▼始めに
タンポポの黄色い花が野一面に咲くころになると、中高年のハイカーたちがどっと低山に繰り出してくる。かつてハイカーというと、高校生や大学生のサークルなど若い人たちの姿ばかりが目立ったが、最近では中高年ばかり。それも女性が多いのに驚かされる。一方、若い人の間ではマイカーが普及して、週末はドライブでほとんど車の中という人が多い。
しかし歩くこと、つまりウォーキングは人が健康な生活を送るためにもっとも基本的な動作の一つであり、老若男女すべての人が関心を持って積極的に実践してもらいたい運動の一つでもある。そこで今月から一年間、ウォーキングと健康に関する話題を中心にウォーキングについて考えてみたい。
▼日本の現状
年齢階級別にみた歩数(平均)
(厚生省「平成7年国民栄養調査成績」から)
人数 平均歩数
全国 総数 10,558 7,378
15〜19歳 818 8,487
20〜29 1,505 7,745
30〜39 1,760 8,019
40〜49 2,023 7,933
50〜59 1,764 7,897
60〜69 1,498 6,644
70歳以上 1,190 4,416
男 総 数 4,834 7,933
15〜19歳 430 8,797
20〜29 678 8,490
30〜39 836 8,820
40〜49 935 8,248
50〜59 782 8,370
60〜69 692 6,890
70歳以上 481 5,012
女 総 数 5,724 6,909
15〜19歳 388 8,144
20〜29 827 7,134
30〜39 924 7,294
40〜49 1,088 7,663
50〜59 982 7,520
60〜69 806 6,433
70歳以上 709 4,011
厚生省の平成7年国民栄養調査によると、日本人(15歳以上)の一日の平均歩数は7,378歩。その内訳は、男性が7,933歩で、女性が6,909歩と、男性がやや多い。年齢別にいうと、15歳から19歳までが8,487歩で、年齢が上がると歩数が減る傾向にあり、40代が7,933歩、60代が 6,644歩。70歳以上ではぐんと減って、4,416歩となる。
「一日に一万歩」という運動が勧められている。財団法人日本万歩クラブという団体もある。1万歩となると、約一時間半ほど歩くことになる。消費カロリーにして約300キロカロリー。このくらい歩くと、さまざまな形で健康に良い、ということらしい。学生やサラリーマンは、通勤通学などで日常けっこう歩いている。問題は、家庭に閉じこもりがちな主婦や退職者たちだ。低山のハイカーには中高年が、それも女性が多いということの背景に、こんな事情が働いているのかもしれない。
私は30代後半のころ、霞ヶ関にある官庁に何年間か通勤した。雨の日だけはJR新橋駅から地下鉄で虎ノ門駅まで行き、そこから霞ヶ関まで歩いたが、普段は新橋駅から霞ヶ関まで歩いた。片道約1.5キロ、歩いて約20分である。また当時、横浜の自宅から最寄りの駅までは2キロ強あり、これで徒歩25分。近所にバス便もあったが、朝は通勤ラッシュでノロノロ運転、夜は1時間に2本くらいしかないため、ほとんど使わなかった。これだけで合計すると、1日ちょうど1時間半。
そこで、試しにしばらくデジタル式の歩数計をつけてみた。すると、だいたい一日8,500歩から1万2千歩で、平均1万歩だった。私の仕事はほとんどデスクワークで、昼食で外に出る以外はほとんど机にくぎづけだったが、ちょっとした心掛けで一日一万歩は簡単に実現できるということが分かった。
▼今から始めよう
日本社会の高齢化が急速に進んでいる。日本人の平均寿命は右肩上がりに伸び、1960年には男性が65.32歳、女性が70.19歳だったのが、96年には男性77.01歳、女性83.59歳となった。一方、平成8年の人口動態調査によると、日本の生産年齢人口(15歳から64歳まで)は全人口の69.07%を占め、老年人口(65歳以上)が15.43%も占めている。この老年人口の割合は、さらに2005年には20%、2015年には25%に達するとも予想されている。こうなってくると、あまり若い人たちに面倒もかけられない。長い老後をいかに健康で活動的に過ごすかということが、大きな課題となっている。
