快適な睡眠のために

ここでは、 快適な睡眠のために に関する情報を紹介しています。
◆さまざまな睡眠の役割

 かつて睡眠は、脳やからだが疲れて休んでいるだけの状態と思われていた。ところが1950年ごろから、睡眠中の脳波や眼球運動などを調べてみると、一晩の間に睡眠が深くなったり浅くなったりしていることが分かってきた。さらに、各種ホルモンや免疫に関与していることが判明。ごく最近では、脳の記憶のメカニズムともかかわっているらしいことも指摘されている。

 睡眠状態は大きく2つに分類される。からだの力は抜けているが脳は動いているレム(REM)睡眠と、逆に脳は深く休んでいるがからだの筋肉の緊張状態は保持されているノンレム(NREM)睡眠だ。健康な人はこの2つの状態がおよそ90分から120分周期で、一晩に4、5回繰り返される。夢を見たり、目が覚めやすい状態は、このレム睡眠の時。動物にもレムとノンレムがあり、猫や犬が行儀悪く横になってヒゲやまぶたをピクピクさせて寝ているのがレム睡眠で、行儀よくうずくまって寝ているのがノンレム睡眠だ。

 睡眠はからだの免疫と密接に関係している。かぜをひいて熱が出ると眠たくなるのは、からだが免疫機能を高めてウイルスを排除しようとしているのだ。大手生命保険会社の調査結果によると、マスコミや金融機関など睡眠が不規則な職業の人は、がんによる死亡率が高いという。国立精神・神経センター精神保健研究所の内山真・精神生理部精神機能研究室長も「睡眠を引き起こす物質は免疫にも関係している。だから免疫と睡眠は表裏一体で、夜寝るときは同時に免疫機能も高まっている。よく眠る人は免疫機能が増強され、感染症やがんなどの予防にもいい影響があるだろう」と指摘する。

 何か怖いものに追いかけられる夢を見た経験のある人は多いだろう。このような夢について内山室長は「何か危機的な状態に対応するための本能的な危機回避反応が、レム睡眠中に再学習されているのではないか」とみている。つまり人間は、寝ながらにして危機回避の訓練を復習しているというわけだ。

 また睡眠と記憶について、内山室長は「人を集めて語学学習をさせると、その中で優秀な人の睡眠はレム睡眠の時間が長い。どうもレム睡眠中に短期記憶が長期記憶として定着しているのではないか、という指摘があります。寝ている間に脳が必要な記憶を整理しているというのです」と話す。ということは、徹夜で語学の試験勉強をしてもあまり効果は上がらないのかもしれない。

 レムとノンレムの現れるパターンも重要だ。通常、人は寝入って90分ぐらいたってレム睡眠に入るが、うつ病の人は40分から60分。しかし、うつ病が治ると元のように長くなるという。離婚した直後の女性も同様、レム睡眠に早く入るという。睡眠には、私たちがまだ知らないさまざまな機能がありそうだ。

◆睡眠不足の人が増加している

 97年に健康・体力づくり事業財団が全国3,030人を対象に行った調査によると、「睡眠で十分に休養がとれていない」と訴える人が23.1%もいる。夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」は15.0%で、これは高齢者に多い。また、仕事や授業の最中に眠くなる「日中の眠気」も15.0%で、これは20代、30代の若い人に多い。多くの人が睡眠不足で悩んでいる。

 これを裏付けるかのように、NHKの国民生活時間調査では、1970年の日本人の平均睡眠時間は7時間57分だったが、1990年になると7時間39分に減っている。深夜零時まで起きている人も、1960年には日本人全体の2.4%だったのが、1990年には13%に増えている。一方、厚生省が96年に全国34,464を対象に行った保健福祉動向調査によると、平均睡眠時間が「6時間から7時間未満」と答えた人が一番多かったという。生活が急速に夜になる一方で、睡眠時間もどんどん短くなっている。

◆ 多様な睡眠不足の原因

 睡眠不足となる原因は極めて多様だ。最も多いのが、仕事や勉強が忙しくてあまり寝ていないなどという、単に睡眠時間が取れないケース。ほかに、時差ぼけや交替勤務など外的な生活リズムの変化にからだがついていけないケースや、心配事などの精神的なストレスの場合も多い。これらは仕事のリズムを変えたり、ストレスがなくなれば解消する。痛みやかゆみなどを伴う疾患で眠れないケース、アルコールやカフェインなどによるケースもある。

 最近、主に中高年の男性の間で問題になっているのが、睡眠時に時々呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」。肥満などで気道が狭くなり、呼吸ができなくなる。夜中に突然苦しくなって目が覚める。睡眠不足となり、昼間の眠気や頭痛を訴え、ひどい時は突然死することもある。

 睡眠をコントロールしている脳の中の「体内時計」と実際の生活のリズムがずれていて、寝付かれない、頭痛がする、食欲がないなどの異常を訴える人も増えている。これは「睡眠・覚醒リズム障害」とか「概日リズム睡眠障害」とか呼ばれている。登校拒否の背景にこのような問題が潜んでいることも多い。

◆ 生体のリズムを刻む体内時計

 人間の体温や血圧は、夜間の睡眠中は低くなり、昼間覚醒している時は高くなる。逆に成長ホルモンは夜中にピークを迎えて、昼間はほとんど分泌されない。このように人の生体機能は24時間周期で変動している。たとえ、室内光が一定の明暗のない部屋で、2時間ごとに食事をとり、睡眠はとらない、という生活のリズムが全くない状況下に健康な人間を長期間置いても、やはり同じように体温、血圧、各種ホルモンは上昇、下降のカーブを描く。つまり、脳にある体内時計が、これらの生体活動が一定周期で変動するようコントロールしている。

