生体リズムと健康

ここでは、 生体リズムと健康 に関する情報を紹介しています。
急速に進む情報化や国際化の中で、職場や家庭でさまざまな健康上の問題が浮かび上がってきました。報道機関や金融機関などの、かつては考えられなかったような深夜交代勤務、官公庁などの深夜残業、明かりの消えることのない都会の繁華街、24時間営業のコンビニエンスストア、家庭の明かりは徹夜の受験勉強、それとも衛生放送テレビ視聴、これらは最近ではあまり珍しくなくなってきました。また、海外旅行者1200万人といわれる時代、皆が競ってジェット旅客機に乗って世界各国に出かけます。かつて、日が昇ると働き、暗くなれば家に帰って休むという生活をしていた私たちの祖先が、どこかで驚異の目で眺めているかもしれません。でも私たちはそのために体調を崩し、ときには働き過ぎが過労死や自殺につながって、心身の健康上大きな問題として取り上げられるようになりました。
 このような問題は、昼間活動して夜間に休息をとるという、ごく当たり前の生活リズム、生体リズムを崩したことが原因です。

生体リズムとは?

 生体リズムとは何でしょうか。
 健康な生活をしているときには、昼間部屋を暗くして布団に入ってもなかなか眠れないことはよく経験することです。これはからだの時計が昼と夜をはっきり区別して、夜に眠って昼間には活動するようにプログラミングされているからです。
 このようにからだには睡眠と覚醒(かくせい)だけでなく、体温や血圧といった自律神経系も昼間は活発に活動し、夜は活動状態が穏やかになるという1日のリズムがあります。また、内分泌ホルモンにもリズムがあります。昼間活動しているときのさまざまなストレスに耐えるための副腎皮質ホルモンや、夜眠っているときに成長や細胞の新生を助ける役目をしている成長ホルモンなどの分泌にもリズムがあり、1日のどの時間帯に分泌されるかが決められています。従って夜に寝て、昼間に活動するということは、健康な生活を送る上で最も基本的なことなのです。
 そのため、急に昼夜を逆転させた場合には、体温や内分泌ホルモンは相変わらず昼夜逆転以前のリズムを刻んでいるので、私たちのからだには奇妙な現象が起こります。夜起きて働いていても頭がぼんやりしたり、仕事上のミスが多くなったり、深夜運転では死亡事故が多発します。これは夜にからだを起こして動いていても、機能が眠っているからです。
 このような働きは、人や動物の場合、脳にある生体時計によってコントロールされています。人は大昔から夜には眠って昼間活動するのに都合のよい時計を持っており、夜間の活動には向いていないのです。
 それでは夜行性の動物がいるのはどうしてでしょうか。それは、夜行性の動物は厳しい生存競争の中で昼間活動して夜寝ているとえじきにされるので、夜活動する生活リズムを獲得したためなのです。
 このように、人を含めて多くの動物は定められた1日のリズムに従って活動します。ところが人は電気が発明されたことによって、夜にも活動できるようになりました。しかし、人のからだのリズムは、数百万年という人類の歴史の中で長い年月をかけて備わったもので、急には変えられないということを思い返す必要があります。

からだの時計は25時間

 さて、からだの時計はどこにあるのでしょうか。動物についての最近の研究から、それは脳の視床下部にあるらしいということが分かってきました。視床下部には満腹感や空腹感などによって食行動を調節したり、性行動の調節、血圧や体温の調節に関係する自律神経中枢など、生きていくために必須の働きを支配する中枢があります。この中枢によるリズム調節機能を「生体時計」といい、時計の針がある一定の時間帯に来ると、自律神経系の活動を高めたり、副腎皮質ホルモンに指令を送り、インシュリンを多く分泌させて、糖分摂取の準備をしたりするのです。
 それでは、このような生体時計は24時間をどのように決めているのでしょうか。読者の中には朝寝坊は得意だけれど、夜早く床に入ってもなかなか寝つけないという方も多いことでしょう。これは生体時計がもともと24時間ではなく25時間分の目盛りを持っているためと考えられています。それは次のような洞くつ実験から分かりました。
 私たちが時計やテレビ、ラジオなど時間を知る手掛かりを持たずに何日も生活すると、1日の単位がどう変化するかという実験です。1人で生活をする大変な実験ですが、今までに100人以上の人によって確かめられ、睡眠や体温のリズムが全くなくなってしまうことはなく、大体25時間前後になって安定するようです。つまり、私たちはもともとからだに備わった25時間のリズムを地球の自転の24時間、すなわち昼夜のリズムに調整しているのです。そしてからだの25時間のリズムを24時間に合わせる手掛かりとして最も重要なものが、目から入る光です。
時刻を知る手掛かりとなるさまざまな同調因子は感覚器を通して脳の生体時計に入ります。生体時計の振り子やクオーツはもともと25時間周期ですから、これを外から伝えられた24時間の信号に合わせ、その信号文字盤に当たる効果器と呼ばれる部分、からだが外界に接する筋肉や皮膚、内分泌腺などに伝え、24時間のリズムとして表現されるのです。このような時刻合わせは毎日行われます。毎朝、光を浴びること、朝食を取ること、起床や通勤、通学などの行動、日中の活動などがからだのリズムを整えるためには重要なことなのです。
 このようなからだのリズムが故障したときにはさまざまな病気が見られます。代表的なものとして睡眠・覚醒リズム障害があります。また、深夜勤務による過労やジェット時差症候群などがあります。

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