▼ 心臓病について
Q:心臓病といってもさまざまですが?
A:生活習慣病として重要なのは、まず高血圧で起きる心臓病、それから虚血性心疾患とよばれる冠動脈の病気、つまり狭心症と心筋梗塞ですね。冠動脈硬化症による病気は生活習慣病である動脈硬化の病気でもあるわけです。だから問題は、高血圧と動脈硬化をどう防ぐかということになります。どちらも、そうなりやすい体質の人となりにくい人がいて、それを加速するかしないかはその人の生活習慣によって決まるのです。
Q:心臓病による死亡が欧米に比べて少ないのはどうしてですか?
A:いくつか説があるから何とも言えませんが、まず人種が違う、生活が違う。しかし、やはり食事が大きな要因でしょう。食生活の西欧化が進めば、いずれは欧米並みになる可能性があります。例えば動脈硬化でいうと、頭の動脈硬化と心臓の動脈硬化では危険因子が違うが、心臓の場合はどちらかというと食生活、特にコレステロールが関係している。摂取カロリーも増えているから。
Q:心臓病の予防というと、運動で心臓を鍛えるというふうに考える人もいますが?
A:そういうことではありません。むしろ、動脈硬化を防ぐなど、血管にいいことをするということです。むろん適切な運動は基本的にはいいことです。問題は、事前にチェックすることが必要で、ある年代になったら人間ドックに入ることです。ジョギングの最中に心臓発作で死んだ人もおり、ジョギングをやっていい健康状態の人にとってはやった方がいいということ。ジョギングがいいか速足がいいかの議論は別にして。
Q:心電図でその辺のところが分かりますか?
A:心電図で誤解があるのは、安静の時にとった心電図は、冠動脈硬化症の早期発見にはほとんど役に立たないということです。狭心症とか心筋梗塞の診断には、発作が起こっている最中にとった心電図でなければほとんど役に立たない。胸が痛んだり、心電図に異常が出るのは、血管が4分の3くらい詰まってから。だから心電図に異常が出た時は、病気の進行がもう4分の3終わっている状態。4分の1しか残っていないということです。ですから心臓の発作らしい胸の痛みがあれば、急いで検査を受ける必要があるのです。
Q:肥満は心臓病の敵ですね?
A:そう、大きな車に小型乗用車用エンジンを載せたらどうなるかということです。例えば標準体重から20キロ増えたら、いつも20キロのリュックサックを背負っているのと同じことです。心臓は一生懸命動きます。心臓を動かすホルモン、カテコールアミンやインスリンがたくさん出て、その分心臓や血管の負担が増えます。アメリカのフラミンガムスタディでは、心臓の脈拍が少ない人の方が、心臓血管病で死亡する確率が低いという結果がでています。脈が少ないということは心臓への負担が少ないということ。人の一生の拍動の数は一定という話もあります。低血圧の人も楽をしているから長生きします。
Q:いらいらする性格の人も心臓病になりやすいと聞きますが?
A:いわゆるタイプAと呼ばれる人は、アグレッシブで血圧が高め。平均すると、そういう人は長生きしない。また不安神経症みたいに、病気を気にする人がいます。でもそんな人にのんびりしなさいといってもそれが逆にストレスになる。そういう人は、それが性に合っているのだから、それはそれでいいのです。 問題は、健康は自分でその気になって努力しなくては手に入らないということです。アメリカの心臓病学会の予防の標語は簡単です。「タバコは吸わない、太らない、歩け歩け歩け」。それだけ。特別なことは何もありません。要はやる気があるかどうかだけです。
Q:スポーツ選手の心臓は大きいそうですが、心臓病にはどうなんでしょうか?
A:スポーツ選手の心臓は、健康を維持するというレベルを超え、あくまで大きなパワーを出すための心臓です。普通の人の脈拍が60、70とすれば、彼らは普段は30、40と低い。それが120にもなるとすごいパワーを発揮する。でも日常生活には必要以上の心臓で、健康が目的ではないのだから、ややもすると早死にをする。ガソリンをたくさん食うエンジンみたいなものです。心臓を鍛えたといっても、健康を維持するために鍛えたというのとは少し違います。
Q:心臓発作時の救命には、周囲の人達が心臓マッサージや人工呼吸法を知っていることが重要ですね?
