1 現代社会にひろがるストレス
「現代はストレスの時代である」といわれます。機械化やコンピュータの普及に伴うめまぐるしい技術の変化、都市化による人口過密、核家族化、情報の洪水、価値感の多様化、あるいは受験戦争、高齢化社会の問題など、現代社会に生きる人間は、こうした社会情勢の変化への対応を強いられ、子どもから老人にいたるまで、かつては想像もできなかったさまざまなストレスにさらされています。
こうしたなかで、各人が心身の健康を維持していくためには、外部から絶えず加わる刺激(ストレス)にいかに的確に対処するか、すなわち心身のリラックスをいかに上手にはかるかが重要な課題となってきます。
ストレスとはなにか
1 ストレスの意味
ストレスとは、英語で“圧迫”あるいは“緊張”といった意味のことばです。
医学的な意味で使われる「ストレス」とは、「外部から加えられた刺激に適応するために、生体の中で生じる一定の反応の状態(ひずみ)」のことをいいます。私たちのからだは、どんな刺激に対してもあるきまった反応を示し、もとどおりになろうとする性質をもっています。このように、各種の刺激が生体に作用した場合におこる一定のひずみをストレスと呼んでいます。
2 ストレスの種類
ストレスには、身体的なものと精神的(心理的)なものとがあります。
・身体的ストレスにはどんなものがあるか
人間に加わる不快な身体的ストレス刺激としては、騒音、暑さ、寒さ、排気ガスなど(物理・化学的なストレス)、飢え、感染、過労など(生理的なストレス)があります。最近では、冷暖房がゆきとどき、そのことが、冬は寒さに対する抵抗力をおとしてかぜなどにかかりやすくし、夏は冷房病をふやすという、皮肉な結果も生んでいます。
・精神的(心理的)ストレスにはどんなものがあるか
精神的(心理的)ストレスとは、不安、緊張、不満、怒りなど、不快な感情をおこさせるものです。日常生活の変化は、よきにつけあしきにつけ、精神的なストレスとなるので、複雑化した現代社会では、さまざまな場面で精神的ストレスにさらされているといえます。
これらのストレスが強力で、過剰に加わりつづけると、心身ともに過緊張の状態となって、からだとこころにさまざまな異常な症状があらわれてきます。
イライラ、無気力感、物忘れ、だるい、疲れやすい、食欲がない、眠れない、頭重・頭痛、肩こり、胃の不快感などです。
3 現代社会におけるさまざまなストレス
職場、家庭、学校など社会生活を営むうえで生じるさまざまなストレスがあります。
・職場におけるストレス
職場では、いわゆるテクノストレスの問題、残業・休日出勤、人間関係、昇進・転勤、単身赴任、定年などの問題が、緊張感や疲労、あるいは精神的苦痛などをおこしてきます。
・家庭におけるさまざまなス卜レス
人生を縦の流れとしてみると、受験、思春期、就職、結婚、成年期、老年期などは、より多くのストレスにさらされやすい時期です。
たとえば核家族化した現代の若い親たちにとって、初めての妊娠・出産から育児にかけてのさまざまな出来事は、とまどいや不安をおぼえることが多く、非常に大きなストレスとなります。
中年期になると、子供の受験、価値感やものの見方の違いによる親子の対立、年老いた親の扶養の問題、自分たちの老後への準備などが大きなストレスとなります。また、単身赴任による父親の不在は、子どもの登校拒否や食行動異常などをまねくという報告もあります。
・“老化”もストレス
老年期を迎えると、病気がおこりやすくなります。一方、病人の介護は家族にとって大変な負担であり、それにともなって大きなストレスにもなっています。また、嫁・姑関係、定年後の単調な生活、配偶者との死別、そしてなによりも老人にとって最大のストレスは老化という問題です。
ストレスをどのように受けとめたらよいか
1 人生を前向きの姿勢で生きる
日常生活をおくるうえで、ストレスは避けて通れないものです。そして、あることがらがストレスになるかどうかは、その人の仕事や人生に対する取り組み方や姿勢が大きく関係するといわれています。いやいやながらするのでは、不快なストレスが一層強まります。
ストレスをただ避けるのではなく、前向きの姿勢で建設的に対処していく心構えが大切です。
2 ストレスは人生のスパイス
「ストレスは人生のスパイス(香辛科)である」ということばがあります。スパイスが多すぎても、また少なすぎても、人生という料理の味がそこなわれるのです。
適度のストレスは、人生に刺激と彩りを与えてくれます。心身にほどよい緊張感と充実感をもたらし、人間を意欲的にし、よりたくましく生きる原動力ともなり得るのです。
