はじめに
近年の研究により、喫煙はがんや虚血性心疾患などの大きな危険因子であることが確認されています。
欧米各国では、1960年代前半に喫煙の健康に及ぼす影響についての報告書が出版されると、喫煙対策を公衆衛生上の最も重要な課題とし、これまで着実な成果をあげてきました。
わが国では喫煙の害についての情報は、たくさん提供されてきましたが、禁煙の具体的方法が示されたり、禁煙への支援が行われることはあまりありませんでした。
このような状況を打開するには、多くの喫煙者へのアクセスが可能で、しかも日本の実情に即した禁煙プログラムの開発と普及が必要です。
なぜ禁煙指導が必要なのか
1 たばこの健康への影響の大きさ
・日本人の10人に1人が、たばこが原因で死亡
WHO(世界保健機関)の推定によれば、世界で年間約300万人がたばこが原因で死亡しているといいます。
日本では、喫煙が原因で死亡した人は年間約11万人とされ、これは交通事故による死亡数のおよそ10倍にあたります。
喫煙が原因で死亡した人の中には、自分ではたばこを吸わないのに他人のたばこの煙を吸わされてしまう「受動喫煙」者も含まれています。
このように、たばこは喫煙者はもちろんのこと、まわりの人の健康まで脅かすものなのです。
・喫煙者の健康づくりはまず禁煙から
たばこをやめると、禁煙年数に比例して肺がんや心筋梗塞にかかる危険が小さくなり、たばこを吸わない人のレベルに近づきます。
肺がんの危険は禁煙して10年で喫煙していた場合の30〜50%に減少し、たばこによる心筋梗塞の危険も禁煙して1年で50%に減少するという報告が、アメリカでされています。
たばこは、「病気の原因の中で予防できる最大の単一の原因」(WHO)なのです。喫煙者にとって、健康づくりの第一歩はまず禁煙からといえるでしょう。
2 喫煙は依存症のひとつ
・喫煙習慣の本質はニコチン依存症
喫煙者の約70%が、たばこをやめたいと思っているにもかかわらず禁煙できずにいるといわれています。また、たとえ禁煙しても、50〜75%の人が1年以内に喫煙を再開するというデータがあります。
これは、たばこに含まれるニコチンが、麻薬やアルコールと同様の依存性薬物だからです。喫煙習慣の本質はニコチン依存症といえるでしょう。
・心理的にもたばこに依存
なかなか禁煙できないもうひとつの大きな原因に心理的な依存があります。喫煙行動を繰り返すことによって、知らず知らずのうち心理的にたばこに依存するようになってしまうのです。こうしたことが禁煙を難しくしています。禁煙を本人の意志の問題としてあっさり片づけてしまうのではなく、喫煙を依存症として捉え、喫煙者に対して適切な指導を行うとともに、禁煙を支援する社会環境を整えることが大切なのです。
禁煙へのさまざまな取り組み
1 禁煙方法の変遷
・急速喫煙や飽和喫煙からセルフコン卜口一ル法へ
1970年代の欧米では、急速喫煙や飽和喫煙などの嫌悪法が多く採用されていました。どちらも、気持ちが悪くなるまでたばこを吸わせて、喫煙に対して嫌悪感をいだかせようとするものです。ある程度の成果は得られるものの、副作用の危険や、事前の検査が必要であったりするので、最近ではあまり用いられなくなっています。
これに代わって、1980年以降、セルフコントロール法などの、新しい学習理論や行動理論に基づいた行動科学的アプローチが採用されるようになりました。
・再発防止の重視
また、各種の行動科学の研究の結果、禁煙はプロセスだと考えられるようになりました。禁煙は、「準備期」「実行期」「維持期」の3つのステージを踏むというのです。なかでも大切なのが「維持期」です。動機づけや心構えが整い、実際にいったん禁煙に成功したとしても、再び喫煙するようになったのでは元も子もありません。