A:確かに、心臓病患者の家族に講習会を開く病院もあります。でもそんなに多くないし、心臓病の人の家族だけがやってもなかなかうまくいかない。心停止時の救命を考えるなら、一般の人が救急蘇生の勉強を組織的にやらないとだめです。アメリカでどうしてうまくいっているのかというと、高校の授業でやっているからです。繰り返し繰り返し体育の時間でやる。マスコミでもその必要性が繰り返し強調されています。
心筋梗塞の治療などは、発作後早ければ早いほどいい。例えば脳への血流が止まって3分以内に蘇生を始めなければ、脳死になってしまう。倒れてから、医者や看護婦を呼んでいては間に合わない。アメリカでは心臓死が、がんの倍くらいあって断然トップで、「発作があったらすぐ病院へ」ということが徹底されている。それが日本では、「胸が苦しいので明日、病院に行こう」なんて人がいる。すぐに病院に来れば、死亡率を半分、3分の1にできるんです。
バレーボール試合中に心臓発作で倒れて亡くなった外国人の方がいました。それをテレビで見ていたアメリカのスポーツ関係者から「だれも心臓マッサージをしていない。見殺しだ」と非難されたことがありました。アメリカではスポーツ選手が蘇生術を知らないということは考えられない。でも「日本人はそういうことをよく知らないのだ」ということで、納得したそうです。やはりこれは学校教育の一環に入れなくてはいけないと思う。
Q:タバコもよくないですね?
A:これだけタバコの害が言われているのに、喫煙率は減らない。循環器の医者の喫煙率はわりと少ないですが、医者全体の喫煙率は一般とそんなには変わらない。アメリカでは喫煙率がだいた30%くらいで、医者はその半分くらい。循環器の医者はそのさらに半分。先日、日本の循環器の医者の集まりでアンケートをとったら喫煙率が27%だった。ぼくは「さすがに循環器の医者は少ないな」と思ったが、アメリカの医者は「何でこんなに多いんだ。あなたたちは少し意識が低い」と驚いていた。若い人の心筋梗塞の危険因子は、タバコが唯一のものだから、循環器の医者はタバコの害はよく分かっています。
Q:ご自身の健康法は?
A:太らないことと歩くことくらい。タバコは35歳くらいの時、せきとたんが止まらなくなってやめました。散歩している時間などあまりないから、エレベーターを使わずに階段を上ったり、わざと遠い方の駅まで歩いたりするくらいですね。
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A:生活習慣病として重要なのは、まず高血圧で起きる心臓病、それから虚血性心疾患とよばれる冠動脈の病気、つまり狭心症と心筋梗塞ですね。冠動脈硬化症による病気は生活習慣病である動脈硬化の病気でもあるわけです。だから問題は、高血圧と動脈硬化をどう防ぐかということになります。どちらも、そうなりやすい体質の人となりにくい人がいて、それを加速するかしないかはその人の生活習慣によって決まるのです。
Q:心臓病による死亡が欧米に比べて少ないのはどうしてですか?
A:いくつか説があるから何とも言えませんが、まず人種が違う、生活が違う。しかし、やはり食事が大きな要因でしょう。食生活の西欧化が進めば、いずれは欧米並みになる可能性があります。例えば動脈硬化でいうと、頭の動脈硬化と心臓の動脈硬化では危険因子が違うが、心臓の場合はどちらかというと食生活、特にコレステロールが関係している。摂取カロリーも増えているから。
Q:心臓病の予防というと、運動で心臓を鍛えるというふうに考える人もいますが?
A:そういうことではありません。むしろ、動脈硬化を防ぐなど、血管にいいことをするということです。むろん適切な運動は基本的にはいいことです。問題は、事前にチェックすることが必要で、ある年代になったら人間ドックに入ることです。ジョギングの最中に心臓発作で死んだ人もおり、ジョギングをやっていい健康状態の人にとってはやった方がいいということ。ジョギングがいいか速足がいいかの議論は別にして。
Q:心電図でその辺のところが分かりますか?
A:心電図で誤解があるのは、安静の時にとった心電図は、冠動脈硬化症の早期発見にはほとんど役に立たないということです。狭心症とか心筋梗塞の診断には、発作が起こっている最中にとった心電図でなければほとんど役に立たない。胸が痛んだり、心電図に異常が出るのは、血管が4分の3くらい詰まってから。だから心電図に異常が出た時は、病気の進行がもう4分の3終わっている状態。4分の1しか残っていないということです。ですから心臓の発作らしい胸の痛みがあれば、急いで検査を受ける必要があるのです。
Q:肥満は心臓病の敵ですね?
