▼ 見直される嗜好品
自分に合った飲み物を
コーヒーやお茶など日常生活に欠かせない嗜好品が、健康の面から再認識されている。朝起きての一杯はからだを目覚めさせ、午後の一杯は仕事や家事で張りつめた神経を解きほぐす。そんな効果に加え、コーヒーやお茶の成分ががんの発生を抑えるという学会での発表などが新聞などで目につくようになってきた。よく調べてみると、これらの嗜好品はさらに多彩な効果をもっていることが最近になって分かってきた。
嗜好品の三つの要素
漢方の専門家でもある丁宗鉄・東京大学医学部助教授(生体防御学)は「嗜好品は香辛料と並んで、食品と医薬品のちょうど中間に位置している。最近は抗ストレスや基礎代謝など、生体防御の観点からコーヒーなどの嗜好品を見直すことが必要になってきている」と指摘している。
欧米でも現代のいわゆる西洋医学のほかに”精神的な癒し“が重要と考えられるようになり、食事や運動療法を評価する「オルターナティブ・メディシン」(訳しにくいが、東洋医学や民間療法などを含んだ広範な”代替的な医学“を意味する)の講座が急増している。1993年にハーバード大学に初めての講座ができて以来、既に全米で40の講座ができているという。
その基になったのが米国立衛生研究所(NIH)の実態調査で、民間療法などの利用者は知識の少ない下層の階級だと思われていたが、予想に大きく反し、過半数の知識階層が利用していたという驚くべき結果が政府の方向転換を促したそうだ。
さて丁助教授は、コーヒーやココア、緑茶、紅茶など人類に長く愛飲されてきた嗜好品について「共通しているのは、ほど良い香りと渋みがある上に、中枢神経を引き立てる高揚感が得られる―という3つの要件を満たしていること」と解説する。
コーヒーの引き込まれるようなよい香りをかぐと、何とも言えないよい気分になる。コーヒーに限らず、嗜好品の香りは精油成分で、粘膜から吸収されるので精神を瞬時にリラックスさせる働きがあるという。
適度な渋み成分はカテキン。一般的にはタンニンと呼ばれる物質だ。
各民族がまったく独立別個に、これらの共通する三要素を持つ飲み物を嗜好品にしている点、思ったより深い所で人間の本能につながっているらしい。
特にカフェインなどが持つ、中枢神経系に働き掛ける興奮作用にこだわっている点は、人類が無意識に嗜好品を欲しがることを説明しているようだ。生命の根元的な場所である脳幹を刺激するので、なかなかやめられないということらしい。
カフェインの効果
「コーヒーには中枢神経系を興奮させるカフェインが多いこと(1カップに約0.1グラム)が知られているが、緑茶は約2倍も入っている。しかし、利尿作用を持つテオフィリンなどの物質があるため、カフェインが影響する時間が短い。コーヒーのカフェインが嫌な人は、一緒にチョコレートを食べるとカカオの利尿作用で時間が短くて済むようになる」(丁助教授)。
紅茶にもカフェインは多いが、カフェインは中枢神経の深い所で働くため、作用は結構、個人差がある。
通常は疲労感や眠気を除去し、強心作用があることが知られているが、コーヒーを飲むと夜眠れない人がいるかと思えば、眠れない時にコーヒーを飲むとよく眠れる人も実際にいる。自分に合った飲み物、飲み方を身に付けることが大事だ。
カフェインは、いわばこのようにからだのスイッチの切り替えを促進する作用がある。疲れると、この切り替えがうまくいかず、そんな時にぜんそくやアトピーが出やすくなるが、カフェインの作用で平滑筋は弛緩し、心筋は収縮が増強するようになり、ぜんそくに対しても抑制的に働く。
カフェインは基礎代謝を高進させる作用もある。基礎代謝は体温が上がると盛んになるが、ちょうどそんな作用をカフェインは短時間で行う。気分を引き立てることで活発で朗らかになるとともに、からだの防御能力が向上し、風邪などもひきにくくなるというわけだ。