喫煙の再開は、社会的圧力や気分の落ち込み、対人関係における衝突などがきっかけになることが多いようです。禁煙の維持には、再発させようとする圧力に対抗する技術の習得や、周囲の人たちからの支援はもちろんのこと、たばこを取り巻く環境的要因も重要になってきます。
たとえば、職場や公共の場での喫煙の制限といったように、社会全体で取り組む姿勢が必要なのです。
2 禁煙指導の裾野を広げる
・通常の医療の場での介入
禁煙クリニックなどでの強力な禁煙指導は、「治療」を目的に訪れる喫煙者を対象としています。
しかし、大多数の喫煙者は、わざわさ禁煙クリニックを訪ねたりはしません。自分で禁煙を行うか、かかりつけの医者に相談する人が圧倒的でしょう。そこで、通常の診療の場において禁煙指導を行う意義が生じるわけです。
欧米での調査によると、医者による禁煙指導の効果は必ずしも大きくはありませんでしたが、守備範囲が広く、公衆衛生上のインパクトは大きいということです。
・セルフヘルプ・アプローチの重視
セルフヘルプ・アプローチには、たとえば郵送による教材の入手、地域や職場での禁煙コンテスト、コンピュータを使ったプログラムなどがあります。喫煙者の禁煙しようという意志があれば、対面のカウンセリングなしでできる点が、他のやり方と大きく異なります。当然、成功率はあまりよいとはいえませんが、時間的な問題や費用面での負担が少なく、とっつきやすい方法といえるでしょう。単独での効果は小さくとも、メディアや地域や職域での喫煙対策プログラムと組み合わせれば膨大な数の人にアクセスすることができます。
禁煙の行動科学的アプローチ
1 禁煙者の5つのステージ
・禁煙のアプローチはステージに合ったものをものを
禁煙はプロセスであるという考え方については前に触れましたが、「準備期」「実行期」「維持期」に、禁煙のことをまだ考えていない「無関心期」、禁煙に関心をもってはいるがすぐに禁煙しようと思っていない「関心期」を加え、禁煙者のステージは5つに分けることができます。
喫煙者がどのステージにいるかは、図1のような質問で簡単に分類できます。禁煙のアプローチは、各ステージに合ったものでなければなりません。
・無関心期の喫煙者に対して
禁煙したいという気持ちの有無や禁煙の妨げとなる要因について質問し、禁煙を前向きに考えるように働きかけます。
・関心期の喫煙者に対して
禁煙すべき理由や喫煙の健康に及ぼす影響などについて、より個別化した情報を提供し、禁煙の動機づけを行います。
・準備期の喫煙者に対して
禁煙開始日を決めて禁煙宣誓書にサインを取り交わしたり、喫煙行動の観察や禁煙すべき理由などについて助言し、禁煙実行の準備を手伝います。
・実行期の喫煙者に対して
禁煙開始日を目前にした喫煙者に、イライラする、集中力がなくなる、落ち着かないといった禁煙後の離脱症状を説明したり、喫煙欲求のコントロールの仕方などについて助言します。また、禁煙後の生活の送り方についても助言し、禁煙がスムーズに行われるように支援します。
・維持期の喫煙者に対して
禁煙後1週間以内の人には、禁煙できたことをほめ、禁煙によって現れた離脱症状について話し合います。また、喫煙再開のきっかけやその対策について話し、禁煙が維持できるように支援します。禁煙1カ月後には、経過についてたずね、禁煙の効果を確認します。
2 禁煙実行にあたっての留意点
・禁煙の実行は、動機と負担の力関係で決定される
禁煙は、行動を促進する要因(動機)と妨げようとする要因(負担)の力関係のうえに成り立っています。
禁煙の動機としては、たばこの害についての認識、健康上の理由や周囲からの勧め、たばこ代の節約などがあります。
一方、負担としては、禁煙に対しての不安や自信のなさ、禁煙の指導を受けるのに必要な費用や時間などがあげられます。実行してからは、離脱症状の出現や、禁煙を続けることの精神的負担が加わります。禁煙後の肥満も禁煙実行の妨げになっているようです。
