私たちは、爪を切るときやマニキュアをするときなどに、毎日なにげなく爪を観察しています。ですから、爪の色や形がおかしくなったり、硬さが変わったりすればすぐに気がつくはずです。
爪にあらわれるいろいろな変化には、皮膚のしわのような老化現象のこともあります。また、爪自体の病気だけでなく、内臓の病気が爪の異常としてあらわれてくることもあるのです。爪は、ある意味では、その人の生活の年輪、生活史を表現しているもので、現在の健康状態をみる一つのめやすにもなるといってよいでしょう。
それでは、爪のどのような変化は心配のないものか、どのような爪の異常が病気と関係あるのかを考えてみましょう。
爪の成長
爪は、皮膚の表面の角質層が変化したもので、ケラチンという硬いたんぱく質からできています(生きた細胞は存在しません)。いわば皮膚の付属物です。
人間は、動物のように爪を武器として使う必要はなくなっていますが、爪は敏感な指先を保護し、細かい手仕事をするうえで重要な役割をしています。
1 爪の構造と発育
爪(正式には「爪甲(そうこう)」といいます)は爪母と爪床の表皮からつくられます。爪母とは爪の根元にある部分のこと、爪床とは爪の本体がのっている部分のことです。爪床の表皮は、爪の本体が指先に向かって伸びるとともに平行して移動していきます。このように爪は下の組織と密着しているので、簡単にはがれたり抜けることはありません。
・爪半月は未完成の部分
爪の根元の三日月形をした乳白色の部分は、爪半月と呼ばれています。この部分は、爪がまだ完全にできあがっていない場所で、他の部分よりいくぶんやわらかく、爪床とも十分密着していません。このできたての爪をおおっているのが爪上皮(俗に“あま皮”という)です。
・爪ののびる速さ
爪は、1日0.1mmから0.15mmのびるといわれています。爪ののびる速さはかなり個人差がみられ、また、その人の栄養状態などによっても異なってきます。手指のうちでは、親指の爪がもっとも成長が早く、小指の方に向かっていくにしたがって遅くなります。そのため、爪半月も、親指では大きく目立ち小指ではきわめて小さいのがふつうです。
爪ののびる速度は、年代によっても違ってきます。幼児期から20歳ごろまでは爪の発育がよく、からだ全体の成長と関連しています。それ以降は、爪ののびかたは遅くなっていきます。
2 爪の色・形と健康状態のめやす
・健康な爪の色・形・硬さ
爪の色(この場合は爪床までを含めた色調)は、爪の本体(爪甲)の透明度、爪甲と爪床の密着ぐあい、爪床表皮の厚さとか血液の流れの状態などによって左右されます。健常な場合は、光沢のあるピンク色に見えます。
爪半月では、爪のできたての部分で、爪床との結合がゆるいので、透明度が高くなっています。そのため、爪床の色調の変化が敏感に反映されます。
爪の硬さは、含まれる水分の量や、ケラチンの組成によって変わってきます。水分の保有量は先端にいくほど少なくなり、割れやすくなります。一般に、乳幼児では爪はやわらかく、弾力に富み、老人では硬く、もろくなります。
・爪半月と健康状態は関係あるか
爪の半月が大きくはっきり出ていれば健康で、これが見えなくなると病気であるという説は、昔からよくいわれています。爪の半月がよく出ているかどうかは、だいたい生まれつきのものです。内臓病のある人でも爪半月が大きく出ている人もありますし、爪の半月が隠れて全く見えなくても健康な人はたくさんいます。爪の半月の大小は、病気のバロメーターとはならないので、神経質になる必要はありません。
・爪の変化や異常はどのようなときにあらわれるか
爪の形や色の変化(異常)は次のようなときにおこります。
1 外部からの刺激をうけたとき
圧迫あるいは外傷などです。
2 ほかに皮膚病があるとき
その皮膚と同じものが爪の下におこって、爪が変形することがあります。
