生命は水によってはぐくまれている
・生命は海の中で誕生した
私たちの生命は、水によって生まれ、水によって生きているといっても過言ではありません。事実、地球上にはじめて生命が誕生したのは、20〜40億年前の海水の中であったといわれます。
母なる海によってはぐくまれた生命は、単細胞から多細胞へとしだいに進化し、やがて陸上に生活するにいたりました。しかし、それでも生物は、水からはなれて暮らすわけにはいかなかったのです。
・私たちのからだの中には太古の海と同じ成分の水が流れている
その証拠のひとつとして、私たちのからだを形づくっているひとつひとつの細胞は、その昔に海水に囲まれていたのと同様に、いまもそのまわりを囲む水の中に浮かんで、その生命を維持しているのです。そして、それらの水は、太古の海の成分とよく似ているといわれています。
からだの中で水はどんなふうに力を発揮するか
私たちのからだの中にある水分は、体液と呼ばれ、体重の約60%を占めています。このうち3分の2は私たちのからだをつくっている細胞の中に存在し(細胞内液といいます)、3分の1はその外側に存在しています(細胞外液といいます)。
この細胞の外側にあるのは、赤血球や白血球(これも細胞の一種ですが)とともに血液をかたちづくっている「血しょう」と、からだ中の組織や細胞のすきまを縫って流れている「組織間液」と呼ばれるものです。
それでは、私たちのからだの中で、これらの水がどんな働きをしているかを、これから探ってみることにしましょう。
1 強い結合力で体内に“流れ”をつくる
水というものは、まことに不思議な性質をもった物質です。水道の蛇口をひねると、ジャーと流れ落ちる水の流れ、あれがまさに水そのものの姿です。手や包丁で切ろうとしても、すぐつながってしまい、切りあとさえも残さないでしょう。
これは、水の分子どうしがおたがいに強く引き合う力を発揮して、たくさんの水の分子が網の目状にがっちりとつながっているためなのです。
水のこのような性質が、私たちのからだの中で、血液その他の体液の途絶えることのない“流れ”(循環)をかたちづくっているのです。
2 栄養物をとかしてからだのすみずみまで運ぶ
物をとかす力も、水のもつ重要な働きのひとつです。たとえば食塩はNaClという式で表わされますが、これをNa(ナトリウム)とCl(塩素、クロール)の2つの原子に引き離すには大きなエネルギーが必要です。ところが、水の中に入れると、水の分子にひきつけられて、いとも簡単に別れてしまうのです。つまり、とけてしまうのです。
このようにして、からだの中の水は、さまざまな物質(栄養素とか老廃物)をとかしこんでいます。
栄養素を抱えこんだ血しょうは、血液としてからだ中を循環しながら、すべての細胞に必要な栄養分を補給し、その細胞でいらなくなった物質(老廃物)を運び去るという重要な仕事を行なっているのです。そして、これらの細胞と血液との間の物質のやりとりを仲介する役割を果たしているのが、組織間液です。
3 栄養物や老廃物を壁を越えて移動させる
ところで、ある物質をとかしこんだ液体(溶液といいます)には、とけこんだ物質が周囲に向かってひろがっていき、まわりと同じ濃度になろうとする性質があります。これが浸透圧と呼ばれる働きです。
水のこの働きで、血液にとけこんだ物質が血管の壁を越えて外側の濃度のうすいほうへ移動したり、あるいは細胞の中にいっぱいたまった老廃物を外に出したりできるのです。
からだの中の水分の収入と支出はどうなっているか
1 水の収支のバランスは
なにごとにつけ、収入と支出のバランスがとれていることが大切ですが、水の場合も同様です。
・失われた水分の補充
私たちが毎日、水分をとるのは、からだがそれを必要としているからです。気温の高いときは汗がたくさん出ますし、そうでなくても皮膚の表面から、あるいは呼吸として常に水分が蒸発しています。また、からだの中で不要となった老廃物は、尿として外部に排泄されていきます。
このようにして失われた水分は、口から補充してやらなければいけません。
・健康な人では収入と支出はトントン
