日本食は健康食

ここでは、 日本食は健康食 に関する情報を紹介しています。
▼野菜や果物が長寿食の最大公約数

 京都大学大学院の家森幸男教授(人間環境学研究科)は、世界25カ国、58地域で、食生活と健康・長寿の関係を調査してきた。その結果、食事内容やとり方が長寿と短命の分かれ目になることを突き止めた。

 世界でも有数の長寿村として知られるコーカサス地方。現在はグルジア共和国と呼ばれるこの地方の人々は、野菜や果物を皮や種まですっかり食べてしまうという。

 同じように長寿で有名な南米アンデス山中のビルカバンバという村でも、野菜と果物は食事の中心。さらに、シルクロードのオアシス都市でも、野菜や果物が豊富な夏だけでなく、冬の間も地下の自然の冷蔵庫に野菜や果物を貯蔵して、一年中食べているという。

 また、気候が温暖なハワイの人々は果物をよく食べる。日本で最高の長寿県、沖縄では、料理にニガウリなどの野菜がふんだんに使われている。

 このように、長寿で知られる地域では、野菜や果物を非常によく食べており、これが長寿食の最大公約数だと、家森教授は結論している。   

▼カリウム、食物繊維、ベータカロチンのおかげ

 なぜ野菜や果物が長寿食の最大公約数なのか?

 家森教授はその理由を、野菜や果物に含まれる栄養成分のカリウム、食物繊維、ベータカロチンにあると説明する。  このうち、カリウムと食物繊維は、食塩の害を減らすのに有効だという。食塩の過剰摂取は、高血圧や脳卒中、胃がんなどの原因とされる。野菜や果物を食べてカリウムを多く摂取すると、カリウムは血液中に吸収されたあと、腎臓から尿の中に排せつされていく。このとき、食塩の成分であるナトリウムを一緒に体外に連れ出してくれるのだという。

 食物繊維にも同じような働きがある。食物繊維は、胃や腸では消化されないため「腸の掃除屋」として知られるが、便として排せつされる際、消化管内の食塩を道連れにして、食塩の害を防いでくれる。

 一方、ベータカロチンといえば、がん予防だけでなく健康づくりに不可欠の緑黄色野菜に豊富に含まれる栄養成分だ。ベータカロチンには抗酸化作用があり、動脈硬化の予防に役立っている。

  動脈硬化の発生にはコレステロールが深くかかわっており、善玉(HDL)と悪玉(LDL)に分けて、悪玉のLDLがやり玉に上げられてきた。ところが最近の研究によって、LDLが増えても、それが酸化するのを防ぐことができれば、動脈硬化になりにくいことがわかってきた。そこで注目されたのが、ベータカロチンやビタミンCなどの抗酸化物質だ。これらは、緑黄色野菜や果物に豊富に含まれる。したがって、緑黄色野菜や果物をたっぷり食べている人々は動脈硬化を免れ、天寿をまっとうするまで長生きできることになる。   

▼魚のDHA、EPA、タウリンは健康の鍵

 家森教授は、魚をよく食べる地域の人々は概して長生きしていると指摘する。これは、魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸と、タウリンなどのアミノ酸のおかげだという。

 DHAやEPAなどの脂肪酸には、中性脂肪や血圧を下げ、血栓をできにくくする作用がある。したがって、魚をよく食べてDHAやEPAをたっぷり摂取していれば、高血圧や動脈硬化の予防に役立ち、心筋梗塞などの心配も少なくなる。

 一方、タウリンなどのアミノ酸は、内臓にも豊富に含まれる成分だが、肉より魚に多く、コレステロールの吸収を妨げたり排せつを促して、動脈硬化を防ぐ作用がある。   

▼牛乳、乳製品は完全栄養食品

  牛乳や乳製品というと即座にカルシウム源と考えがちだが、たんぱく質やビタミン、ミネラルも含まれ、ほぼ完全な栄養食品だ。

 家森教授の調査では、長寿で有名なコーカサスやビルカバンバの人々は、実によく乳製品を食べているという。

  コーカサスでは、野菜や果物を山のように食べるだけでなく、朝、昼、晩とヨーグルトを飲んでいる。これが、良質のたんぱく源になっているというわけだ。

 ビルカバンバでは、放牧が主産業なので、当然ミルクは豊富にある。ここでは、「ケソ」と呼ぶチーズをつくって、日本のミソのような感覚でスープや炒めもの、サラダなどの味つけに使っているという。

 一方、コーカサスやビルカバンバとは異なり、決して土壌が豊かではないアフリカの砂漠に住むマサイ族も乳製品をよく摂取しているという。家森教授は、マサイ族は一日に3〜10リットルもの牛乳(発酵乳)を飲んでおり、そこに含まれる良質のたんぱく質やカルシウムが彼らの生命の源になっていると指摘する。   