昔、一時カフェインに発がん性があると言われた時期があったが、現在はコーヒーも全体としてがん抑制に働くことが分かっている。
コーヒー豆は煎ることによってはじめてカフェインが遊離して出てくる。丁助教授は、コーヒーの焙煎と漢方薬にどこかで接点があるかもしれないと指摘する。
カフェインだけでも多くの効用が指摘できるが、丁助教授は「ただし、コーヒーを含め、カフェインを含む飲み物は、裏返しとして、胃酸が活発な人は胸やけしやすくなるし、心臓に基礎疾患がある人は飲み過ぎるとよくない。また、潰瘍性大腸炎のある人では出血しやすくなる(本人は気付かない)ので注意が必要」と話している。
ダイエットにコーヒー
カフェインを健康増進効果という面からみてみよう。基礎代謝を上げるということについては前述したが、最近注目されているのが、体内の脂肪を分解させるダイエット効果だ。
このごろ、ジョギングなどの運動をする前にコーヒーを飲むといい、ということが言われ出した。
通常、運動すると体内ではエネルギー効率のよい炭水化物が、まず消費される。運動選手はこのため、レース直前におモチやご飯などを食べる。通常、炭水化物に比べ、脂肪に”火がつく“のはかなり後になってからだ。
しかし、カフェインが体内に入ると、脂肪を燃やす酵素のリパーゼを刺激し、脂肪を脂肪酸とグリセリンに効率よく分解する働きがある。分解された脂肪酸は血液中に入って筋肉に送り込まれ、燃費のよい良質のエネルギー源になる仕組みだ。
実際、体内での脂肪分解は、1杯のコーヒーで15分〜3時間も続くことが実験で確かめられている。
こうしたことから、ダイエット効果を狙ってコーヒー、プラス運動という人も増えているようだ。
もっとも、このダイエット効果はカフェインが主なものなので紅茶でも構わない。マラソンの瀬古選手は現役時代は紅茶をベースとしたスポーツドリンクを用意していたそうだ。
コーヒーそのものの効用では、岐阜大学医学部によるハムスターの実験で、発がん物質を与えた場合、40%にがんが発生したが、コーヒー成分のうちのクロロゲン酸を同時に与えると、がんの発生はゼロだったという報告が出ている。
スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究では、コーヒーを1日6杯以上飲む人は大腸がんが少ないという疫学的な結果が出ている。
コーヒーは各メーカーが力を入れていることもあって精力的に実験が行われているせいか、効能を挙げるとすごい。
飲むコーヒーの濃度が上がるほど、老化の引き金となる活性酸素を分解・消去するというもの。コレステロール値を下げたり、B型肝炎の発病を抑制したりするとの報告もある。またコーヒーの香りが脳の集中力を高めるという報告も1994年の国際コーヒー科学会議で出されている。
紅茶でうがい
今度は紅茶をみてみよう。
風邪の予防に紅茶でうがいすると効果があると言われる。紅茶の成分は、同じお茶として緑茶成分とかなり共通しているが、紅茶の特徴は、あの鮮紅色の成分であるテアフラビンで、カテキンの酸化物だ。
テアフラビンは抗菌、抗毒素、抗ウイルス作用に優れている。インフルエンザウイルスの活動、増殖を即座に抑えることが確認されており、紅茶でうがいすると、市販のうがい薬より効果があったとの報告もある。うがいには、出がらし紅茶でよいそうだ。
しかし、ミルクティーにすると、テアフラビンがミルクのたんぱく質と結びついて、作用が弱まるという。
また紅茶にはフッ素が含まれているので虫歯予防にも有効とされている。
がん予防効果が次々と報告されている緑茶はどうだろうか。日本人にとっては、まさに「日常茶飯事」の飲み物のはずだが、これが健康維持に効いているのかもしれない。