健康な成人が、飲料として1日に摂取する水の量は平均して1200ml、また食品にまざっている水分が約800mlと考えられています。このほかに、からだの中でつくられる水が200mlほどあるので、これらを合計すると、1日の水の収入総額は2200mlということになります。
これに対して支出のほうは、尿として出るのが1200ml、皮膚からとか呼吸によって蒸発する水分が900ml、大便の中に含まれて出るのが100mlぐらいで、これの合計が2200mlとなり、収支トントンという計算が成り立ちます。
しかし、この計算はあくまでひとつの例にすぎません。飲む水の量や、食事からとる水分は、その人その人によって大きな差があります。そのような場合、からだは尿の量を変化させて、収支のバランスをとっています。
2 体内の水分は尿の量で調節される
体内の水分量を調節しているのは腎臓です。体内に水分が多すぎるときは、腎臓は大量のうすい尿をつくって余分な水分を取り除きます。水分が不足ぎみのときは、少量の濃い尿をつくって、体外に出る水分を調節しています。
このしくみには、体内にあるナトリウムの量だとか、ホルモンの働きなどが複雑にかかわっています。
からだの中の水分が不足するとき、過剰になるとき
・のどのかわきは自然の欲求
健康なときの、のどのかわきは自然の欲求です。それをむりにがまんをしていると、水分の欠乏がおこってきます。また、私たちは、ときにはビールやお茶を何杯もおかわりしたり、うどんを食べたあと汁をぜんぶすすったりして、余分な水分をとることもあります。
このようにして、からだは常に、水分の欠乏や過剰になる危険をはらんでいるのです。
もちろん、健康なからだは、こうした異常事態に対処する機能をもっていますが、それでも多少は収支のバランスが上下にゆれながら生活をしているといってよいでしょう。
1 水分の極端な欠乏:脱水症
炎天下に水も飲まずに激しい運動をやったとか、高温多湿の環境で長時間の作業をしたときには、極端な水分の欠乏(脱水症)がよくおこります。また、小児では、下痢や嘔吐がつづいたときに、ひどい脱水症をおこし、治療が遅れると死にいたることもあります。
このようなときは、からだを冷やしたり、水分を補給してやらないといけませんが、汗や便とともに失われる塩分やその他の物質の補給(点滴輸液)が必要になることもあります。
2 水分の過剰とむくみ
健康な人ではまずおこりませんが、心臓や腎臓に病気のある人では、水を飲みすぎると体内に水がたまりすぎて、一時的にむくみがつよくなることがあります。
また、すでにむくみのある場合は、いくら水分を制限しても、むくみはとれません。この場合は、医師の指示のもとに、食塩を制限していれば、水はいずれは排泄されてしまいます。
飲料としての水をかんがえる
1 水には硬水と軟水がある
・なま水を飲むと下痢をする人
外国旅行にいったら“なま水”を飲むな、とよくいいます。ヨーロッパのような文明度の高いところでも、その土地の水を飲んで下痢をした、というような話を耳にします。
そして、下痢と聞くとすぐ細菌などと結びつけて考えがちですが、じつは、水の硬度が大きく関係しているようです。硬度というのは、水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を表わす単位で、その含有量がとくに多いものを硬水、少量しか含んでいないものを軟水と呼んでいます。
わが国の水道水はだいたいが軟水です。ところが、ヨーロッパでは硬水のところが多いので、飲みなれてない日本人は、硬水に含まれるマグネシウムによって下痢をおこすのだといわれています。
・ミネラル入りのウォーター
ところで、飲み水は、その中にある程度のミネラル(カルシウム、リン、鉄、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)が含まれているほうが、味にコクがでるといわれます。
そのため、ミネラルウォーターなどという名称で、世界各地のいわゆる“名水”が、びん詰めにされて売られています。そして、その水にカルシウムやマグネシウムを多く含むから健康によい、などと宣伝している向きがあります。
