▼ 近親者の自殺
近親者から自殺念慮を告げられるのは苦しい経験です。1人で抱え込まず精神保健福祉センターや保健所等で相談してみるとよいでしょう。自殺未遂となった場合には、専門家のアドバイスが受けられる状況が必要です。不幸にして自死遺族として遺された場合には、その悲嘆過程を支える場としての自死遺族の自助グループ、支援グループへの参加が力になりますが、悲嘆過程が長期化、複雑化した場合には、さらに医療的支援が必要になります。
近親者の自殺を
死にたいと思う気持ちは誰にとっても重たいものです。三人称、つまり直接関係のない人が、自ら命を断ちたいという気持ちを持っていることを知ったとしても、私達はやめて欲しいと願うでしょう。あるいは逆に、その重い気持ち故に「考えたくない」と耳をふさぐかも知れません。しかし、二人称、つまり近親から死へ向かう気持ち=自殺念慮を告げられた時には、耳をふさぐことは簡単ではありません。不安、心配、あるいはこちらの気持ちが通じないことでいらだちを感じ、疲れてしまい、時にその苦しみから「逃れたい」と考え、そのように乱れる心自体が、さらに苦しみの源になってしまいます。
身近なものの自殺について考えるつらさ、そしてそこから逃れたいけど逃れられない気持ちは、多くの人が共通して感じるものです。私達はそのことを認めたうえで、次に何ができるかを考える必要があります。精神保健福祉センターや保健所で実施されるこころの健康相談など、専門家の意見を参考にしながら、問題を整理していくことが有効な場合が少なくありません。
しかし、不幸にして近親が自殺に及ぶこともあります。救命救急センターなどで一命を取りとめ、自殺未遂になったとしても、周囲のものには安堵とともに、今後の不安がさらに強くなることもあるでしょう。自殺にいたった心の健康やその背景にある様々な問題の解決に取り組まなければなりません。そこでは、先のような心の健康に関わる専門機関に加えて、法律・経済・福祉等の専門家の支援が必要になる可能性があります。さらに、体に後遺症が残ることもあり、本人と周囲の負担はさらに増していくかも知れません。家族は十分な情報を集めるとともに、必要なサービスを受け、自らの健康にも留意する必要があります。
そして悲しいことに、年間3万件も自殺があるのが我が国の現状です。その一つ一つに近親者がいて、故人との関わりの経緯をもち、それぞれの悲しみの過程を辿り始めます。あらゆる関わりを拒絶してしまう否認、深い悲しみや怒りや悲しみ、逆にその場にそぐわないと自分で思えてしまう安堵や無関心を感じることもありますが、それらは正常な悲嘆過程の一部です。また、深い関わりもつ近親者だからこそ、自責の念を感じてしまい、また自殺が起こった理由を際限なく問うこともあります。命日や自殺の報道をきっかけに、悲しみが再現する、PTSDのような反応に苦しむこともあります。この深い悲しみを乗り越えていく上では、周囲の理解が大切ですが、同じように自殺で遺された方が経験を分かち合う自死遺族の自助グループ・支援グループへの参加が支えになることもあります。まだ全国で40ヶ所足らずですが、地域の精神保健福祉センターや保健所で、その情報を知ることができるでしょう。なお悲嘆過程が長期化・複雑化した場合を、病的な悲嘆過程と呼びます。そのような場合は、専門的な精神科医療を受けることも検討するべきです。
水晶の誓い!!