もともと、お茶は中国で古くから薬として珍重されてきたこともあり、現代科学によって効能が再確認されてきたということになる。渋み成分の茶カテキンについては、紅茶をはじめ、さまざまなお茶に共通する効能といってよい。
まず緑茶が注目され始めたのは、約20年前、お茶の産地周辺では、がん死亡率が低いという事実に静岡県立大学の研究者が気付いたことがきっかけだった。
例えば静岡県内のお茶の生産地では胃がんをはじめ、がんによる死亡率が全国平均に比べ、5分の1、3分の1という低さだった。
疫学調査が行われた結果、明らかにがん死亡率が低い所は、お茶の消費量が多い所であることが判明。緑茶に、がん細胞の増殖を抑える抗腫瘍作用があるのではないかと考えられたことから、がんを移植した動物で実験が始められた。
緑茶抽出物を使った実験の結果、そのことが確かめられ、抗腫瘍作用は渋み成分の茶カテキンであることが突き止められた。
さらに、がんの発生そのものを抑える発がん抑制作用を確かめるために、マウスに発がん物質と茶カテキンを投与して比べる実験を実施。その結果、発がん物質とともに茶カテキンを投与することにより、発がんを著しく抑制することも分かった。
自分の嗜好を大事に
現在は実際に人間で具体的なデータを得るため、米国テキサス大学がんセンターで、茶カテキンを投与するがん予防の臨床試験が進行中だ(日本では普段でも緑茶を飲む人が多いので、効果がはっきり出ない恐れがあり、緑茶を飲まない米国で実施している)。
一九九七年秋の日本がん学会で発表した埼玉県立がんセンターによると、一日十杯以上の緑茶を飲む人では、一日三杯以下および同四〜九杯飲む人に比べ、平均して男で三年、女で七年、がんにかかる年齢が遅くなっていた。
特に肺がん、大腸がん、肝がんに強い予防効果が見られたという。
緑茶にはカロチンのほか、ビタミンCやEなどビタミンも豊富に含まれている。これらは抗酸化作用を持つ代表的な物質で、老化を促進する活性酸素の生成を抑えたり、動脈硬化の原因となる過酸化脂質の生成や蓄積を防ぐ。さらに老化だけでなく、生活習慣病である高血圧や糖尿病などを防ぐ作用もある。
紅茶のところで触れたカテキンの抗菌、抗毒素、抗ウイルス作用も見逃せない。緑茶の場合、カテキンの中でもエピガロカテキンガレート(EGCG)が最も高い活性を持ち、病原菌の毒素たんぱくを無毒化する。がんの予防でも、このEGCGが中心になっていることが最近、分かってきた。
お寿司屋さんに行くと、大きな茶碗で出てくる「上がり」も、まさに食中毒予防の知恵と言えそうだ。病原性大腸菌O157についても緑茶は効果があるとされている。
茶カテキンやカフェインは、お湯の温度が高いほど、よく溶け出す性質を持っている。しかし、お茶のおいしさは、少しぬるめの湯で溶け出すうま味(テアニンやグルタミン酸)と、高温で出る渋み(カテキン)のほどよいバランスから来るので、風味や香りを大事にして、おいしく味わいたいところだ。
これまで嗜好品の効能について、いろいろ述べてきたが「嗜好品はあくまで嗜好品」ということも事実だ。
丁助教授は「毎朝起きて、一杯のお茶やコーヒーが気分をしゃきっとさせる嗜好品の役割は、からだにとって非常に大事なこと。多くの嗜好品が健康によいことが次々と分かってきたが、がん予防のためにわざわざ飲み物を変えて緑茶を十杯飲むというのではナンセンス。自分に合った飲み物を自分に合った飲み方で飲み、生活を豊かにしていくことが大事」と話している。
●カフェイン含有量●
コーヒー豆 0.7 ─ 2%
緑 茶 1.2 ─ 4%
カカオ豆 0.2 ─ 0.3%
良心的スポーツ店
ガン末期からの生還他ビデオ特集
