毎日、脂肪・塩分・カロリー控えめのバランスよい食事をし、適度に運動をし、たばこは吸わず、お酒もたしなむ程度、という健康的な生活をしていても、こころが不健康で、つまらない毎日では何の意味もありません。また、こころが不健康になると、いずれ身体の方も調子を崩して病気になる。こころの健康を保つために大切な、快適な睡眠のとり方やストレスの解消法などについて、国立精神・神経センター精神保健研究所の内山真精神生理部長に聞きました。
こころの健康とは
こころの健康とは「健康日本21」によると、「自分の感情に気づいて表現できること(情緒的健康)、状況に応じて適切に考え現実的な問題解決ができること(知的健康)、他人や社会と建設的でよい関係を築けること(社会的健康)を意味しています。人生の意味を見出し、主体的に人生を選択すること(人間的健康)も大切な要素」とあります。これには、個人の資質や能力、身体状況、社会的状況、住居や職場の環境、対人関係など極めてさまざまな要因が関係しています。もちろん身体の健康とも密接な関係があります。このため、この問題には全人的なアプローチが必要になってきます。具体的には、習慣や行動の形成や維持についての原理を明らかにする行動科学に基づいたセルフケアを、企業、役所、病院、学校、家庭など、ありとあらゆる場で取り入れていくことが必要となるでしょう。
ストレスの多様な側面
広辞苑によると、ストレスは「寒冷、外傷、疾病、精神的緊張などが原因で体内に起こる一連の非特異的な防御反応。また、その原因」とあります。ストレスは大きく、身体的ストレスと精神的ストレスに分けられます。さらに身体的ストレスには、騒音や暑さ、寒さ、化学物質などの物理・科学的ストレスと、飢え、過労、病気などの生理的ストレスに分かれます。精神的ストレスとしては、緊張、不安、怒りなどがあります。ストレスが過剰だったり、長期間続くと、イライラや無気力、食欲不振、不眠などを引き起こしますが、適度なストレスは体にほどよい刺激となり、気分をよくし、人間を意欲的にします。
このストレスの問題がややこしいところは、ある人にとって快適な刺激が、他人にとっては不快なストレスだったりすることです。ある人が大好きな音楽が、他の人には単なる騒音であったり、また、ある人にとって食欲を増進するいいにおいが、他の人にとっては単なる悪臭だったりします。同じ人でも、気分がいいときは大好きだった音楽が、滅入っているときには不快になったりもします。このため、単にストレス対策といっても、設備を整えたり制度を改善したりしてストレス対策が推進できる側面と、個人としてストレスに適応したり、解消しなくてはならない側面もあるのです。つまり、自分にあったストレスの解消法を日ごろから身に付ける心がけが必要なのです。
日ごろストレスを感じている人が半数
健康・体力づくり事業財団の「平成8年度健康づくりに関する意識調査」によると、「最近1カ月間にストレスを感じたことがある」という人の割合が、54.6%もありました。ストレスの対象としては、男性の場合は仕事が圧倒的なトップで、次いで人間関係。定年を迎える60代以降になると、自分の健康がトップで、次いで仕事、そして人間関係の順となります。一方、女性の30代では、育児・出産・子どもの教育がトップで、次いで仕事、そして人間関係。それが40代になると、仕事がトップで、人間関係や子どもの教育、家族の健康などが続きます。50代に入ると、自分の健康、家族の健康、仕事、人間関係などが上位を占めるようになります。男女に共通して言えることは、年齢とともに健康への不安が大きなストレスになっていることです。「健康日本21」では、「最近1カ月間にストレスを感じたことがある」という人の割合を、2010年までに現在の1割ほど減らすことが目標となっています。
内山部長は「現在、ストレスが減っていると指摘する人は少ないのですが、私は百年前と比べれば確実にストレスは減っていると思います。強盗や泥棒など治安の問題、死につながる伝染病の問題、飢えや天災など、昔の社会は大変なストレスにあふれていました。こうした生命の危機に直接つながるような状況でのストレスは減っています。一方で子どもの教育、仕事、人間関係など現代に特有な問題がストレスを起こしているのです。こうした場合、その人の性格が、ストレスをどうかわしていくことができるかがとても重要です。これとは別に、超高齢化社会を迎えて健康への不安によるストレスはますます増えていくことが予想されます。このため21世紀のストレス対策は、身体の健康とこころの健康の両方にかかわる、ますます重要な問題になっていくと思います」といいます。「現代はストレス社会」という言葉がよく使われますが、それは社会の中でストレスが増えているというよりは、現代のより安全な社会状況、あるいは高齢化社会でストレスの質が変わってきているといえるかもしれません。
求められるストレス対策
ストレス対策の基本は、(1)ストレスに対する個人の対処能力を高める。(2)個人を取り巻く周囲のサポートを充実させる。(3)ストレスの少ない社会をつくる――です。いずれも、実際推進するには大変大きなテーマです。さらに、個人がストレスに対処する能力を高める方法としては、(1)ストレスの正しい知識を得る。(2)健康的な、睡眠、運動、食習慣で心身の健康を維持する。(3)自分のストレスの状態を正確に理解する。(4)リラックスできるようにする。(5)物事を現実的に柔軟にとらえる。(6)自分の感情や考えを上手に表現する。(7)時間を有効に使ってゆとりを持つ。(8)趣味や旅行などで気分転換を図る――などが挙げられています。
具体的には、スポーツや趣味、適度の飲酒、おしゃべりなどで、日ごろのストレスを解消している人が多いようです。それから、あまりいい方法とはいえませんが、ふて寝、やけ食い、衝動買い、などという方法もかなり取られています。運動が嫌いな人が無理にスポーツをしても、お酒を飲めない人がお酒を飲んでも、ストレスが解消されるどころか、逆に悪化しかねません。ストレスが個人によって違うように、その対策も人それぞれということになります。日ごろから積極的にこころの健康に注意をむけ、自分なりの対策を考えておくことが重要です。
こころの軒高に大切な睡眠
ストレスがたまると人は不眠になります。また逆に、不眠などの睡眠障害はストレスとなって、疲労感、情緒不安定などをもたらすだけでなく、高血圧や糖尿病を悪化させることも分かってきました。また、睡眠不足は交通事故の1つの原因にもなっています。不眠は通常、数日のうちに回復します。しかし、これがなかなか改善しないで長期間続くと、不眠症として医師を訪れることになります。成人3,030人を対象とした平成8年度の健康・体力づくり事業団の調査によると、日本人の成人の23.1%が睡眠に関連する健康問題があり、14.1%がよく眠れるようにと睡眠薬やアルコールを飲むことがあるとなっています。「健康日本21」では、この2つの数字を2010年までに1割以上減らすことが目標になっています。
この健康・体力づくり事業団の調査では、全体として21.4%の人が何らかの不眠をもっていました。年齢別に調べると、高齢になるほど不眠を訴える人が多いことが分かりました。不眠症状を詳しく分析すると、なかなか寝つけない入眠障害が8・3%で、夜中に目が覚めてしまう中途覚醒が15%、朝早く目が覚める早朝覚醒が8%でした。
睡眠時間の平均は7時間
内山部長は「日本人で、睡眠不足を感じていない成人の平均睡眠時間はおよそ7時間弱。不足を感じている人を含めると6時間半くらいになります。睡眠時間は実はそんなに長くないのです。また、長ければいいというものではありません。人の睡眠時間は夏は短く冬は長くなります。また、肉体労働をした後など体の疲れ具合でも、睡眠時間は変わります。たとえ、自分でそれよりも長く眠ろうと決めても、布団の中にいる時間が長くなるだけだったり、夜中に目が覚めたりします。睡眠時間は自然に任せた方がいいのです」といいます。なんとなく「長時間眠れば疲れもとれて健康になる」と思い込んでいる人が多いのですが、それは幻想のようです。
興味深い調査結果があります。1980年代に行われた、110万人を対象とした米国がん協会の調査によると、7時間くらいの睡眠の人が一番死亡率が低かったそうです。床についている時間ではなくて、実際に眠っている時間を調べて、いったい自分は何時間眠れば体が快適と感じるのか、一度じっくりと調べてみることも大切です。
年をとるほど少なくなる睡眠時間
年代別に睡眠時間を調べてみると、新生児のころは16時間くらい寝ているのが、成長するに従ってだんだん減り、高校生のころになるとだいたい8時間、40歳前後では7時間となり、50歳以降は6時間くらいに収束します。年を取ると疲れやすくなったり、仕事が少なくなったりして、どうしても早く床につくようになります。しかし、その一方で、実際に眠ることができる時間は短くなっているのです。内山部長は「床につく時間と睡眠時間との間に乖離(かいり)があると、どうしても、不眠となったり、朝早く起きてしまう。老人ホームなどは夜9時に消灯、朝6時起床というところが多いのですが、他の人たちに迷惑をかけずに夜の時間を過ごすところをつくってあげないとかわいそうだと思います」と、お年寄りの睡眠障害の問題を指摘しています。
快適な睡眠のために
寝つきが悪い場合の多くの原因は、職場や学校での精神的なストレス、試験前日などの気持ちの高ぶり、仕事や家庭での心配事です。ほとんどの場合は、ストレスの原因や心配事が解消されると不眠も解消します。しかし、ストレスの原因が解消されても、寝つきの悪い夜が続くと、自然に眠る自信を失ってしまい、「また眠れなくなるのではないか」という不安で頭が冴えて眠れなくなることがあります。これは神経症性不眠といいます。
内山部長は「もし、本当に睡眠が不足していれば昼間起きていられなくなります。もし、昼間起きていられるようだったら、それは深刻な睡眠不足ではありません。眠れないことを必要以上に気にしないことが、よく眠れる秘けつです」と、アドバイスしています。
睡眠障害の対応と治療のガイドラインの12項目を紹介します。
(1)睡眠時間は人それぞれで、成人の場合は6〜7時間前後が充足の目安。日中の眠気で困らなければ十分。(2)就床前4時間は、カフェインを含むコーヒーや紅茶、栄養ドリンク、チョコレートなどは避け、1時間前には喫煙をしない。軽い読書や音楽、ぬるめのお湯で入浴、筋弛緩トレーニングなど自分なりのリラックス法を。(3)就寝時刻にこだわらず、眠たくなってから床につく。不眠だと早く床につこうとするが、逆効果。(4)前の晩に何時に寝ようと、起きる時間は一定に。日曜日遅くまで寝ていると、月曜日の朝がつらくなる。(5)目が覚めたら日光を取り入れ、夜は明るすぎない照明を。人間は、起床して太陽の光を浴びると、それから15,6時間後に眠たくなるようにできている。朝、光による体内時計のリセットが行われないと、夜、寝つく時刻が約1時間遅れ、また、部屋を明るくして寝ると体内時計のリズムが遅れる。(6)規則正しい3度の食事と規則的な運動習慣は熟睡を促進。夜食はごく軽く。(7)昼寝をするなら、昼食後から午後3時までの間の20〜30分。規則正しい昼寝は日中の眠気を解消。(8)眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きにして就床時間を減らす。「8時間眠らないといけない」などとこだわらないこと。(9)睡眠中の激しいいびき、呼吸停止、足のびくつき、足のむずむず感は要注意。それぞれ、睡眠時無呼吸症候群、睡眠時周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群の可能性があるので、専門医に相談すること。(10)十分眠っても日中の眠気が強い場合は専門医に。(11)睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因に。(12)睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全。一定時刻に服用して就床。アルコールは併用しない。
減らない自殺者