3 全身的な病気があるとき
慢性の内臓の病気などがあると、爪に影響がでてきます。この場合の変化はすべての爪にあらわれてきます。
それでは、以下に、爪の色、形の変化について、それがからだの健康状態とどのように関係するかをみることにします。
爪の色の変化
1 爪が白くなる
・爪甲の白い点は心配ない
若い女性や子供で、いつのまにか爪にポツンと小さな白い点が出ていることがあります。爪がのびると、しだいに先端の方に移動していき、また、いつのまにか消えてなくなります。男性では比較的少なく、老人にもあまりみられません。
これは爪甲自体におこる変化で、点状爪甲白斑といいます。爪が爪母でつくられるときに空気が入ったもので、病気とは関係ありません。ドイツの女性は、これを“幸運の白い星”といって、洋服が1枚ふえるとか恋人があらわれるといって、むしろ期待に胸をふくらませます。
・1〜2本の爪の先端が白く濁るのは水虫
それまで異常のなかった爪が、白く濁ってくることがあります。指の爪の1本か2本に、白い線が先端から根元の方へ向かって進行してくるときは、まず爪の水虫です。
・爪全部に動かない白い帯かできるときは全身性の病気
血液の異常をおこす全身的な病気があるときは、影響が指先にも及びます。この場合は全部の爪に同じ変化がみられます。貧血(ヘモグロビンが少ない状態)では、爪を透して爪の下(爪床)が白っぽく見えます。また、ネフローゼといって、血液中のたんぱく質が大量に尿中へ出てしまう病気では、爪半月に平行して2〜3mm幅の白い帯があらわれてきます。爪がのびても、白い帯は同じ位置にとどまっているので、爪甲ではなく爪の下の変化であることがわかります。
2 爪が黒くなる
・爪の黒い線はメラニン色素
爪の根元に外傷をうけたりすると、しばらくしてから爪に黒いまっすぐな縦の線があらわれることがあります。これは外傷の刺激で、爪母の表面にある色素産生細胞のはたらきが一時的に高まり、つくられた黒い色素(メラニン)が爪甲の中に入りこんだのです。爪がのびるとともに先端から消えていきます。
また、爪の根元とか爪の下にできたほくろ(メラニン色素のかたまりです)の中のメラニンが爪甲に取り込まれ、くっきりした黒い線ができることがあります。
3 爪が黄色くなる
爪の発育がわるくなると、爪甲は厚くかたくなって、色も濁ってみえるようになり、爪の先端は爪床からはがれやすくなります。そして、爪床から離れた部分の爪は、黄白色に濁ってくるのがふつうです。
・爪のはがれた部分の変色
なにか病気などの原因で、爪が特にはがれやすくなっている場合、爪甲剥離症と呼ばれます。爪の先端がはがれやすくなり、その部分の爪は、黄白色に濁って変色してきます。これがしだいに根元の方にひろがり、中ほどまで達するととまります。爪は根元でしっかり固定されているので、抜け落ちたり切れてなくなることはありません。原因として、甲状腺の病気(バセドウ病)や、カンジダ菌の感染症などがあります。
また、爪のはがれやすい傾向は、多汗症の若い女性や水仕事をよくする職業の人にみられることがあります。
爪の形の変化
1 爪がスプーン状になる
爪が、ちょうどスプーンのような形にそりかえっている状態です。生後1〜2年までの乳幼児では、ふつうにみられる生理的な現象で、病的なものではありません。小児期になると、普通の爪の形になっていきます。(ごくまれですが、これが成人期まで続くことがあります。この場合は、家族に同じような爪の人が多いものです。)
・成人では鉄欠乏性貧血に特徴的な爪の変化
成人の場合には、このスプーン状の爪は、鉄欠乏性貧血の特徴的な爪の変化として、古くから知られています。先端の部分だけへこむ程度のものから、豆をのせられるほどのものまでさまざまです。爪母への血液の供給がうまくいかないためで、爪も灰白色に濁ったり厚くなったりし、ささくれだった爪になります。鉄欠乏性貧血の人すべてにみられるわけではありませんが、中年の女性におこりやすいようです。