コーヒーやお茶など日常生活に欠かせない嗜好品が、健康の面から再認識されている。朝起きての一杯はからだを目覚めさせ、午後の一杯は仕事や家事で張りつめた神経を解きほぐす。そんな効果に加え、コーヒーやお茶の成分ががんの発生を抑えるという学会での発表などが新聞などで目につくようになってきた。よく調べてみると、これらの嗜好品はさらに多彩な効果をもっていることが最近になって分かってきた。
嗜好品の三つの要素
漢方の専門家でもある丁宗鉄・東京大学医学部助教授(生体防御学)は「嗜好品は香辛料と並んで、食品と医薬品のちょうど中間に位置している。最近は抗ストレスや基礎代謝など、生体防御の観点からコーヒーなどの嗜好品を見直すことが必要になってきている」と指摘している。
欧米でも現代のいわゆる西洋医学のほかに”精神的な癒し“が重要と考えられるようになり、食事や運動療法を評価する「オルターナティブ・メディシン」(訳しにくいが、東洋医学や民間療法などを含んだ広範な”代替的な医学“を意味する)の講座が急増している。1993年にハーバード大学に初めての講座ができて以来、既に全米で40の講座ができているという。
その基になったのが米国立衛生研究所(NIH)の実態調査で、民間療法などの利用者は知識の少ない下層の階級だと思われていたが、予想に大きく反し、過半数の知識階層が利用していたという驚くべき結果が政府の方向転換を促したそうだ。
さて丁助教授は、コーヒーやココア、緑茶、紅茶など人類に長く愛飲されてきた嗜好品について「共通しているのは、ほど良い香りと渋みがある上に、中枢神経を引き立てる高揚感が得られる―という3つの要件を満たしていること」と解説する。
コーヒーの引き込まれるようなよい香りをかぐと、何とも言えないよい気分になる。コーヒーに限らず、嗜好品の香りは精油成分で、粘膜から吸収されるので精神を瞬時にリラックスさせる働きがあるという。
適度な渋み成分はカテキン。一般的にはタンニンと呼ばれる物質だ。
各民族がまったく独立別個に、これらの共通する三要素を持つ飲み物を嗜好品にしている点、思ったより深い所で人間の本能につながっているらしい。
特にカフェインなどが持つ、中枢神経系に働き掛ける興奮作用にこだわっている点は、人類が無意識に嗜好品を欲しがることを説明しているようだ。生命の根元的な場所である脳幹を刺激するので、なかなかやめられないということらしい。
カフェインの効果
「コーヒーには中枢神経系を興奮させるカフェインが多いこと(1カップに約0.1グラム)が知られているが、緑茶は約2倍も入っている。しかし、利尿作用を持つテオフィリンなどの物質があるため、カフェインが影響する時間が短い。コーヒーのカフェインが嫌な人は、一緒にチョコレートを食べるとカカオの利尿作用で時間が短くて済むようになる」(丁助教授)。
紅茶にもカフェインは多いが、カフェインは中枢神経の深い所で働くため、作用は結構、個人差がある。
通常は疲労感や眠気を除去し、強心作用があることが知られているが、コーヒーを飲むと夜眠れない人がいるかと思えば、眠れない時にコーヒーを飲むとよく眠れる人も実際にいる。自分に合った飲み物、飲み方を身に付けることが大事だ。
カフェインは、いわばこのようにからだのスイッチの切り替えを促進する作用がある。疲れると、この切り替えがうまくいかず、そんな時にぜんそくやアトピーが出やすくなるが、カフェインの作用で平滑筋は弛緩し、心筋は収縮が増強するようになり、ぜんそくに対しても抑制的に働く。
カフェインは基礎代謝を高進させる作用もある。基礎代謝は体温が上がると盛んになるが、ちょうどそんな作用をカフェインは短時間で行う。気分を引き立てることで活発で朗らかになるとともに、からだの防御能力が向上し、風邪などもひきにくくなるというわけだ。
