カルシウムの働き
1 99%は骨に貯えられる
カルシウムは人体に最も多く含まれるミネラル(無機質)で、成人体重のl.5〜2.0%を占めています。体重60kgの人では、900〜l200gのカルシウムを含んでいることになります。このうち、99%は骨や歯に含まれ、残りのl%が血液や細胞液の中に溶けこんでいます。
この分布の割合は常に一定に保たれており、特に血清中のカルシウム濃度は、びっくりするほど厳密に維持されています(l00ml中にl0±lmg)。
骨へ運ばれてきたカルシウムは、そこに沈着して貯えられます。そして、体液中のカルシウム濃度が下がれば、カルシウムは骨から放出されます。また、見かけと異なって骨は一生を通して生きている組織であり、一生の間、カルシウムは骨への沈着(骨の形成)と、骨からの放出(骨からカルシウムが溶け出す)をくり返しています。そして、老齢になると骨からの放出のほうが優勢になって、カルシウムは骨から失われはじめます。
2 血液中のカルシウムの役割
血液や細胞液の中に含まれるカルシウムは、人間のからだが正常に生理作用を営むうえで、さまざまな重要な役割をになっています。たとえばけがで出血したとき血を固まらせたり、神経や筋内の働きを正常に保つのも、カルシウムが働いているのです。
カルシウムの吸収のしくみ
1 カルシウムは小腸で吸収される
口から食物としてとり入れられたカルシウムは、小腸(十二指腸、空腸、回腸)で吸収されます。このうち、小腸上部で吸収されるときには、あとで述べるビタミンDをはじめ、さまざまなカルシウム調節因子がかかわってきます。
2 カルシウムの吸収を調節する因子
カルシウムの腸管からの吸収は、さまざまな生理的因子の影響をうけます。
ビタミンD:カルシウムの吸収調節因子としてビタミンDは欠くことのできない存在です。しかし、ビタミンDそのままでは作用をあらわさず、肝臓や腎臓で水酸化という変化をうけて、活性型ビタミンDに転換する必要があります。
なお、からだの中のビタミンDは、食物としてそのまま入ってきたもののほかに、皮膚にたまっているプロビタミンD(シイタケの成分としてからだに摂取されたエルゴステロールや、皮膚にある7‐デヒドロコレステロール)が紫外線に当たって生成されるビタミンDも含まれています。その意味で、日光は食事と同じくらい重要な、ビタミンDの供給源といえます。
生体のカルシウム要求をまかなうその他の生理的因子:食事中に含まれるカルシウムの量が少ない場合とか、妊娠・授乳期のようにカルシウムの必要性を増したときには、カルシウムを十分に活用するために、腸管からのカルシウム吸収が活発になります。
3 カルシウムバランスについて
カルシウムの吸収と排泄のバランス
摂取されたカルシウムは、ぜんぶが吸収されるわけではありません。
カルシウムの腸管からの吸収率は、年齢その他の生理的条件によっても異なります。幼児では約75%、成人では30〜40%、そして老齢になると腸管からのカルシウム吸収能力はぐんと低下します。吸収されなかったカルシウムは便中へ排泄されます。
吸収されたカルシウムのうち、体内で利用されないものは、尿中へ排泄されるか、胆汁などを介して腸内へ分泌されたあと、便中へ排泄され、あるいは汗などの外分泌に伴って体外へ排泄されます。
こうした腸管におけるカルシウムの吸収と排泄は、さまざまなカルシウム調節因子によって変動し、体内のカルシウムバランス(吸収量に対する排泄量の割合)が保たれるしくみになっています。
カルシウムの吸収を高めるもの、妨げるもの
食物成分の影響
カルシウムの吸収は、食物中の成分によっても影響をうけます。
1 とり過ぎるとカルシウムの吸収を抑制するもの
食物繊維:その種類にもよりますが、食物繊維(食品中に含まれる消化されない成分のこと)はカルシウムなどのミネラルを吸着する性質があり、腸管からの吸収を妨げます。小麦のふすまなど穀類の食物繊維とか海藻の成分には特にその作用が強いようです。