 実はこの体内時計、さきに述べたような外的刺激が全くない状況下に人間を置くと、24時間周期でなく25時間周期で動く。つまり人間は体内に25時間周期の時計を持ちながら、毎日、1時間ほどその時計を進めて24時間周期にリセットして生活しているのだ。  1時間ほど時計を進める仕組みについて、同研究所の大川匡子精神生理部長は「人は朝起きて明るい光を浴びると、その日に入眠する時刻が24時間周期になるよう、体内時計がリセットされるのです。だから朝に光を浴びないと25時間周期のままとなります。逆に、夜中にギラギラと光るテレビの前に居ると、体内時計はさらに遅れます。私たちの体内時計が25時間周期だからこそ、私たちは寝坊が得意で、夜更かしができるのです」と説明する。

◆概日リズム睡眠障害

 最近、この体内時計をうまく24時間周期にリセットできない人が増えている。「睡眠後退症候群」は、睡眠スケジュールが慢性的に遅れたまま、努力しても望ましい時刻に入眠できず、朝早い時刻に起きられない病気。「非24時間睡眠・覚醒障害」は、毎日、入眠と覚醒が1、2時間ずつ遅れて25時間周期を示す障害。いずれのケースも、昼間に仕事や勉強に打ち込めずに社会的生活に大きな支障をきたす。

 具体例として、大川部長は「17歳の高校生の例です。子供のころから朝起きるのが苦手。毎日だんだん入眠時刻が遅くなり、学校では昼寝ばかり。そしてだんだん学校に行きづらくなった。今、不登校と言われる子供の何割かが、この睡眠後退症候群だと言われています」と話す。また治療法については、「50歳の塾教師の例です。幼少から寝起きが悪く、大学を出て入社したものの、毎日午前4時、5時まで入眠できずに35歳で退社。49歳の時に私たちのセンターを受診しました。睡眠薬を投与したがほとんど無効。このため、明け方に強い光を浴びせる光療法を併用して、朝起きられるようになりました。現在もこの光療法で規則的な夜間睡眠が得られています」と説明する。

◆ 睡眠のリズムを取り戻そう

 概日リズム睡眠障害で悩んでいる人でなくても、この体内時計の考え方は生活上たいへん参考になる。「どうも最近寝付きが悪いな」などという人は、朝起きたらすぐに窓を開けて朝日を浴びて思いっきり深呼吸をしたらどうだろう。また、夜はテレビなど見ずに、部屋を暗くして静かな音楽に耳を傾けるのも効果がありそうだ。「来週、海外出張で時差ぼけがつらいな」などという人は、一日の長さが長くなるように、出発前の数日間や機内での睡眠の取り方を工夫して、現地の時刻に少しずつ合わせてみてはどうだろう。

 今や日本の総労働人口の3分の1が、夜勤などの変則勤務をしているという。この変則勤務のために体調不良を訴える人が多い。大川部長は「このような人々にみられる睡眠障害は、人間が本来起きて活動すべき時間帯とは異なった時間帯に活動し、からだの生体リズムに逆らった生活をすることから引き起こされると思われる」と指摘。具体的な対策として、「長期に変則勤務を続ける場合は、勤務に合わせた生体リズムになるように工夫をした方がいい。不規則な時間帯の勤務の場合は、日勤時の生体リズムを壊さないように夜勤時に適度の仮眠を取る。また交替勤務では、人間の体内時計の本来のリズムが25時間周期であることから、一日の長さが長くなる方向のローテーション、つまり、日勤、準日勤、深夜勤の順番にするといいでしょう」とアドバイスをする。

◆ よく眠るコツ

 睡眠不足を訴えている人をモニターして調べてみると、実はけっこう寝ていることが多い。これを睡眠誤認という。その背景には「毎日きちんと寝なくてはいけない」という不眠に対する恐怖がある。「もし寝られなかったら、明日たいへんだ」などと思うと、ますます寝られなくなる。不眠の恐怖が募って医者に行き、睡眠薬をもらって寝られるようになると、今度は「睡眠薬には習慣性があるから」と心配する。そこでまた薬を飲まなくなり、再び寝られなくなるという人がいる。

 最近の睡眠薬は安全で、大量に飲んでも死ぬことはない。それに、医師の指示通り飲めば、習慣性の心配もない。例えば、冬は夏に比べて眠りが浅くなり、睡眠時間は長くなる。だから、あまり「毎日決まった時刻に規則正しく眠ろう」「毎日8時間眠ろう」などと思う必要はない。神経質にならないことが快適な睡眠のコツだ。

 内山室長は快適な睡眠を得るコツとして「寝る前にお茶やコーヒーなどカフェインは控える。寝酒はだんだん量が増えるし、夜中に目覚めるのでしない。体温が上がると寝付きが悪くなるので、寝る前の風呂はぬるめに。寝る前には、食事やジョギングなど激しい運動はしない。寝室はあまり明るくしない」とアドバイスしている。

 また、大川部長は「とにかく朝起きて、冷たい水で顔を洗い、冷たいジュースを飲み、朝の光に当たってストレッチをする。それだけで1週間から1カ月でだいたい睡眠障害が治る。朝、太陽の光を浴びて駅まで歩くだけで早く眠れるようになる。生活のリズムができると自信も戻ってくる。そういう当たり前のことをしていない人が多い。よい睡眠を確保することは、健康を維持するための大きな武器となるのです」と話している。


http://www.net-dream.jp
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://netdream.blog112.fc2.com/tb.php/67-ed3dba90
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック