・忘れ去られていた脚気の再登場
ところが、昭和47〜48年ごろ、四国、九州、中国地方を中心にして、青少年層に脚気患者が続発したのです。
現代の若者になぜ“過去の病気”扱いをされていた脚気が発生することになったのか。その原因と予防について、ビタミンB1の発見から脚気の克服にいたった道すじをたどりながら、また、ビタミンB1のからだの中での働きについて最近の知見をもとに考えていきます。
ビタミンB1の発見の歴史
1 米食民族におこる原因不明の奇病
脚気という病気は、米を主食としている民族にずいぶん昔から発生していたようです。中国の古い医書に“脚弱”とか“脚気”という言葉で既に記載されています。
わが国では奈良時代以降に、1日2食しか食べない上流階級に流行したといわれ、平安初期の物語などに“あしのけ”(脚の気。気は病気の意味)についての記述がみられています。
・“江戸煩い”の流行
江戸時代に入り元禄年間になると、江戸の町では手足がしびれ、足がむくみ、よろよろ歩きとなって、最後は心臓病(脚気衝心)をおこして死亡する奇病にかかる町人が続出しました。江戸の風土病ともいわれ、たいへん恐れられたものです。
これは、当時は知る由もありませんでしたが、江戸の町では庶民までが白米食をとることが普通になり、しかも副食が極めて貧弱で、必要な栄養素が十分とれず、ビタミンB1も欠乏したためなのです。
この江戸煩い、すなわち脚気は、白米食の普及とともに、京都、大阪などの都市住民にもひろがり、原因不明のまま、明治時代に入っても患者は続出しました。
ビタミンB1の発見
軍隊などで集団発生すると、士気にも影響します。富国強兵策をすすめた明治政府にとって、脚気の原因の解明は大きな課題となりました。当時、その原因については、伝染病説あるいは中毒説が有力でした。
・食事の改善で脚気の予防に成功
この病気は食事に原因があるのではないかとはじめて栄養面に目をつけたのは海軍軍医の高木兼寛でした。彼は、明治l5年(1882年)、外洋へ訓練航海にでた軍艦の乗組員の食事を、和食から肉や野菜たっぷりの洋食にかえたところ、脚気患者の発生が非常に少なくなることを見つけました。
こうして、脚気は食事内容を改善すると予防できることが認められました。
・“白米病”患者に“米ぬか”を与えて治療に成功
脚気は日本だけでなく、同じ頃オランダ領インドネシアでも猛威をふるい、毎年何千人もの死者をだしていました。オランダのエイクマンは、この病気の原因についての研究を続けているうちに、ニワトリを白米の餌で育てると脚気に似た“白米病”にかかること、そして米ぬかを与えると症状がなくなることをつきとめ、1897年(明治30年)に発表しました。
しかし、米ぬかの中のどんな成分が有効なのかはわかっていませんでした。
米ぬかに含まれるこの未知の物質は、明治43年(1910年)に鈴木梅太郎によって多くの物質を含む結晶として取り出されました。ビタミンB1が純枠な形の物質として取り出されたのは、1926年(昭和元年)になってのことです。
ちなみに、ビタミンのなかでいちばん最初に発見されたのは、このビタミンB1なのです。その後、ビタミンB1の体内での働きもしだいに明らかにされ、栄養学的な知識の向上もあって、人類がその歴史から脚気という病気を克服する道がひらかれたのです。
からだの中でビタミンB1はどのような働きをしているか
ビタミンとは、食物の成分のうち、糖質(炭水化物)、脂肪、たんぱく質以外の有機化合物で、人間の健康保持のために欠かせないものです。必要量はごくわずかですが、人間の体内では合成できないので、食物として摂取することが必要です。
それでは、摂取されたビタミンB1が、どのように吸収され、体内でどのように利用されていくかを述べましょう。
1 ビタミンB1吸収のしくみ
食物として摂取されたビタミンB1は、主として小腸の腸管壁から摂取量に応じて吸収されますが、ぜんぶ吸収されるのでなく、吸収率は約60%とされています。また、からだの中には巧妙なしくみがあり、食物に含まれるビタミンB1量が少ない場合には、積極的に腸管壁から体内に取り込むしくみがあります。
吸収されたB1は、肝臓をへて体内の各組織に送られ、利用されたあと、尿中に排泄されます。
ビタミンB1を多く含む組織は、脳、肝臓、腎臓、心臓などで、多量に摂取した場合は肝臓に蓄えられます。
・吸収に影響を与えるもの
ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、コイ、マスなどの淡水魚、ワラビ、ゼンマイなどには、ビタミンB1を分解する酵素チアミナーゼ(アノイリナーゼともいう)が含まれています。これらの食品を生のままで食べると、せっかく摂ったビタミンB1が体内で壊される可能性があります。ただ、このチアミナーゼは熱に弱いので、煮たり焼いたりして食べれば心配いりません。
また、人間でも、腸内細菌でチアミナーゼをつくる菌が生息している場合があり、実際に脚気をおこした患者のなかにわずかながらみられることがあります。
2 糖質の代謝とビタミンB1の働き
体内に入ったビタミンB1は、糖質の代謝を手助けする大切な役目をします。
・ビタミンB1の手助けがないとブドウ糖の分解はすすまない
食物として摂取された糖質(炭水化物)はブドウ糖にまで分解されて腸管から吸収されます。吸収されたブドウ糖は、細胞の中で、さらに次つぎとさまざまな物質につくりかえられ(こうした物質の流れを代謝といいます)、からだの維持や運動に必要なエネルギーをつくるのに使われます。
こうした代謝が円滑にすすむためには酵素が必要ですが、この酵素にビタミンB1が結合して手助けをしてやらないと正常な働きができないのです。そこで、ビタミンB1は酵素を手助けする意味で「補酵素」とも呼ばれます。
・ビタミンB1不足だとエネルギーがつくれなくなる
ですから、ビタミンB1が不足すれば、ブドウ糖の分解が、途中の段階で止まってしまい、エネルギーをつくりだせなくなります。
このような結果、ブドウ糖をエネルギー源としている組織に障害がおこってくると考えられています。たとえば心臓、腎臓、肝臓などの組織で細胞がエネルギー不足となり、だるさとか、むくみ、あるいは心臓肥大などの脚気の症状がおこってくるとされています。
3 ビタミンB1と神経のかかわり
最近では、ビタミンB1にはいま述べた補酵素としての働きのほかに、神経系に直接作用する働きもあるのではないかということも考えられています。
まだ仮説の段階ですが、神経の細胞膜にはビタミンB1に対する特定の受容体(受け皿)が存在し、ビタミンB1が神経膜に結合したり、遊離したりすることで、神経の興奮や神経刺激の伝達が行われるのではないかという考え方です。
神経系に対するビタミンB1の働きについては、いまなお不明な点が多く、今後の研究が必要です。
ビタミンB1はどれくらいとればよいか
1 ビタミンB1の1日所要量
脚気などの欠乏症を防ぎ、また健康の保持・増進のために、1日にどれくらいのビタミンB1をとればよいのでしょうか。
わが国のビタミンB1所要量は、エネルギー摂取量1000kcal当たり0.4mgと算定されています。
・成人男子で1日1mg、成人女子では0.8mgを目安に
おおざっぱな目安を示すと、標準的な成人男子では1日に2500kcalの食事なのでビタミンB1を1mg、女子では1日2000kcal食べるとして0.8mg程度のビタミンB1をとる必要があります。
年齢、体重、仕事の量などによって摂取するエネルギー量(食事量)は異なり、ビタミンB1所要量もちがってきます。個人個人の生活条件に合わせて、適切な量のビタミンB1をとることが大切です。
2 ビタミンB1の需要を増す要因
・激しいスポーツや肉体労働
一般に、激しい運動や労働をすると、エネルギーが多く消費され、それに伴って食事の摂取量もふえてきます。1日に3500kcalの食事をする場合には、ビタミンB1を1.4mg程度とらなければなりません。
・糖質の多い食品のとり過ぎ
ビタミンB1は糖質の代謝に欠かせないビタミンです。糖質の多いインスタント食品、清涼飲料、甘いお菓子などをとり過ぎると、ビタミンB1の需要が高まります。それだけでなく、このような食生活では食事中に含まれるビタミンB1量も不足がちなのがふつうです。所要量を下回らないよう注意してください。
ビタミンB1をどのくらいとっているか
国民栄養調査によると、日本人のビタミンB1摂取量は、全国平均1人1日当たり1.4mg前後で、所要量を上回っています。ただし、これには個人差があって、所要量をかなり上回っている人もあれば、とり方がまだまだ少なすぎる人もいるのです。
1 摂取食品数からみたビタミンB1の摂取状況
ビタミンB1は、心がけなければとりにくいビタミンです。
・摂取食品数が、少ないほどビタミンB1の摂取量も少ない
昭和61年度の国民栄養調査から、摂取食品数とたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの摂取量との関係を調べてみると、1日に摂取する食品数が多くなるほど各栄養素の摂取量が多くなっています。
ビタミンB1についても同様ですが、これを逆にいうと、1日に摂取する食品数が少ない人ほどビタミンB1を十分に摂取しにくい、ということです。
・調理による損失も考えて
ビタミンB1は水溶性ビタミンなので、食品を煮たり、焼いたりすると20〜30%が失われるといわれています。この点からも、ビタミンB1を含む食品の数をできるだけ多くすることが大切といえます。
2 偏食とビタミンB1欠乏
・最近の若者に脚気が発生した原因は食生活に対する無関心と偏食
はじめに述べたように、昭和47年頃から、西日本の青少年を中心に脚気患者が発生したことがありました。