昔、一時カフェインに発がん性があると言われた時期があったが、現在はコーヒーも全体としてがん抑制に働くことが分かっている。
コーヒー豆は煎ることによってはじめてカフェインが遊離して出てくる。丁助教授は、コーヒーの焙煎と漢方薬にどこかで接点があるかもしれないと指摘する。
カフェインだけでも多くの効用が指摘できるが、丁助教授は「ただし、コーヒーを含め、カフェインを含む飲み物は、裏返しとして、胃酸が活発な人は胸やけしやすくなるし、心臓に基礎疾患がある人は飲み過ぎるとよくない。また、潰瘍性大腸炎のある人では出血しやすくなる(本人は気付かない)ので注意が必要」と話している。
ダイエットにコーヒー
カフェインを健康増進効果という面からみてみよう。基礎代謝を上げるということについては前述したが、最近注目されているのが、体内の脂肪を分解させるダイエット効果だ。
このごろ、ジョギングなどの運動をする前にコーヒーを飲むといい、ということが言われ出した。
通常、運動すると体内ではエネルギー効率のよい炭水化物が、まず消費される。運動選手はこのため、レース直前におモチやご飯などを食べる。通常、炭水化物に比べ、脂肪に”火がつく“のはかなり後になってからだ。
しかし、カフェインが体内に入ると、脂肪を燃やす酵素のリパーゼを刺激し、脂肪を脂肪酸とグリセリンに効率よく分解する働きがある。分解された脂肪酸は血液中に入って筋肉に送り込まれ、燃費のよい良質のエネルギー源になる仕組みだ。
実際、体内での脂肪分解は、1杯のコーヒーで15分〜3時間も続くことが実験で確かめられている。
こうしたことから、ダイエット効果を狙ってコーヒー、プラス運動という人も増えているようだ。
もっとも、このダイエット効果はカフェインが主なものなので紅茶でも構わない。マラソンの瀬古選手は現役時代は紅茶をベースとしたスポーツドリンクを用意していたそうだ。
コーヒーそのものの効用では、岐阜大学医学部によるハムスターの実験で、発がん物質を与えた場合、40%にがんが発生したが、コーヒー成分のうちのクロロゲン酸を同時に与えると、がんの発生はゼロだったという報告が出ている。
スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究では、コーヒーを1日6杯以上飲む人は大腸がんが少ないという疫学的な結果が出ている。
コーヒーは各メーカーが力を入れていることもあって精力的に実験が行われているせいか、効能を挙げるとすごい。
飲むコーヒーの濃度が上がるほど、老化の引き金となる活性酸素を分解・消去するというもの。コレステロール値を下げたり、B型肝炎の発病を抑制したりするとの報告もある。またコーヒーの香りが脳の集中力を高めるという報告も1994年の国際コーヒー科学会議で出されている。
紅茶でうがい
今度は紅茶をみてみよう。
風邪の予防に紅茶でうがいすると効果があると言われる。紅茶の成分は、同じお茶として緑茶成分とかなり共通しているが、紅茶の特徴は、あの鮮紅色の成分であるテアフラビンで、カテキンの酸化物だ。
テアフラビンは抗菌、抗毒素、抗ウイルス作用に優れている。インフルエンザウイルスの活動、増殖を即座に抑えることが確認されており、紅茶でうがいすると、市販のうがい薬より効果があったとの報告もある。うがいには、出がらし紅茶でよいそうだ。
しかし、ミルクティーにすると、テアフラビンがミルクのたんぱく質と結びついて、作用が弱まるという。
また紅茶にはフッ素が含まれているので虫歯予防にも有効とされている。
がん予防効果が次々と報告されている緑茶はどうだろうか。日本人にとっては、まさに「日常茶飯事」の飲み物のはずだが、これが健康維持に効いているのかもしれない。
