豊かになると脂肪の摂取量がふえてくる
・動物性脂肪の増加が著しい
人間の食生活は、経済的に豊かになるにつれ、動物性食品の摂取量が増加し、そのぶん植物性食品のとり方が減ってきます。動物性食品の摂取量がふえれば、動物性たんぱく質とともに、とうぜん動物性の脂肪も増加してくるわけです。また、調理法や嗜好も多様化して、砂糖や食用油脂の使用量もふえてきます。
これは世界どこの国にもみられる傾向で、わが国の場合も同じです。
わが国では、昭和26年に、1人1日当りの脂肪摂取量は20g以下だったものが、最近では58gと約3倍になっており、特に畜産食品からの動物性脂肪の増加が著しくなっています。
・植物性油脂とのつり合いが大事
脂肪は高エネルギーなので、とりすぎれば肥満などをおこしてきます。また、動物性脂肪にかたよると、コレステロールが上昇し、健康上さまざまな障害をおこすことになります。現在、植物性の油には、コレステロールを下げる働きのあることがわかっており、植物性の油を多めにとることがすすめられています。
それでは、植物油脂にはどのようなものがあり、どのような特性があるか、そして適正な脂肪のとり方はどのようにしたらよいかを考えてみましょう。
食用の油脂にはどんなものがあるか
1 脂肪を供給してくれる食品
脂肪(油脂)をエネルギー源として利用することは、昔から行なわれてきました。くるみ、栗、かや、とち、椿などの木の実を食料にし、また魚類や貝類、あるいは野鳥、鹿、猪などを食べるというかたちで昔の人は油脂をとっていたのです。
その後、山野の動物を家畜化して、その肉を食用にし、さらに乳を飲み、卵を食べるというように、動物の脂肪を多量に利用する方法を考えだしたわけです。
しかし、油脂に富んだ木の実から油をしぼり出す技術が発達したのは、かなり後世になってのことです。奈良・平安時代には油は大変な貴重品でした。てんぷらなどの揚げもの料理がようやく庶民の口にはいるようになったのは、江戸時代の末期のことと思われます。
そして現在では、揚げる、炒めるといった調理法は家庭で毎日のように行なわれ、また各種の食用油脂がさまざまに加工され、食生活をにぎわせてくれています。
・油脂はなぜ毎日の食生活にとって必要なのか
油脂には、リノール酸などの必須脂肪酸というものが含まれています。この必須脂肪酸は、ビタミン類と同じように、私たちの体内では合成できないために、食物としてとる必要があります。不足すると成長がわるくなったり、病気にかかりやすくなったりします。
このことを昔の人はよく知り、できるだけ油が切れない食事を心がけたようです。
また、油脂には、このような脂肪酸だけでなく、ビタミンE、ビタミンA、カロチンなどの微量栄養素を含んでいることが多く、またその吸収を助けますので、これらの栄養素の供給源としても役立っています。
2 食用油脂の大部分は植物油
食用に加工されている油脂には、植物性の油脂のほか、動物性の油脂(バター、ラード、牛脂)があります。
昭和58年の食用油脂に使われた原料の内訳をみると、植物油脂161万トン、動物油脂は30万5千トンで、8割以上を植物油脂が占めます。
つくられた植物油の大部分は、サラダ油です。品目別にその内訳をみると、大豆油が約45%、ナタネ油が約35%と多く、米油は7%、コーン油5%、綿実油は4%となります。
原料の大豆、ナタネは、そのほとんどが外国からの輸入に頼っています。
・加熱と油
揚げものや炒めものの油としては、加熱に対し変質しにくいことが必要条件なので、発煙点の高い大豆油、ナタネ油、米油、ラッカセイ油などが使われます。ゴマ油も特有の風味や香りをもっていますので、よく利用されます。
サラダに使う油は、そのまま口にするので、風味や色合いのほか、長期間、冷蔵庫に保存しても液状であることが要求されます。このため、ウインタリングという耐寒性をもたせる工程が加えられています。
サラダに使う油は大豆油、ナタネ油、コーン油、綿実油、サフラワー油などです。
3 家庭でよく使われる油脂加工品
マヨネーズ、ドレッシング、マーガリン、ショートニングがその主なものでしょう。
サラダドレッシングとフレンチドレッシングは、原料として、サラダ油、食酢、調味料が使われます。マヨネーズにはこのほか鶏卵を用います。
最近の家庭用マーガリン(ソフトマーガリン)は、主として大豆油あるいは綿実油を原料とし、これにパーム油、コーン油などを配合したものが多いようです。
ショートニングの原料はマーガリンと同じですが、これに窒素ガスが含まれています。お菓子などにサクサクした感じをもたせるために用います。
植物油脂にはどんな特性があるか
ここで、私たちが食べている食用油(植物油)は、どのような物質で、どのような性質をもったものなのかを調べてみましょう。
1 室温で液状のものは“油”、固体状のものは“脂”
・植物油脂は液体状のものが大多数
油脂は、室温で液状になっている“油”と、室温で固体状になっている“脂”に大きく分けられます。
植物の種子から抽出された油脂は大多数が液状です。例外として、カカオ脂があります。また、ヤシ油は、産地の熱帯では液状ですが、日本では冬期には個体状になっています。
一方、動物性の油脂は、魚油を除いて、室温で固体状になっているものが多いのです。
同じ脂肪なのに、いったいこの違いは何によるものなのでしょうか。
・油脂に含まれる脂肪酸の性質の違い
油脂(脂肪)は、いくつもの脂肪酸とグリセロールから成り立っています。そして、この脂肪酸の種類が、植物性のものと動物性のものとでは異なっているのです。
動物性の“脂”には、飽和脂肪酸と呼ばれるものが多いのが特徴で、一方、植物性の“油”は、不飽和脂肪酸と呼ばれるものを多く含みます。そして、動物脂に多く含まれる飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸)は融点が63〜71℃と高いために、室温では固体状なのです。
植物油に多い不飽和脂肪酸はリノール酸ですが、こちらは-5.2℃と融点がずっと低いので、室温で液状となっているわけです。
なお、動物性油脂でも、魚油は特別で、不飽和脂肪酸を多く含んでいます。
・不飽和脂肪酸は変化をうけやすい
ところで、飽和脂肪酸は化学的に安定した姿をしています。
これに対して、不飽和脂肪酸は、二重結合と呼ばれる充たされない手を持っているために、空気中で酸化されやすく、また、熱を加えると変化をうけやすいのです。そして、二重結合の数が増すほど不安定になります。
よく過酸化脂質ということばを耳にするでしょう。これは、このような不飽和脂肪酸が酸化された脂肪をさしています。
2 植物油に多く含まれるリノール酸
・リノール酸は必須脂肪酸
リノール酸は、植物体のなかでつくられますが、人間の体内では合成できません。そのため、植物性食品から食物として摂取することが必要なので、必須脂肪酸のひとつとされています。
・リノール酸の必要量
必須脂肪酸の必要量は、米国では、リノール酸として総摂取エネルギーの1〜2%とみなされています。この数値を日本人の場合にあてはめると、1日当り2〜4gとなります。
厚生省が行なっている国民栄養調査の植物性油脂摂取量から計算すると、現在、日本人は1人1日当り約15gのリノール酸を摂取しています。ですから、通常の食生活をしていれば、リノール酸が不足することはほとんど考えられません。
実際に、リノール酸の欠乏症はみられていません。
・リノール酸の重要な代謝産物プロスタグランジン
食事として摂取されたリノール酸は、体内で、アラキドン酸に変化し、アラキドン酸はさらに、プロスタグランジンという物質に変化します。プロスタグランジンはホルモン様の作用をもつ重要な生理活性物質として知られています。この物質は、生体内で血圧の調節、平滑筋(内臓の筋肉など)の収縮など多くの作用に関係しており、生体の万能調節剤とも呼べるものです。
・リノール酸には血中コレステロールを下げる働きがある
植物油中にたくさん含まれるリノール酸には、血液中のコレステロール値を下げる作用があることが知られています。