これらの青少年がビタミンB1欠乏をおこした原因は、発育期でビタミンB1の必要量が多いにもかかわらず、食生活に対する無関心から、偏食となり、ビタミンB1の摂取量が不足したためと考えられます。実際に調査の結果をみると、コーラ、ジユースなどの清涼飲料や、インスタント食品(ラーメン)などを好み、肉類、魚類、牛乳などを好まない者に脚気患者が多発していました。
・潜在性ビタミンB1欠乏症について
現在、わが国では、ビタミンB1の典型的な欠乏症状(脚気)を呈する人はほとんどみられません。しかし、欠乏状態まではいかないけれども血液中のビタミンB1濃度を調べた結果、低めの人がかなりいるということも指摘されています。
このような人では、栄養素のバランスのわるい食生活を長く続けたりすれば、本当のビタミンB1欠乏症をおこす可能性もあります。
ビタミンB1が不足するとどんな症状がおこってくるか
1 不定愁訴、脚気様愁訴
ビタミンB1の不足状態がつづくと、はじめはだるさだけですが、そのうち、食欲不振、肩こり、頭重、めまい、下肢のしびれ感、息切れ、動悸などさまざまな症状を訴えてきます。これを「脚気様愁訴」といいます。
・脚気と似た症状をおこすもの
これと似たような症状を示すものに、不定愁訴症候群、あるいは自律神経失調症があります。
また、いわゆる“夏バテ”もそのひとつです。脚気は夏に発生することが多いので、だるさや食欲不振が夏におこり、だんだんひどくなっていくときは、あたまから夏バテときめつけずに、脚気ということも考えて医師の診断をうけることが大切です。
2 神経障害
・末梢神経障害
ビタミンB1欠之状態になると、末梢神経がおかされてきます(脚気による多発神経炎)。
下肢にびりびり感や、灼熱感がおこり、知覚がにぶくなります。やがて運動神経の麻卑がきて、下肢の力がぬけたようになり、つまずきやすくなります。
・ビタミンB1欠乏と中枢神経障害
アルコール依存症患者がかかるといわれている病気のひとつに、ウエルニッケ脳症があります。この病気では、主として中枢神経がおかされ、眼球運動障害、意識障害、よろめき歩行などの症状がおこります。
ビタミンB1剤を大量に投与すると効果がみられることから、ビタミンB1欠乏を含む栄養障害が原因ではないかと考えられていますが、詳しいことはまだわかっていません。
おわりに
・ビタミンB1の上手なとり方
からだに必要なビタミンB1は、バランスのよい食事をしていれば十分とることができます。しかし、いったん偏食におちいると、ビタミンB1を摂取できる食品は意外と限られてきます。
白米に含まれるビタミンB1は、微量(めし100g中に0.03mg)です。したがって、白米を主食にして副食物が貧弱で粗末であれば、必要な栄養素を十分にとれず、脚気にかかりやすくなります。
先に述べたように、1日に摂取する食品の数が多いほど、結果的にはたんぱく質、ビタミンB1およびその他のビタミン、ミネラルの摂取量が高くなります。
偏食せず、いろいろな食品をとりまぜてなるべく皿数を多くすること、これがビタミンB1を上手に摂取し、健康を保持・増進するための最もよい方法といえましょう。
ダイエット・美容・健康の情報
プロテインのことならココ
ガン末期からの生還他ビデオ特集
ところが、昭和47〜48年ごろ、四国、九州、中国地方を中心にして、青少年層に脚気患者が続発したのです。
現代の若者になぜ“過去の病気”扱いをされていた脚気が発生することになったのか。その原因と予防について、ビタミンB1の発見から脚気の克服にいたった道すじをたどりながら、また、ビタミンB1のからだの中での働きについて最近の知見をもとに考えていきます。
ビタミンB1の発見の歴史
1 米食民族におこる原因不明の奇病
脚気という病気は、米を主食としている民族にずいぶん昔から発生していたようです。中国の古い医書に“脚弱”とか“脚気”という言葉で既に記載されています。
わが国では奈良時代以降に、1日2食しか食べない上流階級に流行したといわれ、平安初期の物語などに“あしのけ”(脚の気。気は病気の意味)についての記述がみられています。
・“江戸煩い”の流行
江戸時代に入り元禄年間になると、江戸の町では手足がしびれ、足がむくみ、よろよろ歩きとなって、最後は心臓病(脚気衝心)をおこして死亡する奇病にかかる町人が続出しました。江戸の風土病ともいわれ、たいへん恐れられたものです。
これは、当時は知る由もありませんでしたが、江戸の町では庶民までが白米食をとることが普通になり、しかも副食が極めて貧弱で、必要な栄養素が十分とれず、ビタミンB1も欠乏したためなのです。
この江戸煩い、すなわち脚気は、白米食の普及とともに、京都、大阪などの都市住民にもひろがり、原因不明のまま、明治時代に入っても患者は続出しました。
ビタミンB1の発見
軍隊などで集団発生すると、士気にも影響します。富国強兵策をすすめた明治政府にとって、脚気の原因の解明は大きな課題となりました。当時、その原因については、伝染病説あるいは中毒説が有力でした。
・食事の改善で脚気の予防に成功
この病気は食事に原因があるのではないかとはじめて栄養面に目をつけたのは海軍軍医の高木兼寛でした。彼は、明治l5年(1882年)、外洋へ訓練航海にでた軍艦の乗組員の食事を、和食から肉や野菜たっぷりの洋食にかえたところ、脚気患者の発生が非常に少なくなることを見つけました。
こうして、脚気は食事内容を改善すると予防できることが認められました。
・“白米病”患者に“米ぬか”を与えて治療に成功
脚気は日本だけでなく、同じ頃オランダ領インドネシアでも猛威をふるい、毎年何千人もの死者をだしていました。オランダのエイクマンは、この病気の原因についての研究を続けているうちに、ニワトリを白米の餌で育てると脚気に似た“白米病”にかかること、そして米ぬかを与えると症状がなくなることをつきとめ、1897年(明治30年)に発表しました。
しかし、米ぬかの中のどんな成分が有効なのかはわかっていませんでした。
米ぬかに含まれるこの未知の物質は、明治43年(1910年)に鈴木梅太郎によって多くの物質を含む結晶として取り出されました。ビタミンB1が純枠な形の物質として取り出されたのは、1926年(昭和元年)になってのことです。
ちなみに、ビタミンのなかでいちばん最初に発見されたのは、このビタミンB1なのです。その後、ビタミンB1の体内での働きもしだいに明らかにされ、栄養学的な知識の向上もあって、人類がその歴史から脚気という病気を克服する道がひらかれたのです。
からだの中でビタミンB1はどのような働きをしているか
ビタミンとは、食物の成分のうち、糖質(炭水化物)、脂肪、たんぱく質以外の有機化合物で、人間の健康保持のために欠かせないものです。必要量はごくわずかですが、人間の体内では合成できないので、食物として摂取することが必要です。
それでは、摂取されたビタミンB1が、どのように吸収され、体内でどのように利用されていくかを述べましょう。
1 ビタミンB1吸収のしくみ
食物として摂取されたビタミンB1は、主として小腸の腸管壁から摂取量に応じて吸収されますが、ぜんぶ吸収されるのでなく、吸収率は約60%とされています。また、からだの中には巧妙なしくみがあり、食物に含まれるビタミンB1量が少ない場合には、積極的に腸管壁から体内に取り込むしくみがあります。
吸収されたB1は、肝臓をへて体内の各組織に送られ、利用されたあと、尿中に排泄されます。
ビタミンB1を多く含む組織は、脳、肝臓、腎臓、心臓などで、多量に摂取した場合は肝臓に蓄えられます。
・吸収に影響を与えるもの
ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、コイ、マスなどの淡水魚、ワラビ、ゼンマイなどには、ビタミンB1を分解する酵素チアミナーゼ(アノイリナーゼともいう)が含まれています。これらの食品を生のままで食べると、せっかく摂ったビタミンB1が体内で壊される可能性があります。ただ、このチアミナーゼは熱に弱いので、煮たり焼いたりして食べれば心配いりません。
また、人間でも、腸内細菌でチアミナーゼをつくる菌が生息している場合があり、実際に脚気をおこした患者のなかにわずかながらみられることがあります。
2 糖質の代謝とビタミンB1の働き
体内に入ったビタミンB1は、糖質の代謝を手助けする大切な役目をします。
・ビタミンB1の手助けがないとブドウ糖の分解はすすまない
食物として摂取された糖質(炭水化物)はブドウ糖にまで分解されて腸管から吸収されます。吸収されたブドウ糖は、細胞の中で、さらに次つぎとさまざまな物質につくりかえられ(こうした物質の流れを代謝といいます)、からだの維持や運動に必要なエネルギーをつくるのに使われます。
こうした代謝が円滑にすすむためには酵素が必要ですが、この酵素にビタミンB1が結合して手助けをしてやらないと正常な働きができないのです。そこで、ビタミンB1は酵素を手助けする意味で「補酵素」とも呼ばれます。
・ビタミンB1不足だとエネルギーがつくれなくなる
ですから、ビタミンB1が不足すれば、ブドウ糖の分解が、途中の段階で止まってしまい、エネルギーをつくりだせなくなります。
このような結果、ブドウ糖をエネルギー源としている組織に障害がおこってくると考えられています。たとえば心臓、腎臓、肝臓などの組織で細胞がエネルギー不足となり、だるさとか、むくみ、あるいは心臓肥大などの脚気の症状がおこってくるとされています。
3 ビタミンB1と神経のかかわり
最近では、ビタミンB1にはいま述べた補酵素としての働きのほかに、神経系に直接作用する働きもあるのではないかということも考えられています。
