肝がんについて

ここでは、 肝がんについて に関する情報を紹介しています。
日本肝臓学会がこのほど、肝がん撲滅を目指して初の「肝がん白書」を発行した。肝がんはそのほとんどが、肝炎ウイルス感染が原因で起きる。ということは、肝炎ウイルスを持っている人に的を絞れば肝がんの撲滅は可能ということだ。肝がん白書作成の中心メンバーで、日本肝臓学会幹事の清澤研道信州大学教授に、日本の肝がんの特徴や予防などについて聞いた。


Q.肝がん白書発行のねらいは?

A.近年、わが国では肝がんの増加が著しい。特に働き盛りの年代に多く、社会的な問題です。日本で肝がんが増えている背景には日本特有の社会事情があるのではないか、ということで肝がん撲滅のキャンペーンを張ることになりました。社会全体で対策をとれば、肝がんはわが国において予防可能だと思うからです。今回発行した白書は、官庁や医師会をはじめ各種医療関係者、報道機関等に配布したり、5月末の「肝臓週間」での啓発活動の一環として、各地で行う肝臓病相談会で利用します。


Q.肝がんとは?

A.肝臓には人体の化学工場と言われるくらいにいろいろな機能があります。また、肝臓は再生力が強い臓器です。再生することは一般的にはよいことなのですが、その一方でがん化につながるのです。肝がんには、肝内胆管上皮から発生する肝内胆管がんもありますが、90%が肝細胞ががん化する肝細胞がんで、ここでいう肝がんはこの肝細胞がんと思ってください。
 がん化のきっかけは肝炎ウイルスの感染が最も多い。日本では90%以上が肝炎ウイルスによるもので、その他に、カビのアフラトキシン、肝臓に鉄が沈着してできるケースもあります。ウイルスのタイプとしては、B型、C型肝炎ウイルスが多く、日本では特にC型が多い。B型は、母から子へと感染して、その子が成人する過程で慢性肝炎、肝硬変、肝がんとなります。だから家族集積性が強い。だいたい40歳後半から50歳にがん発症のピークがある。一方、C型は母子感染が2%くらいと少なく、一般的には成人して輸血などで感染し、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変という経路をたどり、50歳後半から70歳ぐらいで、肝がんになります。B型肝炎は成人で感染すると急性肝炎を起こしますが、たいていは治癒します。


Q.今、なぜ肝がんなのですか?

A.厚生省の統計によると、日本人の死因の一番はがん。なかでも肝がんは昭和50年ごろから急激に増え、年間3万2千人が死亡。年齢は圧倒的に50歳から65歳の働き盛りが多いです。わたしが大学を卒業した1967年ころには、肝がん患者は信州大学の病院では年間に数人の珍しい病気でしたが、今では50人から60人。B型肝炎から肝がんになる患者数は昔も今も変わりはなく、C型が増えています。
 世界的には、人口10万人あたりの訂正死亡率で比べると、日本、韓国、中国での肝がんによる死亡率が高い。欧米ではたいへん少なく、先進国のなかでは日本は非常に高い。香港や台湾、中国ではB型肝炎による肝がんが圧倒的に多いのに対して、日本ではC型が肝がん全体の80%と多いのが特徴。これは、ヨーロッパではイタリアが日本に似ています。しかし、最近ではアメリカでも肝がんが増えているというリポートが出ており、C型肝炎が原因といわれています。だから「エイズの次はC型肝炎」と言われ莫大な研究費が投入されようとしています。
 1989年以前は、C型肝炎は非A非B型肝炎といわれていました。当時の輸血後肝炎のほとんどがこの非A非B型でした。わたしは当時、非A非B型輸血後肝炎は、感染後10年で慢性肝炎、20年で肝硬変となり、30年で肝がんになると報告していました。これが今では世界の常識になっています。


Q.日本の肝がんの特徴は?

A.日本では、肝炎ウイルスを持っている人が西にいくほど多く、西高東低となっています。日本人のC型肝炎ウイルスの陽性率は1〜1.5%。それが五十歳以上になると倍になり、60歳くらいでは4〜5%になります。肝がんの数は昭和50年ごろから増えており、今後20年くらいはさらに増え続けていくと考えられています。
 なかでも昭和ヒトケタ生まれの男性に多く、輸血経験者に多い。その理由として挙げられているのは、昭和16年から29年にかけてヒロポンが全盛で、同じ注射針で仲間うちで回し打ちをしたこと、そして昭和26年から43年まで売血制度があったこと、25年から35年にかけて結核の手術が全盛で輸血を受けた人が多いこと、などです。輸血が手術前の栄養剤代わりに使われた時代もありました。ライシャワー大使が暴漢に刺された後に輸血で肝炎になった事件をきっかけに、売血制度から献血制度になりました。
 俳優の渥美清さんも肝がんで亡くなったとある報道で知りました。そこで私が調べてみたところ、渥美さんは昭和ヒトケタ生まれ。26歳で結核の大手術をしています。このときに輸血がされたのでしょう。亡くなったのが68歳だから、輸血からがんになるまでに30数年かかっています。がんになりながら映画「男はつらいよ」の撮影をこなしていた、ということです。ライシャワー大使は肝がんになるまでに26年かかっています。日本においては渥美さんのように昭和ヒトケタ生まれの多くの人が社会の犠牲になったといえるでしょう。
 治癒するとニ度とかからないというのが、多くのウイルス感染症の特徴ですが、C型肝炎ウイルスは、表面の膜たんぱくの遺伝子が次々と変異して免疫からの攻撃を逃れてしまうのです。このためC型肝炎ウイルスには有効なワクチンがまだ開発されていません。


Q.肝がんの予防、治療の現状は?

A.かつては輸血が感染の一番の原因でしたが、売血制度が献血制度に代わったり、肝炎ウイルスのスクリーニングがされるようになったため、輸血で感染する人は今ではほとんどありません。医療機関でもディスポーザブルの注射針を使うようになっています。最近、覚醒剤が蔓延しているので、この点についての啓発も大切です。
 C型肝炎に対しては、インターフェロン療法があります。この治療でウイルスが消える人と消えない人がいます。C型肝炎ウイルスには10数種類の型がありますが、インターフェロンが効く人は、その中の2型の人で、ウイルスの量が少ない人も効きます。そういう患者にはインターフェロン治療を受けることを積極的に勧めています。しかし、効かなくても発がん率が下がる傾向があり、若い人でC型肝炎の人は一度は治療を受けてみたらよいと思います。日本では35〜40%の人が著効となり、ウイルスがなくなって肝炎が治る。しかし、効かない人も60〜65%もいることを考えなくてはいけません。
 最近、岐阜大学の研究チームが、がん細胞を正常細胞に変える作用のある非環式レチノイドというビタミンの誘導体を、肝硬変の患者に使えないかという研究を進めています。私たちは、がんの再発を減らす薬剤として使えないかと期待しています。肝がんの早期発見には定期的に腫瘍マーカーを測る、腹部エコーやCTなどをすることも大切で、手術やエタノール局所注入などの治療により5年生存率も上がっています。アルコールと肝がんとの関係については、アルコールを飲んでいると、ウイルスの数が増える印象があり、結果として肝がんになる期間が短くなります。アルコールが発がんに影響を与えているかもしれない、と思っています。このことからC型肝炎の患者さんにはお酒を飲まないよう指導しています。
              (健康ネットより)
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