A:そう、大きな車に小型乗用車用エンジンを載せたらどうなるかということです。例えば標準体重から20キロ増えたら、いつも20キロのリュックサックを背負っているのと同じことです。心臓は一生懸命動きます。心臓を動かすホルモン、カテコールアミンやインスリンがたくさん出て、その分心臓や血管の負担が増えます。アメリカのフラミンガムスタディでは、心臓の脈拍が少ない人の方が、心臓血管病で死亡する確率が低いという結果がでています。脈が少ないということは心臓への負担が少ないということ。人の一生の拍動の数は一定という話もあります。低血圧の人も楽をしているから長生きします。
Q:いらいらする性格の人も心臓病になりやすいと聞きますが?
A:いわゆるタイプAと呼ばれる人は、アグレッシブで血圧が高め。平均すると、そういう人は長生きしない。また不安神経症みたいに、病気を気にする人がいます。でもそんな人にのんびりしなさいといってもそれが逆にストレスになる。そういう人は、それが性に合っているのだから、それはそれでいいのです。 問題は、健康は自分でその気になって努力しなくては手に入らないということです。アメリカの心臓病学会の予防の標語は簡単です。「タバコは吸わない、太らない、歩け歩け歩け」。それだけ。特別なことは何もありません。要はやる気があるかどうかだけです。
Q:スポーツ選手の心臓は大きいそうですが、心臓病にはどうなんでしょうか?
A:スポーツ選手の心臓は、健康を維持するというレベルを超え、あくまで大きなパワーを出すための心臓です。普通の人の脈拍が60、70とすれば、彼らは普段は30、40と低い。それが120にもなるとすごいパワーを発揮する。でも日常生活には必要以上の心臓で、健康が目的ではないのだから、ややもすると早死にをする。ガソリンをたくさん食うエンジンみたいなものです。心臓を鍛えたといっても、健康を維持するために鍛えたというのとは少し違います。
Q:心臓発作時の救命には、周囲の人達が心臓マッサージや人工呼吸法を知っていることが重要ですね?
A:確かに、心臓病患者の家族に講習会を開く病院もあります。でもそんなに多くないし、心臓病の人の家族だけがやってもなかなかうまくいかない。心停止時の救命を考えるなら、一般の人が救急蘇生の勉強を組織的にやらないとだめです。アメリカでどうしてうまくいっているのかというと、高校の授業でやっているからです。繰り返し繰り返し体育の時間でやる。マスコミでもその必要性が繰り返し強調されています。
心筋梗塞の治療などは、発作後早ければ早いほどいい。例えば脳への血流が止まって3分以内に蘇生を始めなければ、脳死になってしまう。倒れてから、医者や看護婦を呼んでいては間に合わない。アメリカでは心臓死が、がんの倍くらいあって断然トップで、「発作があったらすぐ病院へ」ということが徹底されている。それが日本では、「胸が苦しいので明日、病院に行こう」なんて人がいる。すぐに病院に来れば、死亡率を半分、3分の1にできるんです。
バレーボール試合中に心臓発作で倒れて亡くなった外国人の方がいました。それをテレビで見ていたアメリカのスポーツ関係者から「だれも心臓マッサージをしていない。見殺しだ」と非難されたことがありました。アメリカではスポーツ選手が蘇生術を知らないということは考えられない。でも「日本人はそういうことをよく知らないのだ」ということで、納得したそうです。やはりこれは学校教育の一環に入れなくてはいけないと思う。
Q:タバコもよくないですね?
A:これだけタバコの害が言われているのに、喫煙率は減らない。循環器の医者の喫煙率はわりと少ないですが、医者全体の喫煙率は一般とそんなには変わらない。アメリカでは喫煙率がだいた30%くらいで、医者はその半分くらい。循環器の医者はそのさらに半分。先日、日本の循環器の医者の集まりでアンケートをとったら喫煙率が27%だった。ぼくは「さすがに循環器の医者は少ないな」と思ったが、アメリカの医者は「何でこんなに多いんだ。あなたたちは少し意識が低い」と驚いていた。若い人の心筋梗塞の危険因子は、タバコが唯一のものだから、循環器の医者はタバコの害はよく分かっています。
Q:ご自身の健康法は?
A:太らないことと歩くことくらい。タバコは35歳くらいの時、せきとたんが止まらなくなってやめました。散歩している時間などあまりないから、エレベーターを使わずに階段を上ったり、わざと遠い方の駅まで歩いたりするくらいですね。
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