まだ仮説の段階ですが、神経の細胞膜にはビタミンB1に対する特定の受容体(受け皿)が存在し、ビタミンB1が神経膜に結合したり、遊離したりすることで、神経の興奮や神経刺激の伝達が行われるのではないかという考え方です。
神経系に対するビタミンB1の働きについては、いまなお不明な点が多く、今後の研究が必要です。
ビタミンB1はどれくらいとればよいか
1 ビタミンB1の1日所要量
脚気などの欠乏症を防ぎ、また健康の保持・増進のために、1日にどれくらいのビタミンB1をとればよいのでしょうか。
わが国のビタミンB1所要量は、エネルギー摂取量1000kcal当たり0.4mgと算定されています。
・成人男子で1日1mg、成人女子では0.8mgを目安に
おおざっぱな目安を示すと、標準的な成人男子では1日に2500kcalの食事なのでビタミンB1を1mg、女子では1日2000kcal食べるとして0.8mg程度のビタミンB1をとる必要があります。
年齢、体重、仕事の量などによって摂取するエネルギー量(食事量)は異なり、ビタミンB1所要量もちがってきます。個人個人の生活条件に合わせて、適切な量のビタミンB1をとることが大切です。
2 ビタミンB1の需要を増す要因
・激しいスポーツや肉体労働
一般に、激しい運動や労働をすると、エネルギーが多く消費され、それに伴って食事の摂取量もふえてきます。1日に3500kcalの食事をする場合には、ビタミンB1を1.4mg程度とらなければなりません。
・糖質の多い食品のとり過ぎ
ビタミンB1は糖質の代謝に欠かせないビタミンです。糖質の多いインスタント食品、清涼飲料、甘いお菓子などをとり過ぎると、ビタミンB1の需要が高まります。それだけでなく、このような食生活では食事中に含まれるビタミンB1量も不足がちなのがふつうです。所要量を下回らないよう注意してください。
ビタミンB1をどのくらいとっているか
国民栄養調査によると、日本人のビタミンB1摂取量は、全国平均1人1日当たり1.4mg前後で、所要量を上回っています。ただし、これには個人差があって、所要量をかなり上回っている人もあれば、とり方がまだまだ少なすぎる人もいるのです。
1 摂取食品数からみたビタミンB1の摂取状況
ビタミンB1は、心がけなければとりにくいビタミンです。
・摂取食品数が、少ないほどビタミンB1の摂取量も少ない
昭和61年度の国民栄養調査から、摂取食品数とたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの摂取量との関係を調べてみると、1日に摂取する食品数が多くなるほど各栄養素の摂取量が多くなっています。
ビタミンB1についても同様ですが、これを逆にいうと、1日に摂取する食品数が少ない人ほどビタミンB1を十分に摂取しにくい、ということです。
・調理による損失も考えて
ビタミンB1は水溶性ビタミンなので、食品を煮たり、焼いたりすると20〜30%が失われるといわれています。この点からも、ビタミンB1を含む食品の数をできるだけ多くすることが大切といえます。
2 偏食とビタミンB1欠乏
・最近の若者に脚気が発生した原因は食生活に対する無関心と偏食
はじめに述べたように、昭和47年頃から、西日本の青少年を中心に脚気患者が発生したことがありました。
これらの青少年がビタミンB1欠乏をおこした原因は、発育期でビタミンB1の必要量が多いにもかかわらず、食生活に対する無関心から、偏食となり、ビタミンB1の摂取量が不足したためと考えられます。実際に調査の結果をみると、コーラ、ジユースなどの清涼飲料や、インスタント食品(ラーメン)などを好み、肉類、魚類、牛乳などを好まない者に脚気患者が多発していました。
・潜在性ビタミンB1欠乏症について
現在、わが国では、ビタミンB1の典型的な欠乏症状(脚気)を呈する人はほとんどみられません。しかし、欠乏状態まではいかないけれども血液中のビタミンB1濃度を調べた結果、低めの人がかなりいるということも指摘されています。
このような人では、栄養素のバランスのわるい食生活を長く続けたりすれば、本当のビタミンB1欠乏症をおこす可能性もあります。
ビタミンB1が不足するとどんな症状がおこってくるか
1 不定愁訴、脚気様愁訴
ビタミンB1の不足状態がつづくと、はじめはだるさだけですが、そのうち、食欲不振、肩こり、頭重、めまい、下肢のしびれ感、息切れ、動悸などさまざまな症状を訴えてきます。これを「脚気様愁訴」といいます。
・脚気と似た症状をおこすもの
これと似たような症状を示すものに、不定愁訴症候群、あるいは自律神経失調症があります。
また、いわゆる“夏バテ”もそのひとつです。脚気は夏に発生することが多いので、だるさや食欲不振が夏におこり、だんだんひどくなっていくときは、あたまから夏バテときめつけずに、脚気ということも考えて医師の診断をうけることが大切です。
2 神経障害
・末梢神経障害
ビタミンB1欠之状態になると、末梢神経がおかされてきます(脚気による多発神経炎)。
下肢にびりびり感や、灼熱感がおこり、知覚がにぶくなります。やがて運動神経の麻卑がきて、下肢の力がぬけたようになり、つまずきやすくなります。
・ビタミンB1欠乏と中枢神経障害
アルコール依存症患者がかかるといわれている病気のひとつに、ウエルニッケ脳症があります。この病気では、主として中枢神経がおかされ、眼球運動障害、意識障害、よろめき歩行などの症状がおこります。
ビタミンB1剤を大量に投与すると効果がみられることから、ビタミンB1欠乏を含む栄養障害が原因ではないかと考えられていますが、詳しいことはまだわかっていません。
おわりに
・ビタミンB1の上手なとり方
からだに必要なビタミンB1は、バランスのよい食事をしていれば十分とることができます。しかし、いったん偏食におちいると、ビタミンB1を摂取できる食品は意外と限られてきます。
白米に含まれるビタミンB1は、微量(めし100g中に0.03mg)です。したがって、白米を主食にして副食物が貧弱で粗末であれば、必要な栄養素を十分にとれず、脚気にかかりやすくなります。
先に述べたように、1日に摂取する食品の数が多いほど、結果的にはたんぱく質、ビタミンB1およびその他のビタミン、ミネラルの摂取量が高くなります。
偏食せず、いろいろな食品をとりまぜてなるべく皿数を多くすること、これがビタミンB1を上手に摂取し、健康を保持・増進するための最もよい方法といえましょう。
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ガン末期からの生還他ビデオ特集
▼ β−カロテン
カロテノイドとよばれる色素の中でビタミンA効力を有するカロテノイドは約50種類存在しています。そのカロテノイドの中で最もビタミンA効力の強い物質がβ−カロテンで、β−カロテンは、摂取後主としてビタミンAに転換されるので、プロビタミンAの一種でもあります。その結晶は赤色から赤紫色をしており、安全な着色料としても利用されています。β−カロテンには、生化学的には直線形構造のトランス体と湾曲構造のシス体が存在します。一般に食品等に添加されているβ−カロテンは、全てトランス体の合成β−カロテンであり、ある種の藻類から得られるβ−カロテンにはシス体が約半分程度存在しています。合成β−カロテンと天然物から得られるいわゆる天然β−カロテンでは、その有効性が異なると考えている人もいます。しかし、その生体内における作用の違いの有無についてはまだ良く分かっていないのが現状です。
β−カロテンは、油とともに摂取するとその吸収が高まり、食物繊維やβ−カロテン以外のカロテノイド(例えばリコペンなど)と同時摂取したとき、その吸収が抑制されます。また、β−カロテンの吸収にはかなり個人差があり、同じ量のβ−カロテンを摂取しても、β−カロテンがほとんど吸収されない人、良く吸収される人のいることも知られています。しかし、その原因はよくわかっていません。
β−カロテンには高いビタミンA効力がありますので、β−カロテンを過剰に摂取したことによるビタミンA過剰症の発現が心配されます。しかし、β−カロテンはからだがビタミンAを必要とするときのみ開裂酵素によってビタミンAに転換され、β−カロテンを与えれば与えるほど体内におけるビタミンAへの転換率が低下します。その詳細な機構は明確にはされていませんが、体内のビタミンAの状態に応じて消化管や肝臓で、β−カロテンからビタミンAへの転換が調節されているようです。骨髄性プロトポルフィリン症という光過敏症の患者の治療に1日300mgのβ−カロテンが数年にわたって投与されたケースでは、副作用は認められていません。ちなみに、通常の食事から1日に摂取しているβ−カロテンの量は数mg程度です。
多くの疫学の研究から、β−カロテンを多く含む果物や野菜を摂取している人、ならびに血液中のβ−カロテン濃度が高い人では、種々の組織にがんが起こり難いことが示されています。とりわけ、肺がんになりやすいことが知られている喫煙者では血液中のβ−カロテン濃度が低いという事実も関係して、肺がん予防としてのβ−カロテンの有効性が注目されています。β−カロテンは試験管内実験では抗酸化作用を有することが明確に示されており、そのβ−カロテンの抗酸化作用が、がんなどの疾病予防に関係するのではないかと考えられています。しかし、β−カロテンが生体内でも抗酸化作用を発現し、疾病の発症を予防しているか否かに関しては、動物実験の段階においても未だ明確にはされていません。最近発表されたβ−カロテンの大がかりな介入実験の結果では、一日15−30mgのβ−カロテンを投与してもがん予防効果がなかったことが報告されています。