ささいなことはストレスとして感じないように努力することも必要です。そして、ある問題で強いストレスにさらされたときは、積極的に気分転換をはかり、ストレスをためないよう努力することも大切です。
ストレス解消と気分転換法
昔からストレス解消法として、スポーツや趣味、適度の飲酒、親しい仲間とのおしゃべりなど、いろいろな方法があげられています。
ところで、私たち日本人は、実際にどのような方法でストレスを解消し、気分転換しているのでしょうか。
1 日本人の気分転換法
20歳以上の日本人約3万6000人について、「おもしろくなかったり、イライラすることがあったとき、どんなふうに気分転換しているか」を質間した調査があります(昭和54年保健衛生基礎調査)。
・男はお酒、女はおしゃべり
気分転換の方法は男と女とではかなり違います(図1)。男性では「酒を飲む」という人がいちばん多く(約22%)、女性では「人としゃべったり、話をきいてもらう」という人が圧倒的に多い(約35%)ようです。
また、男女とも「じっと耐える」という人、「寝てしまう(ふて寝)」人もかなりみられます。そして、女性では「食べること(やけ食い)」・「買物(衝動買い)」で気をまぎらわす人が、男に比べて多いのが目立ちます。
・年齢により気分転換のしかたも変わる
気分転換の方法は、年齢によって大いに異なっています(図2)。
男性では、30代前半までの若いうちは「趣味・スポーツにうちこむ」というのが最も多く、30代後半から60代前半にかけて「酒を飲む」が最も多くなりますが、年をとるとともに、趣味・スポーツ、飲酒でストレス解消をはかる人は減ってきます。そして60代後半以降になると、なにかおもしろくないことがあったときには「じっと耐える」「寝てしまう」という人が圧倒的に多くなります。
一方、女性の場合は、「人としゃべったり、話をきいてもらう」という人が、若いときからだんぜん多く、おしゃべりは、女性の気分転換法として全年齢を通じて最上位を占めています。ところが、年をとるにつれて、男性と同様、やはり「じっと耐える」「寝てしまう」という人が増えていきます。「趣味・スポーツにうちこむ」人は、若いうちはある程度ありますが、男性に比べ全体的に低い傾向がみられます。
以上のように、日本人は、若いうちは趣味やスポーツ、男は中年になると酒を飲んで、女はおしゃべりをすることで、ストレスを解消しているわけです。一部の限られた人は、年をとっても趣味・スポーツにうちこんでいると思われますが、日本人全体としてみた場合、貧しいストレス解消法をしているというのが現状のようです。
2 飲酒・おしやべりとストレス緩和について
仕事がひけてから同僚とかるく一杯やりながら上司に対する不満や悪口をいったり、また、気の合った女性同士が井戸端会議よろしくいろいろおしゃべりしたりするのも、ストレスの解消にけっこう役立っていると思われます。
適度の飲酒(アルコール)は、疲れをとり、くつろがせ、心身のストレスを緩和してくれます。また、家族や友人など、自分をよく理解してくれる人に悩みを打ち明けるだけで、こころの負担が軽くなることも知られています。
反対に、誰にも相談できず、ひとりで悩みながら飲む酒は、つい度をすごし、かえって心身のストレスを高めてしまいます。長年月、多量のアルコール類を飲みつづけていると、いずれは酒なしではいられないアルコール依存というやっかいな状態におちいったり、肝臓障害や膵炎をおこすなど、さまざまな心身の障害をまねくことになります。
3 スポーツ・趣味とストレス緩和について
趣味や遊びには、音楽、短歌・俳句、絵画、カラオケ、囲碁・将棋などいろいろなものがあります。自分の性格や好みに合った、やって楽しいものを選べば、よい気分転換になります。
・ストレス解消のためのスポーツはゆとりを持って
軽い運動でひと汗ながすことは、よい気分転換になります。また、スポーツは、適切に行えば、体力を増強し、忍耐力を高めることができます。
ところが、ストレス解消にゴルフがよいといわれると、早く上手になろう、競技に勝とうと、がんばってしまう人がいます。これでは、かえって心身の緊張を高めることにもなりかねません。気分転換のためのスポーツは、できるだけゆとりをもって、楽しみながらするようにしたいものです。
ストレスマネージントのさまざまな方法とその問題点
最近、心身の健康づくり、ストレス・コントロールあるいはストレス管理(ストレスマネージメント)の方法として、さまざまな技法が行われています。
1 自律訓練法、行動療法