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近親者の自殺を
死にたいと思う気持ちは誰にとっても重たいものです。三人称、つまり直接関係のない人が、自ら命を断ちたいという気持ちを持っていることを知ったとしても、私達はやめて欲しいと願うでしょう。あるいは逆に、その重い気持ち故に「考えたくない」と耳をふさぐかも知れません。しかし、二人称、つまり近親から死へ向かう気持ち=自殺念慮を告げられた時には、耳をふさぐことは簡単ではありません。不安、心配、あるいはこちらの気持ちが通じないことでいらだちを感じ、疲れてしまい、時にその苦しみから「逃れたい」と考え、そのように乱れる心自体が、さらに苦しみの源になってしまいます。
身近なものの自殺について考えるつらさ、そしてそこから逃れたいけど逃れられない気持ちは、多くの人が共通して感じるものです。私達はそのことを認めたうえで、次に何ができるかを考える必要があります。精神保健福祉センターや保健所で実施されるこころの健康相談など、専門家の意見を参考にしながら、問題を整理していくことが有効な場合が少なくありません。
しかし、不幸にして近親が自殺に及ぶこともあります。救命救急センターなどで一命を取りとめ、自殺未遂になったとしても、周囲のものには安堵とともに、今後の不安がさらに強くなることもあるでしょう。自殺にいたった心の健康やその背景にある様々な問題の解決に取り組まなければなりません。そこでは、先のような心の健康に関わる専門機関に加えて、法律・経済・福祉等の専門家の支援が必要になる可能性があります。さらに、体に後遺症が残ることもあり、本人と周囲の負担はさらに増していくかも知れません。家族は十分な情報を集めるとともに、必要なサービスを受け、自らの健康にも留意する必要があります。
そして悲しいことに、年間3万件も自殺があるのが我が国の現状です。その一つ一つに近親者がいて、故人との関わりの経緯をもち、それぞれの悲しみの過程を辿り始めます。あらゆる関わりを拒絶してしまう否認、深い悲しみや怒りや悲しみ、逆にその場にそぐわないと自分で思えてしまう安堵や無関心を感じることもありますが、それらは正常な悲嘆過程の一部です。また、深い関わりもつ近親者だからこそ、自責の念を感じてしまい、また自殺が起こった理由を際限なく問うこともあります。命日や自殺の報道をきっかけに、悲しみが再現する、PTSDのような反応に苦しむこともあります。この深い悲しみを乗り越えていく上では、周囲の理解が大切ですが、同じように自殺で遺された方が経験を分かち合う自死遺族の自助グループ・支援グループへの参加が支えになることもあります。まだ全国で40ヶ所足らずですが、地域の精神保健福祉センターや保健所で、その情報を知ることができるでしょう。なお悲嘆過程が長期化・複雑化した場合を、病的な悲嘆過程と呼びます。そのような場合は、専門的な精神科医療を受けることも検討するべきです。
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犯罪被害は強い衝撃をもたらす。被害直後の不安や混乱は時間の経過とともに軽減していくが、ASD、PTSD、うつ病などを発症する場合も少なくない。これらの疾患や被害による認知の変化から社会生活機能が障害されることがある。被害者の回復のための支援が必要である。現在日本では警察や民間被害者支援団体などの支援窓口が作られ、犯罪被害者等基本法に基づいて被害者支援が推進されてきている。
殺人、強盗、傷害、性暴力など犯罪被害は、被害者の心身に深刻な影響を与えます。被害の直後では、被害にあったことが信じられない、現実と思えない気持ちになります。また強い衝撃によって感情や感覚の麻痺や恐怖や不安、動悸や冷や汗などの生理的反応が生じ、どうしてよいかわからないという混乱した状態になります。このような反応は被害後、数時間〜数日続く場合があり、被害者は自分が精神的におかしくなったのではないかという不安を抱くこともありますが、これらの反応の多くは「犯罪という異常な事態に直面したために生じる人間の正常な反応」です。