鉄欠乏性貧血は、自覚症状のとぼしい病気なので、この爪の変化は、貧血状態におちいるときの、ひとつの目安として重要なものといえます。
2 爪に横の溝ができる
爪(爪甲)に、横の線や溝ができるのは、けっしてめずらしいことではありません。溝の形や程度はまちまちで、ときにはくっきりした細い線だけのこともあり、やや深い溝になることもあります。
爪がのびるとともに先端へと移動していき、やがて消失します。
・爪母に強い刺激が加わり、一時的な栄養障害がおこったもの
爪の横溝は、なにか爪の発育を押えるような刺激が爪母に加わったときに生じます。つまり、爪の一時的な栄養障害のあらわれなのです。加わる刺激が強いほど、また、加わる時間が長いほど、溝は広く深くなります。刺激をうけたあと、数週間たってから溝ができてきます。
もっともよくみられるのは、高熱をだす急性の病気のあとです。慢性的な全身の病気(糖尿病など代謝障害の病気に多い)が悪化したあとに生じることもあります。
手の湿疹など皮膚の病気が爪母のあたりまでひろがったときにも、横溝がみられます。
また、女性では、あま皮をけずるなど爪の手入れの失敗で、爪母を傷つけたりすると、浅い横溝ができてきます。
3 爪に点状のへこみができる
・爪母の小さな範囲になにかさしさわりが生じたとき
爪に、針でポツンと穴をあけたような小さなへこみができることがあります。これは、爪甲が爪母でつくられるときに、ごく小さな範囲でさしさわりがあったためと考えられます。
健康な人にもよくみられます。爪の成長とともに前方へ移動、消えてしまいます。
・ほかの皮膚の病気と関連あるへこみ
円形脱毛症のとき、よく爪に点状のへこみがみられますが、この場合は、横一列に規則正しく並んでいるのが特徴です。横溝としてあらわれることもあります。円形脱毛症の原因はまだよくわかっていませんが、髪の毛も爪も皮膚の角質層の変化したものですから、栄養障害による変化が同時におこったとも考えられます。
爪の点状のへこみは、多くは無害なものですが、もしいちどにたくさん生じたり、くり返しできる場合は、皮膚科の専門医に相談してください。
4 爪に縦線ができる
・老化現象のひとつのあらわれ
爪甲をよく観察すると、爪全体に縦に走る細い線が見えます。もし、これがはっきり認められたら、残念ながら、老化現象と考えなければなりません。爪の縦の線は、加齢とともに数も、太さも増していきます。これは、内臓の病気とか、栄養状態とは関係ありません。
・爪の油分や水分の補給にも注意
若いころはつるつるして発育もよく、柔軟だった爪も、老人になるとともにのびがわるく、厚くなっていきます。そして、爪甲と爪床の間に角質物質がたまって、爪がもちあがるようになります。ときに、爪が縦に裂けたりすることがありますので、油分や水分の補給にも注意しましょう。
爪の衛生・美容と爪の健康
1 爪の衛生
・足の親指の圧迫による「さし爪」
幅の狭い靴や、かかとの高いハイヒールで足の親指を圧迫しつづけていると、爪の両端が皮膚にくいこんできます。これを「さし爪」といいます。長時間の立ち仕事とか、下肢の肥満も誘因になります。
爪がくい込んだ部分から細菌の感染をうけやすくなるので、足の清潔に気をつけましょう。なによりも「さし爪」をおこさない注意が大切です。
・爪の清潔と手入れ
一般的には、爪は皮膚と同じ手入れを心がければよいでしょう。清潔を心がけ、また、水仕事のあとにはハンドクリームを爪にも塗り、油分を補給します。
爪は長くのびると汚れたり割れたりしやすくなります。深爪しないよう気をつけ、短めに切りましょう。深爪は、その人の“くせ”のこともあります。