・動機を強化し、負担を軽減する
禁煙をスムーズに進めるためには、動機を高め、かつ禁煙に伴う負担を最小限に抑えてあげることが肝心です。動機を強化させる方法には、喫煙の健康への影響の確認や、禁煙すべき理由を健康状態や個人的関心と結びつけ、より個別的にするといったことがあります。サポートネットワーク法といって、家族や友人、医者、他の禁煙者などがサポートネットワークシステムを作り動機を強化する方法もあります。
負担を軽減する方法としては、自己改善法で喫煙のきっかけとなる考え方や心のもち方を変えたり、たばこやライターなどを処分するなど喫煙のきっかけとなるものをなくす環境改善法などがあります。
ニコチン代替療法の登場
喫煙の本質がニコチン依存症であることが明確になると、ニコチン代替療法が登場します。
禁煙者に現われるニコチン離脱症状に対し、ニコチンを薬の形で補給することで、症状を緩和させるのです。まず、喫煙への心理的依存をとりのぞき、ついでニコチンの補給量を調節し、ニコチン依存からも離脱させるわけです。
1 ニコチンガムを使う
ニコチン代替療法に用いる薬としてまず開発されたのが、ニコチンガムです。現在、世界50数カ国で禁煙の補助剤として用いられています。日本でも、1994年4月厚生省は輸入を承認し、医師の処方にもとづいて医師の指導のもとに行われる禁煙の補助として使用される運びとなりました。
ニコチンガムの場合、ニコチンは口の中の粘膜から吸収されます。しかも、たばこの煙のようにタール、一酸化炭素、シアン化水素などの有害な化学物質が含まれていません。
その効果は、ニコチン依存度の高い人ほど有効で、6カ月後の禁煙継続率が高まっていることが証明されています。しかし、ニコチンガムの効果を十分得るには、使用法の説明と適切な禁煙指導が行われなければなりません。
副作用としては、のどや口の中がヒリヒリする、あごの筋肉や関節が痛いといった症状があげられます。また、ニコチンガムをかみすぎると、ニコチンが口腔粘膜で吸収しきれずに飲み込まれ、吐き気や胸やけ、しゃっくりなどの症状がでることがあります。しかし、のみこまれたニコチンは肝臓で分解されるため安全です。
なお、妊娠中や授乳期の人や、重症の不整脈や虚血性心疾患がある人、うつ病やアルコール依存症の人などは使用できません。
2 ニコチンスキンパッチを使う
ニコチン離脱症状を緩和し、しかもニコチンガムの使用上の問題点を解決するものとして開発されたのが、ニコチンスキンパッチです。これは、その名のとおり皮膚に貼り、皮膚からニコチンを吸収させるものです。
ニコチンスキンパッチは、朝1回皮膚に貼るだけでよく、ニコチンガムに比べ扱いが簡単で、そのうえ血中ニコチン濃度を一定に保つという点でより優れているといえるでしょう。しかし、簡単に効果が得られるとしても、禁煙の動機づけや継続ということに関しては、本人の自覚を十分にうながすような働きかけが必須です。
ニコチンスキンパッチは、日本では1994年3月現在、臨床試験の段階にあります。
喫煙対策は社会全体で
1 個人より社会的な環境に焦点を
たばこの害に関する情報は、禁煙への動機づけには役立っても、禁煙を実行させたり、禁煙を継続させたりすることはできません。
また、喫煙を個人の問題として捉えていてはいつまでもらちがあきません。喫煙を始めたり、禁煙に失敗したりする要因は、個人的な問題というよりもむしろ社会的なものだからです。
米国では、たばこの消費量が社会や経済の変化に対応することがわかると、環境的アプローチが行われるようになりました。環境的アプローチとは、社会的な要因を変化させようとするもので、たばこ税の値上げや、メディアによる反たばこキャンペーン、禁煙空間の拡大、たばこ広告の禁止などです。
禁煙を成功させるには、個人的なアプローチだけでなく、社会的なアプローチが不可欠なのです。
