レシチンとはなんだろう
“レシチン”を食べればボケにならない、コレステロールを下げられる、といって、一部の人たちは宣伝し、特に米国ではブームになっています。本当にいわれるような“はたらき”が期待できるのでしょうか。
では、レシチンとはどんなものか、からだの中でどのような働きをしているかをみてみることにしましょう。
1 レシチンはコリンを含むリン脂質
レシチンは、卵、大豆、魚、肉、野莱、穀類などあらゆる食品に含まれる「リン脂質」と呼ばれる脂質の一種です。卵黄から発見されたので、ギリシャ語で卵黄を意味する言葉レキトスにちなんで名づけられました。
脂質のいちばん単純なものは中性脂肪と呼ばれ、グリセロールと脂肪酸からできています。リン脂質というのは、これにさらにリン酸や窒素を含んだ化合物からできているものです。
リン脂質の代表がレシチンで、模型図に示すように、2つの脂肪酸、グリセロール、リン酸、塩基(コリン)の5つの物質が結合してできています。
・リン脂質に共通する性質
リン脂質(レシチン)は脂質のなかでもちょっとかわった性質をもっています。脂肪酸の部分は油とよくなじみ、グルセロール‐リン酸‐塩基(コリン)と連なった部分は水とよくなじむのです。つまり、水にも油にもよくなじむという性質があります。この性質は、いろいろな食品加工に利用されており、たとえばマヨネーズをつくるとき卵黄を入れると酢と油がよく混ざるのは、卵黄に含まれるレシチンの働き(乳化作用)なのです。
2 レシチンの呼び名
レシチンは化学名をホスファチジル・コリンといいます。そして、リン脂質にはホスファチジル・コリンのほかに、ホスファチジル・エタノールアミン、ホスファチジル・セリン、ホスファチジル・イノシトールなどがあります。
ところで、リン脂質製品も、そして市販されているいわゆる健康食品も、一般には同じように“レシチン”と呼ばれています。大変まぎらわしいのですが、大豆や卵黄からつくられたこれらの「リン脂質製品」はホスファチジル・コリンだけではなく、ほかのリン脂質も含まれています。
そこで、ここでは“ ”をつけたものはいわゆる健康食品として売られている“レシチン”、“ ”をつけないレシチンはホスファチジル・コリンをさす、というように区別しておきます。
レシチンの消化と吸収
1 加水分解(消化)されてコリンを生ずる
食物として摂取されたリン脂質(レシチン)は小腸に入ってから本格的に消化(加水分解といいます)がはじまります。レシチンは、分解されてリゾレシチンになり、腸上皮細胞で吸収されます。腸上皮細胞中に取り込まれたリゾレシチンの多くは、ここでさらに加水分解されます。
レシチンが消化(加水分解)されるときは、まず脂肪酸がひとつずつ切り離されます。ついでグリセロール・リン酸、コリンがばらばらに切り離されます。
このように、食物としてとったレシチンはそのままでは吸収されません。そして、切れた成分は体内で再合成されます。
・コリンを原料としてレシチンがつくられる
コリンの大部分は肝臓にとり込まれて貯蔵されます。肝臓では、コリンキナーゼという酵素の働きでコリンからレシチンがつくられます。
この酵素は肝臓のほか、脳、肺、そのほか多くの臓器や組織に存在していて、それぞれコリンからレシチンをつくっています。
2 コリンについて
・食事性のコリンと内因性のコリン
コリンは、いろいろな食品に単独でも含まれていますが、大部分はいま述べたように食事中に含まれるレシチンのかたちで摂取されます(食事性のコリンといいます)。
そしてコリンは、食事から供給されるだけではなく、からだの中で多くの臓器で新たに生合成されています(内因性のコリンといいます)。
・コリンの吸収
食事として摂取されたコリンは、小腸の上部で吸収されます。コリンの吸収や輸送は受動拡散といって、濃度の高いほうから低いほうへとひろがるしくみで行われています。腸で吸収されたコリンは、水溶性なのでそのまま門脈に入り肝臓へ運ばれ、貯蔵されます。
・コリンは多くの臓器で合成される
からだの中ではさまざまな臓器で、ホスファチジル・エタノールアミン(リン脂質のひとつ)を材料として、コリン(内因性のコリン)を新しくつくりだします。最も多くつくるのは肝臓ですが、そのほかに脳、心臓、肺、腎臓、副腎、脾臓、男性では睾丸などでもコリンをつくっています。