よく爪のまわりに“ささくれ”ができます。これは皮膚の水分の保有能力が欠けているためです。むりにむくと、よい皮膚が一緒に取れてしまい、細菌やかびが入りやすくなります。はがれた部分をていねいに、ハサミで切るようにしたほうがよいでしょう。
2 マニキュアと爪の健康
マニキュアをすることは、その人の趣味の問題ですから、善悪は問いません。しかし、ときにその結果として、爪にいろいろな影響のあることを忘れないようにしてください。
・ネイルラッカーでかぶれることも
現在市販されているネイルラッカーは、爪甲に被害をあたえることはないようです。ただし、人によっては、くり返し塗っているうちに、爪の周囲の皮膚にかぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)をおこすことがあります。
・除光液により爪が層状に割れる
除光液をひんぱんに使っていると、爪甲の先端の部分が、ちょうど雲母をはがすように、層状に割れてくることがあります。爪を長くのばしている人におこりやすいようです。これは、除光液(アセトン)で爪甲に乾燥と湿潤を急速にくり返していると、爪の先端部が水分不足になるためです。対策としては、爪を短く切ること、ネイルラッカーを落としたあとは、油性の強いハンドローションかグリセリンを塗るとよいでしょう。
・爪の手入れの失敗で爪が変形することがある
爪を長くみせようとして、よく根元のあま皮を押しつけたり、けずり取ったりしています。しかし、このときに爪母の部分をくり返し傷つけると、のびてきた爪には横溝ができたり、爪がでこぼこになったりします。変形した爪にいくら美しい色を塗っても、見映えはしません。
健康な爪は、きれいなピンク色をしています。この美しさを生かしたいものです。
おわりに
からだのどこかに異常があると、それが爪に反映する場合があることを述べました。
爪の形や色に一喜一憂するのは考えものですが、爪の観察が、からだ全体の健康に気を配るきっかけとなれば幸いです。
爪にあらわれるいろいろな変化には、皮膚のしわのような老化現象のこともあります。また、爪自体の病気だけでなく、内臓の病気が爪の異常としてあらわれてくることもあるのです。爪は、ある意味では、その人の生活の年輪、生活史を表現しているもので、現在の健康状態をみる一つのめやすにもなるといってよいでしょう。
それでは、爪のどのような変化は心配のないものか、どのような爪の異常が病気と関係あるのかを考えてみましょう。
爪の成長
爪は、皮膚の表面の角質層が変化したもので、ケラチンという硬いたんぱく質からできています(生きた細胞は存在しません)。いわば皮膚の付属物です。
人間は、動物のように爪を武器として使う必要はなくなっていますが、爪は敏感な指先を保護し、細かい手仕事をするうえで重要な役割をしています。
1 爪の構造と発育
爪(正式には「爪甲(そうこう)」といいます)は爪母と爪床の表皮からつくられます。爪母とは爪の根元にある部分のこと、爪床とは爪の本体がのっている部分のことです。爪床の表皮は、爪の本体が指先に向かって伸びるとともに平行して移動していきます。このように爪は下の組織と密着しているので、簡単にはがれたり抜けることはありません。
・爪半月は未完成の部分
爪の根元の三日月形をした乳白色の部分は、爪半月と呼ばれています。この部分は、爪がまだ完全にできあがっていない場所で、他の部分よりいくぶんやわらかく、爪床とも十分密着していません。このできたての爪をおおっているのが爪上皮(俗に“あま皮”という)です。
・爪ののびる速さ
爪は、1日0.1mmから0.15mmのびるといわれています。爪ののびる速さはかなり個人差がみられ、また、その人の栄養状態などによっても異なってきます。手指のうちでは、親指の爪がもっとも成長が早く、小指の方に向かっていくにしたがって遅くなります。そのため、爪半月も、親指では大きく目立ち小指ではきわめて小さいのがふつうです。