2 日本における禁煙指導
・禁煙プログラム「禁煙コンテスト」
これまでの日本の禁煙指導は、狭い地域や単発的な試みのため、影響が小さく、太い流れになり得ませんでした。
しかし、遅ればせながら最近では、多くの喫煙者にアクセスできるいろいろな禁煙プログラムが開発されています。1987年には、「手軽に楽しく禁煙を!」をモットーに「禁煙コンテスト」が開発されました。これは、マスメディアなどを通じて希望者を募り、応募者にセルフヘルプの教材などを郵送。4週間の禁煙に成功すると、禁煙成功の認定書と抽選で賞品が贈られます。このプログラムで使用されるセルフヘルプブックは市販されています。
・日常の治療の場での禁煙指導
「スモークバスターズ」は、日常の治療の場での禁煙活動を支援するために1991年に(財)大阪がん予防検診センタ一によって開発されたプログラムです。指導者、つまり医師のための禁煙指導マニュアルと6種類の配布用セルフヘルプ教材とで構成されています。医師は日常の診療の中で多くの喫煙者に接しており、こうしたプログラムは、禁煙指導のリーチを広げることでしょう。
・検診の事後指導の場での禁煙指導
日本では、地域や職場での検診が熱心に行われています。検診の事後指導は禁煙指導の絶好の機会です。禁煙セルフヘルプガイドや禁煙宣誓書、呼気一酸化炭素濃度測定器、(財)健康・体力づくり事業財団のパソコンソフト「へルスウォッチング」などを使って指導し、そのあと電話でフォローすると、効果があることが確認されています。
「へルスウオッチング」は健康危険度を評価するパソコンソフトで、個人の生活習慣や検診の情報を入力すると、健康年齢や今後一定期間に主要死因で死亡する確率などが示されます。
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近年の研究により、喫煙はがんや虚血性心疾患などの大きな危険因子であることが確認されています。
欧米各国では、1960年代前半に喫煙の健康に及ぼす影響についての報告書が出版されると、喫煙対策を公衆衛生上の最も重要な課題とし、これまで着実な成果をあげてきました。
わが国では喫煙の害についての情報は、たくさん提供されてきましたが、禁煙の具体的方法が示されたり、禁煙への支援が行われることはあまりありませんでした。
このような状況を打開するには、多くの喫煙者へのアクセスが可能で、しかも日本の実情に即した禁煙プログラムの開発と普及が必要です。
なぜ禁煙指導が必要なのか
1 たばこの健康への影響の大きさ
・日本人の10人に1人が、たばこが原因で死亡
WHO(世界保健機関)の推定によれば、世界で年間約300万人がたばこが原因で死亡しているといいます。
日本では、喫煙が原因で死亡した人は年間約11万人とされ、これは交通事故による死亡数のおよそ10倍にあたります。
喫煙が原因で死亡した人の中には、自分ではたばこを吸わないのに他人のたばこの煙を吸わされてしまう「受動喫煙」者も含まれています。
このように、たばこは喫煙者はもちろんのこと、まわりの人の健康まで脅かすものなのです。
・喫煙者の健康づくりはまず禁煙から
たばこをやめると、禁煙年数に比例して肺がんや心筋梗塞にかかる危険が小さくなり、たばこを吸わない人のレベルに近づきます。
肺がんの危険は禁煙して10年で喫煙していた場合の30〜50%に減少し、たばこによる心筋梗塞の危険も禁煙して1年で50%に減少するという報告が、アメリカでされています。
たばこは、「病気の原因の中で予防できる最大の単一の原因」(WHO)なのです。喫煙者にとって、健康づくりの第一歩はまず禁煙からといえるでしょう。
2 喫煙は依存症のひとつ
・喫煙習慣の本質はニコチン依存症