しかしながら、こうしたうたい文句には、科学的根拠のとぼしい場合が多いようです。素人の健康法は、とかくフィーリングに頼ることが多く、それにちょっぴり学間の風味づけがしてあると、つい惑わされがちなものです。
・カルシウムは食事でとるほうが確実
ミネラルは微量栄養素として、私たちのからだに必要なものですが、ほかにもミネラルを含む食品はたくさんあるのです。名水の味のほうはともかくとして、カルシウムを摂取するというだけの目的であれば、食事からとるほうがよほど確実です。
2 水と衛生
飲料水は、濁りや色がなく、病原菌や有害物質を含んでいないことが必要です。このため、わが国では水道水について厚生省令で水質基準が定められています。
・浄水器を過信しないこと
水道水の水源となる河川や湖沼が工場や家庭からの排水で汚れると、微生物が繁殖し、かび臭や悪臭がでてきます。浄水場では、消毒のために塩素を入れるのですが、これがいわゆる“カルキ臭”となって残ります。味もいいとはいえません。
また、マンションなど高層ビルの貯水式のタンクでは、掃除を怠ると長い間には水あかがたまって、濁りやにおいの原因となり雑菌も繁殖してきます。
そこで、こうしたいやな味やにおいを消して、おいしい水にできるということで家庭用の活性炭浄水器が売られています。
浄水器は、使い方によってはかえって危険なことがあります。厚生省調べによると、活性炭浄水器は「長い間使わないままでいると、浄水器の中に雑菌が繁殖する恐れがある」とされています。
ところで、カルキのにおいのする水道水は、ばい菌が消毒されて衛生的に安全であることの証拠でもあるのです。活性炭は、いやな味やにおいのもとである有機物やカルキ(塩素)を吸着しますが、雑菌やかびは除去できません。また、殺菌のために入れた塩素を取り除いてしまうと、雑菌が繁殖しやすくなるわけです。
そこで最近では、活性炭のほかに、雑菌やかびも取り除けるフィルターを使った二重ろ過方式の浄水器も登場しています。いずれにしても、ろ過材の効果がうすれたり、浄水器の中に水が残っていたりすると、雑菌は除去できず、逆に繁殖する恐れもでてきますので、過信は禁物です。
また、ことに夏は、冷たい水はおいしく感じますが、貯水式の冷水器の場合も、同じようなことがいえます。
3 スポーツと水
・運動中は水の補給が大切
すこし前までは、「運動中は水を飲んではいけない」といわれてきました。そして、炎天下に激しくからだを動かして、大量の汗をかき、体温が上がりすぎて、熱射病をおこして倒れる選手がたくさんいたのです。
現在では、運動で失われる水分の補給が重要なことがわかり、運動中に水分をとるようにすすめられています。このような背景から、最近になって、スポーツドリンクと称する飲料が登場してきました。
・スポーツドリンクの有効性について
いま市販されているスポーツドリンクは、いずれもが、汗として失われやすい食塩やミネラルと、飲みやすさとエネルギーの補給を目的に糖分を加え、そして水分が速やかに吸収されるように低張または等張(液の浸透圧が体液と同じ)にしてある、とうたっています。
しかし、こうした飲料を運動中に飲んで、そのとおりの効果があるかどうかについては、諸説があります。“ただの水”とスポーツドリンクをそれぞれ飲ませて運動させ、両者の間にとくに差がなかったという実験報告もあります。
激しい運動のさい、脱水症を予防するために水分を補給するのは大事なことです。しかし、それをスポーツドリンクのような飲みものでとったほうがよいかどうかについては、まだ実証されていません。
水は、私たちにとって、あまりに身近なものであるので、ついその恩恵を忘れがちです。しかし、こうしてからだと水との関係を探ってみると、ずいぶんいろいろな現象がからだの中で行なわれていることに気づきます。
水とからだの関係については、まだまだわかっていないことも多いのです。この小冊子を読んだことをきっかけとして、「水」の問題にもっと興味をもっていただきたいものです。
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・生命は海の中で誕生した