爪ののびる速度は、年代によっても違ってきます。幼児期から20歳ごろまでは爪の発育がよく、からだ全体の成長と関連しています。それ以降は、爪ののびかたは遅くなっていきます。
2 爪の色・形と健康状態のめやす
・健康な爪の色・形・硬さ
爪の色(この場合は爪床までを含めた色調)は、爪の本体(爪甲)の透明度、爪甲と爪床の密着ぐあい、爪床表皮の厚さとか血液の流れの状態などによって左右されます。健常な場合は、光沢のあるピンク色に見えます。
爪半月では、爪のできたての部分で、爪床との結合がゆるいので、透明度が高くなっています。そのため、爪床の色調の変化が敏感に反映されます。
爪の硬さは、含まれる水分の量や、ケラチンの組成によって変わってきます。水分の保有量は先端にいくほど少なくなり、割れやすくなります。一般に、乳幼児では爪はやわらかく、弾力に富み、老人では硬く、もろくなります。
・爪半月と健康状態は関係あるか
爪の半月が大きくはっきり出ていれば健康で、これが見えなくなると病気であるという説は、昔からよくいわれています。爪の半月がよく出ているかどうかは、だいたい生まれつきのものです。内臓病のある人でも爪半月が大きく出ている人もありますし、爪の半月が隠れて全く見えなくても健康な人はたくさんいます。爪の半月の大小は、病気のバロメーターとはならないので、神経質になる必要はありません。
・爪の変化や異常はどのようなときにあらわれるか
爪の形や色の変化(異常)は次のようなときにおこります。
1 外部からの刺激をうけたとき
圧迫あるいは外傷などです。
2 ほかに皮膚病があるとき
その皮膚と同じものが爪の下におこって、爪が変形することがあります。
3 全身的な病気があるとき
慢性の内臓の病気などがあると、爪に影響がでてきます。この場合の変化はすべての爪にあらわれてきます。
それでは、以下に、爪の色、形の変化について、それがからだの健康状態とどのように関係するかをみることにします。
爪の色の変化
1 爪が白くなる
・爪甲の白い点は心配ない
若い女性や子供で、いつのまにか爪にポツンと小さな白い点が出ていることがあります。爪がのびると、しだいに先端の方に移動していき、また、いつのまにか消えてなくなります。男性では比較的少なく、老人にもあまりみられません。
これは爪甲自体におこる変化で、点状爪甲白斑といいます。爪が爪母でつくられるときに空気が入ったもので、病気とは関係ありません。ドイツの女性は、これを“幸運の白い星”といって、洋服が1枚ふえるとか恋人があらわれるといって、むしろ期待に胸をふくらませます。
・1〜2本の爪の先端が白く濁るのは水虫
それまで異常のなかった爪が、白く濁ってくることがあります。指の爪の1本か2本に、白い線が先端から根元の方へ向かって進行してくるときは、まず爪の水虫です。
・爪全部に動かない白い帯かできるときは全身性の病気
血液の異常をおこす全身的な病気があるときは、影響が指先にも及びます。この場合は全部の爪に同じ変化がみられます。貧血(ヘモグロビンが少ない状態)では、爪を透して爪の下(爪床)が白っぽく見えます。また、ネフローゼといって、血液中のたんぱく質が大量に尿中へ出てしまう病気では、爪半月に平行して2〜3mm幅の白い帯があらわれてきます。爪がのびても、白い帯は同じ位置にとどまっているので、爪甲ではなく爪の下の変化であることがわかります。
2 爪が黒くなる
・爪の黒い線はメラニン色素
爪の根元に外傷をうけたりすると、しばらくしてから爪に黒いまっすぐな縦の線があらわれることがあります。これは外傷の刺激で、爪母の表面にある色素産生細胞のはたらきが一時的に高まり、つくられた黒い色素(メラニン)が爪甲の中に入りこんだのです。爪がのびるとともに先端から消えていきます。