警察庁の統計によると、2001年の自殺者数は31,042人で、前年より915人減ったものの、4年連続で3万人の大台を超えました。同じ年の交通事故死が8,747人であることから、自殺者がいかに多いか分かります。自殺者数は、同庁が統計を取り始めた1078年から97年までは2万人台前半で推移していたのですが、それが98年に32,863人と3万台に突入、その後3万台前半を推移しています。2001年の自殺者の年齢別内訳をみると、60歳以上が35.1%で、50代が25.4%、40代が15%、30代が11.7%、20代が10%。男女別では、男性が71.3%と男性が多いのが特徴です。職業別では、無職が46.5%、サラリーマンが23.5%、自営業が13.4%、主婦・主夫が8.7%、そして学生が2.4%。小学生が11人、中学生が78人、高校生が198人もいました。
自殺の理由は不明なことが多く、詳しくは分かりませんが、約3分の1が遺書を残しており、それから推定すると、トップが健康問題で、次いで経済・生活問題、そして勤務問題、男女問題の順となっています。
世界的に見ても日本は自殺者の多い国です。人口10万人あたりの自殺者数(1993-98年のデータ)を国際比較すると、日本はリトアニアやロシア、ハンガリーなど旧東欧諸国に比べると少ないものの、アメリカの2.2倍、イギリスの3.8倍、イタリアの2.8倍、ドイツの1.8倍など先進国のなかではトップクラスに多いのです。旧東欧諸国の自殺が多い一つの理由として、共産主義体制が崩壊して社会不安が増大しているという事情がありそうです。自殺は多くの国で死亡原因の10位以内に入っており、世界の死亡数の2・5%を占めるともいわれています。特に、若者だけでいうと、自殺は第3位といわれ、その家族に対する精神的ショックや、経済的な損失も大きく、大変に大きな問題です。ハンガリーのように高齢者の自殺が多い国、インドのように若い人の自殺が多い国、中国のように女性の自殺が多い国など、その国の社会体制、経済状況、文化習慣、宗教などが複雑にからんでいて、その背景はさまざまです。
まず、国のレベルで自殺予防を目的とした実態調査が必要です。そのうえで、自殺と密接な関係にあるうつ病の治療など専門家の教育体制、精神的な疾患を抱えた患者や家族のサポート体制、青少年に対する自殺予防のための教育体制などの整備をすることが急務です。
うつ病は早期に治療する
こころの健康のなかでも、大きな問題になっているのがうつ病です。世界中の人の3%から5%がうつ病にかかっているともいわれます。しかも、その多くの人は自分の病気を自覚せず、治療も受けていないのが現状です。自殺者の多くがうつ病を呈し、うつ病予防は自殺予防にもつながるのです。「健康日本21」では、うつ病治療の対策を講じることで、自殺者の数を、2010年までに22,000人以下にすることを目標としています。
新潟大学の精神医学教室は、新潟県松之山町での高齢者の自殺の背景にうつ病があることに注目し、1986年から、うつ病患者を治療し、保健福祉的ケアをする活動を実施しました。するとその結果、自殺予防活動前に10万人に対して434.6人だった自殺者の割合が、10年間の活動後で123.1人と激減したといいます。
内山部長は「ナチスの迫害があるまでは、うつ病は遺伝性、つまり体質性のものと、反応性のものに大別できると考えられていました。しかし、ナチスの迫害で、きわめて多くのユダヤ人がうつ病になったのです。そういうことがあって、うつ病は、誰でもなりうるということが分かりました。几帳面すぎる人はストレスをよけるのが苦手です。こうした人がストレスで追い込まれて、悪循環に陥ってうつ病になりやすいことが分かりました。また、日ごろからから気分に波がある人もうつ病になりやすいといわれます。100人中2人から5人くらいが生涯でうつ病にかかるという予測あります」と、うつ病は決して一部の人がかかる病気ではない、と指摘しています。そして、うつ病の兆候として「うつ病患者の7、8割が初診で不眠や熟睡感不足を訴えるという報告もあります。いままで楽しめたことが楽しめなくなる。ちょっとした決断ができないなども、サインです。これらの症状は朝方に一番多く、夕方から夜にかけて軽快していくことが多い。それをいち早くキャッチして治療やカウンセリングに結びつけることが大切で、うつ病が疑われたときは速やかに専門医に診てもらうことが必要です」と話しています。