定年後になって突然、健康指向の生活に目覚め、食生活を改め、ジョギングだ、ハイキングだ、大極拳だ、とやたら頑張り始める人がいる。おかげで丹沢や奥武蔵、奥多摩の低山は中高年のハイカーたちでいっぱいとなる 。
しかし、本当の健康づくりは、定年後に突然始めたのでは遅いのである。若いころに営々と築いた「健康の貯金」が老後にじわじわと効いてくる。サラリーマン時代の、暴飲暴食、喫煙、不規則な生活のつけは必ず老後に現れてくる。ふだんの生活で恒常的に健康な生活習慣を取り入れることが今、求められているのである。
▼長続きすることが大切
平成9年度版厚生白書の保健福祉動向調査によると、国民の約4割がひごろ水泳やテニス、ジョギングを行っているという。しかしその割合は、仕事が本格的に忙しくなる40歳あたりから減り始め、60歳を過ぎるころには1割を切ってしまう
一方、「健康のため散歩をしたり、乗り物やエレベーターを使わずに歩くようにしている」という人は、20代で4割くらいだが、年齢が上がるにしたがって増え続け、70歳以上になると8割近くとなる。しかし実際に日常見る光景では、駅のエスカレーターを使わずに階段を登っている高齢者の姿を見ることはほとんどない。時々若い人や忙しそうな中堅サラリーマンが階段を駆け上がったり、エスカレーターの片隅を駆け上がったりするぐらいである。
つまりこのアンケート結果の意味は、高齢者は歩く機会が現実にどんどん減っているので、あえて「なるたけ歩くようにしよう」と強く意識している、ということなのである。実際、国民栄養調査でも、70歳以上の一日の歩数は4,416歩で、若い人の半分しか歩いていない。 「スキーやスキンダイビングを健康のためにしている」という人はあまりいないだろう。多くの人は、これらのスポーツが楽しいからしているのである。私も20代のころ、夏はスキンダイビング、冬になるとスキーをしていた。むろん当時、「健康のため」などと思ったことは一度たりともなかった。単に楽しかったのである。 「健康のために運動をしよう」と思って、義務感で運動をしていては決して長続きはしない。大切なことは、それが楽しいということなのである。「エスカレーターを使わずに……」と、いくら思っていても、エスカレーターですいすい登っていく人を横目に、ふうふう言いながら階段を登ることが楽しいと思う人はそういないだろう。
▼だからウォーキング
数年前、健康のために水泳に挑戦した。週末、近くの温水プールに行って毎回1キロ泳ぐことに決めた。しかし、安くて設備が良いせいか人が多い。ちょっと速く泳ぐと、前方を泳いでいる人に顔を蹴られる。疲れて立ち止まっていると、後ろから来る人にじゃまにされる。さらに単に直線25メートルのコースを往復するだけだから、変化に乏しい。だんだんプールに行くことが苦痛になり、何回か通った後にやめてしまった。
そこで次にマウンテンバイクを購入して、近くの山を登ることにした。往復2時間。登りは汗びっしょりとなるが、下りはスピード感もあって快適だ。その日の気分でコースもさまざまに変える。周囲の四季折々の花や緑の変化がなんとも楽しい。この習慣は今でも続いている。
健康づくりに一番大切なことは「継続性」である。水泳でも、ハイキングでも、ジョギングでも、エルゴメーターでも、エアロビックダンスでも、何でも、自分の好きなことをすればいいのである。ただ、ウォーキングには、どこでも、いつでも、だれでもでき、そして楽しいという利点がある。四季折々の風景を見ながら歩くのは楽しい、いつもの街並みを見ながらでも楽しい、見知らぬ街ならなおさら何時間歩いても飽きることがない。
最近、「歩く文化」を形成するため、全国各地で地方自治体などが中心となって遊歩道が次々と整備されている。だから、普段は水泳も、ジョギングも、運動は特になにもしていないというあなたにとって、ウォーキングは最初に検討すべき最良の選択肢なのである。
http://www.net-dream.jp