喫煙者の約70%が、たばこをやめたいと思っているにもかかわらず禁煙できずにいるといわれています。また、たとえ禁煙しても、50〜75%の人が1年以内に喫煙を再開するというデータがあります。
これは、たばこに含まれるニコチンが、麻薬やアルコールと同様の依存性薬物だからです。喫煙習慣の本質はニコチン依存症といえるでしょう。
・心理的にもたばこに依存
なかなか禁煙できないもうひとつの大きな原因に心理的な依存があります。喫煙行動を繰り返すことによって、知らず知らずのうち心理的にたばこに依存するようになってしまうのです。こうしたことが禁煙を難しくしています。禁煙を本人の意志の問題としてあっさり片づけてしまうのではなく、喫煙を依存症として捉え、喫煙者に対して適切な指導を行うとともに、禁煙を支援する社会環境を整えることが大切なのです。
禁煙へのさまざまな取り組み
1 禁煙方法の変遷
・急速喫煙や飽和喫煙からセルフコン卜口一ル法へ
1970年代の欧米では、急速喫煙や飽和喫煙などの嫌悪法が多く採用されていました。どちらも、気持ちが悪くなるまでたばこを吸わせて、喫煙に対して嫌悪感をいだかせようとするものです。ある程度の成果は得られるものの、副作用の危険や、事前の検査が必要であったりするので、最近ではあまり用いられなくなっています。
これに代わって、1980年以降、セルフコントロール法などの、新しい学習理論や行動理論に基づいた行動科学的アプローチが採用されるようになりました。
・再発防止の重視
また、各種の行動科学の研究の結果、禁煙はプロセスだと考えられるようになりました。禁煙は、「準備期」「実行期」「維持期」の3つのステージを踏むというのです。なかでも大切なのが「維持期」です。動機づけや心構えが整い、実際にいったん禁煙に成功したとしても、再び喫煙するようになったのでは元も子もありません。
喫煙の再開は、社会的圧力や気分の落ち込み、対人関係における衝突などがきっかけになることが多いようです。禁煙の維持には、再発させようとする圧力に対抗する技術の習得や、周囲の人たちからの支援はもちろんのこと、たばこを取り巻く環境的要因も重要になってきます。
たとえば、職場や公共の場での喫煙の制限といったように、社会全体で取り組む姿勢が必要なのです。
2 禁煙指導の裾野を広げる
・通常の医療の場での介入
禁煙クリニックなどでの強力な禁煙指導は、「治療」を目的に訪れる喫煙者を対象としています。
しかし、大多数の喫煙者は、わざわさ禁煙クリニックを訪ねたりはしません。自分で禁煙を行うか、かかりつけの医者に相談する人が圧倒的でしょう。そこで、通常の診療の場において禁煙指導を行う意義が生じるわけです。
欧米での調査によると、医者による禁煙指導の効果は必ずしも大きくはありませんでしたが、守備範囲が広く、公衆衛生上のインパクトは大きいということです。
・セルフヘルプ・アプローチの重視
セルフヘルプ・アプローチには、たとえば郵送による教材の入手、地域や職場での禁煙コンテスト、コンピュータを使ったプログラムなどがあります。喫煙者の禁煙しようという意志があれば、対面のカウンセリングなしでできる点が、他のやり方と大きく異なります。当然、成功率はあまりよいとはいえませんが、時間的な問題や費用面での負担が少なく、とっつきやすい方法といえるでしょう。単独での効果は小さくとも、メディアや地域や職域での喫煙対策プログラムと組み合わせれば膨大な数の人にアクセスすることができます。
禁煙の行動科学的アプローチ
1 禁煙者の5つのステージ
・禁煙のアプローチはステージに合ったものをものを
禁煙はプロセスであるという考え方については前に触れましたが、「準備期」「実行期」「維持期」に、禁煙のことをまだ考えていない「無関心期」、禁煙に関心をもってはいるがすぐに禁煙しようと思っていない「関心期」を加え、禁煙者のステージは5つに分けることができます。