http://www.net-dream.jp
こころの健康とは
こころの健康とは「健康日本21」によると、「自分の感情に気づいて表現できること(情緒的健康)、状況に応じて適切に考え現実的な問題解決ができること(知的健康)、他人や社会と建設的でよい関係を築けること(社会的健康)を意味しています。人生の意味を見出し、主体的に人生を選択すること(人間的健康)も大切な要素」とあります。これには、個人の資質や能力、身体状況、社会的状況、住居や職場の環境、対人関係など極めてさまざまな要因が関係しています。もちろん身体の健康とも密接な関係があります。このため、この問題には全人的なアプローチが必要になってきます。具体的には、習慣や行動の形成や維持についての原理を明らかにする行動科学に基づいたセルフケアを、企業、役所、病院、学校、家庭など、ありとあらゆる場で取り入れていくことが必要となるでしょう。
ストレスの多様な側面
広辞苑によると、ストレスは「寒冷、外傷、疾病、精神的緊張などが原因で体内に起こる一連の非特異的な防御反応。また、その原因」とあります。ストレスは大きく、身体的ストレスと精神的ストレスに分けられます。さらに身体的ストレスには、騒音や暑さ、寒さ、化学物質などの物理・科学的ストレスと、飢え、過労、病気などの生理的ストレスに分かれます。精神的ストレスとしては、緊張、不安、怒りなどがあります。ストレスが過剰だったり、長期間続くと、イライラや無気力、食欲不振、不眠などを引き起こしますが、適度なストレスは体にほどよい刺激となり、気分をよくし、人間を意欲的にします。
このストレスの問題がややこしいところは、ある人にとって快適な刺激が、他人にとっては不快なストレスだったりすることです。ある人が大好きな音楽が、他の人には単なる騒音であったり、また、ある人にとって食欲を増進するいいにおいが、他の人にとっては単なる悪臭だったりします。同じ人でも、気分がいいときは大好きだった音楽が、滅入っているときには不快になったりもします。このため、単にストレス対策といっても、設備を整えたり制度を改善したりしてストレス対策が推進できる側面と、個人としてストレスに適応したり、解消しなくてはならない側面もあるのです。つまり、自分にあったストレスの解消法を日ごろから身に付ける心がけが必要なのです。
日ごろストレスを感じている人が半数
健康・体力づくり事業財団の「平成8年度健康づくりに関する意識調査」によると、「最近1カ月間にストレスを感じたことがある」という人の割合が、54.6%もありました。ストレスの対象としては、男性の場合は仕事が圧倒的なトップで、次いで人間関係。定年を迎える60代以降になると、自分の健康がトップで、次いで仕事、そして人間関係の順となります。一方、女性の30代では、育児・出産・子どもの教育がトップで、次いで仕事、そして人間関係。それが40代になると、仕事がトップで、人間関係や子どもの教育、家族の健康などが続きます。50代に入ると、自分の健康、家族の健康、仕事、人間関係などが上位を占めるようになります。男女に共通して言えることは、年齢とともに健康への不安が大きなストレスになっていることです。「健康日本21」では、「最近1カ月間にストレスを感じたことがある」という人の割合を、2010年までに現在の1割ほど減らすことが目標となっています。
内山部長は「現在、ストレスが減っていると指摘する人は少ないのですが、私は百年前と比べれば確実にストレスは減っていると思います。強盗や泥棒など治安の問題、死につながる伝染病の問題、飢えや天災など、昔の社会は大変なストレスにあふれていました。こうした生命の危機に直接つながるような状況でのストレスは減っています。一方で子どもの教育、仕事、人間関係など現代に特有な問題がストレスを起こしているのです。こうした場合、その人の性格が、ストレスをどうかわしていくことができるかがとても重要です。これとは別に、超高齢化社会を迎えて健康への不安によるストレスはますます増えていくことが予想されます。このため21世紀のストレス対策は、身体の健康とこころの健康の両方にかかわる、ますます重要な問題になっていくと思います」といいます。「現代はストレス社会」という言葉がよく使われますが、それは社会の中でストレスが増えているというよりは、現代のより安全な社会状況、あるいは高齢化社会でストレスの質が変わってきているといえるかもしれません。