最近、便通をよくするために、食物繊維をとることがすすめられていますが、カルシウムの吸収という点からすると、わるい影響を与える可能性があります。
シュウ酸:ほうれん草など緑黄色野莱に含まれるカルシウムは、シュウ酸と結合しています(シュウ酸カルシウム)。この状態のカルシウムは分解されにくく、吸収もよくありません。
アルコール:アルコールが直接に腸粘膜を傷つけてカルシウムの吸収をわるくしたり、酒飲みはアルコール以外の飲食物のとり方も少ないためカルシウム不足になったりします。アルコール中毒になると肝臓がおかされ、ビタミンDを活性化する働きがわるくなり、カルシウムの吸収率を低下させます。
脂肪:健康な人では、日常の食事に含まれる程度の量の脂肪は、カルシウムの吸収には影響しません。しかし、胆のうや膵臓の病気があって、脂肪の吸収がわるいときにはカルシウムの吸収も影響をうけます。腸内で未消化の脂肪とカルシウムが結合して水に溶けない物質をつくり、便中に排泄されてしまうためです。なお、食事中に含まれる脂肪の量が異常に多いときも、腸管からのカルシウムの吸収率はおちるようです。
リン:食事中のリンとカルシウムの比率は、1対1が望ましいとされています。しかし、日本人の食事は、カルシウムよりリンを多く含んでいるのが普通です。適当な量のカルシウムをとっていれば、極端にリンの摂取量を増やさない限り、それほどこだわる必要はないと思われます。しかしながら、近ごろは、インスタント食品など、食品添加物としてのリン酸塩を大量に含む加工食品が普及してきています。その意味では、カルシウムを多く含む食品を、積極的にとるよう心がけることが必要でしょう。
2 カルシウムの吸収を高めるもの
ビタミンD:前にも述べましたが、ビタミンDはカルシウムの吸収を高める重要な因子です。ビタミンDを多く含む食品には魚類、肝臓、卵黄やバタ一などがあり、プロビタミンDは、シイタケなどのキノコ類に含まれています。
ビタミンC(アスコルビン酸):ビタミンCをとるとカルシウムの吸収が増すといわれていますが、尿中へ排泄されるカルシウムの量も同じくらい増えるので、出入りのバランスは変わらないともいわれています。ビタミンCがカルシウムの吸収に影響するかどうかは、人間では、ほとんどわかっていません。
その他:乳糖(牛乳に含まれる糖)や、カゼイン(牛乳中に含まれるたんぱく質)、リジン(たんぱく質を構成しているアミノ酸の一種)などは、カルシウムの吸収率を高めるといわれています。
3 たんぱく質のとり過ぎはカルシウム代謝に影響する
カルシウムが少なく、たんぱく質を多く含む食事をとると、尿へ排泄されるカルシウムの量が増えます。そして、たんぱく質の摂取量がある限度をこえて多くなると(たとえば1日l40g以上)からだに吸収された量よりも尿へ排泄されるカルシウムの量のほうが多くなる(カルシウムバランスが負になる)ことがわかっています。
このことは、カルシウムが比較的少なくたんぱく質の多い食事をとりつづけていると、体内のカルシウムが失われる危険があることを示しています。そこで、たんぱく質のとり方としては、良質のアミノ酸を含むものをバランスよく、しかも適量(日本人のたんぱく質所要量は成人男子、20歳代で、1日70g前後とされています)をとることが大切です。
カルシウムのとり方
1 食品の種類によってカルシウムの吸収率は異なります
食品中のある成分はカルシウムの吸収や利用を高め、またある成分は妨げることを述べてきましたが、実際の食品における吸収率はどうでしょうか。
牛乳(l00ml中に100mg)、小魚(いわし丸干し100g中l400mg)、野菜(ほうれん草l00g中55mg)の平均吸収率は牛乳で約50%、小魚は約30%、野菜は約17%といわれています。このうち最も吸収率のよい牛乳には、乳糖、ビタミンD、リジンやアルギニンなどのアミノ酸、などカルシウムの吸収を高める成分を含んでいることが、よい影響をあたえているようです。一方、最も吸収率の低い野菜のほうは、食物繊維やシュウ酸などカルシウムの吸収を妨げる成分を含むことが影響していると思われます。