現在のところ、β−カロテンに関連して明確になっていることは、1)過剰摂取しても副作用が起きにくいビタミンAの供給源であること、2)β−カロテンそのものでなくβ−カロテンを多く含む果物や野菜を摂取することががん予防効果のあることです。
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β−カロテンは、油とともに摂取するとその吸収が高まり、食物繊維やβ−カロテン以外のカロテノイド(例えばリコペンなど)と同時摂取したとき、その吸収が抑制されます。また、β−カロテンの吸収にはかなり個人差があり、同じ量のβ−カロテンを摂取しても、β−カロテンがほとんど吸収されない人、良く吸収される人のいることも知られています。しかし、その原因はよくわかっていません。
β−カロテンには高いビタミンA効力がありますので、β−カロテンを過剰に摂取したことによるビタミンA過剰症の発現が心配されます。しかし、β−カロテンはからだがビタミンAを必要とするときのみ開裂酵素によってビタミンAに転換され、β−カロテンを与えれば与えるほど体内におけるビタミンAへの転換率が低下します。その詳細な機構は明確にはされていませんが、体内のビタミンAの状態に応じて消化管や肝臓で、β−カロテンからビタミンAへの転換が調節されているようです。骨髄性プロトポルフィリン症という光過敏症の患者の治療に1日300mgのβ−カロテンが数年にわたって投与されたケースでは、副作用は認められていません。ちなみに、通常の食事から1日に摂取しているβ−カロテンの量は数mg程度です。
多くの疫学の研究から、β−カロテンを多く含む果物や野菜を摂取している人、ならびに血液中のβ−カロテン濃度が高い人では、種々の組織にがんが起こり難いことが示されています。とりわけ、肺がんになりやすいことが知られている喫煙者では血液中のβ−カロテン濃度が低いという事実も関係して、肺がん予防としてのβ−カロテンの有効性が注目されています。β−カロテンは試験管内実験では抗酸化作用を有することが明確に示されており、そのβ−カロテンの抗酸化作用が、がんなどの疾病予防に関係するのではないかと考えられています。しかし、β−カロテンが生体内でも抗酸化作用を発現し、疾病の発症を予防しているか否かに関しては、動物実験の段階においても未だ明確にはされていません。最近発表されたβ−カロテンの大がかりな介入実験の結果では、一日15−30mgのβ−カロテンを投与してもがん予防効果がなかったことが報告されています。
現在のところ、β−カロテンに関連して明確になっていることは、1)過剰摂取しても副作用が起きにくいビタミンAの供給源であること、2)β−カロテンそのものでなくβ−カロテンを多く含む果物や野菜を摂取することががん予防効果のあることです。
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ガン末期からの生還他ビデオ特集
ビタミンAとカロチン
1 古代エジプト人も知っていたビタミンAの効能
ビタミンAの効能は、古代エジプト時代から、経験的に知られていたようです。パピルスにすでに「雄牛の肝臓は夜盲によい」と記されていたといわれます。ビタミンAが不足すると夜盲になるほか、皮膚の粘膜がおかされて感染症にかかりやすくなることがわかっています。
しかし、近年の安定した食糧事情のもとではビタミンAの極端な欠乏はみられず、栄養素としてのビタミンAに対する関心はうすれていました。ところが最近になって、がんとビタミンAとの関係が注目されています。
2 レチノールとカロチン(プロビタミンA)
・動物性食品にはレチノール、植物性食品にはカロチン
ビタミンAは、ビタミンのなかで最初に発見された脂溶性のビタミンで、動物のからだの中で肝臓にもっとも多く含まれており、そのほかに乳、卵などに含まれています。一方、植物のなかの緑黄色野菜にも、ビタミンAと同じような働き(ビタミンA作用)をする物質が含まれています。
ビタミンAといっても必ずしも1種類の化合物を意味するのではなく、似たような生理作用をもつ物質の総称として用いられます。
動物性食品に含まれるビタミンAはレチノール、植物ではビタミンA作用を示すものはカロチンと呼ばれています。
・カロチンは体内でビタミンAになる
動物性食品から摂取されたビタミンAはそのまま腸管から吸収され体内で効力を発揮します。これに対して、植物性食品から摂取されたカロチンは体内でレチノールに変えられてから効力をあらわします。そこで、カロチンはビタミンAの前駆物質という意味でプロビタミンAとも呼ばれます。
このように、カロチンは腸粘膜でビタミンAに転換されて吸収されるのですが、ビタミンAとして体内に吸収される率は少なくなります。
3 ビタミンAの貯蔵と運搬のしくみ
吸収されたビタミンAの大部分は肝臓にたくわえられます。そして必要に応じて血液により運ばれます。このとき、ビタミンAは、ある特殊なたん白質と結びついて、必要とする器官の細胞へと的確に運びこまれていくことがわかっています。
ビタミンAが体内を運搬され供給されるしくみは高度に統制されています。そのためビタミンAの摂取量や肝臓中の貯蔵量は個人によって大きな差があるにもかかわらず、私たちの血液中のビタミンA濃度はほぼ一定の値に保たれています。
ビタミンAの働き
1 夜盲とビタミンA
私たちの目の網膜には、うす暗い光のもとで明暗を区別する桿体細胞と呼ばれる細胞があります。この桿体細胞には、視紅(ロドプシン)という、光を感じる色素が含まれており、ビタミンAはこの視紅の構成成分として働いています。そのため、ビタミンAが欠乏すると視紅が不足して、夕方になると目がみえにくくなったり(夜盲)、急に暗い所に入ったとき目がなれるのに時間がかかるようになります(暗順応遅延)。
2 生体膜とビタミンA
ビタミンAには、皮膚や粘膜の上皮組織を正常に保つ作用があると考えられています。
ビタミンAが欠乏すると、上皮組織の粘膜にうるおいをあたえている粘液の分泌がわるくなり、かさかさになってきます。とくに呼吸器系の粘膜(肺や気管)が角質化して、細菌やウイルスにおかされやすくなります。ですからビタミンAが不足すると肺炎や気管支炎になりやすいのです。その理由は、粘膜の表面を保護している粘液の主成分(糖たん白質)の合成にビタミンAがかかわっているためです。
一方、小腸粘膜が角質化すると、栄養素の吸収もわるくなります。
3 人間では確かめられていない働き
動物実験によると、ビタミンA欠乏食を与えた動物は成長の止まることが知られています。その作用のしくみはまだよくわかっていません。
ビタミンA欠乏の動物は、雄は精子をつくりださず、雌では不妊になりますが、ビタミンAがどのようにかかわっているかは、まだよくわかっていません。
大量のアルコールを長期間飲ませた動物は、肝臓と精巣のビタミンAが減少するといわれています。これが人間にそのままあてはまるかどうかは不明です。
・味覚異常とビタミンA
ビタミンA欠乏の動物に味覚障害のおこることが知られています。人間でも、急性肝炎など肝臓に障害をおこした患者は、血液中のビタミンA濃度が低下し、食欲も減退しますが、病気の回復とともに食欲がもどることから、ビタミンAの欠乏が味覚や嗅覚とかかわりがあるのではないかという報告があります。また、極端にビタミンAが欠乏した動物や人間では、難聴がおこるという報告もあります。いずれも、そのくわしいことはまだよくわかっていません。
・ストレスとビタミンA
戦場などで、強い精神的・肉体的ストレスが加えられると、血液中のビタミンA濃度が低下するという報告があります。
しかし、日常の生活からうける程度のストレスでビタミンA濃度が下がるかどうかは、いまのところ不明です。
ビタミンAとがんの予防との関係は?
1 発がん予防剤としてのビタミンAはまだ動物実験段階
がんの予防に効果があるとして、ビタミンAが注目を集めています。ビタミンA欠乏動物では、上皮性のがんが発生しやすいことが以前から知られていました。
しかし、ビタミンAは脂溶性ビタミンなので、長期間投与すると体内の組織に蓄積され、中毒症状をおこしてきます。そのため、毒性の少ないビタミンAを用いて、がんを抑える作用についての研究が進められています。
2 牛乳や緑黄色野菜を毎日とる人はがんにかかりにくいか?
ビタミンA含有量の低い食品を好んで食べる人は肺がんにかかる率が高いという報告や、緑黄色野菜を毎日食べる人はそうでない人に比べて肺がんや胃がんにかかりにくいという報告があります。
また、肺がんをおこしやすいのは、緑黄色野菜の摂取量が少ない人(カロチンの摂取量の低い人)であって、ビタミンAの摂取量とは関係がないという報告もあります。
しかし、なぜそうなるかについては、くわしいことはまだよくわかっていません。
ビタミンAはどのくらいとればよいか
1 ビタミンAの1日の所要量は
日本人のビタミンAの所要量は、たとえば成人の場合、15歳以上の男子で1日2000IU、女子では男子との体格差を10%とみて、1800IUと定められています。ビタミンAの摂取量は、全国平均でみた場合には高い水準にありますが、地域や世帯あるいは個人別にみた場合には差がみられることなどを考慮して、所要量には50%の安全率を見込んで決めてあります。
したがって、この所要量だけとっていれば、健康な人では欠乏におちいることは、ありません。
現在、日本人のビタミンAの1日の摂取量は、全国平均値でみる限り、1日2000IUをこえており、おおむね良好な状態にあります。ただし、この数字は平均値なので多くとりすぎている人がいる一方で、所要量を下回っている人もいると思われます。
2 ビタミンAを過剰にとるとどうなるか
・ビタミンAを極端に大量にとると中毒をおこす