喫煙者がどのステージにいるかは、図1のような質問で簡単に分類できます。禁煙のアプローチは、各ステージに合ったものでなければなりません。
・無関心期の喫煙者に対して
禁煙したいという気持ちの有無や禁煙の妨げとなる要因について質問し、禁煙を前向きに考えるように働きかけます。
・関心期の喫煙者に対して
禁煙すべき理由や喫煙の健康に及ぼす影響などについて、より個別化した情報を提供し、禁煙の動機づけを行います。
・準備期の喫煙者に対して
禁煙開始日を決めて禁煙宣誓書にサインを取り交わしたり、喫煙行動の観察や禁煙すべき理由などについて助言し、禁煙実行の準備を手伝います。
・実行期の喫煙者に対して
禁煙開始日を目前にした喫煙者に、イライラする、集中力がなくなる、落ち着かないといった禁煙後の離脱症状を説明したり、喫煙欲求のコントロールの仕方などについて助言します。また、禁煙後の生活の送り方についても助言し、禁煙がスムーズに行われるように支援します。
・維持期の喫煙者に対して
禁煙後1週間以内の人には、禁煙できたことをほめ、禁煙によって現れた離脱症状について話し合います。また、喫煙再開のきっかけやその対策について話し、禁煙が維持できるように支援します。禁煙1カ月後には、経過についてたずね、禁煙の効果を確認します。
2 禁煙実行にあたっての留意点
・禁煙の実行は、動機と負担の力関係で決定される
禁煙は、行動を促進する要因(動機)と妨げようとする要因(負担)の力関係のうえに成り立っています。
禁煙の動機としては、たばこの害についての認識、健康上の理由や周囲からの勧め、たばこ代の節約などがあります。
一方、負担としては、禁煙に対しての不安や自信のなさ、禁煙の指導を受けるのに必要な費用や時間などがあげられます。実行してからは、離脱症状の出現や、禁煙を続けることの精神的負担が加わります。禁煙後の肥満も禁煙実行の妨げになっているようです。
・動機を強化し、負担を軽減する
禁煙をスムーズに進めるためには、動機を高め、かつ禁煙に伴う負担を最小限に抑えてあげることが肝心です。動機を強化させる方法には、喫煙の健康への影響の確認や、禁煙すべき理由を健康状態や個人的関心と結びつけ、より個別的にするといったことがあります。サポートネットワーク法といって、家族や友人、医者、他の禁煙者などがサポートネットワークシステムを作り動機を強化する方法もあります。
負担を軽減する方法としては、自己改善法で喫煙のきっかけとなる考え方や心のもち方を変えたり、たばこやライターなどを処分するなど喫煙のきっかけとなるものをなくす環境改善法などがあります。
ニコチン代替療法の登場
喫煙の本質がニコチン依存症であることが明確になると、ニコチン代替療法が登場します。
禁煙者に現われるニコチン離脱症状に対し、ニコチンを薬の形で補給することで、症状を緩和させるのです。まず、喫煙への心理的依存をとりのぞき、ついでニコチンの補給量を調節し、ニコチン依存からも離脱させるわけです。
1 ニコチンガムを使う
ニコチン代替療法に用いる薬としてまず開発されたのが、ニコチンガムです。現在、世界50数カ国で禁煙の補助剤として用いられています。日本でも、1994年4月厚生省は輸入を承認し、医師の処方にもとづいて医師の指導のもとに行われる禁煙の補助として使用される運びとなりました。
ニコチンガムの場合、ニコチンは口の中の粘膜から吸収されます。しかも、たばこの煙のようにタール、一酸化炭素、シアン化水素などの有害な化学物質が含まれていません。
その効果は、ニコチン依存度の高い人ほど有効で、6カ月後の禁煙継続率が高まっていることが証明されています。しかし、ニコチンガムの効果を十分得るには、使用法の説明と適切な禁煙指導が行われなければなりません。