私たちの生命は、水によって生まれ、水によって生きているといっても過言ではありません。事実、地球上にはじめて生命が誕生したのは、20〜40億年前の海水の中であったといわれます。
母なる海によってはぐくまれた生命は、単細胞から多細胞へとしだいに進化し、やがて陸上に生活するにいたりました。しかし、それでも生物は、水からはなれて暮らすわけにはいかなかったのです。
・私たちのからだの中には太古の海と同じ成分の水が流れている
その証拠のひとつとして、私たちのからだを形づくっているひとつひとつの細胞は、その昔に海水に囲まれていたのと同様に、いまもそのまわりを囲む水の中に浮かんで、その生命を維持しているのです。そして、それらの水は、太古の海の成分とよく似ているといわれています。
からだの中で水はどんなふうに力を発揮するか
私たちのからだの中にある水分は、体液と呼ばれ、体重の約60%を占めています。このうち3分の2は私たちのからだをつくっている細胞の中に存在し(細胞内液といいます)、3分の1はその外側に存在しています(細胞外液といいます)。
この細胞の外側にあるのは、赤血球や白血球(これも細胞の一種ですが)とともに血液をかたちづくっている「血しょう」と、からだ中の組織や細胞のすきまを縫って流れている「組織間液」と呼ばれるものです。
それでは、私たちのからだの中で、これらの水がどんな働きをしているかを、これから探ってみることにしましょう。
1 強い結合力で体内に“流れ”をつくる
水というものは、まことに不思議な性質をもった物質です。水道の蛇口をひねると、ジャーと流れ落ちる水の流れ、あれがまさに水そのものの姿です。手や包丁で切ろうとしても、すぐつながってしまい、切りあとさえも残さないでしょう。
これは、水の分子どうしがおたがいに強く引き合う力を発揮して、たくさんの水の分子が網の目状にがっちりとつながっているためなのです。
水のこのような性質が、私たちのからだの中で、血液その他の体液の途絶えることのない“流れ”(循環)をかたちづくっているのです。
2 栄養物をとかしてからだのすみずみまで運ぶ
物をとかす力も、水のもつ重要な働きのひとつです。たとえば食塩はNaClという式で表わされますが、これをNa(ナトリウム)とCl(塩素、クロール)の2つの原子に引き離すには大きなエネルギーが必要です。ところが、水の中に入れると、水の分子にひきつけられて、いとも簡単に別れてしまうのです。つまり、とけてしまうのです。
このようにして、からだの中の水は、さまざまな物質(栄養素とか老廃物)をとかしこんでいます。
栄養素を抱えこんだ血しょうは、血液としてからだ中を循環しながら、すべての細胞に必要な栄養分を補給し、その細胞でいらなくなった物質(老廃物)を運び去るという重要な仕事を行なっているのです。そして、これらの細胞と血液との間の物質のやりとりを仲介する役割を果たしているのが、組織間液です。
3 栄養物や老廃物を壁を越えて移動させる
ところで、ある物質をとかしこんだ液体(溶液といいます)には、とけこんだ物質が周囲に向かってひろがっていき、まわりと同じ濃度になろうとする性質があります。これが浸透圧と呼ばれる働きです。
水のこの働きで、血液にとけこんだ物質が血管の壁を越えて外側の濃度のうすいほうへ移動したり、あるいは細胞の中にいっぱいたまった老廃物を外に出したりできるのです。
からだの中の水分の収入と支出はどうなっているか
1 水の収支のバランスは
なにごとにつけ、収入と支出のバランスがとれていることが大切ですが、水の場合も同様です。
・失われた水分の補充
私たちが毎日、水分をとるのは、からだがそれを必要としているからです。気温の高いときは汗がたくさん出ますし、そうでなくても皮膚の表面から、あるいは呼吸として常に水分が蒸発しています。また、からだの中で不要となった老廃物は、尿として外部に排泄されていきます。
このようにして失われた水分は、口から補充してやらなければいけません。
・健康な人では収入と支出はトントン