医学的な立場から行われるものとして、自律訓練法、行動療法などがあります。
・自律訓練法について
自律訓練法は、自己暗示によって、段階的に心身のリラックスが得られるように組み立てられた訓練法です。心身症や神経症の患者の治療に用いられていますが、最近では、企業やカルチャーセンターなどで健康人を対象にストレス緩和法、健康増進法としても用いられつつあります。
ただし、この訓練をやると危険な人、注意深く行わなければいけない人がいます。訓練を受けるときは、十分な知識と経験をもつ専門医や心理療法士の指導が必要です。
・行動療法(バイオフィードバック法など)について
一群の心理学的治療法から成り立っており、神経症や心身症にみられる問題行動(不適応行動)の治療に用いられています。行動療法全体を行うには、十分な訓練を積んだ専門家が必要です。
行動療法の部分的技法である、筋弛緩法(リラクゼーション)、バイオフィードバック、カウンセリング(対人関係の技術の訓練)などが、民間でストレスマネージメントとして行われています。バイオフィードバック法は、電子機器を用いて、自分の脳波や筋電図、皮膚温をみながら、それを自己制御することを覚え、心身のリラックスを得る方法です。
しかし、これらの方法はいずれもまだ新しい治療法であり、技法も確立しているわけではありません。一般のストレスマネージメントとして用いるには、技術、副作用、効果についての専門的研究がさらに必要です。
2 民間で行われているストレスマネージメント
・ヨーガ、運動療法、その他
1 ヨーガ
ヨーガ(yoga)はサンスクリット語で「結合」あるいは「束縛」を意味します。これが宗教的目標としての「絶対者との結合」を、またその目標を達成する手段としての「自己の束縛」を意味するようになりました。
現在では、宗教的行法を離れた一種の健康法としても広く用いられています。わが国では、行法のひとつハタ・ヨーガが普及しており、ヨーガ教室やヨーガ道場で指導されています。
正しい姿勢、呼吸法、瞑想の三味一体で、からだとこころのコントロールをめざします。ストレス緩和法として有効であるとされますが、医学的な面での研究はまだ十分とはいえません。
2 運動療法
運動療法は、誰でも、どこでも、簡単にできるなどの利点があり、医学的にも不安状態を低減させる効果のあることが知られています。一般には、職場を通じて、健康づくりという名目でエアロビクス(ウォーキング、水泳、ジョギング)やサーキットトレーニングなどが普及しつつあります。また、個人を対象として太極拳やジャズダンスなども、ストレス解消法のひとつとして指導が行われています。運動療法は、あくまで補助的な手法であることを認識したうえで、日常の個人のストレス対処法として有力な手段のひとつといえます。
3 そのほか
そのほか、ストレスマネージメントをうたう一般民間療法には多くのものがみられます。しかし、なかには、特定の効用だけを強調して、健康人、半健康、半病人から明らかな病人までも一律に扱って、かえって病状を悪化させる場合があることも指摘されています。
・ストレス対策商品
最近、「ストレスを取り除く」あるいは心を静めるとうたった商品が売り出されています。特殊な装置の中に入ったり、装具を身につけたり、寝具として利用するものなどいろいろです。いずれも高価なものが多く、効果は経験的なものがほとんどのようです。
また、企業を対象に、ストレスマネージメントを商売として行う団体が増えています。ストレスについての講義を行って、自分のストレス度をわからせたり、一般的なリラックス法を実習させたりするものです。現在、それぞれ独自の方法を用いて行っていますが、その有効性についての客観的な評価、およびストレス管理の方法論が確立されることが必要でしょう。
以上のように、近年、さまざまなストレス対処技法が開発され、検討されつつあります。これらのストレス対処法を、適切な指導者の指示のもとに利用することが必要になる場合もあるでしょう。
日常の個人のストレス対処法としては、なによりもまず、睡眠不足、空腹、疲労などストレスへの抵抗力を下げる要因を取り除くことが大切です。そして、ストレスへの抵抗力を増すために栄養管理や体力づくりに気を配るといった面からの対応も重要です。さらに、家庭の団らんの場で、家族の暖かいこころの触れあいと支えがあれば、外でかなりのストレスをうけたとしても、そのストレスはおのずと解消されることでしょう。
http://www.net-dream.jp