コリンは、従来はビタミンB群のひとつとされていました。しかし、このように体内でつくることができるので、現在ではビタミン(あるいは必須栄養素)とはみなされていません。
レシチンの働きコリンの働き
1 レシチンは生体膜の構成成分
リン脂質は、人間の体内のあらゆる細織に存在しています。そしてレシチンは、体内のリン脂質のうちの2分の1から3分の1を占めています。
レシチンの役割のひとつは、たんぱく質やコレステロールとともに、細胞膜などの生体膜を構成していることです。生体膜は栄養素やさまざまな物質が細胞へ出入りするのをチェックする重要な役目をしています。
・血漿リポたんぱくを安定させる働きもする
レシチンはまた、体内で消化・吸収された脂肪などの栄養分を、からだのすみずみまで送りとどける血漿リポたんぱくの構成成分となっています。リポたんぱくは、コレステロールや中性脂肪、たんぱく質とリン脂質とからできた小粒子ですが、レシチンはこのリポたんぱくの安定性を守る役目を果たしています。
2 コリンはアセチルコリンをつくる原料になる
コリンは、からだの中でレシチンの原料となるほか、神経伝達物質のアセチルコリンをつくりだす役割をもっています。神経伝達物質というのは、神経から神経へ情報を伝達する物質です。アセチルコリンはそのなかのひとつで、記憶や学習、筋肉の運動などに関連する物質と考えられています。
このようなアセチルコリンの働きに関連して、“レシチン”(市販の“レシチン”です)を食べれば体内でコリンがつくられ、そのコリンを原科としてアセチルコリンができて、記憶力や学習力を高め、ボケないようになるのではないか、ということがいわれているようですが、はたしてそんなにうまくいくでしょうか。
“レシチン”を食べてもボケは防げない
だれでも、年をとってボケるのはいやなものです。“レシチン”を食べれば記憶力がよくなり、成績上がるものならそうしたいと思うでしょう。
現在までに、試験管内や動物実験で多くの研究がなされています。
動物実験によると、コリンを大量に投与すると血液中のコリン濃度が高まることが知られています。しかし、そのコリンがそのまま脳の中に入ってアセチルコリンをつくるかというと、そう簡単にはいかないようです。
・老人性痴呆の治療効果も期待できない
動物実験によると、老齢になったラットをコリン欠乏食で育てていると記憶力の低下がすすみ、コリンを補充してやると記憶力が回復するという報告があります。
しかし、人間では、老人性痴呆(アルツハイマー型)の患者に、コリンとレシチンを用いて、厳密な二重盲検臨床試験が行なわれましたが、そのような効果はまったく認められていません。
“レシチン”を食べても動脈硬化は防げない
1 “レシチン”では動脈硬化は予防できない
動脈硬化が、血液中のコレステロール値と密接に関連していることは、まず疑いのないところです。
リン脂質には、試験管の中で油を溶かしこむ作用があり、血液中を運ばれるコレステロールはレシチンと一緒に、リポたんぱくとなって存在しています。
そのようなことから、“レシチン”(リン脂質製品)を、動脈硬化の予防効果を期待して、食べている人がいます。しかし、市販の“レシチン”には動脈硬化に対するそのような効果は、認められていません。
2 コレステロ−ル胆石の予防も期待できない
胆汁の中で、コレステロールは、胆汁酸とレシチンなどのリン脂質によって溶かしこまれています。そして、胆汁中のコレステロールが増えたり、リン脂質が減ったりしたときにコレステロールが結晶となって胆石ができると考えられています。
このことから“レシチン”をたくさん食べれば胆石の予防が期待できるのではないか、と短絡的にいわれることもありますが、前に述べたように、レシチンは腸の中でばらばらに分解されて吸収されるのですから、そのような作用は期待できません。実際に、胆石症の治療にレシチンを投与した成績でも、有効性は認められていません。
レシチンは日常の食事で十分とれる
1 はたらきが科学的に立証されるまでは慎重に対処すること
今日、いわゆる健康食品ブームによって、米国だけでなく、わが国においても、“レシチン”が関心を集めています。
そして、顆粒、液状などいろいろの形状のものが市販されています。これは、さきに述べたように、レシチンが試験管の中で示す乳化作用などから飛躍して、動脈硬化の予防や治療につながるとの期待からでしょうが、試験管の中でおこる出来事が、生体内でそのままおこることは期待できません。
