食行動をかんがえる

ここでは、 食行動をかんがえる に関する情報を紹介しています。
“食行動”とは食物摂取に関係するさまざまな行動をいいます。したがって、広い意味では、食品の生産、加工、貯蔵、流通、そしてそれらの食品を選択し、購入し、調理して摂食することまでを含むことになります。
 ここでは、このうち摂食、つまり食べるという現象に関係する行動を主に考えることにします。
 ところで食習慣ということばがよく使われます。これは一定の食行動が意識的に、または無意識にくり返し行われることにより、日常生活の中に定着した習慣をいいます。ですからふだん、きちんと朝食をとっていた人が、宴会で夜おそくまで飲食した翌日、朝食を食べなかった場合などは、いつもの食習慣からはずれた、特異な食行動をしたことになります。
 私たちのからだは、たとえば朝食ぬきのような、問題ある食行動によって、さまざまな影響をうけるのです。

食べるものの選択はどのように行われるか

 まず、食行動の対象となる食品(食べ物)について、からだが、食べてよいかどうかを、どのようにして選択するかを考えてみます。

1 食物選択のしくみと食行動への影響

・からだには、食べられるものかどうかをチェックするしくみが備わっている
 口に入れるものが食べられるか食べてはいけないものかを決めることは重要です。まず、外観から、嗅ぐ、視る、聴く、触れるなどの感覚をとおして選別します。次いで舌で小さな石ころなどの異物の混入を防ぎ、味を識別します。変なものを口に入れてしまったときは、これを吐き出す反射のしくみも備わっており、胃では強力な胃酸(塩酸)で殺菌します。

・食物の好き嫌いを左右するもの
 今までに一度も口にしたことのない食物をみれば、つい食べるのをためらいます。これは「食わず嫌い」といわれるものです。
 ある食物を食べたあとに、吐き気や腹痛などの不快な経験をすれば、二度と食べたくなくなります。肉嫌い、魚嫌いなどがこの例で、これは自分の経験だけでなく、他の人の経験でもおこります。
 ある食物を食べたあとに、快感を味わうと、その食物をよく食べるようになるものです。
 私たちは、こうしたいわば学習をくり返しながら、食べるものの枠をひろげたりせばめたりしているのです。

2 からだの状態による影響

 味覚(甘・酸・辛・苦味)は、加齢とともに低下し、60歳代をすぎると急激に衰えます。また、微量金属元素の摂取量が不足した場合や、がん患者が治療のために頭部や頸部に放射線治療を受け、味らいが破壊された場合などに味覚障害をまねくことがあります。味覚障害をきたすと食欲が低下し、摂食量も減ってくるため、栄養上の問題が生じやすくなります。

3 性・年齢別にみた嗜好の特徴

・女性に多い甘味嗜好
 一般に、甘味嗜好は、男性より女性のほうが強いようです。しかし、男性は甘味が嫌いになるわけではなく、アルコールなど他の嗜好品を用いることが多くなるので、相対的に女性よりめだたなくなるのだという意見もあります。

・年齢によって変化する嗜好
 年齢別に、嗜好を調べた報告によると、次のような傾向がみられます。
 10歳代は「洋風、こってり味、甘味」を好み、「和風、スパイス、アルコール」を嫌います。そして、30歳代からしだいに「甘味」離れが生じ、40歳代では「和食」を好む傾向が増してきます。そして60歳代になると「和食のみを好んで他を嫌う」ようになるといわれます。
 年齢とともに、淡白な好みに変わるといえます。

4 健康情報の影響

 現代では、緑黄色野莱ががんの予防によいとか、魚を食べると動脈硬化が防げる、などの健康情報がひんぱんに流れています。こうした情報も嗜好に影響を与えていると考えられます。

食べるタイミング・回数、摂食時間と健康への影響

1 食べる時間帯(タイミング)

・正常な生体リズムを保つことが重要
 生体内には一昼夜(24時間)を周期とする日内リズム(体内時計)があります。このリズムが神経系、内分泌や代謝系を調整し、体内の恒常性を保っているのです。私たちが朝・昼・夜と規則正しい食事をすることも、体内の日内リズムをかたちづくる重要な因子となっているといわれています。

・食べるタイミングの重要性
 いつも決まった時間帯に食事をとっていると、からだはそれを記憶していて、予定していた時刻になると消化酵素などを分泌して準備状態にはいります。そのため、栄養素が効率よく体内にとりこまれるのです。
 逆に、こうしたリズムを無視して、朝食をぬいたり、夜遅く予定外の時刻に食べたりして、不規則な食事を続けていると栄養素の吸収がわるくなるだけではありません。生体の内部環境が乱れ、からだ全体の調和を失うことにもなります。

2 食べる回数

 食事の総量(エネルギー量)が同じなら、なるべく回数を多くしたほうが望ましいといわれています。しかし実際には、仕事などの関係で、1日に5食、6食というわけにはいきません。