タンポポの黄色い花が野一面に咲くころになると、中高年のハイカーたちがどっと低山に繰り出してくる。かつてハイカーというと、高校生や大学生のサークルなど若い人たちの姿ばかりが目立ったが、最近では中高年ばかり。それも女性が多いのに驚かされる。一方、若い人の間ではマイカーが普及して、週末はドライブでほとんど車の中という人が多い。
しかし歩くこと、つまりウォーキングは人が健康な生活を送るためにもっとも基本的な動作の一つであり、老若男女すべての人が関心を持って積極的に実践してもらいたい運動の一つでもある。そこで今月から一年間、ウォーキングと健康に関する話題を中心にウォーキングについて考えてみたい。
▼日本の現状
年齢階級別にみた歩数(平均)
(厚生省「平成7年国民栄養調査成績」から)
人数 平均歩数
全国 総数 10,558 7,378
15〜19歳 818 8,487
20〜29 1,505 7,745
30〜39 1,760 8,019
40〜49 2,023 7,933
50〜59 1,764 7,897
60〜69 1,498 6,644
70歳以上 1,190 4,416
男 総 数 4,834 7,933
15〜19歳 430 8,797
20〜29 678 8,490
30〜39 836 8,820
40〜49 935 8,248
50〜59 782 8,370
60〜69 692 6,890
70歳以上 481 5,012
女 総 数 5,724 6,909
15〜19歳 388 8,144
20〜29 827 7,134
30〜39 924 7,294
40〜49 1,088 7,663
50〜59 982 7,520
60〜69 806 6,433
70歳以上 709 4,011
厚生省の平成7年国民栄養調査によると、日本人(15歳以上)の一日の平均歩数は7,378歩。その内訳は、男性が7,933歩で、女性が6,909歩と、男性がやや多い。年齢別にいうと、15歳から19歳までが8,487歩で、年齢が上がると歩数が減る傾向にあり、40代が7,933歩、60代が 6,644歩。70歳以上ではぐんと減って、4,416歩となる。
「一日に一万歩」という運動が勧められている。財団法人日本万歩クラブという団体もある。1万歩となると、約一時間半ほど歩くことになる。消費カロリーにして約300キロカロリー。このくらい歩くと、さまざまな形で健康に良い、ということらしい。学生やサラリーマンは、通勤通学などで日常けっこう歩いている。問題は、家庭に閉じこもりがちな主婦や退職者たちだ。低山のハイカーには中高年が、それも女性が多いということの背景に、こんな事情が働いているのかもしれない。
私は30代後半のころ、霞ヶ関にある官庁に何年間か通勤した。雨の日だけはJR新橋駅から地下鉄で虎ノ門駅まで行き、そこから霞ヶ関まで歩いたが、普段は新橋駅から霞ヶ関まで歩いた。片道約1.5キロ、歩いて約20分である。また当時、横浜の自宅から最寄りの駅までは2キロ強あり、これで徒歩25分。近所にバス便もあったが、朝は通勤ラッシュでノロノロ運転、夜は1時間に2本くらいしかないため、ほとんど使わなかった。これだけで合計すると、1日ちょうど1時間半。
そこで、試しにしばらくデジタル式の歩数計をつけてみた。すると、だいたい一日8,500歩から1万2千歩で、平均1万歩だった。私の仕事はほとんどデスクワークで、昼食で外に出る以外はほとんど机にくぎづけだったが、ちょっとした心掛けで一日一万歩は簡単に実現できるということが分かった。
▼今から始めよう
日本社会の高齢化が急速に進んでいる。日本人の平均寿命は右肩上がりに伸び、1960年には男性が65.32歳、女性が70.19歳だったのが、96年には男性77.01歳、女性83.59歳となった。一方、平成8年の人口動態調査によると、日本の生産年齢人口(15歳から64歳まで)は全人口の69.07%を占め、老年人口(65歳以上)が15.43%も占めている。この老年人口の割合は、さらに2005年には20%、2015年には25%に達するとも予想されている。こうなってくると、あまり若い人たちに面倒もかけられない。長い老後をいかに健康で活動的に過ごすかということが、大きな課題となっている。