急性期では被害者に付き添い安心できるようにすることや、身の回りのことや必要な情報を提供する「危機介入」と呼ばれる支援が重要です。また、被害から1ヶ月くらいの間は、不安でいつも事件のことが頭から離れない、考えたくないのに事件のことを思い出してしまう(再体験)、事件に関連するような場所や状況を避けてしまう(回避・麻痺)、眠れない、集中できない(過覚醒)などの症状が表れることがあります。このような症状に加えて、現実感がない、ぼうっとしてしまう、自分が自分でないような感じがする(解離症状)ような症状が2日以上続くような場合には急性ストレス障害(Acute Stress Disorder: ASD)と診断されることがあります。こういった症状は時間の経過とともに軽減していくことも多いのですが、犯罪被害のように生命の危機を伴うような体験では、症状が持続してしまうことが少なくありません。前述した再体験、回避・麻痺、過覚醒の症状が1ヶ月以上続く場合には、外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder: PTSD)と診断されます。
いくつかの研究報告から、身体的な暴力の被害者やレイプの被害者では20%〜50%くらいの人がPTSDを経験すると考えられます。また、犯罪被害者ではPTSDと合併して、あるいは合併していなくてもうつ病やパニック障害、社会恐怖などの精神疾患も多くみられます。このような精神疾患や犯罪被害による認知の変化(世の中や他人が危険に感じて信頼できない、自分が無力に感じる)の影響で対人関係や仕事が上手くいかなくなることも多いのです。不眠などをお酒で解決しようとするとアルコール依存症などの問題を二次的に引き起こしてしまうことがあります。不安や不眠、精神的な苦痛が続いている場合には、精神科や心療内科に相談することがすすめられます。
このような被害後の様々な問題を被害者や遺族自身が1人で対処していくことはとても大変なことであり、周囲の支援は重要です。日本では2004年に犯罪被害者等基本法が制定され、国や地方自治体、国民は犯罪被害者を支援する義務があると定められました。この法律にしたがって、現在被害者支援が推進されています。犯罪の被害にあった人の支援窓口として、各都道府県警察の被害者相談(犯罪被害者対策室)、検察庁の被害者相談支援員制度、法テラス犯罪被害者支援ダイヤル、民間被害者支援団体(全国被害者支援ネットワーク加盟団体など)、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などがあります。また、被害者同士が安心して気持ちを語り合うことができる自助グループや当時者団体も大切な存在です。
そして、このような専門機関だけでなく、家族や友人など周囲の人が、被害者の気持ちに耳を傾け、寄り添い、一緒に問題の解決を考えていく姿勢で関わっていくことが被害者の回復に重要なのです。
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殺人、強盗、傷害、性暴力など犯罪被害は、被害者の心身に深刻な影響を与えます。被害の直後では、被害にあったことが信じられない、現実と思えない気持ちになります。また強い衝撃によって感情や感覚の麻痺や恐怖や不安、動悸や冷や汗などの生理的反応が生じ、どうしてよいかわからないという混乱した状態になります。このような反応は被害後、数時間〜数日続く場合があり、被害者は自分が精神的におかしくなったのではないかという不安を抱くこともありますが、これらの反応の多くは「犯罪という異常な事態に直面したために生じる人間の正常な反応」です。
急性期では被害者に付き添い安心できるようにすることや、身の回りのことや必要な情報を提供する「危機介入」と呼ばれる支援が重要です。また、被害から1ヶ月くらいの間は、不安でいつも事件のことが頭から離れない、考えたくないのに事件のことを思い出してしまう(再体験)、事件に関連するような場所や状況を避けてしまう(回避・麻痺)、眠れない、集中できない(過覚醒)などの症状が表れることがあります。このような症状に加えて、現実感がない、ぼうっとしてしまう、自分が自分でないような感じがする(解離症状)ような症状が2日以上続くような場合には急性ストレス障害(Acute Stress Disorder: ASD)と診断されることがあります。こういった症状は時間の経過とともに軽減していくことも多いのですが、犯罪被害のように生命の危機を伴うような体験では、症状が持続してしまうことが少なくありません。前述した再体験、回避・麻痺、過覚醒の症状が1ヶ月以上続く場合には、外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder: PTSD)と診断されます。
いくつかの研究報告から、身体的な暴力の被害者やレイプの被害者では20%〜50%くらいの人がPTSDを経験すると考えられます。また、犯罪被害者ではPTSDと合併して、あるいは合併していなくてもうつ病やパニック障害、社会恐怖などの精神疾患も多くみられます。このような精神疾患や犯罪被害による認知の変化(世の中や他人が危険に感じて信頼できない、自分が無力に感じる)の影響で対人関係や仕事が上手くいかなくなることも多いのです。不眠などをお酒で解決しようとするとアルコール依存症などの問題を二次的に引き起こしてしまうことがあります。不安や不眠、精神的な苦痛が続いている場合には、精神科や心療内科に相談することがすすめられます。