副作用としては、のどや口の中がヒリヒリする、あごの筋肉や関節が痛いといった症状があげられます。また、ニコチンガムをかみすぎると、ニコチンが口腔粘膜で吸収しきれずに飲み込まれ、吐き気や胸やけ、しゃっくりなどの症状がでることがあります。しかし、のみこまれたニコチンは肝臓で分解されるため安全です。
なお、妊娠中や授乳期の人や、重症の不整脈や虚血性心疾患がある人、うつ病やアルコール依存症の人などは使用できません。
2 ニコチンスキンパッチを使う
ニコチン離脱症状を緩和し、しかもニコチンガムの使用上の問題点を解決するものとして開発されたのが、ニコチンスキンパッチです。これは、その名のとおり皮膚に貼り、皮膚からニコチンを吸収させるものです。
ニコチンスキンパッチは、朝1回皮膚に貼るだけでよく、ニコチンガムに比べ扱いが簡単で、そのうえ血中ニコチン濃度を一定に保つという点でより優れているといえるでしょう。しかし、簡単に効果が得られるとしても、禁煙の動機づけや継続ということに関しては、本人の自覚を十分にうながすような働きかけが必須です。
ニコチンスキンパッチは、日本では1994年3月現在、臨床試験の段階にあります。
喫煙対策は社会全体で
1 個人より社会的な環境に焦点を
たばこの害に関する情報は、禁煙への動機づけには役立っても、禁煙を実行させたり、禁煙を継続させたりすることはできません。
また、喫煙を個人の問題として捉えていてはいつまでもらちがあきません。喫煙を始めたり、禁煙に失敗したりする要因は、個人的な問題というよりもむしろ社会的なものだからです。
米国では、たばこの消費量が社会や経済の変化に対応することがわかると、環境的アプローチが行われるようになりました。環境的アプローチとは、社会的な要因を変化させようとするもので、たばこ税の値上げや、メディアによる反たばこキャンペーン、禁煙空間の拡大、たばこ広告の禁止などです。
禁煙を成功させるには、個人的なアプローチだけでなく、社会的なアプローチが不可欠なのです。
2 日本における禁煙指導
・禁煙プログラム「禁煙コンテスト」
これまでの日本の禁煙指導は、狭い地域や単発的な試みのため、影響が小さく、太い流れになり得ませんでした。
しかし、遅ればせながら最近では、多くの喫煙者にアクセスできるいろいろな禁煙プログラムが開発されています。1987年には、「手軽に楽しく禁煙を!」をモットーに「禁煙コンテスト」が開発されました。これは、マスメディアなどを通じて希望者を募り、応募者にセルフヘルプの教材などを郵送。4週間の禁煙に成功すると、禁煙成功の認定書と抽選で賞品が贈られます。このプログラムで使用されるセルフヘルプブックは市販されています。
・日常の治療の場での禁煙指導
「スモークバスターズ」は、日常の治療の場での禁煙活動を支援するために1991年に(財)大阪がん予防検診センタ一によって開発されたプログラムです。指導者、つまり医師のための禁煙指導マニュアルと6種類の配布用セルフヘルプ教材とで構成されています。医師は日常の診療の中で多くの喫煙者に接しており、こうしたプログラムは、禁煙指導のリーチを広げることでしょう。
・検診の事後指導の場での禁煙指導
日本では、地域や職場での検診が熱心に行われています。検診の事後指導は禁煙指導の絶好の機会です。禁煙セルフヘルプガイドや禁煙宣誓書、呼気一酸化炭素濃度測定器、(財)健康・体力づくり事業財団のパソコンソフト「へルスウォッチング」などを使って指導し、そのあと電話でフォローすると、効果があることが確認されています。
「へルスウオッチング」は健康危険度を評価するパソコンソフトで、個人の生活習慣や検診の情報を入力すると、健康年齢や今後一定期間に主要死因で死亡する確率などが示されます。
ダイエット・美容・健康の情報
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2008/05/29(木) 00:50:55 | おまとめブログサーチ