また、これら“レシチン”の効果として期待されるものは、アセチルコリンをつくりだすことでこれによって老人ボケを防ぐということでしょう。しかしこれも、一時の期待にもかかわらず、現在、その有用性について、厳密に科学的に実証した成績はないのです。
科学的な研究の成果が明らかにされていないときに、むやみに“ブーム”にのるのは賢明な策とはいえません。
2 “レシチン”大量摂取は健康障害をおこす危険がある
医療の場においてレシチンが、老人性痴呆(アルツハイマー型)などに対して有効だと主張する研究報告では、非常に大量の処方となっています。このような場合には、胃腸障害、発汗、流唾、食欲不振などの副作用がおこることが知られています。
一般の人が、その効果を期待して、市販の“レシチン”を長期間にわたり、大量に用いて“自己治療”したりすれば、さまざまな健康障害をおこす危険もあります。
なお、医薬品としては医師の処方によって高脂血症用薬として使われることもあります。
3 レシチンはあらゆる食品に含まれている
レシチン(ホスファチジル・コリン)は、肉類、魚類、卵、乳製品、豆類、穀類、野菜類のあらゆる食品に含まれています。右の表にその代表的なものを示します。
さきに述べたように、レシチンもコリンも、その必要な量は体内で合成されています。それで、レシチンもコリンも必須栄養素とはみなされていないのです。
4 普通の食事をしていれば不足することはない
普通の食事をしているときに摂取するレシチン量は、1日1.7〜2.7g(レシチンとして計算した総リン脂質量)とされています。また、肝臓でつくられるリン脂質(その大部分はレシチン)の量は、成人で1日に平均して11g位とされています(これは卵6個食べた分に相当します)。このように、体内でつくられる量のほうが多いのです。
レシチンを特に多く含む食品の効果を期待して、大豆ばかり、あるいは卵黄ばかりを食べるのは意味ありません。やはり、栄養のかたよりのない食生活を心がけることが大切です。
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“レシチン”を食べればボケにならない、コレステロールを下げられる、といって、一部の人たちは宣伝し、特に米国ではブームになっています。本当にいわれるような“はたらき”が期待できるのでしょうか。
では、レシチンとはどんなものか、からだの中でどのような働きをしているかをみてみることにしましょう。
1 レシチンはコリンを含むリン脂質
レシチンは、卵、大豆、魚、肉、野莱、穀類などあらゆる食品に含まれる「リン脂質」と呼ばれる脂質の一種です。卵黄から発見されたので、ギリシャ語で卵黄を意味する言葉レキトスにちなんで名づけられました。
脂質のいちばん単純なものは中性脂肪と呼ばれ、グリセロールと脂肪酸からできています。リン脂質というのは、これにさらにリン酸や窒素を含んだ化合物からできているものです。
リン脂質の代表がレシチンで、模型図に示すように、2つの脂肪酸、グリセロール、リン酸、塩基(コリン)の5つの物質が結合してできています。
・リン脂質に共通する性質
リン脂質(レシチン)は脂質のなかでもちょっとかわった性質をもっています。脂肪酸の部分は油とよくなじみ、グルセロール‐リン酸‐塩基(コリン)と連なった部分は水とよくなじむのです。つまり、水にも油にもよくなじむという性質があります。この性質は、いろいろな食品加工に利用されており、たとえばマヨネーズをつくるとき卵黄を入れると酢と油がよく混ざるのは、卵黄に含まれるレシチンの働き(乳化作用)なのです。
2 レシチンの呼び名
レシチンは化学名をホスファチジル・コリンといいます。そして、リン脂質にはホスファチジル・コリンのほかに、ホスファチジル・エタノールアミン、ホスファチジル・セリン、ホスファチジル・イノシトールなどがあります。
ところで、リン脂質製品も、そして市販されているいわゆる健康食品も、一般には同じように“レシチン”と呼ばれています。大変まぎらわしいのですが、大豆や卵黄からつくられたこれらの「リン脂質製品」はホスファチジル・コリンだけではなく、ほかのリン脂質も含まれています。
そこで、ここでは“ ”をつけたものはいわゆる健康食品として売られている“レシチン”、“ ”をつけないレシチンはホスファチジル・コリンをさす、というように区別しておきます。