また、爪の根元とか爪の下にできたほくろ(メラニン色素のかたまりです)の中のメラニンが爪甲に取り込まれ、くっきりした黒い線ができることがあります。
3 爪が黄色くなる
爪の発育がわるくなると、爪甲は厚くかたくなって、色も濁ってみえるようになり、爪の先端は爪床からはがれやすくなります。そして、爪床から離れた部分の爪は、黄白色に濁ってくるのがふつうです。
・爪のはがれた部分の変色
なにか病気などの原因で、爪が特にはがれやすくなっている場合、爪甲剥離症と呼ばれます。爪の先端がはがれやすくなり、その部分の爪は、黄白色に濁って変色してきます。これがしだいに根元の方にひろがり、中ほどまで達するととまります。爪は根元でしっかり固定されているので、抜け落ちたり切れてなくなることはありません。原因として、甲状腺の病気(バセドウ病)や、カンジダ菌の感染症などがあります。
また、爪のはがれやすい傾向は、多汗症の若い女性や水仕事をよくする職業の人にみられることがあります。
爪の形の変化
1 爪がスプーン状になる
爪が、ちょうどスプーンのような形にそりかえっている状態です。生後1〜2年までの乳幼児では、ふつうにみられる生理的な現象で、病的なものではありません。小児期になると、普通の爪の形になっていきます。(ごくまれですが、これが成人期まで続くことがあります。この場合は、家族に同じような爪の人が多いものです。)
・成人では鉄欠乏性貧血に特徴的な爪の変化
成人の場合には、このスプーン状の爪は、鉄欠乏性貧血の特徴的な爪の変化として、古くから知られています。先端の部分だけへこむ程度のものから、豆をのせられるほどのものまでさまざまです。爪母への血液の供給がうまくいかないためで、爪も灰白色に濁ったり厚くなったりし、ささくれだった爪になります。鉄欠乏性貧血の人すべてにみられるわけではありませんが、中年の女性におこりやすいようです。
鉄欠乏性貧血は、自覚症状のとぼしい病気なので、この爪の変化は、貧血状態におちいるときの、ひとつの目安として重要なものといえます。
2 爪に横の溝ができる
爪(爪甲)に、横の線や溝ができるのは、けっしてめずらしいことではありません。溝の形や程度はまちまちで、ときにはくっきりした細い線だけのこともあり、やや深い溝になることもあります。
爪がのびるとともに先端へと移動していき、やがて消失します。
・爪母に強い刺激が加わり、一時的な栄養障害がおこったもの
爪の横溝は、なにか爪の発育を押えるような刺激が爪母に加わったときに生じます。つまり、爪の一時的な栄養障害のあらわれなのです。加わる刺激が強いほど、また、加わる時間が長いほど、溝は広く深くなります。刺激をうけたあと、数週間たってから溝ができてきます。
もっともよくみられるのは、高熱をだす急性の病気のあとです。慢性的な全身の病気(糖尿病など代謝障害の病気に多い)が悪化したあとに生じることもあります。
手の湿疹など皮膚の病気が爪母のあたりまでひろがったときにも、横溝がみられます。
また、女性では、あま皮をけずるなど爪の手入れの失敗で、爪母を傷つけたりすると、浅い横溝ができてきます。
3 爪に点状のへこみができる
・爪母の小さな範囲になにかさしさわりが生じたとき
爪に、針でポツンと穴をあけたような小さなへこみができることがあります。これは、爪甲が爪母でつくられるときに、ごく小さな範囲でさしさわりがあったためと考えられます。
健康な人にもよくみられます。爪の成長とともに前方へ移動、消えてしまいます。
・ほかの皮膚の病気と関連あるへこみ
円形脱毛症のとき、よく爪に点状のへこみがみられますが、この場合は、横一列に規則正しく並んでいるのが特徴です。横溝としてあらわれることもあります。円形脱毛症の原因はまだよくわかっていませんが、髪の毛も爪も皮膚の角質層の変化したものですから、栄養障害による変化が同時におこったとも考えられます。