ビタミンAは、脂溶性ビタミンなので、大量に摂取した場合、水溶性のビタミンBやCのようにすみやかに尿中に排泄されることはありません。大量のビタミンAは体内(とくに肝臓)に蓄積され、過剰症(中毒)をおこしてきます。
かつて、北極探険家が北極熊の肝臓を大量に食べたところ、2〜4時間後に眠くなり、からだがだるく、いらいらし、やがて頭痛と嘔吐に悩まされ、24時間たったころ口のまわりから皮膚がむけてきたそうです。一般に、ビタミンAの過剰症は、哺乳類の肝臓を大量に食べすぎたり、肝油をのみすぎてもおこります。
また、がんを予防するためなどといってビタミン剤を必要量以上にのんだりすると、大量に摂取してしまう危険があります。一般には、1日に2万5000IU以上とるのは避けるべきだといわれています。
・カロチンのとりすぎは柑皮症をおこすことがある
カロチンをとろうと思って、みかんやカボチャを食べすぎたとき、まれに柑皮症(皮膚が黄色くなる)がおこることがあります。しかし、食べるのをやめれば、すぐに治りますし、皮膚の色が変わること以外の実害はありません。
ビタミンAの上手なとり方
1 ビタミンAを多く含む食品
ビタミンAは私たちの肝臓にたくわえられるわけですから、動物性食品でも肝臓に多く含まれています。
各食品に含まれるビタミンA量は、表に示したとおりです。1日に、牛か豚か鶏のレバーをほんのひと切れ(5g程度)食べるだけで、所要量をみたせます。
緑黄色野莱にはカロチン(プロビタミンA)が多く含まれますが、なかにはカロチン含有量の少ないもの(たとえばピーマン)もあります。
うなぎ、あなご、養殖あゆなどの魚もビタミンA含有量の多い食品です。
そのほか、ビタミンAを多く含むのは、卵黄、バター、調整粉乳(育児用)などです。
・動物性食品と植物性食品から半分ずつとる
ビタミンAは、成人の場合、レチノール(動物性食品)とカロチン(植物性食品)から半分ずつとるのがよいとされています。わが国の場合は、緑黄色野菜、その他の野菜・果実類から50〜53%をとっており、理想的なとり方に近いといえます。
ただ、近年、野菜からのカロチンの摂取量はやや減少傾向にあるので、野菜のビタミンA効力を減らさないよう、食べ方、調理法の工夫が必要でしょう。
また、淡色野菜はカロチン含有量の少ないものが多く、ビタミンA摂取はあまり期待できません。生野菜サラダには、色の濃い野菜を加えるようにしましょう。
一方、肉類からのビタミンA摂取量は増加が著しく、肉類そのものの摂取量は横ばい状態にあるので、その原因は飼料に加えたビタミンAが肉類に蓄積されているためと考えられます。
2 ビタミンAの吸収率,効力は調理法で左右される
・野菜のカロチンは油妙めにすると吸収率が高まる
野菜に含まれるカロチンは、煮たり、油妙め、あるいはすりおろしたりすると、吸収率もビタミンA効力もずっと高くなります。たとえば、にんじんの場合、生でそのまま食べるとカロチンの吸収率は8%程度にすぎませんが、おろしてゆでると46〜48%に急上昇します。そして、油で妙めたり、揚げたりした場合は、50〜70%も吸収されます。
ビタミンCのように熱を加えると破壊される栄養素もありますが、カロチンに関しては、煮る、妙めるなどの調理を加えたほうが吸収率は高まるのです。
・野菜はたん白質の豊富な肉や魚と食べるとよい
野菜類に含まれるカロチンは脂溶性なので、油を使った料理、あるいはドレッシング、マヨネーズなどといっしょに食べると吸収率を上げることができ、たん白質とともに食べればいっそう効果的です。
ビタミンAを含む動物性食品の場合は、必ずたん白質、脂質と共存しているので、ビタミンAの吸収については問題ありません。
このように考えると、日本人に好まれるすき焼き、天ぷら、なべ料理、八宝菜などは、ビタミンAおよびカロチンの吸収という点からは、合理的な食べ方といえます。
ビダミンAはふつうの食事でとりましょう
近年の食生活の変化、あるいは母親の好み偏りなどの原因により、偏食の傾向をもつ子どもがふえているといわれます。成長期の子どもは、ビタミンAをはじめ各種のビタミンや、たん白質その他の栄養素をバランスよくとることが大切です。栄養が偏らないよう、偏食の子は調理の工夫などでなおしてやることが望まれます。
成長期の子どもだけでなく、妊婦や授乳婦も、ビタミンAをふつうの食事で上手にとるよう気をつけましょう。
ダイエット・美容・健康の情報
プロテインのことならココ
ガン末期からの生還他ビデオ特集
1 古代エジプト人も知っていたビタミンAの効能
ビタミンAの効能は、古代エジプト時代から、経験的に知られていたようです。パピルスにすでに「雄牛の肝臓は夜盲によい」と記されていたといわれます。ビタミンAが不足すると夜盲になるほか、皮膚の粘膜がおかされて感染症にかかりやすくなることがわかっています。
しかし、近年の安定した食糧事情のもとではビタミンAの極端な欠乏はみられず、栄養素としてのビタミンAに対する関心はうすれていました。ところが最近になって、がんとビタミンAとの関係が注目されています。
2 レチノールとカロチン(プロビタミンA)
・動物性食品にはレチノール、植物性食品にはカロチン
ビタミンAは、ビタミンのなかで最初に発見された脂溶性のビタミンで、動物のからだの中で肝臓にもっとも多く含まれており、そのほかに乳、卵などに含まれています。一方、植物のなかの緑黄色野菜にも、ビタミンAと同じような働き(ビタミンA作用)をする物質が含まれています。
ビタミンAといっても必ずしも1種類の化合物を意味するのではなく、似たような生理作用をもつ物質の総称として用いられます。
動物性食品に含まれるビタミンAはレチノール、植物ではビタミンA作用を示すものはカロチンと呼ばれています。
・カロチンは体内でビタミンAになる
動物性食品から摂取されたビタミンAはそのまま腸管から吸収され体内で効力を発揮します。これに対して、植物性食品から摂取されたカロチンは体内でレチノールに変えられてから効力をあらわします。そこで、カロチンはビタミンAの前駆物質という意味でプロビタミンAとも呼ばれます。
このように、カロチンは腸粘膜でビタミンAに転換されて吸収されるのですが、ビタミンAとして体内に吸収される率は少なくなります。
3 ビタミンAの貯蔵と運搬のしくみ
吸収されたビタミンAの大部分は肝臓にたくわえられます。そして必要に応じて血液により運ばれます。このとき、ビタミンAは、ある特殊なたん白質と結びついて、必要とする器官の細胞へと的確に運びこまれていくことがわかっています。
ビタミンAが体内を運搬され供給されるしくみは高度に統制されています。そのためビタミンAの摂取量や肝臓中の貯蔵量は個人によって大きな差があるにもかかわらず、私たちの血液中のビタミンA濃度はほぼ一定の値に保たれています。
ビタミンAの働き
1 夜盲とビタミンA
私たちの目の網膜には、うす暗い光のもとで明暗を区別する桿体細胞と呼ばれる細胞があります。この桿体細胞には、視紅(ロドプシン)という、光を感じる色素が含まれており、ビタミンAはこの視紅の構成成分として働いています。そのため、ビタミンAが欠乏すると視紅が不足して、夕方になると目がみえにくくなったり(夜盲)、急に暗い所に入ったとき目がなれるのに時間がかかるようになります(暗順応遅延)。
2 生体膜とビタミンA
ビタミンAには、皮膚や粘膜の上皮組織を正常に保つ作用があると考えられています。
ビタミンAが欠乏すると、上皮組織の粘膜にうるおいをあたえている粘液の分泌がわるくなり、かさかさになってきます。とくに呼吸器系の粘膜(肺や気管)が角質化して、細菌やウイルスにおかされやすくなります。ですからビタミンAが不足すると肺炎や気管支炎になりやすいのです。その理由は、粘膜の表面を保護している粘液の主成分(糖たん白質)の合成にビタミンAがかかわっているためです。
一方、小腸粘膜が角質化すると、栄養素の吸収もわるくなります。
3 人間では確かめられていない働き
動物実験によると、ビタミンA欠乏食を与えた動物は成長の止まることが知られています。その作用のしくみはまだよくわかっていません。
ビタミンA欠乏の動物は、雄は精子をつくりださず、雌では不妊になりますが、ビタミンAがどのようにかかわっているかは、まだよくわかっていません。
大量のアルコールを長期間飲ませた動物は、肝臓と精巣のビタミンAが減少するといわれています。これが人間にそのままあてはまるかどうかは不明です。
・味覚異常とビタミンA
ビタミンA欠乏の動物に味覚障害のおこることが知られています。人間でも、急性肝炎など肝臓に障害をおこした患者は、血液中のビタミンA濃度が低下し、食欲も減退しますが、病気の回復とともに食欲がもどることから、ビタミンAの欠乏が味覚や嗅覚とかかわりがあるのではないかという報告があります。また、極端にビタミンAが欠乏した動物や人間では、難聴がおこるという報告もあります。いずれも、そのくわしいことはまだよくわかっていません。
・ストレスとビタミンA
戦場などで、強い精神的・肉体的ストレスが加えられると、血液中のビタミンA濃度が低下するという報告があります。
しかし、日常の生活からうける程度のストレスでビタミンA濃度が下がるかどうかは、いまのところ不明です。
ビタミンAとがんの予防との関係は?
1 発がん予防剤としてのビタミンAはまだ動物実験段階
がんの予防に効果があるとして、ビタミンAが注目を集めています。ビタミンA欠乏動物では、上皮性のがんが発生しやすいことが以前から知られていました。
しかし、ビタミンAは脂溶性ビタミンなので、長期間投与すると体内の組織に蓄積され、中毒症状をおこしてきます。そのため、毒性の少ないビタミンAを用いて、がんを抑える作用についての研究が進められています。
2 牛乳や緑黄色野菜を毎日とる人はがんにかかりにくいか?
