心的外傷後ストレス障害

ここでは、 心的外傷後ストレス障害 に関する情報を紹介しています。
心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic stress disorder),すなわちPTSDは簡単に言えば,極度に外傷的なストレス因子への暴露に基づいて生ずる特徴的な疾患です。
そのストレス因子としては,戦争・捕虜としての監禁・拷問などの他,地震や台風などの自然災害,テロリストによる襲撃などがまず考えられます。そのため最近の日本では,阪神淡路大震災やサリン事件の後で社会問題化したという経緯があります。長い期間が経過した今でさえ,まだこのPTSDに苦しめられている被災者は多いのです。その他,このストレス因子にはレイプ,あるいは幼少時における性的暴行などもあげられています。このような人為的な被害にあったPTSD患者の症状は重症であり,長く続くと言われています。
また,交通事故に遭うということもやはり大きな心的外傷になり得るものです。その後,車に乗ることができなくなったり,ブレーキの音に過敏になり,過剰な反応をするなどの症状が現れることになるのです。また,その心的外傷とは,自らが危うく死にかけたり重傷を負いそうな場面を体験するだけでなく,他人が遭遇している場面を目撃することなども含まれています。だから本症例のように交通事故を見てしまったり,特に,人の亡くなる場面を目撃してしまったりすることなどは当然PTSDの契機にはなります。
さらに言えば,がんとかエイズのような重篤な病気であることを告げられることなども含まれるので,本人だけでなく家族にとっても心的外傷になり得ます。子供が悪性疾患であることを告げられた母親がPTSDになってもなんら不思議はないのです。そういった目で眺めてみると,この疾患はもっと日常的に頻繁に見られると思われます。一方,被災した,あるいはその他の心的外傷に遭遇した子供が,PTSDになることも稀ではありませんが,大人とは異なる症状であると言われています。
これらの心的外傷後のPTSD発症頻度に関しては,暴行を受けた難民の7割,レイプ被害者の約半数と言われ,災害に遭った患者についてはその災害の大きさによって発生頻度はさまざまであり,2-50%が本症に罹患すると言われています。また,その他の精神疾患も合併することが多いとされ,うつ病・神経症・心因性健忘・離人症・アルコールなどの物質依存などがあげられています。
予後あるいは経過については,その心的外傷の程度によって,あるいは個人の性格や精神機能によって大きく異なってきますが,その持続期間によって3ケ月未満の場合を「急性」,それを越える場合を「慢性」と分類しています。また,このような症状が1カ月未満の場合にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)とは診断することができず,その場合には,「急性ストレス障害)Acute Stress Disorders) 」と呼ぶことになっています。【表ー1】には,PTSDの診断基準を示しました。
さて,今回の阪神淡路大震災でも約半数近くに急性ストレス障害あるいはPTSDが見られたという報告がありますが,米国のアルメイダ地震後の調査では,なんと被災者の7割以上にPTSDがみられたと言われています。
最後に,PTSD予防のための精神科的な介入としては,ディブリーフィング(debriefing) があります。これは被害にあった直後の被災者に対して,心的外傷後の反応はごく自然なことであり,だれもが経験するものであることをまず説明します。そして,ストレスを軽減させるための対処方法や日常生活上の留意点などを教えるものであり,一種の教育的介入です。また,実際に生じてしまったPTSDに対しては,薬物療法・精神療法・行動療法などを組み合わせて治療していくことになります。


A.右の二つが認められる外傷的な出来事に暴露されたことがある
(1)危うく死んだり重傷を負うような出来事に遭遇したり目撃する
(2)反応は強い恐怖・無力感などを含んでいる

B.外傷的な出来事が以下のひとつ以上の形で再体験されている (1)反復的で苦痛な想起であり,感覚や考えやイメージが含まれている
(2)反復的で苦痛を伴う夢
(3)再びその出来事が起こってくるかのように感じたり行動する
(4)その出来事を象徴するようなキッカケに暴露されたときに生ずる心理的苦痛
(5)その出来事を象徴するようなキッカケに暴露されたときに生ずる生理的反応

C.以下の3つ以上によって示される,回避や反応性減退 (1)出来事と関連した考え・感情・会話を避けようとする努力
(2)出来事を想起させる行動・場所・人物を避けようとする努力
(3)出来事の重要な部分を思い出せないこと
(4)重要な活動への関心の低下
(5)孤立・疎遠になっている感じ
(6)情緒的になる範囲の減少
(7)将来が短くなった感じ

D.以下の2つ以上によって示される,以前にはなかった持続的な興奮 (1)睡眠障害
(2)易刺激性
(3)集中困難
(4)過度の警戒心
(5)過剰な驚愕反応

E.B・C・Dの症状が1カ月間以上続いていること

F.著しい苦痛や,社会的・職業的な障害を生じさせている


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