栄養素

ここでは、 栄養素 に関する情報を紹介しています。
脂質はあぶら、油脂、脂質、脂肪、中性脂肪など多くの類似の呼び方があります。正式には別の意味を持ちますが、広義的にはほぼ同じで、脂肪は脂肪酸とグリセリンから成り、構成脂肪酸によって性質が異なります。短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に分類され、また、構造・作用的には飽和、1価不飽和、多価不飽和脂肪酸(n-6、n-3)などに分類されます。

脂質の役割
 脂質の役割として、1.効率的なエネルギー源、2.必須脂肪酸の供給源、3. n-6系やn-3系不飽和脂肪酸の代謝調節機能、4.脂溶性ビタミンの担体、5.その他脂肪酸以外の成分と機能、6.ビタミンの節約作用、7.嗜好性が掲げられます。
1.1gの炭水化物またはたんぱく質が生体内で燃焼するとそれぞれ4kcal、脂質は9kcalのエネルギーを発生します。脂質は少量で効率的なエネルギー源となり、食事で摂る場合にはかさが少なくてすむため、胃の負担が軽くなります。
2.と3.脂質を構成している脂肪酸のうち、飽和と一価不飽和脂肪酸は生体内で糖質などから合成されますが、多価不飽和脂肪酸は生体内で生体膜の成分であったり、重要な代謝機能を果たしますが、合成されないか合成されても量的に少ないため食事から摂らなければなりません。そのため必須脂肪酸と呼ばれます。n-6系の脂肪酸は植物油に多く含まれており、リノール酸とそれから体内で合成されるγ-リノレン酸とアラキドン酸、n-3系脂肪酸はしそ油などに含まれているα-リノレン酸や魚油などに含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などに代表されます。
 近年、個々の脂肪酸の生理作用の研究が進み、その作用と疾患とのかかわりが明らかになりました。それらは生体内で免疫抑制と正常化、血小板凝集高進、発がん促進と抑制、コレステロール代謝、脳・神経機能の維持、網膜機能、降圧作用、高脂血症の改善などの多くの代謝と関連しています。これらの脂肪酸は酸化されやすく、その酸化物は生体に有害作用を及ぼし、その防止のためにはビタミンE、ビタミンC、β-カロテンなどの抗酸化作用のあるビタミンを適切に摂取することが望まれます。必須脂肪酸の生理機能を十分に発揮するには適切な量とn-6系とn-3系多価不飽和脂肪酸の相互の摂取バランスの重要性も明らかにされています(表)。
4.と5.脂質は食品中では脂溶性物質を溶かしており、特にビタミンA、D、E、Kは脂溶性であるため、脂質に溶けており、摂取時には、脂質と一緒に乳化されてから吸収されます。あぶら抜きの食事は脂溶性ビタミンの不足を招きます。プロビタミンAとして知られているβ-カロテンも脂質と一緒に摂取すると、吸収効率もビタミンA効力も高まります。その他の微量成分として、動物性油脂はコレステロールなどを含んでおり、ホルモンやビタミンDなどの材料になる重要な物質です。しかし、生体内でもかなりの量が合成されますが、生活習慣病予防のためには食事からの摂取も気をつけましょう。
6.炭水化物が生体内で利用される際には、ビタミンB1やB2が、たんぱく質ではビタミンB6などが消費されるため、脂質をエネルギー源にするとこれらのビタミンの節約になります。
7.食品の味はしもふり肉、トロ、フライドポテトのように適切な脂質を含む場合に美味しさが増します。
 このように脂肪は体内でいろいろな重要な役割をになっている栄養素です。たんに脂肪のエネルギー発生が高いことから摂取は肥満につながると誤解し、極端に少ない食事をする人もいます。しかしエネルギー源の他にも必須脂肪酸を含みますので脂肪の種類、適切な質と量をバランス良く、上手に摂る工夫が大切です。またこれらは酸化されやすい性質を持っているため、生理機能を十分に発揮するには適切に摂取することが望まれます。


表 我が国の脂肪所要量      
動物:植物:魚油    4:5:1
飽和:一価:多価不飽和 1:1.5:1
n-6系:n-3系      4〜5:1
コレステロール     <300mg   

