脳梗塞を防ぐために

ここでは、 脳梗塞を防ぐために に関する情報を紹介しています。
がんが日本人の死亡原因のトップとされているが、動脈硬化などによって血管が侵されて死亡するケースの方が実は多い。死因の二番目を占めているのが脳卒中だし、3番目が心臓病だ。双方に共通するのが動脈硬化による血管の病変である。この中で、一番侮れないのが脳卒中かもしれない。死に結びつくだけでなく、ぼけや寝たきりの原因になるからだ。特に問題になるのが脳梗塞。発症した場合、すぐに死亡する例よりも、からだが不自由になったり、ぼけたり後遺症が出るケースが格段に多く、それだけ介護をどうするかが大きな問題になってくる。高齢社会の到来とともに脳梗塞が増えているという。その予防と対策は―。

▼高齢社会で増加

寒い季節には、脳卒中が起きやすいとされているが、ほんとうにそうなのだろうか。確かに寒いと血管が収縮して血圧が上がり、脳出血は起こしやすくなるかもしれない。しかし最近の傾向は、必ずしも冬に脳卒中が多いとは言えないという。高血圧の予防や治療法が普及して、脳出血を起こす人がかなり減って、代わりに脳梗塞の割合が多くなってきたからだ。

 東大医学部の桐野高明教授(脳神経外科教室)は「脳出血は冬に多い傾向があるが、脳梗塞はあまり季節変動がない。脳卒中の中でくも膜下出血が10%、脳出血が10から20%、脳梗塞が大体70%を占めていて、しかも脳梗塞が増加傾向にあるので、脳卒中全体でもあまり季節変動はなくなっている」と説明する。

 脳卒中は、脳に酸素や栄養を送っている血管に異常が起きて、その結果、脳の働きに支障が起きた状態。脳出血やくも膜下出血は、血管が破れて出血してしまうし、脳梗塞では血管の一部分が詰まってその先に血液が流れなくなった状態だ。脳は血液が供給されないとひとたまりもない。「脳の重量は体重の2%強なのに安静時でさえ血液の15%も使っている。それほどエネルギーの消費が多い器官で、しかも厄介なことにいったんダメージを受けると元に戻りにくい」(桐野教授)という。

 気になるのは、高齢社会の到来とともに脳梗塞が増加傾向にあるという点だ。脳梗塞が起きると、その部分の脳細胞は血液不足のために死んでドロドロに軟化して、やがてそこが空洞になってしまう。脳梗塞が脳軟化症という別名で呼ばれるのはこうした理由による。



▼血栓と塞栓の2タイプ

 こうした脳梗塞は老化と密接に関係する。脳梗塞とひと口で言っても、発症のメカニズムの違いによって、二つのタイプに分けられるという。脳血栓の場合は、年齢とともに動脈硬化が起きて、血管の壁がボロボロになって傷つきやすくなる。傷んだ血管の内壁に血液中の血小板などが固まって付着したのが血栓だ。この血栓が厚くなってきて、血液の流れるすき間をどんどん細くする。やがてその血管の先にある脳細胞は血液不足になってくる。血流が40%まで落ちると、脳細胞の働きに支障が起こり、まったく血液が流れなくなると短時間のうちに脳細胞は破壊される。こうなったら決して元に戻ることはない。

 脳血栓は、徐々に血管が詰まる病気である。だが、発症すると進行は急激だ。典型的な症例は、朝起きたときに手足のしびれに気づき、おかしいな、と思っているうちに力が入らなくなり、まひが起きてくる。翌日には、まひがひどくなり、言語障害も起こるといった具合に進行することがあるのが特徴という。

 脳血栓が厄介なのは、大脳皮質などに栄養や酸素を供給している血管に血栓ができた場合は、急速に脳に障害が出てしまうケースが多い点だ。生命をとりとめても、後遺症が出て家族の介護が必要になることもしばしばある。そうなったら病人を介護する家族の負担は計り知れない。

 一方、脳塞栓はどうか。ほかの場所にできた血栓の破片が血液に乗って流れ、脳の血管を詰まらせるのが脳塞栓である。最初に血栓のできる場所は、日本人の場合は、多くは心臓という。心臓病などで心臓の弁や内壁が傷ついたり、心臓の拍動が不規則になったりすると、血栓ができやすくなる。それが、何かの拍子にはがれて、脳の血管まで流れていってしまう。「飛び火」したようなものと表現する人もいるくらいだ。

 だから、脳血栓は徐々にふさがるのに対して、脳塞栓は脳動脈がいきなり詰まることになるが、症状はともに急激に進行する。しかも、脳塞栓は太い動脈が詰まるため、やられる脳細胞の範囲が広く、重症のケースが多いという特徴がある。もう一つ見逃せないのは、ほかの場所に既に血栓ができているため、再び血栓の破片が流れて再発しやすいのだ。日本人は従来どちらかというと血栓の方が多いとされてきたが、塞栓タイプも増加の傾向を示している。