定年後になって突然、健康指向の生活に目覚め、食生活を改め、ジョギングだ、ハイキングだ、大極拳だ、とやたら頑張り始める人がいる。おかげで丹沢や奥武蔵、奥多摩の低山は中高年のハイカーたちでいっぱいとなる 。
しかし、本当の健康づくりは、定年後に突然始めたのでは遅いのである。若いころに営々と築いた「健康の貯金」が老後にじわじわと効いてくる。サラリーマン時代の、暴飲暴食、喫煙、不規則な生活のつけは必ず老後に現れてくる。ふだんの生活で恒常的に健康な生活習慣を取り入れることが今、求められているのである。
▼長続きすることが大切
平成9年度版厚生白書の保健福祉動向調査によると、国民の約4割がひごろ水泳やテニス、ジョギングを行っているという。しかしその割合は、仕事が本格的に忙しくなる40歳あたりから減り始め、60歳を過ぎるころには1割を切ってしまう
一方、「健康のため散歩をしたり、乗り物やエレベーターを使わずに歩くようにしている」という人は、20代で4割くらいだが、年齢が上がるにしたがって増え続け、70歳以上になると8割近くとなる。しかし実際に日常見る光景では、駅のエスカレーターを使わずに階段を登っている高齢者の姿を見ることはほとんどない。時々若い人や忙しそうな中堅サラリーマンが階段を駆け上がったり、エスカレーターの片隅を駆け上がったりするぐらいである。
つまりこのアンケート結果の意味は、高齢者は歩く機会が現実にどんどん減っているので、あえて「なるたけ歩くようにしよう」と強く意識している、ということなのである。実際、国民栄養調査でも、70歳以上の一日の歩数は4,416歩で、若い人の半分しか歩いていない。 「スキーやスキンダイビングを健康のためにしている」という人はあまりいないだろう。多くの人は、これらのスポーツが楽しいからしているのである。私も20代のころ、夏はスキンダイビング、冬になるとスキーをしていた。むろん当時、「健康のため」などと思ったことは一度たりともなかった。単に楽しかったのである。 「健康のために運動をしよう」と思って、義務感で運動をしていては決して長続きはしない。大切なことは、それが楽しいということなのである。「エスカレーターを使わずに……」と、いくら思っていても、エスカレーターですいすい登っていく人を横目に、ふうふう言いながら階段を登ることが楽しいと思う人はそういないだろう。
▼だからウォーキング
数年前、健康のために水泳に挑戦した。週末、近くの温水プールに行って毎回1キロ泳ぐことに決めた。しかし、安くて設備が良いせいか人が多い。ちょっと速く泳ぐと、前方を泳いでいる人に顔を蹴られる。疲れて立ち止まっていると、後ろから来る人にじゃまにされる。さらに単に直線25メートルのコースを往復するだけだから、変化に乏しい。だんだんプールに行くことが苦痛になり、何回か通った後にやめてしまった。
そこで次にマウンテンバイクを購入して、近くの山を登ることにした。往復2時間。登りは汗びっしょりとなるが、下りはスピード感もあって快適だ。その日の気分でコースもさまざまに変える。周囲の四季折々の花や緑の変化がなんとも楽しい。この習慣は今でも続いている。
健康づくりに一番大切なことは「継続性」である。水泳でも、ハイキングでも、ジョギングでも、エルゴメーターでも、エアロビックダンスでも、何でも、自分の好きなことをすればいいのである。ただ、ウォーキングには、どこでも、いつでも、だれでもでき、そして楽しいという利点がある。四季折々の風景を見ながら歩くのは楽しい、いつもの街並みを見ながらでも楽しい、見知らぬ街ならなおさら何時間歩いても飽きることがない。
最近、「歩く文化」を形成するため、全国各地で地方自治体などが中心となって遊歩道が次々と整備されている。だから、普段は水泳も、ジョギングも、運動は特になにもしていないというあなたにとって、ウォーキングは最初に検討すべき最良の選択肢なのである。
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