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私たちの食生活はここ20〜30年の間にかなりの変化をみせ、油を使った料理が多くなりました。油を使った料理はおいしいですし、それに腹もちがよいといった利点もあります。
油で炒める、油で揚げる、油で焼く、油を加えてあえる、油に漬ける、などといった料理が好まれていますし、脂ののった魚や肉はとてもおいしいものです。

 また、牛乳や乳製品も私たちの食生活に欠かせない食品となったことは、好ましい傾向といえましょう。

 一方、油を多く使ったファストフードが多くの人々に好まれ、持ち帰りもできることから、中高年の方の利用も増えて、勢い脂の摂取が増える傾向になっています。

 心臓病のほか、いろいろな成人病が増えている今、その予防の第一は食生活ということになります。
 特に、虚血性心疾患をはじめ、成人病は、食生活の洋風化に伴って、脂肪のとり方が増えたことや、偏りのある栄養のとり方が問題といえましょう。

 また、脂肪のうち、コレステロールが多過ぎると動脈硬化を招き、心筋梗塞の原因となりますし、少な過ぎると脳卒中の原因となります。

 このようなことから、昭和60年に厚生省が発表した“健康づくりのための食生活指針”では、「脂肪はとり過ぎないように」、「動物性の脂肪より植物性の油を多めに」といった大切なポイントが示されています。ここでは、その脂肪について説明いたしましょう。


まず、脂肪は体の中でどんな働きをしているのかを見てみましょう。

 脂肪は、たんぱく質や糖質とともにからだにとって大切な栄養成分で、三大栄養素の一つに数えられています。

 その脂肪は、1g当たり、約9kcalの熱量を出す効率の良いエネルギー源です。

 また、脂肪はからだをつくっている細胞の構成には欠かせないもので、植物油に多く含まれているリノール酸、リノレン酸といった不飽和脂肪酸は、私たちの健康に欠かせない脂肪酸の供給源でもあります。

 さらに脂肪は、ビタミンA、D、E、Kなどの油に溶けるビタミンを含み、また、その吸収を助けるので、ビタミンの供給源としても大切な役割りを果しています。

 食物からとった脂肪は、体脂肪となって蓄えられます。男と女の差、体質などによって個人差はありますが、大人で体重の17〜20%程度蓄えられていて、内臓を外的な衝撃から保護する役目も果しています。

また、脂肪と一口にいってもいろいろあります。
                                       
 脂肪は、天ぷら油やサラダオイル、バター、マーガリンなどに含まれている中性脂肪と、生理的に重要な働きをするリン脂質、糖脂質とがあります。
 成人病でよく話題になるコレステロールも脂肪の1つです。

 一般に脂肪というと中性脂肪のことをいい、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を含んでいます。

 飽和脂肪酸を多く含んでいる食品は、主に動物性食品で、バターやラード、牛や豚などの脂身に含まれる脂肪分である。
 この脂は常温で固まるので、「固形の脂」ということもできます。

 一方、不飽和脂肪酸を多く含んでいるものには、魚の脂や植物油があります。
 これらは常温では液状になっているので、「液状の油」といっています。

 では、私たちはいま、どれ位の脂肪をとっているのでしょうか。

 動物性脂肪と植物性油脂に分けて摂取量をみますと、動物性脂肪の摂取量の増加が目立っています。

 また、私たちが1日に摂取することが望ましい脂肪の量としては「日本人の栄養所要量」の中で、総摂取エネルギーに占める脂肪エネルギーの割合として定められています。一般成人の場合の脂肪の適正量はエネルギー比で20〜25%といわれています。現在の割合は、約25%で
すから、これ以上増えないことが望ましいとされています。

 脂肪にはいろいろの種類があり、その性質も違い、健康への影響も異なります。
 魚類を除く動物性の脂肪は、一般に飽和脂肪酸とコレステロールを多く含んでいて、とり過ぎると血液中の中性脂肪やコレステロールが多くなり、動脈硬化を促す原因となります。

 一方、植物性の油や魚の油は、不飽和脂肪酸が多く、コレステロールの上昇を抑え、動脈硬化を抑制する働きのあることが知られています。
 ですから、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とのバランスをとることが大切です。

 そこで、動物性脂肪が過剰にならないようにバランスよく摂取するためには、魚類を除く動物性の脂肪と、植物性の油や魚の脂との摂取比率を1対1から1対2程度に保つようにすることが良いとされています。