しかし、リノール酸の含有量が同じでも、血中コレステロールを下げる油と下げない油があることも報告されています。これは、植物油に含まれているフィトステロール(植物ステロール)などの影響によるものとも考えられています。
3 植物油の酸敗
・油脂はいたむ
さきにもふれたように、植物油中に多い不飽和脂肪酸(リノール酸、リノレン酸)は、空気中に長く放置しておくと酸化をうけ、また、加熱調理のさいにも酸化されやすいという特性をもっています。
これを「油の酸敗」と呼び、独特の臭気(酸敗臭)がでてきます。つまり、“油がいたむ”のです。
このような臭気のある油(あるいは油脂加工品)を食べていると、下痢や腹痛をおこします。長期問、大量に食べつづけると肝臓に障害をおこす危険があるといわれています。
家族みなが、この臭気を覚えておく必要があります。それには、小皿に5〜10mlの油を入れ、ラップでおおって、窓のそばなど日光のよくあたる場所に放っておきます。10日もたてば、はっきりと酸敗臭がでてきますので、よくこの臭気をかいで、記憶しておくとよいでしょう。
・冷暗所に保存する
光や空気は酸化をはやめるので、開封した油は、容器を密閉して、冷暗所に保存します。
脂肪の量と質をかんがえる
・近い将来、過剰摂取になるおそれ
わが国では、脂肪摂取量はかつては低水準にありました。しかし、その後の経済発展にともない食生活は著しく変化し、脂肋摂取量は着実に増加傾向を示してきました。ここ10年ほどは、その増加率はやや鈍っていますが、依然として増加傾向にあり、このままいくと近い将来、欧米諾国のように過剰摂取になる危険性があります。
1 脂肪はとりすぎないように
「日本人の栄養所要量」では、1日に摂取することが望ましい脂肪の量について、総摂取エネルギーに占める脂肪エネルギーの割合として定められています一般成人の場合は20〜25%、発育の盛んな青少年や、農繁期の農耕作業や重量物運搬など全身の筋肉を使う仕事で多量のエネルギーを必要とする人の場合は25〜30%が適当であるとされています。
・1日当りの脂肪摂取量の計算のしかた
脂肪1gは9kcalのエネルギーに相当しますから、1日当りのエネルギ一所要量の20〜30%の数値を計算し、その値をさらに9で割ると、1日にとることのできる脂肪の総量がでます。
たとえば、1日当りのエネルギー所要量が2500kcalの30歳の男性の場合は、(2500×0.25)÷9≒70となり、約70gが1日にとる脂肪量の上限です。
この値は、植物油やバターなどの油脂だけでなく、肉や魚などの食品中の脂肪をも含んだものですから、食品の摂取にも気をつけて、脂肪をとりすぎないようにすることが大切です。
・動物性の脂肪と植物性の油を分けてかんがえる
すでに述べましたように、植物油には不飽和脂肪酸それも二重結合の多い多価不飽和脂肪酸を多く含んでおり、逆に動物性の脂肪には飽和脂肪酸を多く含んでいます。このため、脂肪は、動物性か植物性かによってその性質が異なり、健康に及ぼす影響も異なってきます。
2 動物性の脂肪より植物性の油を多めに
動物性の脂肪(魚類の脂肪を除く)に多く含まれる飽和脂肪酸とコレステロールは、過剰にとると血中コレステロール値を上昇させ、動脈硬化を促進する原因になります。これに対し、植物性の油および魚類の脂肪に多く含まれる多価不飽和脂肪酸は、動脈硬化を抑える作用のあることが認められています。
したがって、脂肪の摂取にあたっては、単に脂肪の総量だけではなく、その質についても気をくばる必要があるわけです。毎日の食生活で摂取する脂肪としては、動物性の脂肪よりも植物性の油プラス魚類の脂肪の総量のほうが多くなるように工夫することが大切です。植物油と動物性脂肪の摂取比率は、2対1または1対1の割合にすることが望ましいとされています。
一方、このような不飽和脂肪酸の多い植物油や魚油は、体内で多量に蓄積すると過酸化脂肪となって蓄積されることもありますので、とり方に十分注意したいものです。
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・動物性脂肪の増加が著しい