もともと、お茶は中国で古くから薬として珍重されてきたこともあり、現代科学によって効能が再確認されてきたということになる。渋み成分の茶カテキンについては、紅茶をはじめ、さまざまなお茶に共通する効能といってよい。
まず緑茶が注目され始めたのは、約20年前、お茶の産地周辺では、がん死亡率が低いという事実に静岡県立大学の研究者が気付いたことがきっかけだった。
例えば静岡県内のお茶の生産地では胃がんをはじめ、がんによる死亡率が全国平均に比べ、5分の1、3分の1という低さだった。
疫学調査が行われた結果、明らかにがん死亡率が低い所は、お茶の消費量が多い所であることが判明。緑茶に、がん細胞の増殖を抑える抗腫瘍作用があるのではないかと考えられたことから、がんを移植した動物で実験が始められた。
緑茶抽出物を使った実験の結果、そのことが確かめられ、抗腫瘍作用は渋み成分の茶カテキンであることが突き止められた。
さらに、がんの発生そのものを抑える発がん抑制作用を確かめるために、マウスに発がん物質と茶カテキンを投与して比べる実験を実施。その結果、発がん物質とともに茶カテキンを投与することにより、発がんを著しく抑制することも分かった。
自分の嗜好を大事に
現在は実際に人間で具体的なデータを得るため、米国テキサス大学がんセンターで、茶カテキンを投与するがん予防の臨床試験が進行中だ(日本では普段でも緑茶を飲む人が多いので、効果がはっきり出ない恐れがあり、緑茶を飲まない米国で実施している)。
一九九七年秋の日本がん学会で発表した埼玉県立がんセンターによると、一日十杯以上の緑茶を飲む人では、一日三杯以下および同四〜九杯飲む人に比べ、平均して男で三年、女で七年、がんにかかる年齢が遅くなっていた。
特に肺がん、大腸がん、肝がんに強い予防効果が見られたという。
緑茶にはカロチンのほか、ビタミンCやEなどビタミンも豊富に含まれている。これらは抗酸化作用を持つ代表的な物質で、老化を促進する活性酸素の生成を抑えたり、動脈硬化の原因となる過酸化脂質の生成や蓄積を防ぐ。さらに老化だけでなく、生活習慣病である高血圧や糖尿病などを防ぐ作用もある。
紅茶のところで触れたカテキンの抗菌、抗毒素、抗ウイルス作用も見逃せない。緑茶の場合、カテキンの中でもエピガロカテキンガレート(EGCG)が最も高い活性を持ち、病原菌の毒素たんぱくを無毒化する。がんの予防でも、このEGCGが中心になっていることが最近、分かってきた。
お寿司屋さんに行くと、大きな茶碗で出てくる「上がり」も、まさに食中毒予防の知恵と言えそうだ。病原性大腸菌O157についても緑茶は効果があるとされている。
茶カテキンやカフェインは、お湯の温度が高いほど、よく溶け出す性質を持っている。しかし、お茶のおいしさは、少しぬるめの湯で溶け出すうま味(テアニンやグルタミン酸)と、高温で出る渋み(カテキン)のほどよいバランスから来るので、風味や香りを大事にして、おいしく味わいたいところだ。
これまで嗜好品の効能について、いろいろ述べてきたが「嗜好品はあくまで嗜好品」ということも事実だ。
丁助教授は「毎朝起きて、一杯のお茶やコーヒーが気分をしゃきっとさせる嗜好品の役割は、からだにとって非常に大事なこと。多くの嗜好品が健康によいことが次々と分かってきたが、がん予防のためにわざわざ飲み物を変えて緑茶を十杯飲むというのではナンセンス。自分に合った飲み物を自分に合った飲み方で飲み、生活を豊かにしていくことが大事」と話している。
●カフェイン含有量●
コーヒー豆 0.7 ─ 2%
緑 茶 1.2 ─ 4%
カカオ豆 0.2 ─ 0.3%
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