レシチンの消化と吸収
1 加水分解(消化)されてコリンを生ずる
食物として摂取されたリン脂質(レシチン)は小腸に入ってから本格的に消化(加水分解といいます)がはじまります。レシチンは、分解されてリゾレシチンになり、腸上皮細胞で吸収されます。腸上皮細胞中に取り込まれたリゾレシチンの多くは、ここでさらに加水分解されます。
レシチンが消化(加水分解)されるときは、まず脂肪酸がひとつずつ切り離されます。ついでグリセロール・リン酸、コリンがばらばらに切り離されます。
このように、食物としてとったレシチンはそのままでは吸収されません。そして、切れた成分は体内で再合成されます。
・コリンを原料としてレシチンがつくられる
コリンの大部分は肝臓にとり込まれて貯蔵されます。肝臓では、コリンキナーゼという酵素の働きでコリンからレシチンがつくられます。
この酵素は肝臓のほか、脳、肺、そのほか多くの臓器や組織に存在していて、それぞれコリンからレシチンをつくっています。
2 コリンについて
・食事性のコリンと内因性のコリン
コリンは、いろいろな食品に単独でも含まれていますが、大部分はいま述べたように食事中に含まれるレシチンのかたちで摂取されます(食事性のコリンといいます)。
そしてコリンは、食事から供給されるだけではなく、からだの中で多くの臓器で新たに生合成されています(内因性のコリンといいます)。
・コリンの吸収
食事として摂取されたコリンは、小腸の上部で吸収されます。コリンの吸収や輸送は受動拡散といって、濃度の高いほうから低いほうへとひろがるしくみで行われています。腸で吸収されたコリンは、水溶性なのでそのまま門脈に入り肝臓へ運ばれ、貯蔵されます。
・コリンは多くの臓器で合成される
からだの中ではさまざまな臓器で、ホスファチジル・エタノールアミン(リン脂質のひとつ)を材料として、コリン(内因性のコリン)を新しくつくりだします。最も多くつくるのは肝臓ですが、そのほかに脳、心臓、肺、腎臓、副腎、脾臓、男性では睾丸などでもコリンをつくっています。
コリンは、従来はビタミンB群のひとつとされていました。しかし、このように体内でつくることができるので、現在ではビタミン(あるいは必須栄養素)とはみなされていません。
レシチンの働きコリンの働き
1 レシチンは生体膜の構成成分
リン脂質は、人間の体内のあらゆる細織に存在しています。そしてレシチンは、体内のリン脂質のうちの2分の1から3分の1を占めています。
レシチンの役割のひとつは、たんぱく質やコレステロールとともに、細胞膜などの生体膜を構成していることです。生体膜は栄養素やさまざまな物質が細胞へ出入りするのをチェックする重要な役目をしています。
・血漿リポたんぱくを安定させる働きもする
レシチンはまた、体内で消化・吸収された脂肪などの栄養分を、からだのすみずみまで送りとどける血漿リポたんぱくの構成成分となっています。リポたんぱくは、コレステロールや中性脂肪、たんぱく質とリン脂質とからできた小粒子ですが、レシチンはこのリポたんぱくの安定性を守る役目を果たしています。
2 コリンはアセチルコリンをつくる原料になる
コリンは、からだの中でレシチンの原料となるほか、神経伝達物質のアセチルコリンをつくりだす役割をもっています。神経伝達物質というのは、神経から神経へ情報を伝達する物質です。アセチルコリンはそのなかのひとつで、記憶や学習、筋肉の運動などに関連する物質と考えられています。
このようなアセチルコリンの働きに関連して、“レシチン”(市販の“レシチン”です)を食べれば体内でコリンがつくられ、そのコリンを原科としてアセチルコリンができて、記憶力や学習力を高め、ボケないようになるのではないか、ということがいわれているようですが、はたしてそんなにうまくいくでしょうか。
“レシチン”を食べてもボケは防げない
だれでも、年をとってボケるのはいやなものです。“レシチン”を食べれば記憶力がよくなり、成績上がるものならそうしたいと思うでしょう。
現在までに、試験管内や動物実験で多くの研究がなされています。
動物実験によると、コリンを大量に投与すると血液中のコリン濃度が高まることが知られています。しかし、そのコリンがそのまま脳の中に入ってアセチルコリンをつくるかというと、そう簡単にはいかないようです。
・老人性痴呆の治療効果も期待できない