人間の食生活は、経済的に豊かになるにつれ、動物性食品の摂取量が増加し、そのぶん植物性食品のとり方が減ってきます。動物性食品の摂取量がふえれば、動物性たんぱく質とともに、とうぜん動物性の脂肪も増加してくるわけです。また、調理法や嗜好も多様化して、砂糖や食用油脂の使用量もふえてきます。
これは世界どこの国にもみられる傾向で、わが国の場合も同じです。
わが国では、昭和26年に、1人1日当りの脂肪摂取量は20g以下だったものが、最近では58gと約3倍になっており、特に畜産食品からの動物性脂肪の増加が著しくなっています。
・植物性油脂とのつり合いが大事
脂肪は高エネルギーなので、とりすぎれば肥満などをおこしてきます。また、動物性脂肪にかたよると、コレステロールが上昇し、健康上さまざまな障害をおこすことになります。現在、植物性の油には、コレステロールを下げる働きのあることがわかっており、植物性の油を多めにとることがすすめられています。
それでは、植物油脂にはどのようなものがあり、どのような特性があるか、そして適正な脂肪のとり方はどのようにしたらよいかを考えてみましょう。
食用の油脂にはどんなものがあるか
1 脂肪を供給してくれる食品
脂肪(油脂)をエネルギー源として利用することは、昔から行なわれてきました。くるみ、栗、かや、とち、椿などの木の実を食料にし、また魚類や貝類、あるいは野鳥、鹿、猪などを食べるというかたちで昔の人は油脂をとっていたのです。
その後、山野の動物を家畜化して、その肉を食用にし、さらに乳を飲み、卵を食べるというように、動物の脂肪を多量に利用する方法を考えだしたわけです。
しかし、油脂に富んだ木の実から油をしぼり出す技術が発達したのは、かなり後世になってのことです。奈良・平安時代には油は大変な貴重品でした。てんぷらなどの揚げもの料理がようやく庶民の口にはいるようになったのは、江戸時代の末期のことと思われます。
そして現在では、揚げる、炒めるといった調理法は家庭で毎日のように行なわれ、また各種の食用油脂がさまざまに加工され、食生活をにぎわせてくれています。
・油脂はなぜ毎日の食生活にとって必要なのか
油脂には、リノール酸などの必須脂肪酸というものが含まれています。この必須脂肪酸は、ビタミン類と同じように、私たちの体内では合成できないために、食物としてとる必要があります。不足すると成長がわるくなったり、病気にかかりやすくなったりします。
このことを昔の人はよく知り、できるだけ油が切れない食事を心がけたようです。
また、油脂には、このような脂肪酸だけでなく、ビタミンE、ビタミンA、カロチンなどの微量栄養素を含んでいることが多く、またその吸収を助けますので、これらの栄養素の供給源としても役立っています。
2 食用油脂の大部分は植物油
食用に加工されている油脂には、植物性の油脂のほか、動物性の油脂(バター、ラード、牛脂)があります。
昭和58年の食用油脂に使われた原料の内訳をみると、植物油脂161万トン、動物油脂は30万5千トンで、8割以上を植物油脂が占めます。
つくられた植物油の大部分は、サラダ油です。品目別にその内訳をみると、大豆油が約45%、ナタネ油が約35%と多く、米油は7%、コーン油5%、綿実油は4%となります。
原料の大豆、ナタネは、そのほとんどが外国からの輸入に頼っています。
・加熱と油
揚げものや炒めものの油としては、加熱に対し変質しにくいことが必要条件なので、発煙点の高い大豆油、ナタネ油、米油、ラッカセイ油などが使われます。ゴマ油も特有の風味や香りをもっていますので、よく利用されます。
サラダに使う油は、そのまま口にするので、風味や色合いのほか、長期間、冷蔵庫に保存しても液状であることが要求されます。このため、ウインタリングという耐寒性をもたせる工程が加えられています。
サラダに使う油は大豆油、ナタネ油、コーン油、綿実油、サフラワー油などです。
3 家庭でよく使われる油脂加工品
マヨネーズ、ドレッシング、マーガリン、ショートニングがその主なものでしょう。