・1日3回、上手にふりわけて食べる
 やはり、1日3食にできるだけ上手にふりわけて食べることがよいでしょう。朝食ぬきでは午前中の作業能率が落ちるし、夜にいちどに食べるのは体脂肪が蓄積しやすいので避けることです。
 また、脳の栄養面からも1日3回食が重要です。脳の重量は体重の50分の1にしかすぎませんが、エネルギー消費量は全体の5〜6分の1にもなります。そのエネルギー源はブドウ糖であり、不足すると意識障害が起こることもあります。ブドウ糖の供給源は肝臓内のグリコーゲンで、その貯蔵量は60〜80gにすぎません。この量では24時問、脳へブドウ糖を供拾することができず、少なくとも3回の食事で肝臓内にグリコーゲンを貯蔵し続ける必要があるのです。

3 摂食時間

・1回の食事についやす時間が長いか短いかについて
 幼稚園児、大学生を対象にした調査によると、摂食時間の長短はすでに幼児期に固定し、女性では体型の大きい人ほど、1回の食事についやす時間が短くなるといわれています。
 また、太っている人とそうでない人とを比べた調査があります。それによると、肥満度の高い人ほど 1回の食事についやす時間は短く、そしゃく回数が少なくて、よく水を飲むという傾向がみられています。

食行動の異常(乱れ)をおこす要因

1 心理的ストレスと食行動

 私たちが心理社会的ストレスをうけたとき、ゆううつになり仕事の能率も低下するとともに、食欲がなくなり、食事が不規則となって栄養障害があらわれることはよく経験します。

・やり場のない気持ちから過食にはしることもある
 強い心理的ストレスをうけたとき、過食におちいり、肥満するケースもしばしばみられます。これは、ストレスによるやり場のない気持ちを、無意識のうちに、食べることによってまぎらすためだといわれています。

・女性にみられる拒食や気晴らし食いなど食行動の異常
 若い女性で、肥満に対する嫌悪や、女性として成熟していくことを拒否し、意識的に極度の減食をはかることがあります(神経性食欲不振症)。
 また、心理的ストレスの加わったとき、欲求不満のあらわれとして“気晴らし食い”もみられます。冷蔵庫をあけて手あたりしだいにむさぼり食ったり、食後みずから嘔吐をくり返したりします。
 このように、心理的ストレスにより、摂食障害をきたし、極度のやせ、肥満などの栄養障害をおこすことがあるのです。

2 生活習慣と食行動

 習慣化した食行動が、いわゆる成人病などの遠因となることがあります。
 仕事でも余暇のときでも競争心が強く、いつも時間に追われている感じがあり、絶えず物事を達成する意欲をもつタイプの人は「食事のスピードが速く、食べてすぐ仕事を行い休息をとらない」ために、虚血性心疾患になりやすいことが指摘されていよす。十分な休養をとり、せめて朝食をきちんと食べる習慣をつけてほしいものです。

現代における食生活の変容と食行動

 近年、わが国の食生活の内容はめまぐるしく変容し、食行動もそれにつれて変化してきています。

1 簡便化

 万能調理器、電子レンジなどの発達、冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品、半調理・調理ずみ食品なども広く普及しています。それにともない、台所での調理作業は少なくなり、食品を購入して簡単に手を加え、あるいはそのまま食卓に出すという食行動が一般化しつつあります。このような食事の簡便化は、一方では主婦労働を軽滅させ、社会参加をますます増大させてもいます。

2 摂食する場の多様化

 食事は家庭でつくり、家族そろって食べることが安全で、経済的で、健康管理に適しているという考えも変わりつつあるようです。近年は、ファーストフードやファミリーレストランなどの普及で、外食する機会が増大しています。
 また、テイクアウト商品や総菜などの普及により、特定の場所に限定されないで、どこででも食べる、というように食行動の変化もみられます。

3 健康志向化

 からだにわるい影響を及ぼさないもの、あるいは健康によいものを選ぼうとする人もふえています。これは、いわゆる自然食品とか健康食品を求める健康志向型食行動ともいえます。
 人間はもともと雑食性であり、全面的に悪い食品や、これさえ食べていれば万全という食品は存在しません。一定の食品ばかりにかたよりを生じさせないことも大切です。

おわりに―自分の食行動を見直してみよう

 自分がいま、どんな食行動をとっているか、いちど見直してみる必要があります。
 以下に、チェックポイント項目を列記します。

1 食事のリズム
・毎日規則正しく食事をしていますか
・間食や夜食はとらないようにしていますか
2 好み
・味つけは薄味にしていますか
・お酒はほどほどにしていますか
3 食事のとり方
・食事はいつも腹八分目にしていますか
・よく噛んで食べていますか
4 食事の場
・なるべく家族といっしょに食べるようにしていますか
・外食はできるだけ少なくしていますか

 これらを参考にして、問題点がみつかったら、その食行動を修正し、よい食習慣を身につけるようにしましょう。

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