 そうはいっても、脂肪をとる場合、サラダオイルなど植物油はどの位とったか比較的分かりやすいのですが、肉、魚、卵などに含まれている脂肪は見ただけでは分かりにくく、ついとり過ぎになりがちなので、和、洋、中華などをうまく組み合わせるとか、脂のものとさっぱりしたものを一緒にとるなどの献立にしたいものです。

 最近よく話題になることですが、いわし、さばなどの魚は動物性脂肪ではあっても不飽和脂肪酸が多く含まれていて、高脂血症の改善、血栓の予防など成人病予防に効果のあることが知られています。
 また、たん白質をはじめ、カルシウム、鉄、ビタミンA、B2、Dなどが多く含まれている魚もあります。魚は全体に中高年にふさわしい食品といえるでしょう。


 天ぷら油、サラダオイル、それに脂の多い食品類は空気、日光、温度によって酸化されます。

 酸化してしまった油は味が落ちるだけでなく、体内での消化も悪く、体には有害となります。酸化した油を食べると、時には胸やけ、吐き気、下痢を起こし、また、細胞の老化を進めるともいわれています。

揚げものなどに使った油は早く使いきりましょう。

 また、揚げ滓などの不純物が油に混ざっていると油の酸化を早めますので、こまめに取りましょう。途中、さし油をして使う方が油はいたみません。

 何度も使った油は酸化しています。色や香りもなく、粘っこくなり、泡立ちがみられます。そのような油は捨てましょう。

 なるべく油を酸化させないためには、使い終ったらできるだけ早く温度を下げ、口の小さい容器に移し、空気に触れない工夫をし、光をさけ、冷たい場所に置くよう保存に気を付けましょう。

油菓子や即席めんなどは、製造年月日に注意しましょう。
魚の干物などもできるだけ早いうちに食べましょう。

 魚の脂も酸化しやすい性質を持っています。冷蔵庫に入れたからといって、いつまでも鮮度は保たれません。手早く調理し、新鮮なうちに食べましょう。

炒めものの“こつ”は、鍋を加熱してから油を注ぎ、強火で炒めます。

 揚げものをからりと揚げるには、温度が大切です。天ぷら、フライは170度位で、野菜や芋は少し低目で揚げます。

 衣をつける揚げものは、衣をつけないものに比べて油を多く含んでいるため、とり過ぎに注意しましょう。
 炒めものやサラダは野菜も多くとれることから1日1回はとるようにしましょう。


 魚、肉、豆類、乳製品などは、脂肪のほか、たんぱく質も多く含んでいるので、バランス良くとることが大切です。

 脂肪は量と質を考えてとらなくてはなりません。
 いろいろと食品を組み合わせることによって、脂肪も上手にとり入れることができます。
 献立を工夫して豊かな食生活を心掛けたいものです。

 健康づくりのための食生活指針はご覧のように5つの項目からなっています。
 1 多様な食品で栄養バランスを
  ○1日30食品を目標に
  ○主食、主菜、副菜をそろえて
 2 日常の生活活動に見合ったエネルギーを
  ○食べすぎに気をつけて、肥満を予防
  ○よくからだを動かし、食事内容にゆとりを
 3 脂肪は量と質を考えて
  ○脂肪はとりすぎないように
  ○動物性の脂肪より植物性の油を多めに
 4 食塩をとりすぎないように
  ○食塩は1日10g以下を目標に
  ○調理の工夫で、むりなく減塩
 5 こころのふれあう楽しい食生活を
  ○食卓を家族ふれあいの場に
  ○家庭の味、手づくりのこころを大切に
以上です。

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脂質はあぶら、油脂、脂質、脂肪、中性脂肪など多くの類似の呼び方があります。正式には別の意味を持ちますが、広義的にはほぼ同じで、脂肪は脂肪酸とグリセリンから成り、構成脂肪酸によって性質が異なります。短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に分類され、また、構造・作用的には飽和、1価不飽和、多価不飽和脂肪酸(n-6、n-3)などに分類されます。