2 食品中のカルシウム含有量だけで判断してはいけません
このように、カルシウムの吸収率は、食品中の成分によっても、食品の種類によっても大きく異なります。カルシウムをとるとき、食品中のカルシウム含有量だけを目安にしてはいけません。これらのことを頭に入れたうえで、さらに年齢、性別、妊娠や授乳などの生理的な条件も考え判断する必要があります。
3 老人は若い人より多くのカルシウムが必要です
60歳を過ぎると、年とともにカルシウムバランスがわるくなります。尿中へ排泄されるカルシウムの量が増え、腸管からのカルシウムの吸収能力が低下するためです。そして、骨の質量はしだいに減少し、特に閉経期以降の女性では骨粗しょう症(骨量の減少)をおこしやすくなります。
老人では、カルシウムバランスを維持するのに必要な摂取量が成人より高いとされています。しかし、現実に老人がとっている食事の量や食事内容を考えますと、そんなに多量のカルシウムをとることは難しいものです。そのような場合には、カルシウムの吸収率のよい乳製品などを多く利用することも必要です。
4 カルシウムは心がけないととれません
栄養所要量は、個人それぞれの体格や生活条件をもとに、健康維持をはかるうえで、一日に摂取することの望ましい栄養素の量を示しています。
カルシウムについていえば、年齢別、性別に、カルシウムバランスを保つために必要なカルシウム量、骨の発育に必要なカルシウム量、それに消化管からの吸収率などの安全率をみこんで算出されています。
日本人のカルシウム摂取量は、ほぼ水準に達しています。ただし、これには個人差があって、十分すぎるほどとっている人もいれば、カルシウムのとり方がまだまだ少なすぎる人も多いのです。
カルシウムは、心がけなければとりにくい栄養素であり、特に現代の食生活、生活環境、現代人の日光への当たり方や運動量などの生理的条件は、必ずしもカルシウムの吸収に有利ではないようです。
5 現代の日本人はカルシウム不足をおこしやすい環境におかれています
日本の土壌にはカルシウムが乏しく、そこに育った農作物も、欧米に比べてカルシウム含有量は少なく、また牛乳の摂取量も多くはありません。さらに、現在の日本人は30年前に比べて、カルシウムの吸収になんらかの影響を及ぼす食品、すなわち油脂は5倍、糖類はl0倍、そしてリン酸塩はl00倍もとっているといわれています。その一方で、魚類の摂取量は減り、特に小魚の摂取量が激減しています。また、肉食中心の高たんぱく食をとることが多くなり、その半面では運動量(労働量)や太陽に当たる時間が少なくなっています。
このようなことは、カルシウムの摂取量も利用率も減らす原因となります。だからといって、何がしかのカルシウム含有物(無機のカルシウム塩とか、カルシウム粉末)を食事に迫加しても、体内でのカルシウムの利用は、あまり改善されません。
6 運動はカルシウムの利用率を高めます
カルシウムの利用率を高めるものとして、運動の効果が注目されています。動物実験によると、運動量の多いグループは、運動させなかったグループに比ベ、カルシウム摂取量が少ない場合でも、大腿骨のカルシウム含有量が多くなり、骨の強度も増すことがわかっています。近年ふえている子供の骨折の主な原因は、運動不足によるのではないかと考えられています。
心がけてとらないと不足しがちなカルシウムを、食事によって補給するのは大切なことです。それには、牛乳や乳製品、小魚の摂取量をふやし、穀類、野菜、海藻も適度にとるよう努めないといけません。
すなわち、バランスのとれた食事を、適切な量だけとることが、大切なのです。
カルシウム摂取に気を配るあまり、カルシウム剤をむやみに乱用したとしても効果はみられません。むしろ、屋外に出て日光にあたり、適度の運動を毎日するように心がけることのほうが、はるかに効果的です。
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1 99%は骨に貯えられる