このような被害後の様々な問題を被害者や遺族自身が1人で対処していくことはとても大変なことであり、周囲の支援は重要です。日本では2004年に犯罪被害者等基本法が制定され、国や地方自治体、国民は犯罪被害者を支援する義務があると定められました。この法律にしたがって、現在被害者支援が推進されています。犯罪の被害にあった人の支援窓口として、各都道府県警察の被害者相談(犯罪被害者対策室)、検察庁の被害者相談支援員制度、法テラス犯罪被害者支援ダイヤル、民間被害者支援団体(全国被害者支援ネットワーク加盟団体など)、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などがあります。また、被害者同士が安心して気持ちを語り合うことができる自助グループや当時者団体も大切な存在です。
そして、このような専門機関だけでなく、家族や友人など周囲の人が、被害者の気持ちに耳を傾け、寄り添い、一緒に問題の解決を考えていく姿勢で関わっていくことが被害者の回復に重要なのです。
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DV被害によって被害者とその子どもには様々な心身の健康障害が引き起こされることがわかっています。例えば、被害者には直接的な暴力による怪我の他にも慢性身体疾患への罹患や、うつ病やPTSD、アルコール乱用、薬物乱用などが起こり得ます。周囲の人たちには被害者とその子どもの状態を理解し、長い目で援助していく視点が重要です。
本来DVという言葉は家庭内の暴力全般についてあらわすものですが、日本では長く子どもから親への暴力に限定して「家庭内暴力」と表現してきた歴史があったために、これと区別する目的で親しい関係にある男女間における暴力をDVと呼ぶようになりました。
平成14年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」、が施行されて以来、DVは急速に社会に知られるようになりました。この法律では、行政での配偶者間暴力相談支援センターの設置義務や、被害者の保護命令などが定められています。
DVの問題は日本だけのものではありません。世界保健機構の調査では、配偶者やパートナーから身体的暴力を受けたことのある女性の割合は、多数の国で20〜40%にのぼっています。わが国でも、配偶者から身体的な暴力を受けたことがある人は女性26.7%、男性13.8%であり、また“身体的暴行”“心理的攻撃”“性的強要”のいずれかを1つでも受けたことが『何度もあった』という人は、女性10.6%、男性2.6%となっています(内閣府男女共同参画室平成17年度「男女間における暴力に関する調査」)。このように、DVは世界共通の社会問題であり、とりわけ女性にとっては最も身近で遭遇する可能性が高いトラウマエピソードのひとつになっています。
DVは心身の健康に大きな影響を及ぼします。DVによる身体的な健康障害としては身体的暴行や性的強要による受傷はもとより、頭痛、背部痛などの慢性疼痛や、食欲不振や体重減少、機能性消化器疾患、高血圧、免疫状態の低下などが報告されています。妊娠中のDV被害は特に注目されており、母体の被害だけでなく、早産や胎児仮死、児の出産時低体重も報告されています。わが国でもDV 被害のリスクを有する妊産婦は全体の14%以上存在し、特に、10代の妊産婦のDV被害が際立って高い頻度になっています(日本産婦人科医会による調査)。
DV被害者に最も多い精神健康障害はうつ病と外傷後ストレス障害(PTSD)であり、シェルターに逃げてきた被害者に対する調査では、うつ病は4割から6割、PTSDは3割から8割の被害者に診断されます。うつ病やPTSD以外にも自殺傾向、不安障害、身体化障害、アルコールや薬物乱用がしばしば認められます。また、長年の暴力被害により、話がまとまらなくなっていたり、極端に自信を喪失していたり、過度に自責的になったり、人を信用できなくなっている被害者も少なくありません。これらの症状に経済的な不安等が加わって、被害者はしばしば加害者の元から逃げてはまた戻ることを繰り返します。被害者の中には自分の被害を医療者にも相談できなかったり、あるいはDV被害と現在の心身の不調を結び付けられなかったりする人もいます。加害者の更正プログラムや家族の再統合などの試みはありますが、現在のところ具体的な良い結果は得られていません。被害者とその子どもにとっては安全な居場所の確保がケアに先立つ最優先事項となります。