ビタミンA含有量の低い食品を好んで食べる人は肺がんにかかる率が高いという報告や、緑黄色野菜を毎日食べる人はそうでない人に比べて肺がんや胃がんにかかりにくいという報告があります。
また、肺がんをおこしやすいのは、緑黄色野菜の摂取量が少ない人(カロチンの摂取量の低い人)であって、ビタミンAの摂取量とは関係がないという報告もあります。
しかし、なぜそうなるかについては、くわしいことはまだよくわかっていません。
ビタミンAはどのくらいとればよいか
1 ビタミンAの1日の所要量は
日本人のビタミンAの所要量は、たとえば成人の場合、15歳以上の男子で1日2000IU、女子では男子との体格差を10%とみて、1800IUと定められています。ビタミンAの摂取量は、全国平均でみた場合には高い水準にありますが、地域や世帯あるいは個人別にみた場合には差がみられることなどを考慮して、所要量には50%の安全率を見込んで決めてあります。
したがって、この所要量だけとっていれば、健康な人では欠乏におちいることは、ありません。
現在、日本人のビタミンAの1日の摂取量は、全国平均値でみる限り、1日2000IUをこえており、おおむね良好な状態にあります。ただし、この数字は平均値なので多くとりすぎている人がいる一方で、所要量を下回っている人もいると思われます。
2 ビタミンAを過剰にとるとどうなるか
・ビタミンAを極端に大量にとると中毒をおこす
ビタミンAは、脂溶性ビタミンなので、大量に摂取した場合、水溶性のビタミンBやCのようにすみやかに尿中に排泄されることはありません。大量のビタミンAは体内(とくに肝臓)に蓄積され、過剰症(中毒)をおこしてきます。
かつて、北極探険家が北極熊の肝臓を大量に食べたところ、2〜4時間後に眠くなり、からだがだるく、いらいらし、やがて頭痛と嘔吐に悩まされ、24時間たったころ口のまわりから皮膚がむけてきたそうです。一般に、ビタミンAの過剰症は、哺乳類の肝臓を大量に食べすぎたり、肝油をのみすぎてもおこります。
また、がんを予防するためなどといってビタミン剤を必要量以上にのんだりすると、大量に摂取してしまう危険があります。一般には、1日に2万5000IU以上とるのは避けるべきだといわれています。
・カロチンのとりすぎは柑皮症をおこすことがある
カロチンをとろうと思って、みかんやカボチャを食べすぎたとき、まれに柑皮症(皮膚が黄色くなる)がおこることがあります。しかし、食べるのをやめれば、すぐに治りますし、皮膚の色が変わること以外の実害はありません。
ビタミンAの上手なとり方
1 ビタミンAを多く含む食品
ビタミンAは私たちの肝臓にたくわえられるわけですから、動物性食品でも肝臓に多く含まれています。
各食品に含まれるビタミンA量は、表に示したとおりです。1日に、牛か豚か鶏のレバーをほんのひと切れ(5g程度)食べるだけで、所要量をみたせます。
緑黄色野莱にはカロチン(プロビタミンA)が多く含まれますが、なかにはカロチン含有量の少ないもの(たとえばピーマン)もあります。
うなぎ、あなご、養殖あゆなどの魚もビタミンA含有量の多い食品です。
そのほか、ビタミンAを多く含むのは、卵黄、バター、調整粉乳(育児用)などです。
・動物性食品と植物性食品から半分ずつとる
ビタミンAは、成人の場合、レチノール(動物性食品)とカロチン(植物性食品)から半分ずつとるのがよいとされています。わが国の場合は、緑黄色野菜、その他の野菜・果実類から50〜53%をとっており、理想的なとり方に近いといえます。
ただ、近年、野菜からのカロチンの摂取量はやや減少傾向にあるので、野菜のビタミンA効力を減らさないよう、食べ方、調理法の工夫が必要でしょう。
また、淡色野菜はカロチン含有量の少ないものが多く、ビタミンA摂取はあまり期待できません。生野菜サラダには、色の濃い野菜を加えるようにしましょう。
一方、肉類からのビタミンA摂取量は増加が著しく、肉類そのものの摂取量は横ばい状態にあるので、その原因は飼料に加えたビタミンAが肉類に蓄積されているためと考えられます。
2 ビタミンAの吸収率,効力は調理法で左右される
・野菜のカロチンは油妙めにすると吸収率が高まる
野菜に含まれるカロチンは、煮たり、油妙め、あるいはすりおろしたりすると、吸収率もビタミンA効力もずっと高くなります。たとえば、にんじんの場合、生でそのまま食べるとカロチンの吸収率は8%程度にすぎませんが、おろしてゆでると46〜48%に急上昇します。そして、油で妙めたり、揚げたりした場合は、50〜70%も吸収されます。
ビタミンCのように熱を加えると破壊される栄養素もありますが、カロチンに関しては、煮る、妙めるなどの調理を加えたほうが吸収率は高まるのです。
・野菜はたん白質の豊富な肉や魚と食べるとよい
野菜類に含まれるカロチンは脂溶性なので、油を使った料理、あるいはドレッシング、マヨネーズなどといっしょに食べると吸収率を上げることができ、たん白質とともに食べればいっそう効果的です。
ビタミンAを含む動物性食品の場合は、必ずたん白質、脂質と共存しているので、ビタミンAの吸収については問題ありません。
このように考えると、日本人に好まれるすき焼き、天ぷら、なべ料理、八宝菜などは、ビタミンAおよびカロチンの吸収という点からは、合理的な食べ方といえます。
ビダミンAはふつうの食事でとりましょう
近年の食生活の変化、あるいは母親の好み偏りなどの原因により、偏食の傾向をもつ子どもがふえているといわれます。成長期の子どもは、ビタミンAをはじめ各種のビタミンや、たん白質その他の栄養素をバランスよくとることが大切です。栄養が偏らないよう、偏食の子は調理の工夫などでなおしてやることが望まれます。
成長期の子どもだけでなく、妊婦や授乳婦も、ビタミンAをふつうの食事で上手にとるよう気をつけましょう。
ダイエット・美容・健康の情報
プロテインのことならココ
ガン末期からの生還他ビデオ特集
大変なビタミンブームである。ビタミンの持つさまざまな効用が話題を呼び、気軽にビタミン剤を利用する人が増えている。健康を守るために欠かせないのはもちろんだが、成人病、老化、がんの予防にも有効といった研究報告が発表されるにつれて、健康維持と病気予防の両面から関心が高まっている。そこでビタミンにはどんな効用があるのか、どうすれば上手に摂取できるのかを考えてみたい。
過熱ぎみのビタミンブーム
今や注目の的ともいえるビタミンだが、それではビタミンは体内で具体的にどんな働きをしているのだろうか。
ビタミンは、糖質、たんぱく質、脂質という3大栄養素が血や肉、あるいはエネルギーをつくる化学反応(代謝)を助ける役目をしている。現在ビタミンとして認められているのは13種類。主なビタミンの働きと効用を簡単にまとめてみた。
◆ビタミンA 目の機能を正常に保ち、粘膜や皮膚を強くする。
◆ビタミンB群 糖質、脂質、たんぱく質の代謝を促進する。B6は糖尿病やアレルギーに、B12と葉酸は貧血に効果がある。
◆ビタミンC 毛細血管、歯、骨などの結合組織を強固にするのが主な働き。病気に対する抵抗力を高め、しみやそばかすを防ぐことはよく知られている。ストレスを軽くする“抗ストレス効果”も見逃せない。
◆ビタミンD カルシウムの吸収を助けて骨や歯を強くする。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防に有効。
◆ビタミンE 老化を促進する有害物質・過酸化脂質ができるのを防ぐ“抗酸化作用”が注目を浴びている。善玉コレステロールを増やし、動脈硬化を予防する。
ざっと挙げただけでもビタミンの働きは大変なもの。健康に不安を抱く人が多い昨今、ブームになるのもうなずける。そのきっかけをつくったのは、アメリカのノーベル賞学者、ライナス・ポーリング博士。1970年に「ビタミンCの大量摂取が風邪の予防に効果がある」という説を発表。その後「がんの予防・治療にも有効」と報告したことで、一気にブームが過熱した。
CだけでなくAやEにも制がん作用があるとの研究報告が増え、この3つを合わせて“ビタミンACE(エース)”と呼ぶようになった。しかし制がん作用については、そのメカニズムがはっきり解明されたわけではない。1994年の春にはβ−カロテン(体内でビタミンAになる)の制がん効果を否定するようなデータが発表されて、世界中に波紋を投げかけた。
帝京大学医学部の安田和人教授によると「フィンランドで3万人近いヘビースモーカーの男性を4つのグループに分け、それぞれに偽薬、ビタミンE、β−カロテン、β−カロテンとEを投与して、平均6年間追跡調査した結果、予想に反してβ−カロテンとEを投与したグループが最も肺がん発生率が高かった」という。これまでβ−カロテンは肺がんの予防に有効といわれていたが、その逆の結果が出たのである。ただし、その評価も分かれていて、未だ解明されていない。
ビタミンは素晴らしい可能性を秘めてはいるが、今はまだ研究途上。新しい情報をうのみにして、必要以上に摂取するのは危険でもある。
現代社会はビタミン不足を招きがち
ビタミンは種類が多く、調理による損失もかなりあるので、すべてのビタミンをバランスよく摂取するのはなかなか難しい。しかも一度にまとめてとるというわけにもいかない。脂溶性ビタミン(A、D、E、K)は体内に蓄積され、必要に応じて利用されるが、水溶性ビタミン(B群、C)は余分な量は排せつされてしまう。とりだめがきかないのである。毎日、必要な量を補給しなければならないため、どうしても不足しがちになる。
最近では夜盲症、かっけ、壊血病、くる病といった典型的なビタミン欠乏症はないものの、潜在性の欠乏症、いわば病気と健康の中間のような状態はかなりあるといわれている。安田教授によると、最も不足しがちなのはBとCだという。ストレス、不規則な生活、外食やインスタント食品の増加、たばこやアルコールなどもビタミン不足を招く大きな要因となっている。
また「豊かさの中で新しい形の栄養失調が起きている」と指摘するのは大妻女子大学の橋本勲教授(運動栄養学)。それはダイエットと運動と栄養のアンバランスによるものだという。
若い女性にはダイエット志向が強い。成人女性の1日のエネルギー所要量はかなりからだを動かす人で2000キロカロリーだが、ダイエットで1000キロカロリーまで落とすと「専門家のアドバイスがない限り、ビタミンやミネラルの所要量を確保するのはまず不可能」という。その結果としてビタミン不足を招き、外見は希望通りスリムになっても、細胞レベルでは老化が進行してしまう。
一方、成人病の予防や体力づくりのために運動をする人が増えているが、ここにも意外な落とし穴がある。例えば1日おきにジョギングしている人を例にとると、約3000キロカロリーのエネルギーが必要だが、実際には2000キロカロリーぐらいしかとっていないケースもあり、1000キロカロリーの不足が出て、ダイエットしたのと同じ結果になるのだという。「いわば“運動性栄養失調”とでもいった現象が起きるんです。運動は健康増進や肥満解消に役立ちますが、栄養不足を招きがちであることもきちんと認識して、運動でエネルギーを使ったら、その分だけ食べることが大切。そうすれば自然にビタミンも補給される。運動するとビタミンB1、B2、ナイアシンが消費されるので、多めにとるようにしてほしい」とアドバイスする。