「現代はストレスの時代である」といわれます。機械化やコンピュータの普及に伴うめまぐるしい技術の変化、都市化による人口過密、核家族化、情報の洪水、価値感の多様化、あるいは受験戦争、高齢化社会の問題など、現代社会に生きる人間は、こうした社会情勢の変化への対応を強いられ、子どもから老人にいたるまで、かつては想像もできなかったさまざまなストレスにさらされています。
こうしたなかで、各人が心身の健康を維持していくためには、外部から絶えず加わる刺激(ストレス)にいかに的確に対処するか、すなわち心身のリラックスをいかに上手にはかるかが重要な課題となってきます。
ストレスとはなにか
1 ストレスの意味
ストレスとは、英語で“圧迫”あるいは“緊張”といった意味のことばです。
医学的な意味で使われる「ストレス」とは、「外部から加えられた刺激に適応するために、生体の中で生じる一定の反応の状態(ひずみ)」のことをいいます。私たちのからだは、どんな刺激に対してもあるきまった反応を示し、もとどおりになろうとする性質をもっています。このように、各種の刺激が生体に作用した場合におこる一定のひずみをストレスと呼んでいます。
2 ストレスの種類
ストレスには、身体的なものと精神的(心理的)なものとがあります。
・身体的ストレスにはどんなものがあるか
人間に加わる不快な身体的ストレス刺激としては、騒音、暑さ、寒さ、排気ガスなど(物理・化学的なストレス)、飢え、感染、過労など(生理的なストレス)があります。最近では、冷暖房がゆきとどき、そのことが、冬は寒さに対する抵抗力をおとしてかぜなどにかかりやすくし、夏は冷房病をふやすという、皮肉な結果も生んでいます。
・精神的(心理的)ストレスにはどんなものがあるか
精神的(心理的)ストレスとは、不安、緊張、不満、怒りなど、不快な感情をおこさせるものです。日常生活の変化は、よきにつけあしきにつけ、精神的なストレスとなるので、複雑化した現代社会では、さまざまな場面で精神的ストレスにさらされているといえます。
これらのストレスが強力で、過剰に加わりつづけると、心身ともに過緊張の状態となって、からだとこころにさまざまな異常な症状があらわれてきます。
イライラ、無気力感、物忘れ、だるい、疲れやすい、食欲がない、眠れない、頭重・頭痛、肩こり、胃の不快感などです。
3 現代社会におけるさまざまなストレス
職場、家庭、学校など社会生活を営むうえで生じるさまざまなストレスがあります。
・職場におけるストレス
職場では、いわゆるテクノストレスの問題、残業・休日出勤、人間関係、昇進・転勤、単身赴任、定年などの問題が、緊張感や疲労、あるいは精神的苦痛などをおこしてきます。
・家庭におけるさまざまなス卜レス
人生を縦の流れとしてみると、受験、思春期、就職、結婚、成年期、老年期などは、より多くのストレスにさらされやすい時期です。
たとえば核家族化した現代の若い親たちにとって、初めての妊娠・出産から育児にかけてのさまざまな出来事は、とまどいや不安をおぼえることが多く、非常に大きなストレスとなります。
中年期になると、子供の受験、価値感やものの見方の違いによる親子の対立、年老いた親の扶養の問題、自分たちの老後への準備などが大きなストレスとなります。また、単身赴任による父親の不在は、子どもの登校拒否や食行動異常などをまねくという報告もあります。
・“老化”もストレス
老年期を迎えると、病気がおこりやすくなります。一方、病人の介護は家族にとって大変な負担であり、それにともなって大きなストレスにもなっています。また、嫁・姑関係、定年後の単調な生活、配偶者との死別、そしてなによりも老人にとって最大のストレスは老化という問題です。
ストレスをどのように受けとめたらよいか
1 人生を前向きの姿勢で生きる
日常生活をおくるうえで、ストレスは避けて通れないものです。そして、あることがらがストレスになるかどうかは、その人の仕事や人生に対する取り組み方や姿勢が大きく関係するといわれています。いやいやながらするのでは、不快なストレスが一層強まります。
ストレスをただ避けるのではなく、前向きの姿勢で建設的に対処していく心構えが大切です。
2 ストレスは人生のスパイス
「ストレスは人生のスパイス(香辛科)である」ということばがあります。スパイスが多すぎても、また少なすぎても、人生という料理の味がそこなわれるのです。
適度のストレスは、人生に刺激と彩りを与えてくれます。心身にほどよい緊張感と充実感をもたらし、人間を意欲的にし、よりたくましく生きる原動力ともなり得るのです。