加害行為からのがれたあとも、うつ病やPTSDの症状は長引くことがあり、長期的な視点に立った息の長いケアが必要です。失われた自信や主体性を取り戻すことが回復の大きなポイントになります。また、親族のもとに被害者が逃げた場合、具合の悪さが長引くことから親族間の関係がギクシャクしてしまうことがあります。被害者とその子どもの状態を理解し、長い目で援助していくことが重要です。
近年ではDVにさらされた子どもたちの心身の問題も徐々に知られるようになって来ました。身体的に直接的な虐待被害を受ける子どもも少なくありませんが、DV状況の目撃そのものも虐待の一つです。シェルター滞在中の調査では心理的ケアを要する臨床域にあるとされる子どもは8割に達するとの報告もあり、今後の重大な課題となっています。また、被害親子の精神健康は相互に影響しており、両者のケアがリンクして行われるのが理想的です。
DV被害にあっている方は、一度は必ず専門の相談機関に相談なさってみてください。また、直接的な怪我のほかにも身体症状、精神的な症状で医療機関を受診する場合には、被害について医療者に伝えることをお勧めします。
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本来DVという言葉は家庭内の暴力全般についてあらわすものですが、日本では長く子どもから親への暴力に限定して「家庭内暴力」と表現してきた歴史があったために、これと区別する目的で親しい関係にある男女間における暴力をDVと呼ぶようになりました。
平成14年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」、が施行されて以来、DVは急速に社会に知られるようになりました。この法律では、行政での配偶者間暴力相談支援センターの設置義務や、被害者の保護命令などが定められています。
DVの問題は日本だけのものではありません。世界保健機構の調査では、配偶者やパートナーから身体的暴力を受けたことのある女性の割合は、多数の国で20〜40%にのぼっています。わが国でも、配偶者から身体的な暴力を受けたことがある人は女性26.7%、男性13.8%であり、また“身体的暴行”“心理的攻撃”“性的強要”のいずれかを1つでも受けたことが『何度もあった』という人は、女性10.6%、男性2.6%となっています(内閣府男女共同参画室平成17年度「男女間における暴力に関する調査」)。このように、DVは世界共通の社会問題であり、とりわけ女性にとっては最も身近で遭遇する可能性が高いトラウマエピソードのひとつになっています。
DVは心身の健康に大きな影響を及ぼします。DVによる身体的な健康障害としては身体的暴行や性的強要による受傷はもとより、頭痛、背部痛などの慢性疼痛や、食欲不振や体重減少、機能性消化器疾患、高血圧、免疫状態の低下などが報告されています。妊娠中のDV被害は特に注目されており、母体の被害だけでなく、早産や胎児仮死、児の出産時低体重も報告されています。わが国でもDV 被害のリスクを有する妊産婦は全体の14%以上存在し、特に、10代の妊産婦のDV被害が際立って高い頻度になっています(日本産婦人科医会による調査)。
DV被害者に最も多い精神健康障害はうつ病と外傷後ストレス障害(PTSD)であり、シェルターに逃げてきた被害者に対する調査では、うつ病は4割から6割、PTSDは3割から8割の被害者に診断されます。うつ病やPTSD以外にも自殺傾向、不安障害、身体化障害、アルコールや薬物乱用がしばしば認められます。また、長年の暴力被害により、話がまとまらなくなっていたり、極端に自信を喪失していたり、過度に自責的になったり、人を信用できなくなっている被害者も少なくありません。これらの症状に経済的な不安等が加わって、被害者はしばしば加害者の元から逃げてはまた戻ることを繰り返します。被害者の中には自分の被害を医療者にも相談できなかったり、あるいはDV被害と現在の心身の不調を結び付けられなかったりする人もいます。加害者の更正プログラムや家族の再統合などの試みはありますが、現在のところ具体的な良い結果は得られていません。被害者とその子どもにとっては安全な居場所の確保がケアに先立つ最優先事項となります。
加害行為からのがれたあとも、うつ病やPTSDの症状は長引くことがあり、長期的な視点に立った息の長いケアが必要です。失われた自信や主体性を取り戻すことが回復の大きなポイントになります。また、親族のもとに被害者が逃げた場合、具合の悪さが長引くことから親族間の関係がギクシャクしてしまうことがあります。被害者とその子どもの状態を理解し、長い目で援助していくことが重要です。