食品から摂取するのが基本
ビタミンは食品からとるのが基本といわれている。それは、1つの食品の中にはさまざまな栄養素が含まれており、お互いに影響し合って相乗効果を上げるからだ。
1日に6食品群30品目をバランスよくとれば、ビタミンも含めて必要な栄養素は摂取できる。しかし「30品目はとても無理。それに家庭料理なら食品数を数えられるが、買った惣菜や外食ではどう数えるのか分からない」との声も多いので、それについて橋本教授に聞いてみた。「目に見えるものは、全て数に入れてかまいません。例えばコロッケを食べたとする。これを1品目と数えると苦しくなりますが、コロッケの中にジャガイモとひき肉とタマネギが見えたら、それを3品目と数えます。キャベツとパセリが添えてあれば、これで2品目になります」
そう考えれば、1日30品目というのはそれほど難しくなさそうだ。「まず食品からとって、どうしても足りない分をビタミン強化食品やビタミン剤でカバーするというのが順序。安易にビタミン剤に頼るべきではない」と橋本教授は言う。
知っておきたい調理のポイント
食品から摂取する場合には、各ビタミンの性質をよく知っていないと調理による損失が大きくなる。そこで、女子栄養大学の吉田企世子教授に効率よくビタミンをとるための調理法、食品の組み合わせ、保存の仕方などをアドバイスしてもらった。
●ビタミンAは植物油と一緒にとる
ビタミンAは脂溶性で水に溶けず、熱にも強いので扱いやすい。AにはそのままAとして吸収されるレチノールと、体内に吸収されてからAとしての効力を発揮するカロテンとがある。カロテンは緑黄色野菜の色素で、吸収率が悪く、レチノールの3分の1程度。しかし油と組み合わせると吸収率がグンとアップする。
例えばニンジンの場合、生だと吸収率は8%と低いのに対して、煮ると30%。油で炒めたり、揚げ物にしたりすると50〜70%と高くなる。使う油はビタミンEを豊富に含む植物油を。Aが酸化して効力を失うのを防いでくれる。
脂肪分を控えたい人は、サラダにしてドレッシングをかけたり、コマツナやホウレンソウをゴマ和えにしたりする工夫を。また献立の中に油を使った料理を組み入れてもかまわない。
Aは冷凍したり、缶詰にしてもあまり損失がないので、旬でない時期は冷凍食品や缶詰を利用するのもよい。解凍するときは電子レンジを使うか、冷凍のまま煮汁に入れたり、炒めたりするのがコツ。
●ビタミンB群は軽く洗って手早く調理
ビタミンB群は水溶性なので水に溶けやすい。なかでも最も不足しがちといわれるB1は、水に溶けるだけでなく熱にも弱いので、調理による損失が大きい。そのほかのB群は比較的扱いやすい。
B1をとるためには、白米の代わりに胚芽米や強化米を使うのが1番。毎日食べるものなので効果が上がる。その場合に注意したいのは、あまりとがないこと。ていねいに水洗いするとB1は30〜40%も流出してしまう。毎朝パン食の人はライ麦パンにするとよい。ソバもB1の多い食品だ。
魚類にはB群を含めて、ビタミンの豊富なものが多い。特に皮や血合いの部分にたっぷり含まれているので、残さず食べるようにしたい。血合い肉の発達しているサバ、イワシ、カツオなどが効果的。
生の貝やカニ、コイにはアノイリナーゼというB1分解酵素が含まれている。火を通せばこの酵素は働かなくなるので、あまり神経質になる必要はないが、生で食べるときには量を控えめに。
●ビタミンCは調理法を工夫して
ビタミンCも水溶性なので水に溶けやすい。そのうえ熱に弱く、空気、アルカリ、酵素によっても破壊されるので、調理法によっては半減してしまう。所要量の3倍はとるようにしたい。
ホウレンソウなどの葉菜類をゆでるときは、たっぷりの熱湯に少しずつ入れて短時間にゆで上げる。時間が長くなるとCはどんどん失われていく。ゆでた後、水にさらす時間もなるべく短くしたいもの。たった1分で約20%も流出してしまう。
炒め物や揚げ物は短時間で調理できるので、煮物より損失が少ない。煮物にする場合は、Cが溶け出した煮汁ごと食べられるシチューや鍋物などが効果的。
Cは空気に触れると酸化して効力を失うので、切ったり、おろしたりするのは食べる直前に。
生で食べるサラダは理想的な調理法だが、かさがあって量をとれないのが弱点。おひたしのほうが損失分を計算しても摂取量は多くなる。それにサラダに使われる野菜は一般的にビタミンの含有量が少ない。サラダを食べたからといって安心は禁物。
生のニンジン、キュウリ、カボチャなどには、Cを破壊するアスコルビン酸オキシターゼという酵素が含まれているので要注意。野菜ジュースやもみじおろしなど、生のまますりおろして使う場合は、レモン汁や酢を加えるのがコツ。そうすれば酵素は働かなくなる。
●ビタミンDは紫外線によって効力発揮
脂溶性のビタミンDは油と合わせてとると吸収率が上がる。調理による損失はあまりない。カルシウムの吸収を助ける働きがあるので、カルシウム豊富な食品と一緒に摂取するとよい。
Dは動物性食品にはDそのものの形で含まれているが、シイタケなどのD(エルゴステロール)は紫外線によって活性型Dに変化する。最近の干しシイタケはほとんどが電気乾燥なので、一度日光に当てて使うとよい。
●ビタミンEは植物油からとるのがベスト
ビタミンEも脂溶性なので、油と組み合わせるとよい。特に、植物油はそれ自体がEをたっぷり含んでいるので効果が大きい。吸油量の多い揚げ物が理想的だが、パンにマーガリンをつけたり、サラダのドレッシングにしてもよい。
ただし、油は新しいものであることが条件。古くなると過酸化脂質を生成し、逆効果になってしまうためだ。
油は紫外線に弱いので、保存するときは冷暗所に。使用した油はそのつど、ていねいにこしておくこと。
ところで、ビタミン剤は手軽で、しかも食品と違って摂取量を確認できるというメリットがある。食後に飲むのが効果的で、お茶やコーヒーなどと一緒に飲んでもさしつかえない。ただ重曹の入った胃腸薬を服用したときは少し時間をおいたほうがよい。ビタミンB1が分解されてしまうからだ。ビタミン剤を常用する場合に注意しなければならないのは過剰症の問題。脂溶性ビタミンはとり過ぎると体内に蓄積し、障害をもたらす危険性がある。脂溶性でもEには過剰症の心配はない。
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過熱ぎみのビタミンブーム
今や注目の的ともいえるビタミンだが、それではビタミンは体内で具体的にどんな働きをしているのだろうか。
ビタミンは、糖質、たんぱく質、脂質という3大栄養素が血や肉、あるいはエネルギーをつくる化学反応(代謝)を助ける役目をしている。現在ビタミンとして認められているのは13種類。主なビタミンの働きと効用を簡単にまとめてみた。
◆ビタミンA 目の機能を正常に保ち、粘膜や皮膚を強くする。
◆ビタミンB群 糖質、脂質、たんぱく質の代謝を促進する。B6は糖尿病やアレルギーに、B12と葉酸は貧血に効果がある。
◆ビタミンC 毛細血管、歯、骨などの結合組織を強固にするのが主な働き。病気に対する抵抗力を高め、しみやそばかすを防ぐことはよく知られている。ストレスを軽くする“抗ストレス効果”も見逃せない。
◆ビタミンD カルシウムの吸収を助けて骨や歯を強くする。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防に有効。
◆ビタミンE 老化を促進する有害物質・過酸化脂質ができるのを防ぐ“抗酸化作用”が注目を浴びている。善玉コレステロールを増やし、動脈硬化を予防する。
ざっと挙げただけでもビタミンの働きは大変なもの。健康に不安を抱く人が多い昨今、ブームになるのもうなずける。そのきっかけをつくったのは、アメリカのノーベル賞学者、ライナス・ポーリング博士。1970年に「ビタミンCの大量摂取が風邪の予防に効果がある」という説を発表。その後「がんの予防・治療にも有効」と報告したことで、一気にブームが過熱した。
CだけでなくAやEにも制がん作用があるとの研究報告が増え、この3つを合わせて“ビタミンACE(エース)”と呼ぶようになった。しかし制がん作用については、そのメカニズムがはっきり解明されたわけではない。1994年の春にはβ−カロテン(体内でビタミンAになる)の制がん効果を否定するようなデータが発表されて、世界中に波紋を投げかけた。
帝京大学医学部の安田和人教授によると「フィンランドで3万人近いヘビースモーカーの男性を4つのグループに分け、それぞれに偽薬、ビタミンE、β−カロテン、β−カロテンとEを投与して、平均6年間追跡調査した結果、予想に反してβ−カロテンとEを投与したグループが最も肺がん発生率が高かった」という。これまでβ−カロテンは肺がんの予防に有効といわれていたが、その逆の結果が出たのである。ただし、その評価も分かれていて、未だ解明されていない。
ビタミンは素晴らしい可能性を秘めてはいるが、今はまだ研究途上。新しい情報をうのみにして、必要以上に摂取するのは危険でもある。
現代社会はビタミン不足を招きがち
ビタミンは種類が多く、調理による損失もかなりあるので、すべてのビタミンをバランスよく摂取するのはなかなか難しい。しかも一度にまとめてとるというわけにもいかない。脂溶性ビタミン(A、D、E、K)は体内に蓄積され、必要に応じて利用されるが、水溶性ビタミン(B群、C)は余分な量は排せつされてしまう。とりだめがきかないのである。毎日、必要な量を補給しなければならないため、どうしても不足しがちになる。
最近では夜盲症、かっけ、壊血病、くる病といった典型的なビタミン欠乏症はないものの、潜在性の欠乏症、いわば病気と健康の中間のような状態はかなりあるといわれている。安田教授によると、最も不足しがちなのはBとCだという。ストレス、不規則な生活、外食やインスタント食品の増加、たばこやアルコールなどもビタミン不足を招く大きな要因となっている。
また「豊かさの中で新しい形の栄養失調が起きている」と指摘するのは大妻女子大学の橋本勲教授(運動栄養学)。それはダイエットと運動と栄養のアンバランスによるものだという。
若い女性にはダイエット志向が強い。成人女性の1日のエネルギー所要量はかなりからだを動かす人で2000キロカロリーだが、ダイエットで1000キロカロリーまで落とすと「専門家のアドバイスがない限り、ビタミンやミネラルの所要量を確保するのはまず不可能」という。その結果としてビタミン不足を招き、外見は希望通りスリムになっても、細胞レベルでは老化が進行してしまう。