カルシウムは人体に最も多く含まれるミネラル(無機質)で、成人体重のl.5〜2.0%を占めています。体重60kgの人では、900〜l200gのカルシウムを含んでいることになります。このうち、99%は骨や歯に含まれ、残りのl%が血液や細胞液の中に溶けこんでいます。
この分布の割合は常に一定に保たれており、特に血清中のカルシウム濃度は、びっくりするほど厳密に維持されています(l00ml中にl0±lmg)。
骨へ運ばれてきたカルシウムは、そこに沈着して貯えられます。そして、体液中のカルシウム濃度が下がれば、カルシウムは骨から放出されます。また、見かけと異なって骨は一生を通して生きている組織であり、一生の間、カルシウムは骨への沈着(骨の形成)と、骨からの放出(骨からカルシウムが溶け出す)をくり返しています。そして、老齢になると骨からの放出のほうが優勢になって、カルシウムは骨から失われはじめます。
2 血液中のカルシウムの役割
血液や細胞液の中に含まれるカルシウムは、人間のからだが正常に生理作用を営むうえで、さまざまな重要な役割をになっています。たとえばけがで出血したとき血を固まらせたり、神経や筋内の働きを正常に保つのも、カルシウムが働いているのです。
カルシウムの吸収のしくみ
1 カルシウムは小腸で吸収される
口から食物としてとり入れられたカルシウムは、小腸(十二指腸、空腸、回腸)で吸収されます。このうち、小腸上部で吸収されるときには、あとで述べるビタミンDをはじめ、さまざまなカルシウム調節因子がかかわってきます。
2 カルシウムの吸収を調節する因子
カルシウムの腸管からの吸収は、さまざまな生理的因子の影響をうけます。
ビタミンD:カルシウムの吸収調節因子としてビタミンDは欠くことのできない存在です。しかし、ビタミンDそのままでは作用をあらわさず、肝臓や腎臓で水酸化という変化をうけて、活性型ビタミンDに転換する必要があります。
なお、からだの中のビタミンDは、食物としてそのまま入ってきたもののほかに、皮膚にたまっているプロビタミンD(シイタケの成分としてからだに摂取されたエルゴステロールや、皮膚にある7‐デヒドロコレステロール)が紫外線に当たって生成されるビタミンDも含まれています。その意味で、日光は食事と同じくらい重要な、ビタミンDの供給源といえます。
生体のカルシウム要求をまかなうその他の生理的因子:食事中に含まれるカルシウムの量が少ない場合とか、妊娠・授乳期のようにカルシウムの必要性を増したときには、カルシウムを十分に活用するために、腸管からのカルシウム吸収が活発になります。
3 カルシウムバランスについて
カルシウムの吸収と排泄のバランス
摂取されたカルシウムは、ぜんぶが吸収されるわけではありません。
カルシウムの腸管からの吸収率は、年齢その他の生理的条件によっても異なります。幼児では約75%、成人では30〜40%、そして老齢になると腸管からのカルシウム吸収能力はぐんと低下します。吸収されなかったカルシウムは便中へ排泄されます。
吸収されたカルシウムのうち、体内で利用されないものは、尿中へ排泄されるか、胆汁などを介して腸内へ分泌されたあと、便中へ排泄され、あるいは汗などの外分泌に伴って体外へ排泄されます。
こうした腸管におけるカルシウムの吸収と排泄は、さまざまなカルシウム調節因子によって変動し、体内のカルシウムバランス(吸収量に対する排泄量の割合)が保たれるしくみになっています。
カルシウムの吸収を高めるもの、妨げるもの
食物成分の影響
カルシウムの吸収は、食物中の成分によっても影響をうけます。
1 とり過ぎるとカルシウムの吸収を抑制するもの
食物繊維:その種類にもよりますが、食物繊維(食品中に含まれる消化されない成分のこと)はカルシウムなどのミネラルを吸着する性質があり、腸管からの吸収を妨げます。小麦のふすまなど穀類の食物繊維とか海藻の成分には特にその作用が強いようです。
最近、便通をよくするために、食物繊維をとることがすすめられていますが、カルシウムの吸収という点からすると、わるい影響を与える可能性があります。
シュウ酸:ほうれん草など緑黄色野莱に含まれるカルシウムは、シュウ酸と結合しています(シュウ酸カルシウム)。この状態のカルシウムは分解されにくく、吸収もよくありません。
アルコール:アルコールが直接に腸粘膜を傷つけてカルシウムの吸収をわるくしたり、酒飲みはアルコール以外の飲食物のとり方も少ないためカルシウム不足になったりします。アルコール中毒になると肝臓がおかされ、ビタミンDを活性化する働きがわるくなり、カルシウムの吸収率を低下させます。
脂肪:健康な人では、日常の食事に含まれる程度の量の脂肪は、カルシウムの吸収には影響しません。しかし、胆のうや膵臓の病気があって、脂肪の吸収がわるいときにはカルシウムの吸収も影響をうけます。腸内で未消化の脂肪とカルシウムが結合して水に溶けない物質をつくり、便中に排泄されてしまうためです。なお、食事中に含まれる脂肪の量が異常に多いときも、腸管からのカルシウムの吸収率はおちるようです。
リン:食事中のリンとカルシウムの比率は、1対1が望ましいとされています。しかし、日本人の食事は、カルシウムよりリンを多く含んでいるのが普通です。適当な量のカルシウムをとっていれば、極端にリンの摂取量を増やさない限り、それほどこだわる必要はないと思われます。しかしながら、近ごろは、インスタント食品など、食品添加物としてのリン酸塩を大量に含む加工食品が普及してきています。その意味では、カルシウムを多く含む食品を、積極的にとるよう心がけることが必要でしょう。
2 カルシウムの吸収を高めるもの
ビタミンD:前にも述べましたが、ビタミンDはカルシウムの吸収を高める重要な因子です。ビタミンDを多く含む食品には魚類、肝臓、卵黄やバタ一などがあり、プロビタミンDは、シイタケなどのキノコ類に含まれています。
ビタミンC(アスコルビン酸):ビタミンCをとるとカルシウムの吸収が増すといわれていますが、尿中へ排泄されるカルシウムの量も同じくらい増えるので、出入りのバランスは変わらないともいわれています。ビタミンCがカルシウムの吸収に影響するかどうかは、人間では、ほとんどわかっていません。
その他:乳糖(牛乳に含まれる糖)や、カゼイン(牛乳中に含まれるたんぱく質)、リジン(たんぱく質を構成しているアミノ酸の一種)などは、カルシウムの吸収率を高めるといわれています。
3 たんぱく質のとり過ぎはカルシウム代謝に影響する
カルシウムが少なく、たんぱく質を多く含む食事をとると、尿へ排泄されるカルシウムの量が増えます。そして、たんぱく質の摂取量がある限度をこえて多くなると(たとえば1日l40g以上)からだに吸収された量よりも尿へ排泄されるカルシウムの量のほうが多くなる(カルシウムバランスが負になる)ことがわかっています。
このことは、カルシウムが比較的少なくたんぱく質の多い食事をとりつづけていると、体内のカルシウムが失われる危険があることを示しています。そこで、たんぱく質のとり方としては、良質のアミノ酸を含むものをバランスよく、しかも適量(日本人のたんぱく質所要量は成人男子、20歳代で、1日70g前後とされています)をとることが大切です。
カルシウムのとり方
1 食品の種類によってカルシウムの吸収率は異なります
食品中のある成分はカルシウムの吸収や利用を高め、またある成分は妨げることを述べてきましたが、実際の食品における吸収率はどうでしょうか。
牛乳(l00ml中に100mg)、小魚(いわし丸干し100g中l400mg)、野菜(ほうれん草l00g中55mg)の平均吸収率は牛乳で約50%、小魚は約30%、野菜は約17%といわれています。このうち最も吸収率のよい牛乳には、乳糖、ビタミンD、リジンやアルギニンなどのアミノ酸、などカルシウムの吸収を高める成分を含んでいることが、よい影響をあたえているようです。一方、最も吸収率の低い野菜のほうは、食物繊維やシュウ酸などカルシウムの吸収を妨げる成分を含むことが影響していると思われます。
