の五味のほかに、辛さや渋さなどの広義の味を感じとることができて正常と判断されます。
 その味覚を最初に感知する受容器が、味蕾と呼ばれる器官です。舌表面の細かいひだや舌の付け根付近の粘膜部分に存在し、口の中全体では約9000個あるといわれています。味蕾の内側にさまざまな味に反応する味細胞があり、その先端の微小毛に味の物質が触れると電気反応を起こし、その情報が味覚の神経を介して大脳へ伝わり、味が認識される仕組みになっています。
 この味蕾、神経、脳のいずれかに障害が起きると味覚に異常が生じます。味覚障害の症状はさまざまですが、主なものとしては次の三つが挙げられます。
1. 味が鈍い(味覚減退)
2. まったく味がしない(味覚消失)
3. 口の中に何も入っていないのに味  を感じる(自発性異常味覚)
 このほかにも、特定の味だけがわからない(解離性味覚障害)、本来の味と異なる味がする(異味症)、何を食べても不快な味がする(悪味症)などがあります。しかし、これらは比較的まれなケースで、1〜3が味覚障害の大部分を占めています。これらの症状が単独で出ることもあれば、いくつか複合して現れることもあります。

薬剤の服用や偏食が主な原因

 味覚障害の原因は多種ありますが、多いのは薬剤性のものと亜鉛欠乏性のものです(表参照)。特発性というのは原因の特定が難しいものを指します。
 障害の部位では、味覚の受容器である味蕾の障害が多いとされています。
 味覚を正常に維持するのに欠かせない物質の一つに亜鉛があります。亜鉛はミネラルの一種で、いろいろな細胞の新陳代謝に関与しています。味細胞は新陳代謝の活発な細胞で、亜鉛を含む酵素が重要な働きをしています。ですから、亜鉛が不足すると味細胞の再生がスムーズにいかなくなり、味を感知する能力が衰えます。亜鉛の欠乏を招く主な原因としては、薬剤の副作用、偏食、加工食品のはんらんなどが挙げられます。
 薬剤の中には亜鉛の吸収や働きを阻害するものがあります。味覚異常を起こす可能性のある薬剤は、降圧剤、抗生物質、抗がん剤など百種類以上あるといわれています。風邪薬を飲んだだけで味覚障害が起きたケースもありますが、一般的には数種類の薬を長期間にわたって服用したときに起こりやすいといえます。薬剤が原因の場合には「自発性異常味覚」を生じることが多く、とりわけ苦味を訴えるケースが目立ちます。
 亜鉛の欠乏は偏った食生活によっても生じます。また、加工食品のとり過ぎも亜鉛の欠乏を招きます。加工食品に含まれているポリリン酸、フィチン酸といった食品添加物には亜鉛の働きを阻害する作用があるからです。しかし、近年は亜鉛不足が味覚障害を起こすことが知られるようになったせいか、食事性の亜鉛欠乏症は減ってきています。
 糖尿病、高血圧など全身性疾患によっても味覚障害が生じることがあります。そのメカニズムについてはまだよくわかっていませんが、味覚が鈍っていると気づかずに甘いものや塩分をとり過ぎて糖尿病や高血圧を引き起こしたり、悪化させたりすることになり、さらにそれがまた味覚障害を進行させるという悪循環に陥ります。
 舌炎、口内炎などの口腔内疾患も味覚障害の原因になりますし、虫歯治療の金属(素材の異なる金属を二本以上の歯に使用した場合)が原因になることもあります。
 神経や大脳に障害を起こす病気としては、中耳炎などの耳の病気、脳腫瘍、脳血管障害、顔面神経麻痺、うつ病などが挙げられます。
 また、味覚と嗅覚は密接な関係があり、風邪、鼻炎など鼻の病気があると味覚に異常を生じます。

味覚障害の原因と患者に占める割合
1 薬剤性 21.7%
2 特発性 15.0 %
3 亜鉛欠乏性 14.5 %
4 心因性 10.7 %
5 風味障害 7.5 %
6 全身疾患性 7.4 %
7 口腔疾患性 6.4 %
8 味覚嗅覚同時障害 2.6 %
9 末梢伝導路障害 2.6 %
10 中枢伝導路障害 1.7 %
11 内分泌性 1.0 %
12 その他 8.9 %
〈日本大学医学部調査 計2278例〉

亜鉛を意識して摂取する

 「どうも味がおかしい」と感じても、その程度のことではなかなか受診しようという気にはなれないものです。そういう場合には、とりあえず亜鉛を多く含む食品をとるようにし、亜鉛の吸収を阻害する加工食品や炭酸飲料を控えて様子をみるとよいでしょう。
 亜鉛はカキ(貝)、ごま、のり、抹茶、きな粉、卵黄、レバー、ナッツ類などに多く含まれています。亜鉛の一日の所要量は15ミリグラムですが、味覚障害がある場合には50ミリグラムくらい必要とされています。それでも症状が改善しないときには、耳鼻咽喉科を受診してください。味覚障害は早期に治療しないと治りにくくなります。
 また、単に味がおかしいというだけでなく、舌がしびれる、舌の感覚が鈍い、味の感じ方が変則的というような場合は要注意です。変則的というのは、舌の片側だけ味がわからないというようなケースです。これは、マヨネーズのような流れない食品を舌の片側にのせてみれば自分でチェックできます。こうした場合には味覚の神経の通り道に腫瘍(聴神経腫瘍が多い)ができている恐れがありますから、直ちに受診すべきです。
 耳鼻咽喉科では、まず問診で薬剤の服用の有無などを確認したうえで、「味覚定性定量検査」「電気味覚検査」などを行います。
 「味覚定性定量検査」というのは、甘味、塩味、酸味、苦味の4種類の味を5段階の濃度に分けたものを舌や軟口蓋(上顎の奥)など六カ所に当てて、味覚の程度をチェックするものです。「電気味覚検査」は舌に弱い電流を流して、どのレベルで金属味を感じるかを調べる検査です。いずれも簡単な検査で、どの部位に異常があるかによって原因がある程度推測できます。
 味覚障害を起こす病気がみつかった場合には、まずそれを治すことが先決です。
 薬剤が原因の場合には、かかりつけ医と相談して薬剤の種類を変更したり、他の治療法を組み合わせて薬剤の量を減らすようにし、併せて薬で亜鉛を補います。
 食事性の亜鉛欠乏症の場合には、食事指導をしたり、薬や健康補助食品で亜鉛を補う治療法がとられます。

食生活に注意して予防を

 こうした味覚障害を未然に防ぐには、日ごろから食生活に注意することが大切です。現代社会はだれもが忙しく、手軽で便利なコンビニ弁当やファーストフード、インスタント食品などを利用することが多くなっています。これらは総じて味つけが濃く、高エネルギーの割にビタミンやミネラルは不足しがちです。また、若い人の中には偏食やダイエットの影響で栄養不足の人が少なくありません。いわば「豊かさの中の栄養失調」のような現象が起きています。
 味覚というのは、さまざまな食品を食べることによって育成されていくものです。子供のころから偏った食生活を続けていると、将来的には味覚障害を起こす確率が高くなります。すでに、若い人の中には味覚の鈍っている人が増えているともいわれています。ですから、なるべく加工食品を避けて手作りの食事を心がけるようにしてください。

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