ささいなことはストレスとして感じないように努力することも必要です。そして、ある問題で強いストレスにさらされたときは、積極的に気分転換をはかり、ストレスをためないよう努力することも大切です。
ストレス解消と気分転換法
昔からストレス解消法として、スポーツや趣味、適度の飲酒、親しい仲間とのおしゃべりなど、いろいろな方法があげられています。
ところで、私たち日本人は、実際にどのような方法でストレスを解消し、気分転換しているのでしょうか。
1 日本人の気分転換法
20歳以上の日本人約3万6000人について、「おもしろくなかったり、イライラすることがあったとき、どんなふうに気分転換しているか」を質間した調査があります(昭和54年保健衛生基礎調査)。
・男はお酒、女はおしゃべり
気分転換の方法は男と女とではかなり違います(図1)。男性では「酒を飲む」という人がいちばん多く(約22%)、女性では「人としゃべったり、話をきいてもらう」という人が圧倒的に多い(約35%)ようです。
また、男女とも「じっと耐える」という人、「寝てしまう(ふて寝)」人もかなりみられます。そして、女性では「食べること(やけ食い)」・「買物(衝動買い)」で気をまぎらわす人が、男に比べて多いのが目立ちます。
・年齢により気分転換のしかたも変わる
気分転換の方法は、年齢によって大いに異なっています(図2)。
男性では、30代前半までの若いうちは「趣味・スポーツにうちこむ」というのが最も多く、30代後半から60代前半にかけて「酒を飲む」が最も多くなりますが、年をとるとともに、趣味・スポーツ、飲酒でストレス解消をはかる人は減ってきます。そして60代後半以降になると、なにかおもしろくないことがあったときには「じっと耐える」「寝てしまう」という人が圧倒的に多くなります。
一方、女性の場合は、「人としゃべったり、話をきいてもらう」という人が、若いときからだんぜん多く、おしゃべりは、女性の気分転換法として全年齢を通じて最上位を占めています。ところが、年をとるにつれて、男性と同様、やはり「じっと耐える」「寝てしまう」という人が増えていきます。「趣味・スポーツにうちこむ」人は、若いうちはある程度ありますが、男性に比べ全体的に低い傾向がみられます。
以上のように、日本人は、若いうちは趣味やスポーツ、男は中年になると酒を飲んで、女はおしゃべりをすることで、ストレスを解消しているわけです。一部の限られた人は、年をとっても趣味・スポーツにうちこんでいると思われますが、日本人全体としてみた場合、貧しいストレス解消法をしているというのが現状のようです。
2 飲酒・おしやべりとストレス緩和について
仕事がひけてから同僚とかるく一杯やりながら上司に対する不満や悪口をいったり、また、気の合った女性同士が井戸端会議よろしくいろいろおしゃべりしたりするのも、ストレスの解消にけっこう役立っていると思われます。
適度の飲酒(アルコール)は、疲れをとり、くつろがせ、心身のストレスを緩和してくれます。また、家族や友人など、自分をよく理解してくれる人に悩みを打ち明けるだけで、こころの負担が軽くなることも知られています。
反対に、誰にも相談できず、ひとりで悩みながら飲む酒は、つい度をすごし、かえって心身のストレスを高めてしまいます。長年月、多量のアルコール類を飲みつづけていると、いずれは酒なしではいられないアルコール依存というやっかいな状態におちいったり、肝臓障害や膵炎をおこすなど、さまざまな心身の障害をまねくことになります。
3 スポーツ・趣味とストレス緩和について
趣味や遊びには、音楽、短歌・俳句、絵画、カラオケ、囲碁・将棋などいろいろなものがあります。自分の性格や好みに合った、やって楽しいものを選べば、よい気分転換になります。
・ストレス解消のためのスポーツはゆとりを持って
軽い運動でひと汗ながすことは、よい気分転換になります。また、スポーツは、適切に行えば、体力を増強し、忍耐力を高めることができます。
ところが、ストレス解消にゴルフがよいといわれると、早く上手になろう、競技に勝とうと、がんばってしまう人がいます。これでは、かえって心身の緊張を高めることにもなりかねません。気分転換のためのスポーツは、できるだけゆとりをもって、楽しみながらするようにしたいものです。
ストレスマネージントのさまざまな方法とその問題点
最近、心身の健康づくり、ストレス・コントロールあるいはストレス管理(ストレスマネージメント)の方法として、さまざまな技法が行われています。
1 自律訓練法、行動療法
医学的な立場から行われるものとして、自律訓練法、行動療法などがあります。