2 食品中のカルシウム含有量だけで判断してはいけません
このように、カルシウムの吸収率は、食品中の成分によっても、食品の種類によっても大きく異なります。カルシウムをとるとき、食品中のカルシウム含有量だけを目安にしてはいけません。これらのことを頭に入れたうえで、さらに年齢、性別、妊娠や授乳などの生理的な条件も考え判断する必要があります。
3 老人は若い人より多くのカルシウムが必要です
60歳を過ぎると、年とともにカルシウムバランスがわるくなります。尿中へ排泄されるカルシウムの量が増え、腸管からのカルシウムの吸収能力が低下するためです。そして、骨の質量はしだいに減少し、特に閉経期以降の女性では骨粗しょう症(骨量の減少)をおこしやすくなります。
老人では、カルシウムバランスを維持するのに必要な摂取量が成人より高いとされています。しかし、現実に老人がとっている食事の量や食事内容を考えますと、そんなに多量のカルシウムをとることは難しいものです。そのような場合には、カルシウムの吸収率のよい乳製品などを多く利用することも必要です。
4 カルシウムは心がけないととれません
栄養所要量は、個人それぞれの体格や生活条件をもとに、健康維持をはかるうえで、一日に摂取することの望ましい栄養素の量を示しています。
カルシウムについていえば、年齢別、性別に、カルシウムバランスを保つために必要なカルシウム量、骨の発育に必要なカルシウム量、それに消化管からの吸収率などの安全率をみこんで算出されています。
日本人のカルシウム摂取量は、ほぼ水準に達しています。ただし、これには個人差があって、十分すぎるほどとっている人もいれば、カルシウムのとり方がまだまだ少なすぎる人も多いのです。
カルシウムは、心がけなければとりにくい栄養素であり、特に現代の食生活、生活環境、現代人の日光への当たり方や運動量などの生理的条件は、必ずしもカルシウムの吸収に有利ではないようです。
5 現代の日本人はカルシウム不足をおこしやすい環境におかれています
日本の土壌にはカルシウムが乏しく、そこに育った農作物も、欧米に比べてカルシウム含有量は少なく、また牛乳の摂取量も多くはありません。さらに、現在の日本人は30年前に比べて、カルシウムの吸収になんらかの影響を及ぼす食品、すなわち油脂は5倍、糖類はl0倍、そしてリン酸塩はl00倍もとっているといわれています。その一方で、魚類の摂取量は減り、特に小魚の摂取量が激減しています。また、肉食中心の高たんぱく食をとることが多くなり、その半面では運動量(労働量)や太陽に当たる時間が少なくなっています。
このようなことは、カルシウムの摂取量も利用率も減らす原因となります。だからといって、何がしかのカルシウム含有物(無機のカルシウム塩とか、カルシウム粉末)を食事に迫加しても、体内でのカルシウムの利用は、あまり改善されません。
6 運動はカルシウムの利用率を高めます
カルシウムの利用率を高めるものとして、運動の効果が注目されています。動物実験によると、運動量の多いグループは、運動させなかったグループに比ベ、カルシウム摂取量が少ない場合でも、大腿骨のカルシウム含有量が多くなり、骨の強度も増すことがわかっています。近年ふえている子供の骨折の主な原因は、運動不足によるのではないかと考えられています。
心がけてとらないと不足しがちなカルシウムを、食事によって補給するのは大切なことです。それには、牛乳や乳製品、小魚の摂取量をふやし、穀類、野菜、海藻も適度にとるよう努めないといけません。
すなわち、バランスのとれた食事を、適切な量だけとることが、大切なのです。
カルシウム摂取に気を配るあまり、カルシウム剤をむやみに乱用したとしても効果はみられません。むしろ、屋外に出て日光にあたり、適度の運動を毎日するように心がけることのほうが、はるかに効果的です。
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