サラダドレッシングとフレンチドレッシングは、原料として、サラダ油、食酢、調味料が使われます。マヨネーズにはこのほか鶏卵を用います。
最近の家庭用マーガリン(ソフトマーガリン)は、主として大豆油あるいは綿実油を原料とし、これにパーム油、コーン油などを配合したものが多いようです。
ショートニングの原料はマーガリンと同じですが、これに窒素ガスが含まれています。お菓子などにサクサクした感じをもたせるために用います。
植物油脂にはどんな特性があるか
ここで、私たちが食べている食用油(植物油)は、どのような物質で、どのような性質をもったものなのかを調べてみましょう。
1 室温で液状のものは“油”、固体状のものは“脂”
・植物油脂は液体状のものが大多数
油脂は、室温で液状になっている“油”と、室温で固体状になっている“脂”に大きく分けられます。
植物の種子から抽出された油脂は大多数が液状です。例外として、カカオ脂があります。また、ヤシ油は、産地の熱帯では液状ですが、日本では冬期には個体状になっています。
一方、動物性の油脂は、魚油を除いて、室温で固体状になっているものが多いのです。
同じ脂肪なのに、いったいこの違いは何によるものなのでしょうか。
・油脂に含まれる脂肪酸の性質の違い
油脂(脂肪)は、いくつもの脂肪酸とグリセロールから成り立っています。そして、この脂肪酸の種類が、植物性のものと動物性のものとでは異なっているのです。
動物性の“脂”には、飽和脂肪酸と呼ばれるものが多いのが特徴で、一方、植物性の“油”は、不飽和脂肪酸と呼ばれるものを多く含みます。そして、動物脂に多く含まれる飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸)は融点が63〜71℃と高いために、室温では固体状なのです。
植物油に多い不飽和脂肪酸はリノール酸ですが、こちらは-5.2℃と融点がずっと低いので、室温で液状となっているわけです。
なお、動物性油脂でも、魚油は特別で、不飽和脂肪酸を多く含んでいます。
・不飽和脂肪酸は変化をうけやすい
ところで、飽和脂肪酸は化学的に安定した姿をしています。
これに対して、不飽和脂肪酸は、二重結合と呼ばれる充たされない手を持っているために、空気中で酸化されやすく、また、熱を加えると変化をうけやすいのです。そして、二重結合の数が増すほど不安定になります。
よく過酸化脂質ということばを耳にするでしょう。これは、このような不飽和脂肪酸が酸化された脂肪をさしています。
2 植物油に多く含まれるリノール酸
・リノール酸は必須脂肪酸
リノール酸は、植物体のなかでつくられますが、人間の体内では合成できません。そのため、植物性食品から食物として摂取することが必要なので、必須脂肪酸のひとつとされています。
・リノール酸の必要量
必須脂肪酸の必要量は、米国では、リノール酸として総摂取エネルギーの1〜2%とみなされています。この数値を日本人の場合にあてはめると、1日当り2〜4gとなります。
厚生省が行なっている国民栄養調査の植物性油脂摂取量から計算すると、現在、日本人は1人1日当り約15gのリノール酸を摂取しています。ですから、通常の食生活をしていれば、リノール酸が不足することはほとんど考えられません。
実際に、リノール酸の欠乏症はみられていません。
・リノール酸の重要な代謝産物プロスタグランジン
食事として摂取されたリノール酸は、体内で、アラキドン酸に変化し、アラキドン酸はさらに、プロスタグランジンという物質に変化します。プロスタグランジンはホルモン様の作用をもつ重要な生理活性物質として知られています。この物質は、生体内で血圧の調節、平滑筋(内臓の筋肉など)の収縮など多くの作用に関係しており、生体の万能調節剤とも呼べるものです。
・リノール酸には血中コレステロールを下げる働きがある
植物油中にたくさん含まれるリノール酸には、血液中のコレステロール値を下げる作用があることが知られています。