爪の点状のへこみは、多くは無害なものですが、もしいちどにたくさん生じたり、くり返しできる場合は、皮膚科の専門医に相談してください。
4 爪に縦線ができる
・老化現象のひとつのあらわれ
爪甲をよく観察すると、爪全体に縦に走る細い線が見えます。もし、これがはっきり認められたら、残念ながら、老化現象と考えなければなりません。爪の縦の線は、加齢とともに数も、太さも増していきます。これは、内臓の病気とか、栄養状態とは関係ありません。
・爪の油分や水分の補給にも注意
若いころはつるつるして発育もよく、柔軟だった爪も、老人になるとともにのびがわるく、厚くなっていきます。そして、爪甲と爪床の間に角質物質がたまって、爪がもちあがるようになります。ときに、爪が縦に裂けたりすることがありますので、油分や水分の補給にも注意しましょう。
爪の衛生・美容と爪の健康
1 爪の衛生
・足の親指の圧迫による「さし爪」
幅の狭い靴や、かかとの高いハイヒールで足の親指を圧迫しつづけていると、爪の両端が皮膚にくいこんできます。これを「さし爪」といいます。長時間の立ち仕事とか、下肢の肥満も誘因になります。
爪がくい込んだ部分から細菌の感染をうけやすくなるので、足の清潔に気をつけましょう。なによりも「さし爪」をおこさない注意が大切です。
・爪の清潔と手入れ
一般的には、爪は皮膚と同じ手入れを心がければよいでしょう。清潔を心がけ、また、水仕事のあとにはハンドクリームを爪にも塗り、油分を補給します。
爪は長くのびると汚れたり割れたりしやすくなります。深爪しないよう気をつけ、短めに切りましょう。深爪は、その人の“くせ”のこともあります。
よく爪のまわりに“ささくれ”ができます。これは皮膚の水分の保有能力が欠けているためです。むりにむくと、よい皮膚が一緒に取れてしまい、細菌やかびが入りやすくなります。はがれた部分をていねいに、ハサミで切るようにしたほうがよいでしょう。
2 マニキュアと爪の健康
マニキュアをすることは、その人の趣味の問題ですから、善悪は問いません。しかし、ときにその結果として、爪にいろいろな影響のあることを忘れないようにしてください。
・ネイルラッカーでかぶれることも
現在市販されているネイルラッカーは、爪甲に被害をあたえることはないようです。ただし、人によっては、くり返し塗っているうちに、爪の周囲の皮膚にかぶれ(アレルギー性接触皮膚炎)をおこすことがあります。
・除光液により爪が層状に割れる
除光液をひんぱんに使っていると、爪甲の先端の部分が、ちょうど雲母をはがすように、層状に割れてくることがあります。爪を長くのばしている人におこりやすいようです。これは、除光液(アセトン)で爪甲に乾燥と湿潤を急速にくり返していると、爪の先端部が水分不足になるためです。対策としては、爪を短く切ること、ネイルラッカーを落としたあとは、油性の強いハンドローションかグリセリンを塗るとよいでしょう。
・爪の手入れの失敗で爪が変形することがある
爪を長くみせようとして、よく根元のあま皮を押しつけたり、けずり取ったりしています。しかし、このときに爪母の部分をくり返し傷つけると、のびてきた爪には横溝ができたり、爪がでこぼこになったりします。変形した爪にいくら美しい色を塗っても、見映えはしません。
健康な爪は、きれいなピンク色をしています。この美しさを生かしたいものです。
おわりに
からだのどこかに異常があると、それが爪に反映する場合があることを述べました。
爪の形や色に一喜一憂するのは考えものですが、爪の観察が、からだ全体の健康に気を配るきっかけとなれば幸いです。
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2008/01/13(日) 18:00:28 | 旬なキーワードでお得なブログのリンク集


