食物繊維の知識

ここでは、 食物繊維の知識 に関する情報を紹介しています。
食物繊維とは

1 見直されはじめた食品中の繊維の役割

 つい最近まで、食品中に含まれる繊維は、エネルギー源にならないばかりか、他の栄養素の利用効率を下げるといわれ敬遠されてきました。いわば食物の「カス」と考えられていたものです。これがじつは他の栄養素(たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル)にも劣らない重要な食物成分であるとして研究されはじめたのは、1970年代に入ってからのことです。
 アフリカで長年の間、医療にたずさわってきたイギリスの医師たちが、西欧諸国に多い、いわゆる成人病がアフリカ原住民に少ないことから、食生活とこれらの病気との関係を詳しく調ベました。その結果、文明国に多い病気は食物繊維のとり方が少ないためだろうと推論したのです。それ以後、多くの研究が行なわれ、食物繊維の果たす役割がしだいに明らかになってきました。


2 食物繊維の種類

 食物繊維(ダイエタリー・ファイバー)の種類は非常に多く、食品によって含まれる種類も異なります。現在まだ定義ははっきり定まっていませんが植物性食品、動物性食品を含め、「人間の消化酵素で消化されない食物中の高分子の化合物」とみなされています。
 食物繊維を大きく分けると、水に溶けないもの(水不溶性食物繊維)と、水に溶けるもの(水溶性食物繊維)の2つに分けられますが、それらは性質も働きもそれぞれ異なります。
 水に溶けない食物繊維の主なものは、セルロース、へミセルロース、リグニンといわれるもので、いずれも植物の細胞壁の主成分です。動物性のものとしては、エビやカニの殻に含まれるキチンがあります。
 水溶性の食物繊維には、ペクチン(果実類に多く含まれる)、アルギン酸およびカラギーナン(海藻類)、そのほかコンニャクマンナン(こんにゃく粉)などの植物性ガム・粘質物があります。いずれも水に溶けて粘性を示します。


食物繊維の働き

 口にとりこまれた食物繊維の多い食物は、よく噛んで食べないといけないので、咀しゃく回数を増やします。すると、唾液の分泌がうながされます。
 食物塊は胃を経由して十二指腸へ送りこまれ、食物中に含まれる食物繊維は、ここで栄養素の消化吸収にさまざまな影響をあたえます。


1 便の“カサ”をふやし、速やかに排便させる

 大腸は、消化されなかった物を処理し、糞便としてからだの外へ排泄するところです。ここでの食物繊維の働きは、水分を吸収して便をやわらかくし、便の量、“カサ”をふやして、なめらかに排便させます。便量が多いほど腸内を通過する時間は短くなり、便秘になるのを防ぐことができます。

2 食物繊維と病気との関係

 食物繊維が注目を集めている理由としては成人病予防とのかかわり合いですが、そのひとつに大腸がんとの関係があります。もともと大腸がんは欧米に多く、アジア・アフリカには少ない病気です。そして、大腸ガンの発生率の高い国では、動物性食品や脂肪を多くとり、食物繊維のとり方が少なく、逆に発生率の低い国では穀類や野菜などを主体にして、食物繊維の多い食事をとっています。こうしたことから、食物繊維のとり方となにか関係があるのではないか、と考えられたわけです。
 しかし、食物繊維が大腸がんの予防に果たす役割については、科学者の間で意見の一致がみられていません。
 アメリカでは、さまざまな研究報告をくわしく検村した結果、「食物繊維が人間の結腸・直腸がんを防ぐ効果があると言いきれる証拠は不十分である」といわれています。


3 他の栄養素の吸収を妨げる働きもある

 消化管での食物繊維の働きは、いいことずくめではありません。ある種の食物繊維は、からだに必要な無機質(ミネラル)の吸収を妨げます。また、消化管内で、“カサ”が増大すると、動物実験で、粘膜を傷つける可能性のあることも観察されています。とる量が多いほどよいというものではないのです。

食物繊維をとるときの注意

 わが国は古くから食物繊維の多い食品に恵まれていました。しかし食生活が近代化するにつれ、動物性食品や精製した食品、加工食品など繊維の少ない、あるいは繊維を取り除いた食品をとることが多くなり、そのため、食物繊維の摂取量はこの30年間に、かなり減っています。

1 “白いご飯”はおかずに注意

 食物繊維の供給源となるものの多くは植物性食品です。穀類はその代表的なものですが、精製すればするほど食物繊維は失われます。
 欧米諸国では、ふすまを取り除かない小麦粉でつくった全粒粉パンや胚芽パンといった見栄えのよくない、色の黒いパンがよく利用されています。これは、古くから、小麦ふすまが便秘に効くとされ、緩下剤として用いられてきたこともありますが、最近になって、ふすま入りパンが健康によいという認識が広まっていることも関係していると思われます。
 全粒粉パンを日本にあてはめると、玄米食ということになります。しかし、精白した米のおいしさや、調理する手間を考えると、玄米を食べることに抵抗を感ずる人も多いことでしよう。
 いずれにしても、精白米には食物繊維はわずかしか含まれていないので、白いご飯のときは、おかずに十分注意しないといけません。
 おかずになる食品で食物繊維を多く含むものに豆類、野菜類、きのこ類、海藻類があります。また、果実類にも多く含まれています。日常の食生活に大いにとり入れてほしいものです。