しかし、リノール酸の含有量が同じでも、血中コレステロールを下げる油と下げない油があることも報告されています。これは、植物油に含まれているフィトステロール(植物ステロール)などの影響によるものとも考えられています。
3 植物油の酸敗
・油脂はいたむ
さきにもふれたように、植物油中に多い不飽和脂肪酸(リノール酸、リノレン酸)は、空気中に長く放置しておくと酸化をうけ、また、加熱調理のさいにも酸化されやすいという特性をもっています。
これを「油の酸敗」と呼び、独特の臭気(酸敗臭)がでてきます。つまり、“油がいたむ”のです。
このような臭気のある油(あるいは油脂加工品)を食べていると、下痢や腹痛をおこします。長期問、大量に食べつづけると肝臓に障害をおこす危険があるといわれています。
家族みなが、この臭気を覚えておく必要があります。それには、小皿に5〜10mlの油を入れ、ラップでおおって、窓のそばなど日光のよくあたる場所に放っておきます。10日もたてば、はっきりと酸敗臭がでてきますので、よくこの臭気をかいで、記憶しておくとよいでしょう。
・冷暗所に保存する
光や空気は酸化をはやめるので、開封した油は、容器を密閉して、冷暗所に保存します。
脂肪の量と質をかんがえる
・近い将来、過剰摂取になるおそれ
わが国では、脂肪摂取量はかつては低水準にありました。しかし、その後の経済発展にともない食生活は著しく変化し、脂肋摂取量は着実に増加傾向を示してきました。ここ10年ほどは、その増加率はやや鈍っていますが、依然として増加傾向にあり、このままいくと近い将来、欧米諾国のように過剰摂取になる危険性があります。
1 脂肪はとりすぎないように
「日本人の栄養所要量」では、1日に摂取することが望ましい脂肪の量について、総摂取エネルギーに占める脂肪エネルギーの割合として定められています一般成人の場合は20〜25%、発育の盛んな青少年や、農繁期の農耕作業や重量物運搬など全身の筋肉を使う仕事で多量のエネルギーを必要とする人の場合は25〜30%が適当であるとされています。
・1日当りの脂肪摂取量の計算のしかた
脂肪1gは9kcalのエネルギーに相当しますから、1日当りのエネルギ一所要量の20〜30%の数値を計算し、その値をさらに9で割ると、1日にとることのできる脂肪の総量がでます。
たとえば、1日当りのエネルギー所要量が2500kcalの30歳の男性の場合は、(2500×0.25)÷9≒70となり、約70gが1日にとる脂肪量の上限です。
この値は、植物油やバターなどの油脂だけでなく、肉や魚などの食品中の脂肪をも含んだものですから、食品の摂取にも気をつけて、脂肪をとりすぎないようにすることが大切です。
・動物性の脂肪と植物性の油を分けてかんがえる
すでに述べましたように、植物油には不飽和脂肪酸それも二重結合の多い多価不飽和脂肪酸を多く含んでおり、逆に動物性の脂肪には飽和脂肪酸を多く含んでいます。このため、脂肪は、動物性か植物性かによってその性質が異なり、健康に及ぼす影響も異なってきます。
2 動物性の脂肪より植物性の油を多めに
動物性の脂肪(魚類の脂肪を除く)に多く含まれる飽和脂肪酸とコレステロールは、過剰にとると血中コレステロール値を上昇させ、動脈硬化を促進する原因になります。これに対し、植物性の油および魚類の脂肪に多く含まれる多価不飽和脂肪酸は、動脈硬化を抑える作用のあることが認められています。
したがって、脂肪の摂取にあたっては、単に脂肪の総量だけではなく、その質についても気をくばる必要があるわけです。毎日の食生活で摂取する脂肪としては、動物性の脂肪よりも植物性の油プラス魚類の脂肪の総量のほうが多くなるように工夫することが大切です。植物油と動物性脂肪の摂取比率は、2対1または1対1の割合にすることが望ましいとされています。
一方、このような不飽和脂肪酸の多い植物油や魚油は、体内で多量に蓄積すると過酸化脂肪となって蓄積されることもありますので、とり方に十分注意したいものです。
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