▼動物性脂肪のとり過ぎは短命につながる

 近年、わが国では、心臓病が増えたり、がんの中でも大腸がんが急増するなど、病気や死亡原因が欧米化する傾向にある。その原因として、食生活の欧米化、つまり動物性脂肪の過剰摂取が挙げられている。

 動物性脂肪は肉や魚に含まれるが、肉と魚の脂肪の性状は異なり、問題になるのは肉の脂肪のほうだ。

 肉の動物性脂肪をとり過ぎると、血液中のコレステロールが増えて血管壁にたまり、動脈硬化から心筋梗塞を引き起こす。若いうちから動脈硬化が進めば、当然命を永らえることはできない。

 動物性脂肪のとり過ぎが短命につながることは、家森教授の調査によっても明らかになった。といっても、肉を食べることがいけないのではなく、問題なのは脂肪の部分。脂肪を取り除いて食べる工夫をすれば、貴重なたんぱく源になる。

 コーカサスでは、羊肉を木の枝に突き刺して焼く「シャシュリク」という料理が好まれている。シルクロードのシシカバブに似た調理法で、焼いている間に脂肪が落ちてしまう。また、沖縄料理では、豚肉のありとあらゆる部分が好んで使われるが、十分にゆでて脂肪を抜いている。いずれも長寿で名高い地域だ。

 一方、ブラジルの代表的な肉料理であるシュラスコは、肉に岩塩をつけて焼く。脂肪をあまり落とさないうえに岩塩をつけるので、動物性脂肪と食塩という悪条件が重なってしまう。

 ブラジルでは日本からの移民がたくさん暮らしているが、このような食生活を続けているため、家森教授の調査で、心臓に異常のある人が日本の2倍も見つかったという。また、ブラジルのカンポグランデの日系人は、沖縄から移住した人たちの子孫だが、沖縄の人たちの寿命に比べて、平均十七年も短命であることがわかっている。   

▼日本食が脚光を浴びる理由

 20年ほど前、心筋梗塞の多発に危機感をつのらせたアメリカでは健康と食生活に関する見直しが行われ、日本型食生活が最も好ましいとする「マクガバンリポート」がまとめられた。「寿司バー」に代表される日本食ブームは、それがきっかけで起こった。  

 日本食が健康食として脚光を浴びたのは、摂取エネルギーの5〜6割をコメの炭水化物からとっている点だ。

 欧米では、総エネルギーの半分近くを肉類の脂肪からとっているため、血液中のコレステロールが高くなり、動脈硬化から心筋梗塞を招きやすい。また、パンやパスタなどは、コメと同じ穀類からつくられているといっても、穀類を粉にして調理されたものは消化吸収が早く血糖値が上がりやすいので、糖尿病につながってしまう。その点、コメを粒のまま食べる日本食は、糖尿病予防という点でも優れている。

 農林省食品総合研究所企画連絡室長で農学博士の鈴木建夫氏は、日本食の食材の豊かさに注目している。日本型食事は主食、主菜、副菜の三本柱で構成されるが、主食のご飯には味がついていないため、どんな食材とも合うという利点がある。また、動物性脂肪と植物性脂肪をほぼ同じ割合で摂取したり、根菜類を常食にしていること、海藻やキノコを頻繁に食べていることなど、ほかの国には見当たらない食生活の特徴が、日本人の長寿を支えていると指摘する。   

▼最近の日本食は大丈夫?

   しかし、すべての日本人が理想的な食事をとっているわけではない。若者や単身赴任者、あるいは独り暮らしの高齢者などでは、主食、主菜、副菜という三本柱は崩れがちだ。特に、若者のなかには、ハンバーガーに象徴されるファーストフードが中心というケースや、肉などの動物性脂肪やジュースなどから砂糖をとり過ぎる傾向が強く、欧米型のワンパターンの食生活がまかり通っている。その結果、若い世代にも糖尿病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病が増えている。

 このような傾向に対し、管理栄養士の田口素子さん(国立健康・栄養研究所研究員)は次のようにアドバイスする。  「正しい食習慣を身につけるには、小さいころからの家庭での栄養教育が大切です。だんらんのある食卓で適切な栄養をとることは、精神的な安定にもつながります。食習慣を急に変えるのは無理があるため、今よりもワンランクアップを目指し、少しずつ改善していくとよいでしょう。身近な栄養士や健康運動指導士に相談することをおすすめします」

 厚生省では、健康の保持・増進のために、最低でも一日30品目の食品をとることを提唱している。ここで改めて、豊富な食材を生かした伝統的な日本食を見直し、方向転換を図りたいものだ。

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2008/11/11(火) 15:34 | | #[ 編集]
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