一方、成人病の予防や体力づくりのために運動をする人が増えているが、ここにも意外な落とし穴がある。例えば1日おきにジョギングしている人を例にとると、約3000キロカロリーのエネルギーが必要だが、実際には2000キロカロリーぐらいしかとっていないケースもあり、1000キロカロリーの不足が出て、ダイエットしたのと同じ結果になるのだという。「いわば“運動性栄養失調”とでもいった現象が起きるんです。運動は健康増進や肥満解消に役立ちますが、栄養不足を招きがちであることもきちんと認識して、運動でエネルギーを使ったら、その分だけ食べることが大切。そうすれば自然にビタミンも補給される。運動するとビタミンB1、B2、ナイアシンが消費されるので、多めにとるようにしてほしい」とアドバイスする。
食品から摂取するのが基本
ビタミンは食品からとるのが基本といわれている。それは、1つの食品の中にはさまざまな栄養素が含まれており、お互いに影響し合って相乗効果を上げるからだ。
1日に6食品群30品目をバランスよくとれば、ビタミンも含めて必要な栄養素は摂取できる。しかし「30品目はとても無理。それに家庭料理なら食品数を数えられるが、買った惣菜や外食ではどう数えるのか分からない」との声も多いので、それについて橋本教授に聞いてみた。「目に見えるものは、全て数に入れてかまいません。例えばコロッケを食べたとする。これを1品目と数えると苦しくなりますが、コロッケの中にジャガイモとひき肉とタマネギが見えたら、それを3品目と数えます。キャベツとパセリが添えてあれば、これで2品目になります」
そう考えれば、1日30品目というのはそれほど難しくなさそうだ。「まず食品からとって、どうしても足りない分をビタミン強化食品やビタミン剤でカバーするというのが順序。安易にビタミン剤に頼るべきではない」と橋本教授は言う。
知っておきたい調理のポイント
食品から摂取する場合には、各ビタミンの性質をよく知っていないと調理による損失が大きくなる。そこで、女子栄養大学の吉田企世子教授に効率よくビタミンをとるための調理法、食品の組み合わせ、保存の仕方などをアドバイスしてもらった。
●ビタミンAは植物油と一緒にとる
ビタミンAは脂溶性で水に溶けず、熱にも強いので扱いやすい。AにはそのままAとして吸収されるレチノールと、体内に吸収されてからAとしての効力を発揮するカロテンとがある。カロテンは緑黄色野菜の色素で、吸収率が悪く、レチノールの3分の1程度。しかし油と組み合わせると吸収率がグンとアップする。
例えばニンジンの場合、生だと吸収率は8%と低いのに対して、煮ると30%。油で炒めたり、揚げ物にしたりすると50〜70%と高くなる。使う油はビタミンEを豊富に含む植物油を。Aが酸化して効力を失うのを防いでくれる。
脂肪分を控えたい人は、サラダにしてドレッシングをかけたり、コマツナやホウレンソウをゴマ和えにしたりする工夫を。また献立の中に油を使った料理を組み入れてもかまわない。
Aは冷凍したり、缶詰にしてもあまり損失がないので、旬でない時期は冷凍食品や缶詰を利用するのもよい。解凍するときは電子レンジを使うか、冷凍のまま煮汁に入れたり、炒めたりするのがコツ。
●ビタミンB群は軽く洗って手早く調理
ビタミンB群は水溶性なので水に溶けやすい。なかでも最も不足しがちといわれるB1は、水に溶けるだけでなく熱にも弱いので、調理による損失が大きい。そのほかのB群は比較的扱いやすい。
B1をとるためには、白米の代わりに胚芽米や強化米を使うのが1番。毎日食べるものなので効果が上がる。その場合に注意したいのは、あまりとがないこと。ていねいに水洗いするとB1は30〜40%も流出してしまう。毎朝パン食の人はライ麦パンにするとよい。ソバもB1の多い食品だ。
魚類にはB群を含めて、ビタミンの豊富なものが多い。特に皮や血合いの部分にたっぷり含まれているので、残さず食べるようにしたい。血合い肉の発達しているサバ、イワシ、カツオなどが効果的。
生の貝やカニ、コイにはアノイリナーゼというB1分解酵素が含まれている。火を通せばこの酵素は働かなくなるので、あまり神経質になる必要はないが、生で食べるときには量を控えめに。
●ビタミンCは調理法を工夫して
ビタミンCも水溶性なので水に溶けやすい。そのうえ熱に弱く、空気、アルカリ、酵素によっても破壊されるので、調理法によっては半減してしまう。所要量の3倍はとるようにしたい。
ホウレンソウなどの葉菜類をゆでるときは、たっぷりの熱湯に少しずつ入れて短時間にゆで上げる。時間が長くなるとCはどんどん失われていく。ゆでた後、水にさらす時間もなるべく短くしたいもの。たった1分で約20%も流出してしまう。
炒め物や揚げ物は短時間で調理できるので、煮物より損失が少ない。煮物にする場合は、Cが溶け出した煮汁ごと食べられるシチューや鍋物などが効果的。
Cは空気に触れると酸化して効力を失うので、切ったり、おろしたりするのは食べる直前に。
生で食べるサラダは理想的な調理法だが、かさがあって量をとれないのが弱点。おひたしのほうが損失分を計算しても摂取量は多くなる。それにサラダに使われる野菜は一般的にビタミンの含有量が少ない。サラダを食べたからといって安心は禁物。
生のニンジン、キュウリ、カボチャなどには、Cを破壊するアスコルビン酸オキシターゼという酵素が含まれているので要注意。野菜ジュースやもみじおろしなど、生のまますりおろして使う場合は、レモン汁や酢を加えるのがコツ。そうすれば酵素は働かなくなる。
●ビタミンDは紫外線によって効力発揮
脂溶性のビタミンDは油と合わせてとると吸収率が上がる。調理による損失はあまりない。カルシウムの吸収を助ける働きがあるので、カルシウム豊富な食品と一緒に摂取するとよい。
Dは動物性食品にはDそのものの形で含まれているが、シイタケなどのD(エルゴステロール)は紫外線によって活性型Dに変化する。最近の干しシイタケはほとんどが電気乾燥なので、一度日光に当てて使うとよい。
●ビタミンEは植物油からとるのがベスト
ビタミンEも脂溶性なので、油と組み合わせるとよい。特に、植物油はそれ自体がEをたっぷり含んでいるので効果が大きい。吸油量の多い揚げ物が理想的だが、パンにマーガリンをつけたり、サラダのドレッシングにしてもよい。
ただし、油は新しいものであることが条件。古くなると過酸化脂質を生成し、逆効果になってしまうためだ。
油は紫外線に弱いので、保存するときは冷暗所に。使用した油はそのつど、ていねいにこしておくこと。
ところで、ビタミン剤は手軽で、しかも食品と違って摂取量を確認できるというメリットがある。食後に飲むのが効果的で、お茶やコーヒーなどと一緒に飲んでもさしつかえない。ただ重曹の入った胃腸薬を服用したときは少し時間をおいたほうがよい。ビタミンB1が分解されてしまうからだ。ビタミン剤を常用する場合に注意しなければならないのは過剰症の問題。脂溶性ビタミンはとり過ぎると体内に蓄積し、障害をもたらす危険性がある。脂溶性でもEには過剰症の心配はない。
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▼ ビタミンと健康
ビタミンは13種類あって、種類によって食品での含まれ方が違っています。そこでまず、食生活が乱れないようにいろいろな食品を幅広く食べて、ビタミンが不足しないように気をつけたいものです。ビタミンには栄養素としての働き(不足すると欠乏症を起こす)のほかに、健康を守る働きがあります。このようなビタミンの働きについてお話しましょう。
もともとビタミンは微量栄養素の1つで不足すると欠乏症を起こしますが、ビタミンの種類によっては必要量の10倍とか、50倍といったたくさんの量をとると、成人病やガンを予防する働きがあることが最近の研究で分かってきました。私たちが呼吸している酸素が必要なことはだれでも知っていますが、この酸素の仲間で悪い働きをする酸素(コレステロールと同じで悪玉酸素と呼んでもいいかもしれません)がからだの中でいつも少しずつ作られていて、長い間に成人病などの病気の原因になることがはっきりしてきたからです。
この悪玉酸素の働きを防ぐために、私たちのからだは防衛機能を持っています。この防衛機能の1部を担っているのがビタミンC、ビタミンE、ベータ・カロテンなどです。これらは悪玉酸素をやっつける働きをしているので、抗酸化ビタミンと呼ばれています。このような抗酸化ビタミンが効率よく働くためには1日にビタミンCなら500mg、ビタミンEなら100mg、ベータ・カロテンなら6mgぐらいは必要といわれています。動脈硬化や心臓疾患、老化にも悪玉酸素が絡んでいることが分かってきたからです。さてもう1つのビタミンの話題は老人、特に女性に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。これにはカルシウムや運動も関係していますが、ビタミンも関係しています。
特に注目されているのが、ビタミンDとビタミンKの2つです。ビタミンKは納豆に多く含まれていて、骨粗鬆症の治療に好成績を挙げることがはっきりしてきました。ある程度の高齢になったら1日1回納豆を食べて、ビタミンKの補給を忘れないようにしましょう。
なお副作用のあるビタミンもあるので素人のビタミン剤多用はご注意。
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もともとビタミンは微量栄養素の1つで不足すると欠乏症を起こしますが、ビタミンの種類によっては必要量の10倍とか、50倍といったたくさんの量をとると、成人病やガンを予防する働きがあることが最近の研究で分かってきました。私たちが呼吸している酸素が必要なことはだれでも知っていますが、この酸素の仲間で悪い働きをする酸素(コレステロールと同じで悪玉酸素と呼んでもいいかもしれません)がからだの中でいつも少しずつ作られていて、長い間に成人病などの病気の原因になることがはっきりしてきたからです。
この悪玉酸素の働きを防ぐために、私たちのからだは防衛機能を持っています。この防衛機能の1部を担っているのがビタミンC、ビタミンE、ベータ・カロテンなどです。これらは悪玉酸素をやっつける働きをしているので、抗酸化ビタミンと呼ばれています。このような抗酸化ビタミンが効率よく働くためには1日にビタミンCなら500mg、ビタミンEなら100mg、ベータ・カロテンなら6mgぐらいは必要といわれています。動脈硬化や心臓疾患、老化にも悪玉酸素が絡んでいることが分かってきたからです。さてもう1つのビタミンの話題は老人、特に女性に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。これにはカルシウムや運動も関係していますが、ビタミンも関係しています。
特に注目されているのが、ビタミンDとビタミンKの2つです。ビタミンKは納豆に多く含まれていて、骨粗鬆症の治療に好成績を挙げることがはっきりしてきました。ある程度の高齢になったら1日1回納豆を食べて、ビタミンKの補給を忘れないようにしましょう。
なお副作用のあるビタミンもあるので素人のビタミン剤多用はご注意。
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