近年ではDVにさらされた子どもたちの心身の問題も徐々に知られるようになって来ました。身体的に直接的な虐待被害を受ける子どもも少なくありませんが、DV状況の目撃そのものも虐待の一つです。シェルター滞在中の調査では心理的ケアを要する臨床域にあるとされる子どもは8割に達するとの報告もあり、今後の重大な課題となっています。また、被害親子の精神健康は相互に影響しており、両者のケアがリンクして行われるのが理想的です。
DV被害にあっている方は、一度は必ず専門の相談機関に相談なさってみてください。また、直接的な怪我のほかにも身体症状、精神的な症状で医療機関を受診する場合には、被害について医療者に伝えることをお勧めします。
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交通事故重傷者のおよそ3割が、約1ヵ月後にうつ病やPTSDなどの精神疾患を発症します。精神疾患の発症を予防することを目的にした研究や、事故後の精神疾患が怪我の回復やリハビリにどう影響するかの研究が期待されています。事故後に精神的な不調が生じた場合は、精神科や心療内科で相談しましょう。
交通事故で重傷を負うことは、いつどこでも起こりうる「つらい出来事」です。北米の調査によると、4人に1人は生涯で一度は交通事故を経験すると言われています。警察庁平成19年統計によると、交通事故死亡者数は5,744人で昭和28年以来54年振りに5千人台まで減少しました。しかし、交通事故負傷者数は1,034,514人で9年連続して100万人を超えるなど、交通事故をめぐる悲しい出来事が跡を絶つことはありません。救急医療の発展により、重傷患者の生存率が向上する一方、後遺障害を抱えながらリハビリを続けている人は増えています。近年、ようやく交通事故を「つらい出来事」として捉えた研究が行われ、西洋諸国における交通外傷後の精神健康の実態が報告されるようになりました。わが国でも、2つの実態調査が行われましたので、筆者らの研究を紹介します。
筆者らは、交通事故で重傷を負い、高度救命救急センター搬送された患者に、搬送の24時間後から精神科医が面接し、18歳〜69歳までの連続する100人の状態を追跡しました(頭部にダメージのある人や、以前から精神疾患のある人らは対象から除きました)。その結果、4〜6週目の診断で31人が何らかの精神疾患を発症していました。その内訳は、31人中16人が「大うつ病」(重度のうつ)、7人が「小うつ病」(軽度のうつ)、8人がPTSD(外傷後ストレス障害)でした。うつ病とPTSDは相互に合併している例が多く認められました。詳しい分析の結果、事故時に生命への脅威を感じた人、恐怖の記憶が強かった人、入院時の心拍数が高かった人ほど、精神疾患を発症しやすい傾向にありました。
救急医療の現場では命を救うことが最優先ですが、精神疾患を発症すると怪我の回復やリハビリ、社会復帰にも影響しかねません。事故後に精神健康を害する危険があると思われる人を早く見つけ、うつ病やPTSDの発症を予防することは、本人や家族のためはもちろん、社会的にも重要です。近年、交通事故重傷者のPTSD発症予防を目的にした認知療法とβ遮断薬による薬物療法の有効性が報告されていますが、完全に確立された予防法はまだ存在しません。今後は、精神疾患の発症を予防することを目的にした研究や、事故後の精神疾患が、怪我の回復やリハビリにどう影響するかの研究も期待されます。
先に示した数字からもお分かりのように、およそ7割の人は交通事故という「つらい出来事」を体験しても精神疾患を発症しません。こうした人々が精神健康を保っている理由についてはまだよく分かっていないので、これも今後の研究課題だと思われます。筆者らは、精神疾患を発症した重傷者の3割の人たちに、精神科や心療内科を受診するようアドバイスしましたが、多くの方が受診されませんでした。事故の後、気分がふさぐ、意欲が低下する、眠れない、恐怖記憶が突然蘇る、事故現場に近寄れない、イライラする、物音でドキッとする、などの症状で悩んでいるにもかかわらず、専門家には相談していない人が多いことが推測されます。「ひとりでに改善するに違いない」、「精神科の治療なんて効果があるのかしら」などと考えている人もいらっしゃるかと思いますが、一度、精神科医や心療内科医に相談されることをお勧めします。