求められるストレス対策
ストレス対策の基本は、(1)ストレスに対する個人の対処能力を高める。(2)個人を取り巻く周囲のサポートを充実させる。(3)ストレスの少ない社会をつくる――です。いずれも、実際推進するには大変大きなテーマです。さらに、個人がストレスに対処する能力を高める方法としては、(1)ストレスの正しい知識を得る。(2)健康的な、睡眠、運動、食習慣で心身の健康を維持する。(3)自分のストレスの状態を正確に理解する。(4)リラックスできるようにする。(5)物事を現実的に柔軟にとらえる。(6)自分の感情や考えを上手に表現する。(7)時間を有効に使ってゆとりを持つ。(8)趣味や旅行などで気分転換を図る――などが挙げられています。
具体的には、スポーツや趣味、適度の飲酒、おしゃべりなどで、日ごろのストレスを解消している人が多いようです。それから、あまりいい方法とはいえませんが、ふて寝、やけ食い、衝動買い、などという方法もかなり取られています。運動が嫌いな人が無理にスポーツをしても、お酒を飲めない人がお酒を飲んでも、ストレスが解消されるどころか、逆に悪化しかねません。ストレスが個人によって違うように、その対策も人それぞれということになります。日ごろから積極的にこころの健康に注意をむけ、自分なりの対策を考えておくことが重要です。
こころの軒高に大切な睡眠
ストレスがたまると人は不眠になります。また逆に、不眠などの睡眠障害はストレスとなって、疲労感、情緒不安定などをもたらすだけでなく、高血圧や糖尿病を悪化させることも分かってきました。また、睡眠不足は交通事故の1つの原因にもなっています。不眠は通常、数日のうちに回復します。しかし、これがなかなか改善しないで長期間続くと、不眠症として医師を訪れることになります。成人3,030人を対象とした平成8年度の健康・体力づくり事業団の調査によると、日本人の成人の23.1%が睡眠に関連する健康問題があり、14.1%がよく眠れるようにと睡眠薬やアルコールを飲むことがあるとなっています。「健康日本21」では、この2つの数字を2010年までに1割以上減らすことが目標になっています。
この健康・体力づくり事業団の調査では、全体として21.4%の人が何らかの不眠をもっていました。年齢別に調べると、高齢になるほど不眠を訴える人が多いことが分かりました。不眠症状を詳しく分析すると、なかなか寝つけない入眠障害が8・3%で、夜中に目が覚めてしまう中途覚醒が15%、朝早く目が覚める早朝覚醒が8%でした。
睡眠時間の平均は7時間
内山部長は「日本人で、睡眠不足を感じていない成人の平均睡眠時間はおよそ7時間弱。不足を感じている人を含めると6時間半くらいになります。睡眠時間は実はそんなに長くないのです。また、長ければいいというものではありません。人の睡眠時間は夏は短く冬は長くなります。また、肉体労働をした後など体の疲れ具合でも、睡眠時間は変わります。たとえ、自分でそれよりも長く眠ろうと決めても、布団の中にいる時間が長くなるだけだったり、夜中に目が覚めたりします。睡眠時間は自然に任せた方がいいのです」といいます。なんとなく「長時間眠れば疲れもとれて健康になる」と思い込んでいる人が多いのですが、それは幻想のようです。
興味深い調査結果があります。1980年代に行われた、110万人を対象とした米国がん協会の調査によると、7時間くらいの睡眠の人が一番死亡率が低かったそうです。床についている時間ではなくて、実際に眠っている時間を調べて、いったい自分は何時間眠れば体が快適と感じるのか、一度じっくりと調べてみることも大切です。
年をとるほど少なくなる睡眠時間