脂質の役割
 脂質の役割として、1.効率的なエネルギー源、2.必須脂肪酸の供給源、3. n-6系やn-3系不飽和脂肪酸の代謝調節機能、4.脂溶性ビタミンの担体、5.その他脂肪酸以外の成分と機能、6.ビタミンの節約作用、7.嗜好性が掲げられます。
1.1gの炭水化物またはたんぱく質が生体内で燃焼するとそれぞれ4kcal、脂質は9kcalのエネルギーを発生します。脂質は少量で効率的なエネルギー源となり、食事で摂る場合にはかさが少なくてすむため、胃の負担が軽くなります。
2.と3.脂質を構成している脂肪酸のうち、飽和と一価不飽和脂肪酸は生体内で糖質などから合成されますが、多価不飽和脂肪酸は生体内で生体膜の成分であったり、重要な代謝機能を果たしますが、合成されないか合成されても量的に少ないため食事から摂らなければなりません。そのため必須脂肪酸と呼ばれます。n-6系の脂肪酸は植物油に多く含まれており、リノール酸とそれから体内で合成されるγ-リノレン酸とアラキドン酸、n-3系脂肪酸はしそ油などに含まれているα-リノレン酸や魚油などに含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などに代表されます。
 近年、個々の脂肪酸の生理作用の研究が進み、その作用と疾患とのかかわりが明らかになりました。それらは生体内で免疫抑制と正常化、血小板凝集高進、発がん促進と抑制、コレステロール代謝、脳・神経機能の維持、網膜機能、降圧作用、高脂血症の改善などの多くの代謝と関連しています。これらの脂肪酸は酸化されやすく、その酸化物は生体に有害作用を及ぼし、その防止のためにはビタミンE、ビタミンC、β-カロテンなどの抗酸化作用のあるビタミンを適切に摂取することが望まれます。必須脂肪酸の生理機能を十分に発揮するには適切な量とn-6系とn-3系多価不飽和脂肪酸の相互の摂取バランスの重要性も明らかにされています(表)。
4.と5.脂質は食品中では脂溶性物質を溶かしており、特にビタミンA、D、E、Kは脂溶性であるため、脂質に溶けており、摂取時には、脂質と一緒に乳化されてから吸収されます。あぶら抜きの食事は脂溶性ビタミンの不足を招きます。プロビタミンAとして知られているβ-カロテンも脂質と一緒に摂取すると、吸収効率もビタミンA効力も高まります。その他の微量成分として、動物性油脂はコレステロールなどを含んでおり、ホルモンやビタミンDなどの材料になる重要な物質です。しかし、生体内でもかなりの量が合成されますが、生活習慣病予防のためには食事からの摂取も気をつけましょう。
6.炭水化物が生体内で利用される際には、ビタミンB1やB2が、たんぱく質ではビタミンB6などが消費されるため、脂質をエネルギー源にするとこれらのビタミンの節約になります。
7.食品の味はしもふり肉、トロ、フライドポテトのように適切な脂質を含む場合に美味しさが増します。
 このように脂肪は体内でいろいろな重要な役割をになっている栄養素です。たんに脂肪のエネルギー発生が高いことから摂取は肥満につながると誤解し、極端に少ない食事をする人もいます。しかしエネルギー源の他にも必須脂肪酸を含みますので脂肪の種類、適切な質と量をバランス良く、上手に摂る工夫が大切です。またこれらは酸化されやすい性質を持っているため、生理機能を十分に発揮するには適切に摂取することが望まれます。