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交通事故で重傷を負うことは、いつどこでも起こりうる「つらい出来事」です。北米の調査によると、4人に1人は生涯で一度は交通事故を経験すると言われています。警察庁平成19年統計によると、交通事故死亡者数は5,744人で昭和28年以来54年振りに5千人台まで減少しました。しかし、交通事故負傷者数は1,034,514人で9年連続して100万人を超えるなど、交通事故をめぐる悲しい出来事が跡を絶つことはありません。救急医療の発展により、重傷患者の生存率が向上する一方、後遺障害を抱えながらリハビリを続けている人は増えています。近年、ようやく交通事故を「つらい出来事」として捉えた研究が行われ、西洋諸国における交通外傷後の精神健康の実態が報告されるようになりました。わが国でも、2つの実態調査が行われましたので、筆者らの研究を紹介します。
筆者らは、交通事故で重傷を負い、高度救命救急センター搬送された患者に、搬送の24時間後から精神科医が面接し、18歳〜69歳までの連続する100人の状態を追跡しました(頭部にダメージのある人や、以前から精神疾患のある人らは対象から除きました)。その結果、4〜6週目の診断で31人が何らかの精神疾患を発症していました。その内訳は、31人中16人が「大うつ病」(重度のうつ)、7人が「小うつ病」(軽度のうつ)、8人がPTSD(外傷後ストレス障害)でした。うつ病とPTSDは相互に合併している例が多く認められました。詳しい分析の結果、事故時に生命への脅威を感じた人、恐怖の記憶が強かった人、入院時の心拍数が高かった人ほど、精神疾患を発症しやすい傾向にありました。
救急医療の現場では命を救うことが最優先ですが、精神疾患を発症すると怪我の回復やリハビリ、社会復帰にも影響しかねません。事故後に精神健康を害する危険があると思われる人を早く見つけ、うつ病やPTSDの発症を予防することは、本人や家族のためはもちろん、社会的にも重要です。近年、交通事故重傷者のPTSD発症予防を目的にした認知療法とβ遮断薬による薬物療法の有効性が報告されていますが、完全に確立された予防法はまだ存在しません。今後は、精神疾患の発症を予防することを目的にした研究や、事故後の精神疾患が、怪我の回復やリハビリにどう影響するかの研究も期待されます。
先に示した数字からもお分かりのように、およそ7割の人は交通事故という「つらい出来事」を体験しても精神疾患を発症しません。こうした人々が精神健康を保っている理由についてはまだよく分かっていないので、これも今後の研究課題だと思われます。筆者らは、精神疾患を発症した重傷者の3割の人たちに、精神科や心療内科を受診するようアドバイスしましたが、多くの方が受診されませんでした。事故の後、気分がふさぐ、意欲が低下する、眠れない、恐怖記憶が突然蘇る、事故現場に近寄れない、イライラする、物音でドキッとする、などの症状で悩んでいるにもかかわらず、専門家には相談していない人が多いことが推測されます。「ひとりでに改善するに違いない」、「精神科の治療なんて効果があるのかしら」などと考えている人もいらっしゃるかと思いますが、一度、精神科医や心療内科医に相談されることをお勧めします。
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災害は大きな心理的な負担を与えるので、人が心身の変調を感じることは正常な反応ともいえます。しかし、なかにはうつ状態、PTSDなどの精神症状や、飲酒や喫煙などの健康問題が増えることもあります。その際、適切な医療サービスや周囲の人からの支え(ソーシャルサポート)を得てこころのケアに配慮することが重要です。
日本は地震、台風、などの自然災害を多く経験しています。特に、1995年の阪神・淡路大震災以降は、こころのケアの重要性が一層認識されて、災害後に多くの予防や治療的関わりが行われています。
災害は多くの住民にとって予期しない出来事であり、大きな心理的な負担を与えます。災害によって家財を失ったり、親しい人に犠牲がでたり、生活に大きな変化や、将来の生活へ不安がもたらされることがあります。このようなこのような重大な出来事のあとで心身の変調をきたすことは人間の正常な反応ともいえます。そこで、多くの場合には生活の再建とともにこころの健康も回復していくのですが、なかには、精神的な影響が長く続いたり、精神疾患の診断がつくこともあります。これらの診断として、うつ病、不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が挙げられます。他にも、ストレスへの対処行動として、飲酒や喫煙の増加がみられることもあります。高齢者や子どもは災害弱者といわれますが、高齢者では身体症状の増加や、子供の場合にも、頭痛、腹痛、身体各部の痛みなどの身体の不調、気持ちが落ちこみ、また、お漏らし、指しゃぶり、保護者へのべたつき(だっこ、おんぶ)といった退行現象(赤ちゃん返り)が見られることがあります。これらの反応は、恐怖を感じたり、不安な状況がもたらす心身の反応であり、異常なことではありません。安全を確保して、安心感を与えることで、多くは回復していきます。