健康な成人が、飲料として1日に摂取する水の量は平均して1200ml、また食品にまざっている水分が約800mlと考えられています。このほかに、からだの中でつくられる水が200mlほどあるので、これらを合計すると、1日の水の収入総額は2200mlということになります。
これに対して支出のほうは、尿として出るのが1200ml、皮膚からとか呼吸によって蒸発する水分が900ml、大便の中に含まれて出るのが100mlぐらいで、これの合計が2200mlとなり、収支トントンという計算が成り立ちます。
しかし、この計算はあくまでひとつの例にすぎません。飲む水の量や、食事からとる水分は、その人その人によって大きな差があります。そのような場合、からだは尿の量を変化させて、収支のバランスをとっています。
2 体内の水分は尿の量で調節される
体内の水分量を調節しているのは腎臓です。体内に水分が多すぎるときは、腎臓は大量のうすい尿をつくって余分な水分を取り除きます。水分が不足ぎみのときは、少量の濃い尿をつくって、体外に出る水分を調節しています。
このしくみには、体内にあるナトリウムの量だとか、ホルモンの働きなどが複雑にかかわっています。
からだの中の水分が不足するとき、過剰になるとき
・のどのかわきは自然の欲求
健康なときの、のどのかわきは自然の欲求です。それをむりにがまんをしていると、水分の欠乏がおこってきます。また、私たちは、ときにはビールやお茶を何杯もおかわりしたり、うどんを食べたあと汁をぜんぶすすったりして、余分な水分をとることもあります。
このようにして、からだは常に、水分の欠乏や過剰になる危険をはらんでいるのです。
もちろん、健康なからだは、こうした異常事態に対処する機能をもっていますが、それでも多少は収支のバランスが上下にゆれながら生活をしているといってよいでしょう。
1 水分の極端な欠乏:脱水症
炎天下に水も飲まずに激しい運動をやったとか、高温多湿の環境で長時間の作業をしたときには、極端な水分の欠乏(脱水症)がよくおこります。また、小児では、下痢や嘔吐がつづいたときに、ひどい脱水症をおこし、治療が遅れると死にいたることもあります。
このようなときは、からだを冷やしたり、水分を補給してやらないといけませんが、汗や便とともに失われる塩分やその他の物質の補給(点滴輸液)が必要になることもあります。
2 水分の過剰とむくみ
健康な人ではまずおこりませんが、心臓や腎臓に病気のある人では、水を飲みすぎると体内に水がたまりすぎて、一時的にむくみがつよくなることがあります。
また、すでにむくみのある場合は、いくら水分を制限しても、むくみはとれません。この場合は、医師の指示のもとに、食塩を制限していれば、水はいずれは排泄されてしまいます。
飲料としての水をかんがえる
1 水には硬水と軟水がある
・なま水を飲むと下痢をする人
外国旅行にいったら“なま水”を飲むな、とよくいいます。ヨーロッパのような文明度の高いところでも、その土地の水を飲んで下痢をした、というような話を耳にします。
そして、下痢と聞くとすぐ細菌などと結びつけて考えがちですが、じつは、水の硬度が大きく関係しているようです。硬度というのは、水の中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量を表わす単位で、その含有量がとくに多いものを硬水、少量しか含んでいないものを軟水と呼んでいます。
わが国の水道水はだいたいが軟水です。ところが、ヨーロッパでは硬水のところが多いので、飲みなれてない日本人は、硬水に含まれるマグネシウムによって下痢をおこすのだといわれています。
・ミネラル入りのウォーター
ところで、飲み水は、その中にある程度のミネラル(カルシウム、リン、鉄、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)が含まれているほうが、味にコクがでるといわれます。
そのため、ミネラルウォーターなどという名称で、世界各地のいわゆる“名水”が、びん詰めにされて売られています。そして、その水にカルシウムやマグネシウムを多く含むから健康によい、などと宣伝している向きがあります。