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たんぱく質摂取量、40年の変遷

 1950年(昭和25年)ころ、当時の日本の「中高年」は敗戦の虚脱状態からいち早く立ち上がって、生活の立て直しのために、また社会の秩序を回復するために力を尽くし、それが復興の原動力になりました。彼らは自分たちを頼る家族や部下のためにも人一倍頑張らなければならなかったのです。
 それから40年たった1990年(平成2年)ころから現在にかけて、日本の中高年は半生にわたる社会的活動の結果として、目まぐるしいほどの経済的発展を遂げた担い手として、今なおストレスに耐えて頑張っています。
 40年前も現在も、このように一生懸命に頑張った、それぞれの時代の中高年の人々の健康を支え、ガンバリズムを生み出したのは、その時代における「食物」でした。
 図1はこの40年間の、日本人の平均エネルギー摂取量とたんぱく質摂取量(1日当たり)の変遷を10年ごとに区切って示したものです。
 昭和25年は、終戦前後の「食糧暗黒時代」からまだ完全に脱し切っておらず、粗末な食物をかき集めて何とか飢えをしのいでいた時代でした。そして平成2年は「グルメ時代」がピークに達し、ちまたには地球上の各地で生産される食糧が集荷され、満ちあふれている時代でした。
 そんなに環境条件が違ってきているのに、エネルギーの摂取量もたんぱく質の摂取量もほとんど違いがないということです。エネルギーは平均2,000〜2,100Kcalで生きるのに必要なレベルを維持し、たんぱく質は70〜80gで、健康のために必要な量を確保してきました。
 食糧事情が悪かったにもかかわらずエネルギーもたんぱく質も何とか間に合って、中高年の人々の働く力を維持することができたのは、アメリカからの援助があったことにもよりますが、図に見るように「米」を主なエネルギー源にしていたことが大きな原因です。
 摂取エネルギーの約60%を米による米依存型の食生活は、1960年ころまで続きました。その米が単に重要なエネルギー源となったばかりでなく、かなりのたんぱく源になり、動物性たんぱく質(当時は主に魚)の不足を補ってくれたのです。1日の摂取たんぱく質の約3分の1を占めた米たんぱく質の栄養源が、小麦などに比べて良質なものであることが幸いしました。
 現在の日本人のたんぱく質摂取量は、40年前に比べ10gほど増加したに過ぎませんが、その内容はすっかり変わりました。すなわち米たんぱく質の量が3分の2以下(約60%)に減り、動物性たんぱく質が約2.5倍に増加しました。動物性たんぱく質の栄養源は、米たんぱく質に比べてさらに一段と優れています。それは主にリジンという必須アミノ酸の含有量が米たんぱく質に少なく(小麦たんぱく質はもっと少ない)、動物性たんぱく質には多いことによります。
 植物性たんぱく質の中では大豆たんぱく質が例外的にリジンを多く含んでおり、日本では動物性たんぱく質と大豆たんぱく質を一括して「良質たんぱく質」といっています。日本人の大豆たんぱく質の摂取量は、40年間ほぼ同じレベルで推移してきています。

良質たんぱく質の望ましい摂取量

 では中高年の人々が若さを保つために、良質たんぱく質をどのくらい毎日食べたらよいのでしょうか。たんぱく質がもし不足すれば、「スタミナの減退」を招くし、不足の度合いが大きければ貧血気味になったり、脚気症状を引き起こしやすくなります。また反対に多過ぎると、動脈硬化の原因になったり、がんを引き起こしたりします。毎日、毎食、適正な量を取り続けることが望ましいのです。表1に示す数種類の食品は、いずれも良質たんぱく質6〜8gを含むものです。40年前には一日にこれらを合わせて約4つずつ食べていたのに対し、最近は約8つずつ食べるようになりました。このような食糧事情の変化は、青少年に対しては発育の促進に影響しましたが、中高年に対しては平均寿命の延長という効果に役立ちました。特に中高年の人々が摂取することが望ましい良質たんぱく質の量は、表1の食品を1日に6つずつ、毎食平均2つを標準とすることだと思います。仮に朝は軽く、夕は重くということであれば、朝・昼・夕食に1つ、2つ、3つという配分にもなります。
 中高年の人々にとって大切なことは、たとえ1日に6つが5つになることがあっても、毎食1つ以上は取りたいものです。
 ただ消化吸収能力を超えた1食当たりのたんぱく質の取り過ぎは害を招きやすいので、「かため取り」はできるだけ避けるようにしましょう。

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1 「植物性たんぱく」のことばの意味

・「植物性たんぱく質」と「植物性たんぱく」の使い分け
 一般に「植物性たんぱく質」といえば、あらゆる植物体に含まれるたんぱく質を意味し、それらを個別にいう場合にも、総称する場合にも用います。
 これに対し、ここでいう「植物性たんぱく」は、食品業界を中心に用いられている慣用語で、特定の植物体からたんぱく質を分離または、濃縮した製品で、食品素材として供されるものを意味していますが、実際に日本農林規格(JAS)でも用いられています。

2 「植物性たんぱく」の内容

・大豆と小麦に関するものが主
 利用している植物性の原料として実際に大規模に生産されているのは、大豆と小麦に関するものです。したがって、今日、「植物性たんぱく」といった場合は、その具体的な内容は、「大豆たんぱく」と「小麦たんぱく」ということになります。

・一次加工の副産物を利用
 これらの原料が一次加工の副産物であることも特徴です。すなわち、大豆に関するものは大豆油をとったあとの脱脂大豆を、小麦に関するものはでんぷんをとったあとの生グルテン(湿麩)を利用しています。
 わが国の伝統食品である豆腐や麩(ふ)は、それぞれ大豆と小麦のたんぱく質をある程度分離・濃縮したかたちの食品です。しかし、これらはいずれもいま述べた一次加工の副産物を原料としたものでないこと、また食品素材でなく食品そのものなので、ここでいう「植物性たんぱく」とは性格の異なるものです。