・自律訓練法について
自律訓練法は、自己暗示によって、段階的に心身のリラックスが得られるように組み立てられた訓練法です。心身症や神経症の患者の治療に用いられていますが、最近では、企業やカルチャーセンターなどで健康人を対象にストレス緩和法、健康増進法としても用いられつつあります。
ただし、この訓練をやると危険な人、注意深く行わなければいけない人がいます。訓練を受けるときは、十分な知識と経験をもつ専門医や心理療法士の指導が必要です。
・行動療法(バイオフィードバック法など)について
一群の心理学的治療法から成り立っており、神経症や心身症にみられる問題行動(不適応行動)の治療に用いられています。行動療法全体を行うには、十分な訓練を積んだ専門家が必要です。
行動療法の部分的技法である、筋弛緩法(リラクゼーション)、バイオフィードバック、カウンセリング(対人関係の技術の訓練)などが、民間でストレスマネージメントとして行われています。バイオフィードバック法は、電子機器を用いて、自分の脳波や筋電図、皮膚温をみながら、それを自己制御することを覚え、心身のリラックスを得る方法です。
しかし、これらの方法はいずれもまだ新しい治療法であり、技法も確立しているわけではありません。一般のストレスマネージメントとして用いるには、技術、副作用、効果についての専門的研究がさらに必要です。
2 民間で行われているストレスマネージメント
・ヨーガ、運動療法、その他
1 ヨーガ
ヨーガ(yoga)はサンスクリット語で「結合」あるいは「束縛」を意味します。これが宗教的目標としての「絶対者との結合」を、またその目標を達成する手段としての「自己の束縛」を意味するようになりました。
現在では、宗教的行法を離れた一種の健康法としても広く用いられています。わが国では、行法のひとつハタ・ヨーガが普及しており、ヨーガ教室やヨーガ道場で指導されています。
正しい姿勢、呼吸法、瞑想の三味一体で、からだとこころのコントロールをめざします。ストレス緩和法として有効であるとされますが、医学的な面での研究はまだ十分とはいえません。
2 運動療法
運動療法は、誰でも、どこでも、簡単にできるなどの利点があり、医学的にも不安状態を低減させる効果のあることが知られています。一般には、職場を通じて、健康づくりという名目でエアロビクス(ウォーキング、水泳、ジョギング)やサーキットトレーニングなどが普及しつつあります。また、個人を対象として太極拳やジャズダンスなども、ストレス解消法のひとつとして指導が行われています。運動療法は、あくまで補助的な手法であることを認識したうえで、日常の個人のストレス対処法として有力な手段のひとつといえます。
3 そのほか
そのほか、ストレスマネージメントをうたう一般民間療法には多くのものがみられます。しかし、なかには、特定の効用だけを強調して、健康人、半健康、半病人から明らかな病人までも一律に扱って、かえって病状を悪化させる場合があることも指摘されています。
・ストレス対策商品
最近、「ストレスを取り除く」あるいは心を静めるとうたった商品が売り出されています。特殊な装置の中に入ったり、装具を身につけたり、寝具として利用するものなどいろいろです。いずれも高価なものが多く、効果は経験的なものがほとんどのようです。
また、企業を対象に、ストレスマネージメントを商売として行う団体が増えています。ストレスについての講義を行って、自分のストレス度をわからせたり、一般的なリラックス法を実習させたりするものです。現在、それぞれ独自の方法を用いて行っていますが、その有効性についての客観的な評価、およびストレス管理の方法論が確立されることが必要でしょう。
以上のように、近年、さまざまなストレス対処技法が開発され、検討されつつあります。これらのストレス対処法を、適切な指導者の指示のもとに利用することが必要になる場合もあるでしょう。
日常の個人のストレス対処法としては、なによりもまず、睡眠不足、空腹、疲労などストレスへの抵抗力を下げる要因を取り除くことが大切です。そして、ストレスへの抵抗力を増すために栄養管理や体力づくりに気を配るといった面からの対応も重要です。さらに、家庭の団らんの場で、家族の暖かいこころの触れあいと支えがあれば、外でかなりのストレスをうけたとしても、そのストレスはおのずと解消されることでしょう。
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2007/10/31(水) 10:33:44 | 一語で検索