▼関心高まる前触れ

 忘れてならないのは脳梗塞には、現在のところ発症した後では、まだ確実な治療法がない点。そこで、脳梗塞の発症の前触れに関心が集まっている。その一つが一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれ、半身まひや失語症など脳梗塞と同じような症状が出現し、数分から24時間以内に回復してしまう症状である。

 どうしてこのような症状が出現するのだろうか。一つの理由は、首の血管にできた動脈硬化である。それが何かの拍子にはがれて、脳まで飛んでいき、小さな血管を一時詰まらせるが、やがて塞栓(はがれて飛んでいくのを塞栓という)が溶けて血流が回復する。詰まっていた間だけ、まひなどが起こり、血流が再開すると症状が消失するわけだ。

 もう一つは、脳の血管に動脈硬化があって、何かの拍子に血圧がストンと下がると、血液の流れが悪くなって、同じ症状が出ることがある。血圧がすみやかに元に戻れば、回復する。二つのケースとも、回復したといっても動脈硬化がそのまま残っているわけで、やがて本格的な脳梗塞につながる可能性も否定できない。4、5年で見ると一過性脳虚血発作を起こした人の20〜50%が脳血栓で倒れており、一過性脳虚血発作を、確かではない脳梗塞の前触れと指摘する専門医も多い。

 「一過性脳虚血発作を起こしたからと言って必ず脳梗塞になるわけでもない。判断は難しいところです。米国では頸動脈に70%以上の狭さくがあって、手術による合併症が3%以下の確率なら、手術をした方がいい、という報告がある。一過性脳虚血発作が起こった場合、日本では脳梗塞の予防にアスピリンや血栓溶解剤などを投与することが多いが、手術を行うことも多くなりつつある」と桐野教授は話す。  

▼高血圧の治療と定期的なチェックを

 だれしもぼけや寝たきりなど、老後に対する漠然とした不安を抱いている。このため、最近特に注目を集めているのが脳ドックだろう。脳ドックは日本が世界に先駆けて取り組んだ分野で、磁気共鳴診断装置(MRI)を導入する医療機関が増えたことが、脳ドック増加の大きな理由だ。7年前に発足した日本脳ドック学会の調べでは現在、全国で500施設近くが脳ドックを検診に取り入れていると推定されている。  


<脳梗塞の診断に使われるMRI画像>

 この脳ドックは、MRI診断と脳全体の血流を調べる脳断層血流画像診断(SPECT)、脳血管の状態を撮影するMRA検査、脳波検査などを組み合わせて総合的に診断する仕組みだ。脳ドック学会のデータでは、受診者のうち約20%から無症候性の脳梗塞が見つかっている。微小な無症候性の脳梗塞が見つかったからといって、果たして本格的な脳梗塞に結びつくのかどうか、現在のところ何とも言えない。無症候性脳梗塞が見つかって、要注意と言われてもどうしようもないという現実もある。  気になるのは何か予防法はないのかという点だろう。脳梗塞の大きな原因は動脈硬化だ。動脈硬化の大きな要因は老化だが、これはだれも防ぐことはできない。防ぐことができるとすれば高血圧がある。高血圧の人は、正常な人に比べて10年以上も早く血管の動脈硬化が進むとされており、高血圧の人は、降圧剤を使って血圧を正常に保つことが欠かせない。糖尿病や痛風、喫煙も動脈硬化を促進する。きちっとした治療を受けて、たばこをやめることが大切なことを示している。

 「近親者に脳卒中や老人性の痴ほうの人がいる人は、定期的に専門の医師のチェックを受けるほか高血圧、糖尿病や痛風の人は適切な治療を受けて、それ以上動脈硬化を進行させないように心がけることが欠かせない」と慈恵医大健康医学センターの豊原敬三講師は指摘している。

 高齢社会に突入した日本。加齢とともにがんや脳卒中などさらに血管病が増えるのは確実だ。豊原講師によると、現在日本では、脳の病気に対して支払われている医療費は、全医療費の2割以上を占めており、断然多い。死亡原因一位のがんに比べても、実に2倍以上の出費になるというのだ。命をとりとめてもぼけや寝たきりになるケースが多くて、それが医療費を多くしている原因らしい。

 その中で脳梗塞は、死なない病気になりつつあり、それだけ病気の後の後遺症が大きな問題になってくる。介護する家族だけでなく、社会がサポートする体制も必要になっていることを示している。
 
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2008/05/29(木) 07:54:54 | 病名・病気・医学のブログリンク集