・粉末状のものと肉様の組織をもつものがある
 植物性たんぱくを形態別にみると、粉末状(または水を含んだペースト状)のものと、肉に類似した組織をもつもの(粒状、繊維状)とがあります。それぞれのもつ機能を利用して、品質改良剤あるいは添加増量剤として広範な食品の素材に用いられています。また、いわゆる健康食品として製品化されているものもあります。
 最近は、健康志向の高揚を反映して、これら植物性たんぱくの保健的な効用についても期待が寄せられています。
 そこでここでは、植物性たんぱくとして大豆たんぱく、小麦たんぱくをとり上げ、その製法、性質、利用の現状、栄養・生理的効果、食生活上の意義などについて考えることにします。

大豆たんぱく製品

 大豆たんぱく製品の原料となるのは、大豆から大豆油を抽出したあとの脱脂大豆です。脱脂大豆のたんぱく質は45〜55%で、残りの成分はおよそ糖質30%、繊維3%、脂質2%、灰分6%、水分12%などです。この脱脂大豆を用いていろいろな製品がつくられています。

1 粉末状・ペースト状大豆たんぱく製品

 製造法、あるいはたんぱく質含有量などによって次のように分けられます。

(1)「脱脂大豆粉」――脱脂大豆を加熱後、粉砕したものです。たんぱく質含有量など成分は脱脂大豆とほとんど変わりません。

(2)「抽出大豆たんぱく粉」――脱脂大豆に水を加え、オカラ成分(繊維や難溶性糖質)を取り除いて得た豆乳を乾燥したものです。たんぱく質含有量は、乾物あたり60〜65%と若干高くなります。

(3)「大豆たんぱくカード」――塩化カルシウムなどを用いて前出の豆乳中に含まれるたんぱく質を凝固させ、カード状(水を含んだ凝固物)にしたものです。たんぱく質含有量は、乾物あたり55〜60%になります。

(4)「分離大豆たんぱく」――脱脂大豆を水または希アルカリで抽出し、抽出液を塩酸でpH 4.2〜4.5にして、たんぱく質を沈殿させます。沈殿物から、たんぱく質以外の成分をさらに念入りに除去して、乾燥させたものです。たんぱく質含有量は90〜95%まで上昇します。

(5)「濃縮大豆たんぱく」――脱脂大豆をアルコール(50〜80%)あるいは希塩酸(pH 4.5)で洗浄し、溶け出す成分(糖質やミネラル)を取り除いて乾燥したものです。繊維や難溶性の糖質は残ります。たんぱく質含有量はそれほど高くなく、65〜75%程度です。

 以上のものは、それぞれの適性を生かして各種の食品の副材料として用いたり、次に述べる肉様組織をもつ大豆たんぱくの原料とされます。

2 肉様の組織をもつ大豆たんぱく製品

・「粒状大豆たんぱく」
 脱脂大豆粉、濃縮大豆たんぱく、分離大豆たんぱくを単独あるいは組み合わせて原料に用います。原料に水および必要に応じて食用油脂、調味料、着色料などを加え、押出成型機(エクストルーダー)を使って小粒のひき肉状に成型し、乾燥したものです。高温・高圧下で圧縮したものを噴出すると、たんぱく質は組織を形づくり多孔質となります。たんぱく質含有量は52〜60%です。

・「繊維状大豆たんぱく」
 原料は、分離大豆たんぱく、大豆たんぱくカードを中心に、他の大豆たんぱくも加わります。原料に水およびでんぷん、食用油脂、調味料、着色料を加え、エクストルーダー等を用いて、細孔から押し出すか、あるいはノズルから噴出させて、繊維状の組織を形づくります。粒状大豆たんぱくより、いっそう畜肉に近い組織、食感をもちます。たんぱく質含有量は湿物あたり20〜30%です。

小麦たんぱく製品

 原料は、小麦でんぷん製造のさい副産物として得られる生グルテンです。小麦粉を水でこねるとドウと呼ばれる生地ができますが、これを水洗いするとでんぷんが洗い流され、あとにもち状の塊が残ります。それが生グルテンです。
 生グルテンのたんぱく質含有量は約80%(乾物あたり)で、残りの成分はでんぷんが主で、脂質も若干ですが存在します。小麦たんぱく製品には次のものがあります。