年代別に睡眠時間を調べてみると、新生児のころは16時間くらい寝ているのが、成長するに従ってだんだん減り、高校生のころになるとだいたい8時間、40歳前後では7時間となり、50歳以降は6時間くらいに収束します。年を取ると疲れやすくなったり、仕事が少なくなったりして、どうしても早く床につくようになります。しかし、その一方で、実際に眠ることができる時間は短くなっているのです。内山部長は「床につく時間と睡眠時間との間に乖離(かいり)があると、どうしても、不眠となったり、朝早く起きてしまう。老人ホームなどは夜9時に消灯、朝6時起床というところが多いのですが、他の人たちに迷惑をかけずに夜の時間を過ごすところをつくってあげないとかわいそうだと思います」と、お年寄りの睡眠障害の問題を指摘しています。
快適な睡眠のために
寝つきが悪い場合の多くの原因は、職場や学校での精神的なストレス、試験前日などの気持ちの高ぶり、仕事や家庭での心配事です。ほとんどの場合は、ストレスの原因や心配事が解消されると不眠も解消します。しかし、ストレスの原因が解消されても、寝つきの悪い夜が続くと、自然に眠る自信を失ってしまい、「また眠れなくなるのではないか」という不安で頭が冴えて眠れなくなることがあります。これは神経症性不眠といいます。
内山部長は「もし、本当に睡眠が不足していれば昼間起きていられなくなります。もし、昼間起きていられるようだったら、それは深刻な睡眠不足ではありません。眠れないことを必要以上に気にしないことが、よく眠れる秘けつです」と、アドバイスしています。
睡眠障害の対応と治療のガイドラインの12項目を紹介します。
(1)睡眠時間は人それぞれで、成人の場合は6〜7時間前後が充足の目安。日中の眠気で困らなければ十分。(2)就床前4時間は、カフェインを含むコーヒーや紅茶、栄養ドリンク、チョコレートなどは避け、1時間前には喫煙をしない。軽い読書や音楽、ぬるめのお湯で入浴、筋弛緩トレーニングなど自分なりのリラックス法を。(3)就寝時刻にこだわらず、眠たくなってから床につく。不眠だと早く床につこうとするが、逆効果。(4)前の晩に何時に寝ようと、起きる時間は一定に。日曜日遅くまで寝ていると、月曜日の朝がつらくなる。(5)目が覚めたら日光を取り入れ、夜は明るすぎない照明を。人間は、起床して太陽の光を浴びると、それから15,6時間後に眠たくなるようにできている。朝、光による体内時計のリセットが行われないと、夜、寝つく時刻が約1時間遅れ、また、部屋を明るくして寝ると体内時計のリズムが遅れる。(6)規則正しい3度の食事と規則的な運動習慣は熟睡を促進。夜食はごく軽く。(7)昼寝をするなら、昼食後から午後3時までの間の20〜30分。規則正しい昼寝は日中の眠気を解消。(8)眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きにして就床時間を減らす。「8時間眠らないといけない」などとこだわらないこと。(9)睡眠中の激しいいびき、呼吸停止、足のびくつき、足のむずむず感は要注意。それぞれ、睡眠時無呼吸症候群、睡眠時周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群の可能性があるので、専門医に相談すること。(10)十分眠っても日中の眠気が強い場合は専門医に。(11)睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因に。(12)睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全。一定時刻に服用して就床。アルコールは併用しない。
減らない自殺者
警察庁の統計によると、2001年の自殺者数は31,042人で、前年より915人減ったものの、4年連続で3万人の大台を超えました。同じ年の交通事故死が8,747人であることから、自殺者がいかに多いか分かります。自殺者数は、同庁が統計を取り始めた1078年から97年までは2万人台前半で推移していたのですが、それが98年に32,863人と3万台に突入、その後3万台前半を推移しています。2001年の自殺者の年齢別内訳をみると、60歳以上が35.1%で、50代が25.4%、40代が15%、30代が11.7%、20代が10%。男女別では、男性が71.3%と男性が多いのが特徴です。職業別では、無職が46.5%、サラリーマンが23.5%、自営業が13.4%、主婦・主夫が8.7%、そして学生が2.4%。小学生が11人、中学生が78人、高校生が198人もいました。