動物実験によると、老齢になったラットをコリン欠乏食で育てていると記憶力の低下がすすみ、コリンを補充してやると記憶力が回復するという報告があります。
しかし、人間では、老人性痴呆(アルツハイマー型)の患者に、コリンとレシチンを用いて、厳密な二重盲検臨床試験が行なわれましたが、そのような効果はまったく認められていません。
“レシチン”を食べても動脈硬化は防げない
1 “レシチン”では動脈硬化は予防できない
動脈硬化が、血液中のコレステロール値と密接に関連していることは、まず疑いのないところです。
リン脂質には、試験管の中で油を溶かしこむ作用があり、血液中を運ばれるコレステロールはレシチンと一緒に、リポたんぱくとなって存在しています。
そのようなことから、“レシチン”(リン脂質製品)を、動脈硬化の予防効果を期待して、食べている人がいます。しかし、市販の“レシチン”には動脈硬化に対するそのような効果は、認められていません。
2 コレステロ−ル胆石の予防も期待できない
胆汁の中で、コレステロールは、胆汁酸とレシチンなどのリン脂質によって溶かしこまれています。そして、胆汁中のコレステロールが増えたり、リン脂質が減ったりしたときにコレステロールが結晶となって胆石ができると考えられています。
このことから“レシチン”をたくさん食べれば胆石の予防が期待できるのではないか、と短絡的にいわれることもありますが、前に述べたように、レシチンは腸の中でばらばらに分解されて吸収されるのですから、そのような作用は期待できません。実際に、胆石症の治療にレシチンを投与した成績でも、有効性は認められていません。
レシチンは日常の食事で十分とれる
1 はたらきが科学的に立証されるまでは慎重に対処すること
今日、いわゆる健康食品ブームによって、米国だけでなく、わが国においても、“レシチン”が関心を集めています。
そして、顆粒、液状などいろいろの形状のものが市販されています。これは、さきに述べたように、レシチンが試験管の中で示す乳化作用などから飛躍して、動脈硬化の予防や治療につながるとの期待からでしょうが、試験管の中でおこる出来事が、生体内でそのままおこることは期待できません。
また、これら“レシチン”の効果として期待されるものは、アセチルコリンをつくりだすことでこれによって老人ボケを防ぐということでしょう。しかしこれも、一時の期待にもかかわらず、現在、その有用性について、厳密に科学的に実証した成績はないのです。
科学的な研究の成果が明らかにされていないときに、むやみに“ブーム”にのるのは賢明な策とはいえません。
2 “レシチン”大量摂取は健康障害をおこす危険がある
医療の場においてレシチンが、老人性痴呆(アルツハイマー型)などに対して有効だと主張する研究報告では、非常に大量の処方となっています。このような場合には、胃腸障害、発汗、流唾、食欲不振などの副作用がおこることが知られています。
一般の人が、その効果を期待して、市販の“レシチン”を長期間にわたり、大量に用いて“自己治療”したりすれば、さまざまな健康障害をおこす危険もあります。
なお、医薬品としては医師の処方によって高脂血症用薬として使われることもあります。
3 レシチンはあらゆる食品に含まれている
レシチン(ホスファチジル・コリン)は、肉類、魚類、卵、乳製品、豆類、穀類、野菜類のあらゆる食品に含まれています。右の表にその代表的なものを示します。
さきに述べたように、レシチンもコリンも、その必要な量は体内で合成されています。それで、レシチンもコリンも必須栄養素とはみなされていないのです。
4 普通の食事をしていれば不足することはない
普通の食事をしているときに摂取するレシチン量は、1日1.7〜2.7g(レシチンとして計算した総リン脂質量)とされています。また、肝臓でつくられるリン脂質(その大部分はレシチン)の量は、成人で1日に平均して11g位とされています(これは卵6個食べた分に相当します)。このように、体内でつくられる量のほうが多いのです。
レシチンを特に多く含む食品の効果を期待して、大豆ばかり、あるいは卵黄ばかりを食べるのは意味ありません。やはり、栄養のかたよりのない食生活を心がけることが大切です。
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2008/05/30(金) 03:44:25 | 病名・病気・医学のブログリンク集