1 粉末状・ペースト状小麦たんぱく製品

・「粉末状小麦たんぱく」
 生グルテンをアンモニア液などに溶かして、これを噴霧乾燥または凍結乾燥させたものです。水を加えると再び元の粘弾性をもつグルテンにもどります。たんぱく質含有量は生グルテンとほとんど変わりません。

・「ペースト状小麦たんぱく」
 生グルテンは粘弾性が強く、ゲル化温度(ゼリー状に変化する温度)も高いので、そのままでは魚のすり身や畜肉と均一に混ぜることは容易でありません。そこで、還元剤というものを使って、これらの性質を低下(変性)させたものです。たんぱく質含有量は約80%です。

2 肉様の組織をもつ小麦たんぱく製品

・「粒状小麦たんぱく」
 生グルテンに、でんぷん、増粘剤、還元剤、食用油脂、界面活性剤、着色料などを必要に応じて加えた後、加熱してゲル化させ、ひき肉状に成型したものです。たんぱく質含有量は50〜80%(乾物あたり)です。

・「繊維状小麦たんぱく」
 原料の配合は、粒状小麦たんぱくと同様なものです。これをエクストルーダ一などの機械処理によって、いっそう肉様の組織・物性に近づけた製品です。原料や加工条件を変えることで、エビ、カニの肉、獣肉その他さまざまの食感に似せた製品がつくれます。たんぱく質含有量は50〜80%(乾物あたり)です。

植物性たんぱくはどのように利用されているか

 これらの植物性たんぱくが実際に食品素材として用いられるときには、個々の目的に合うように、大豆たんぱくと小麦たんぱくを巧みに組み合わせ、加工法でもいろいろ工夫がなされています。

・各植物性たんぱくのもつ加工特性を巧みに利用
 植物性たんぱくが加工食品に利用されるのは、栄養的観点からだけではありません。さまざまな加工特性をもつからです。
 たとえば、粉末状・ペースト状の製品は、乳化性(油を均一に分散させる)、保水性(パサつきを防ぐ、あるいは弾力をもたす)、粘着性・結着性(つなぎ、製品の形くずれを防ぐ)などの働きがあります。また、粒状および繊維状の製品は、歯ごたえを与えます。
 植物性たんぱくを利用した食品には次のものがあります。使用するときは、JASによって含有限度が定められています。

1 肉様加工食品、魚肉練製品

 現在、最も需要が多いのは肉様加工食品で、その多くは冷凍食品の形態で、お総菜として市販されています。使用される植物性たんぱくは、粒状または繊維のものが中心です。その含有量は決して高いものではありません。
ミートボールの例では、全体のたんぱく質中に占める植物性たんぱく質の割合はおよそ4分の1です。
 魚肉練製品に使用されるのは、ペースト状小麦たんぱく、大豆たんぱくカードが中心です。この場合の大豆たんぱくカードは粉末状大豆たんぱくを水和させたものが多く用いられます。かまぼこの例では、植物性たんぱくの使用量は魚肉の8%以下に制限されています。

2 めん類、菓子パン類

 うどん、和そば、中華めん、ぎょうざ・わんたんの皮などに、通常、粉末状小麦たんぱくが l〜2%用いられます。
 パン・菓子類に粉末状たんぱくを数%程度添加すると、たんぱく質の量・質が強化・改善されるとともに、製品のソフト化、ひび割れ防止に役立ちます。

3 乳様食品、マヨネーズ様食品

 牛乳をすべて分離大豆たんぱく(3%程度)に置き換えたアイスクリーム様食品(氷菓)があります。また、牛乳様飲料として粉末状大豆たんぱくを使用した製品も出回っています。
 マヨネーズ原料の卵黄をすべて粉末状大豆たんぱくに置き換えたマヨネーズ様食品もつくりだされています。

4 伝統的大豆加工食品

 豆腐、油揚げ、がんもどきなどは、いわゆる伝統的な大豆加工食品ですが、これらも分離大豆たんぱくと副材料を組み合わせて製造され、市場に出回っています。
 これらの製品では、凍結保存や乾燥保存しても大豆たんぱくの品質が安定的に保たれるという特性が巧みに生かされ、この点では伝統的な製品より実用性で上回るといえます。現在、カップラーメンをはじめとするインスタント食品の具として広く用いられています。