被災後に実際に不安定になっている人びとを見つけた場合にも多くの場合には直ちに医学的な対応をすることは困難な場合があります。そのような時には、災害の後で新たに生じた不安、落ち込み、苛立ち、焦りなどは、誰にでもあることで多くは一時的なことを伝えて落ち着いて様子を見ること、しかし、程度がひどくなった場合には、迷わずに電話相談や相談室などを利用するように伝え、精神的な援助を受けられる体制を確認することが必要です。特に不眠が続いたり、パニック、興奮、放心などが強い場合には、できるだけ早期に専門家に相談するように勧めます。これは災害だけが原因ではなく、災害の前に別の強い衝撃があったり(家族の事故など)、何らかの精神疾患があったり、あるいは始まりかけていたという場合もあるからです。このような精神的な変化は、体の不調とあわせて生じることもあるので、身体医療のなかでも、こころのケアに配慮した対応をする必要があります。
このように、こころのケアは、精神や一般の保健・医療体制のなかで対応されますが、それと同様に重要なことは、周囲の人からの支え(ソーシャルサポート)を得ることです。このような支えは、災害後のこころの状態に対して、保護的に働くことが研究からも明らかになっています。
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日本は地震、台風、などの自然災害を多く経験しています。特に、1995年の阪神・淡路大震災以降は、こころのケアの重要性が一層認識されて、災害後に多くの予防や治療的関わりが行われています。
災害は多くの住民にとって予期しない出来事であり、大きな心理的な負担を与えます。災害によって家財を失ったり、親しい人に犠牲がでたり、生活に大きな変化や、将来の生活へ不安がもたらされることがあります。このようなこのような重大な出来事のあとで心身の変調をきたすことは人間の正常な反応ともいえます。そこで、多くの場合には生活の再建とともにこころの健康も回復していくのですが、なかには、精神的な影響が長く続いたり、精神疾患の診断がつくこともあります。これらの診断として、うつ病、不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が挙げられます。他にも、ストレスへの対処行動として、飲酒や喫煙の増加がみられることもあります。高齢者や子どもは災害弱者といわれますが、高齢者では身体症状の増加や、子供の場合にも、頭痛、腹痛、身体各部の痛みなどの身体の不調、気持ちが落ちこみ、また、お漏らし、指しゃぶり、保護者へのべたつき(だっこ、おんぶ)といった退行現象(赤ちゃん返り)が見られることがあります。これらの反応は、恐怖を感じたり、不安な状況がもたらす心身の反応であり、異常なことではありません。安全を確保して、安心感を与えることで、多くは回復していきます。
被災後に実際に不安定になっている人びとを見つけた場合にも多くの場合には直ちに医学的な対応をすることは困難な場合があります。そのような時には、災害の後で新たに生じた不安、落ち込み、苛立ち、焦りなどは、誰にでもあることで多くは一時的なことを伝えて落ち着いて様子を見ること、しかし、程度がひどくなった場合には、迷わずに電話相談や相談室などを利用するように伝え、精神的な援助を受けられる体制を確認することが必要です。特に不眠が続いたり、パニック、興奮、放心などが強い場合には、できるだけ早期に専門家に相談するように勧めます。これは災害だけが原因ではなく、災害の前に別の強い衝撃があったり(家族の事故など)、何らかの精神疾患があったり、あるいは始まりかけていたという場合もあるからです。このような精神的な変化は、体の不調とあわせて生じることもあるので、身体医療のなかでも、こころのケアに配慮した対応をする必要があります。
このように、こころのケアは、精神や一般の保健・医療体制のなかで対応されますが、それと同様に重要なことは、周囲の人からの支え(ソーシャルサポート)を得ることです。このような支えは、災害後のこころの状態に対して、保護的に働くことが研究からも明らかになっています。
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