自殺の理由は不明なことが多く、詳しくは分かりませんが、約3分の1が遺書を残しており、それから推定すると、トップが健康問題で、次いで経済・生活問題、そして勤務問題、男女問題の順となっています。
世界的に見ても日本は自殺者の多い国です。人口10万人あたりの自殺者数(1993-98年のデータ)を国際比較すると、日本はリトアニアやロシア、ハンガリーなど旧東欧諸国に比べると少ないものの、アメリカの2.2倍、イギリスの3.8倍、イタリアの2.8倍、ドイツの1.8倍など先進国のなかではトップクラスに多いのです。旧東欧諸国の自殺が多い一つの理由として、共産主義体制が崩壊して社会不安が増大しているという事情がありそうです。自殺は多くの国で死亡原因の10位以内に入っており、世界の死亡数の2・5%を占めるともいわれています。特に、若者だけでいうと、自殺は第3位といわれ、その家族に対する精神的ショックや、経済的な損失も大きく、大変に大きな問題です。ハンガリーのように高齢者の自殺が多い国、インドのように若い人の自殺が多い国、中国のように女性の自殺が多い国など、その国の社会体制、経済状況、文化習慣、宗教などが複雑にからんでいて、その背景はさまざまです。
まず、国のレベルで自殺予防を目的とした実態調査が必要です。そのうえで、自殺と密接な関係にあるうつ病の治療など専門家の教育体制、精神的な疾患を抱えた患者や家族のサポート体制、青少年に対する自殺予防のための教育体制などの整備をすることが急務です。
うつ病は早期に治療する
こころの健康のなかでも、大きな問題になっているのがうつ病です。世界中の人の3%から5%がうつ病にかかっているともいわれます。しかも、その多くの人は自分の病気を自覚せず、治療も受けていないのが現状です。自殺者の多くがうつ病を呈し、うつ病予防は自殺予防にもつながるのです。「健康日本21」では、うつ病治療の対策を講じることで、自殺者の数を、2010年までに22,000人以下にすることを目標としています。
新潟大学の精神医学教室は、新潟県松之山町での高齢者の自殺の背景にうつ病があることに注目し、1986年から、うつ病患者を治療し、保健福祉的ケアをする活動を実施しました。するとその結果、自殺予防活動前に10万人に対して434.6人だった自殺者の割合が、10年間の活動後で123.1人と激減したといいます。
内山部長は「ナチスの迫害があるまでは、うつ病は遺伝性、つまり体質性のものと、反応性のものに大別できると考えられていました。しかし、ナチスの迫害で、きわめて多くのユダヤ人がうつ病になったのです。そういうことがあって、うつ病は、誰でもなりうるということが分かりました。几帳面すぎる人はストレスをよけるのが苦手です。こうした人がストレスで追い込まれて、悪循環に陥ってうつ病になりやすいことが分かりました。また、日ごろからから気分に波がある人もうつ病になりやすいといわれます。100人中2人から5人くらいが生涯でうつ病にかかるという予測あります」と、うつ病は決して一部の人がかかる病気ではない、と指摘しています。そして、うつ病の兆候として「うつ病患者の7、8割が初診で不眠や熟睡感不足を訴えるという報告もあります。いままで楽しめたことが楽しめなくなる。ちょっとした決断ができないなども、サインです。これらの症状は朝方に一番多く、夕方から夜にかけて軽快していくことが多い。それをいち早くキャッチして治療やカウンセリングに結びつけることが大切で、うつ病が疑われたときは速やかに専門医に診てもらうことが必要です」と話しています。
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うつ病の悩みがスッキリなくなります。こころケアからだケア
客観的に見れば仕事もプライベートも落ち着いたはずなのに、なぜか毎日生きることがつらい・・・。何と言い表せば良いのかわかりませんが、とにかく苦しくて、
2007/10/13(土) 05:40:26 | うつ病 治し方 うつ病 完治口コミ情報