しかしながら、こうしたうたい文句には、科学的根拠のとぼしい場合が多いようです。素人の健康法は、とかくフィーリングに頼ることが多く、それにちょっぴり学間の風味づけがしてあると、つい惑わされがちなものです。
・カルシウムは食事でとるほうが確実
ミネラルは微量栄養素として、私たちのからだに必要なものですが、ほかにもミネラルを含む食品はたくさんあるのです。名水の味のほうはともかくとして、カルシウムを摂取するというだけの目的であれば、食事からとるほうがよほど確実です。
2 水と衛生
飲料水は、濁りや色がなく、病原菌や有害物質を含んでいないことが必要です。このため、わが国では水道水について厚生省令で水質基準が定められています。
・浄水器を過信しないこと
水道水の水源となる河川や湖沼が工場や家庭からの排水で汚れると、微生物が繁殖し、かび臭や悪臭がでてきます。浄水場では、消毒のために塩素を入れるのですが、これがいわゆる“カルキ臭”となって残ります。味もいいとはいえません。
また、マンションなど高層ビルの貯水式のタンクでは、掃除を怠ると長い間には水あかがたまって、濁りやにおいの原因となり雑菌も繁殖してきます。
そこで、こうしたいやな味やにおいを消して、おいしい水にできるということで家庭用の活性炭浄水器が売られています。
浄水器は、使い方によってはかえって危険なことがあります。厚生省調べによると、活性炭浄水器は「長い間使わないままでいると、浄水器の中に雑菌が繁殖する恐れがある」とされています。
ところで、カルキのにおいのする水道水は、ばい菌が消毒されて衛生的に安全であることの証拠でもあるのです。活性炭は、いやな味やにおいのもとである有機物やカルキ(塩素)を吸着しますが、雑菌やかびは除去できません。また、殺菌のために入れた塩素を取り除いてしまうと、雑菌が繁殖しやすくなるわけです。
そこで最近では、活性炭のほかに、雑菌やかびも取り除けるフィルターを使った二重ろ過方式の浄水器も登場しています。いずれにしても、ろ過材の効果がうすれたり、浄水器の中に水が残っていたりすると、雑菌は除去できず、逆に繁殖する恐れもでてきますので、過信は禁物です。
また、ことに夏は、冷たい水はおいしく感じますが、貯水式の冷水器の場合も、同じようなことがいえます。
3 スポーツと水
・運動中は水の補給が大切
すこし前までは、「運動中は水を飲んではいけない」といわれてきました。そして、炎天下に激しくからだを動かして、大量の汗をかき、体温が上がりすぎて、熱射病をおこして倒れる選手がたくさんいたのです。
現在では、運動で失われる水分の補給が重要なことがわかり、運動中に水分をとるようにすすめられています。このような背景から、最近になって、スポーツドリンクと称する飲料が登場してきました。
・スポーツドリンクの有効性について
いま市販されているスポーツドリンクは、いずれもが、汗として失われやすい食塩やミネラルと、飲みやすさとエネルギーの補給を目的に糖分を加え、そして水分が速やかに吸収されるように低張または等張(液の浸透圧が体液と同じ)にしてある、とうたっています。
しかし、こうした飲料を運動中に飲んで、そのとおりの効果があるかどうかについては、諸説があります。“ただの水”とスポーツドリンクをそれぞれ飲ませて運動させ、両者の間にとくに差がなかったという実験報告もあります。
激しい運動のさい、脱水症を予防するために水分を補給するのは大事なことです。しかし、それをスポーツドリンクのような飲みものでとったほうがよいかどうかについては、まだ実証されていません。
水は、私たちにとって、あまりに身近なものであるので、ついその恩恵を忘れがちです。しかし、こうしてからだと水との関係を探ってみると、ずいぶんいろいろな現象がからだの中で行なわれていることに気づきます。
水とからだの関係については、まだまだわかっていないことも多いのです。この小冊子を読んだことをきっかけとして、「水」の問題にもっと興味をもっていただきたいものです。
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