2 繊維はとり過ぎないこと

 しかしながら、食物繊維には、もともと食物中の栄養成分の吸収を妨げる性質があります。そのため、食物繊維の多い食品をとり過ぎると、からだにマイナスの結果をもたらすことがあります。この両刃の剣ともいえる食物繊維を上手に利用するには、自分の栄養状態や健康状態をよくつかんで、自分に合った適切なとり方をすることが大切です。
 食物繊維をとるとき、最も注意したいのは、食物繊維にはカルシウム、鉄、亜鉛などからだにとって重要な栄養素である無機質(ミネラル)の吸収を妨げる働きのあることです。
 日本人のカルシウム摂取量は、平均的には、ほぼ望ましい水準に達してはいますが、個人差が大きく、また、妊婦や老人にはカルシウム不足が見かけられます。一方、成人女性には鉄欠乏性貧血もかなりみられます。こういう人たちは、食物繊維をとり過ぎないよう注意し、カルシウムや鉄を十分とるよう気をつけないといけません。


3 繊維の多い食品にかたよらないこと

 食物繊維を用いた動物実験で、ある病気によい効果が得られたとか、人でもよい効果が得られたとかいわれても、過信は禁物です。なんらかの効果を期待して、精製した食物繊維の製品をむやみに使ったりしますと、とり過ぎによる副作用をおこしかねません。
 食物中に含まれる食物繊維についても同じことがいえます。食物繊維を含んでいる食品をとるよう心がけることは大切なことです。しかし、病気に対するなんらかの効果を期待して、繊維の多い食品にかたよって食べすぎれば、その分だけ他の食物が食べられないことになり、結果として栄養がかたよってしまいますので、決して好ましいことではありません。

食物繊維の一日量の目安

 現在私たちは食物繊維をどれだけとっているでしょうか。国民栄養調査結果にもとづいて食物繊維量を計算すると、昭和25〜30年には1日20gとっていたものが、昭和55年には1日14gにまで減少しています。<注:食物繊維の定量法は現在まだ統一されていません。そのため研究者によりそれぞれ数値が異なります。ここに示した数値は、ペクチンなど水溶性の食物繊維を含まないため、低い数値となっています。>
 ところで、食物繊維は一日にどの位とったらよいのでしょうか。
 残念ながら、現在までのところ、望ましい標準摂取量はわかっていません。
 そのため、どのような食物からどの程度の食物繊維をとったらよいかという基準を示すことはできません。そこで実行可能な目安を示すと、毎日規則正しく便通があるかどうかです。便秘するようでは食物繊維が不足していると考えてよいでしょう。イギリスの医師バーキットは、毎日の大便が適度な柔らかさをもち、水洗トイレの水に浮くようであれば、食物繊維のとり方は十分であるといっています。
 なお、便秘予防という点では、例外もありますが、水に溶けやすい食物繊維は効果的でなく、水に溶けにくい食物繊維のほうが効果があるといわれています。


主な食物繊維素材  

(1) 小麦ふすま:欧米では最も重要な食物繊維源として古くから用いられている。
(2) 米ぬか:玄米を精白するさい取り除かれる外皮および糊粉層の部分で、玄米の約8%得られる。
(3) とうもろこしふすま:コーンスターチの副産物として得られる。
(4) えん麦ふすま:小麦ふすまほど色が濃くなく、料理に使いやすい。米国での人気が高い。
(5) ビ−ル粕:ビール製造の副産物で、食物繊維が多い。
(6) りんご粕:りんごジュース製造の残渣(カス)として得られる。
(7) おから:有力な食物繊維源であるが、家庭の惣菜に一部使用されるほかは家畜の飼料に回されている。
(8) セルロ一ス:ぶな、かえで、松などから採ったパルプを粉末化したもので、食品の粘度調整や保水性向上の目的で使われる。
(9) ペクチン:りんごや柑橘類から得られ、天然糊料として食品添加物に指定されている。
(10) 植物ガムと粘質物:植物細胞の貯蔵成分および分泌物質で、粘性があるので天然糊料として食品添加物に指定されている。グアーガム、コンニャクマンナン、イサゴール、アラビアガム、ガラヤガム、トラガントガム、ガッティガム、ロ一カストビーンガム、タマリンド種子ガムなど。
(11) 海藻の多糖類:褐藻類から得られるアルギン酸、紅藻類から得られる寒天およびカラギーナンがある。


栄養はバランスよくとることが大切

 食物繊維の摂取量を増やそうと、とくに繊維の多い食品ばかりを食べて、そのために、たんぱく質や脂質、ミネラル(無機質)、ビタミンなどの重要な栄養素の摂取がおろそかになるようでは問題外です。
 自分が必要とするエネルギーや栄養素が十分にとれて、そのうえに、適当に食物繊維を含む食事が、バランスのとれた食事なのです。
 健康状態は個人個人で異なります。食物繊維も自分の健康や栄養の状態に応じて、また、いろいろな食品から、バランスよく摂取するよう心がけることが大切です。

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