5 大豆たんぱく飲料

 粉末状大豆たんぱくを100%使用し、豆乳飲料と同様の添加物を加えた製品です。

6 プロテインダイエット

 いわゆる健康食品の一つです。ほとんどの製品は、分離大豆たんぱくを主原料とし、ほかに他のたんぱく(カゼイン、卵白)、メチオニン、ビタミン、ミネラル、レシチン、香料などを加えた粉末製品です。たんぱく質含有量は85〜90%ですが、原料に濃縮大豆たんぱくを使ったものは60%程度です。いずれにしても、たんぱく質補給食品です。
 (財)日本健康・栄養食品協会で自主規格が定められています。

植物性たんぱくの生理活性について

1 たんぱく質の作用について

 大豆たんぱくには血液中のコレステロールを低下させる作用があるという情報もみられます。しかし現状では、必ずしも厳密に証拠立てられているわけではありません。たとえそのような効果があったとしても、その程度は決して大きいものではなく、いわゆる生理活性物質の範疇(はんちゅう)に入るかどうかも疑問です。植物性たんぱくのコレステロール低下効果の有無については、なお基本的な検討を要する段階です。

2 大豆たんぱく中の生理活性物質

 もともと穀類や豆類には、生理的にプラスにもマイナスにも作用する物質がいくつかあります。
 大豆中には、体内でたんぱく質の消化率を低下させる物質(トリプシンインヒビター)や、赤血球を凝集させる物質(へマグルチニン)、甲状腺を肥大させる物質(ゴイトロゲン)、サポニンなどが含まれています。
 幸いなことに、これらの物質は、製造工程中に溶解して除かれたり、その後の加熱処理でほとんど大部分が活性を失います。残っているとしてもごくわずかで、心配ありません。

植物性たんぱくの食生活上の意義

 植物性たんぱくは、その食品としての特性が生かされ、すでにかなりの量が市場に出回っています。一般には、むしろあまり知られていないままに利用されているようです。
 現状では、いわゆる健康食品として植物性たんぱく自体をある程度の量摂取する場合を除けば、いちどに多量を摂取することはないでしょう。

1 たんぱく質源としての価値

 植物性たんぱく質という宿命から、必須アミノ酸のうち、大豆では含硫アミノ酸(メチオニン、シスチン)、小麦ではリジンが不足しています。したがって、植物性たんぱく質の栄養価は動物性たんぱく質には及びません。
 しかし、現在の食生活全般からみると、それらの不足アミノ酸は他の食品から容易に補給されるので、全く問題はおこらないと考えられます。

2 植物性たんぱくとコレステロ−ル低下効果

 すでに述べたように、たんぱく質自体にこのような作用があるかどうかは、まだ学問的に明確に結論づけられていません。むしろ、植物性たんぱくを肉に代替することによって、飽和脂肪の摂取量を減らせるので、間接的な意味でコレステロールの低下を期待できるかもしれません。

3 乳糖不耐性や牛乳アレルギーの人の牛乳代替食品としての利用

 特殊な用途として、乳糖不耐症や牛乳アレルギー症に悩む人たちの間で、一部、植物性たんぱく製品が利用されているようです。正しい方法で取り入れられれば、食生活上の意義は大きいといえます。

4 嗜好ならびに栄養的な固有の価値

 先に述べた、大豆たんぱくを利用したアイスクリーム様食品である氷菓などは、栄養ならびに嗜好面で固有の価値があるといえます。ただし乳製品のものとは脂肪酸組成、ミネラル、ビタミンなどの含有量が質的に異なるので、その点に配慮も必要です。

おわりに

 以上述べてきたように、植物性たんぱくは、現代の食生活に欠かせない役割を演じるところまで到達しました。
 他方では、健康志向の現代にあって、植物たんぱくに対する栄養・健康面での期待も大きいものがあります。その結果、一部では誇張した解釈がなされているのも事実です。
 栄養面については科学的な判断は比較的容易です。しかし、疾病予防とか健康増進の効果については、現在のところ確かな資料があるとはいいがたいのです。
 いずれにしても、食生活全体のなかで、正しい知識をもって植物性たんぱくの活用をはかることが、健康への道につながるでしょう。

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